私のヒーローアカデミア~ねじれちゃんの妹は最強?です~ 作:レイラレイラ
「本命は俺じゃない。対平和の象徴、改人“脳無”」
常闇と別れすぐるは暴風・大雨ゾーンを脱出し、セントラル広場へと向かっていた。
幸い広場から距離はさほど離れていなかったため、目立つ飛行は避けての移動だ。
そしていざ駆けつけてみれば、相澤が脳味噌を丸出しにした
「“個性”を消せる…………素敵だけどなんてことはないね。圧倒的な力の前ではつまりただの“無個性”だもの」
続いて左腕も紙を握りつぶす感覚でへし折る、相澤が視ていてあの力ということは素の力であの怪力だということの証明だ。
この上ない事実を認識する中、すぐるの胸の内にはただ一つの感情だけが渦巻いていた。
憤怒
(…………なんで、そんな簡単に人を傷つけられるの?)
(…………なんで、そんな当たり前のように誰かの日常を壊せるの?)
(…………なんで、そんなことを…………)
思考の渦にはまっていながらもすぐるは脳無と呼ばれたヴィランが、相澤の頭に手を伸ばしていることに気づく。
まず間違いなく、次は頭を粉砕しようとしていることは疑いようがない。
その刹那、すぐるの中で何かが切れた。
(許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!! )
すぐるの背中からは黒い翼が吹き出し、脳無に向かって一直線に放たれた。
翼が通り抜けた後には、何も残っておらずただポカンと喪失した右腕があった箇所を見つめる脳無の姿があった。
「…………は?」
『手』をつけたヴィランこと死柄木弔が呆気に取られた声をあげるとともに、続いて脳無の左腕が翼に飲み込まれ消失した。
すぐるが瓦礫か何かを蹴り上げ、脳無の胴体に激突。
紙吹雪のように軽々と吹き飛ばされ、相澤から引き剥がされる脳無。
死柄木弔はそれを宝物を発見した子どものように、どこか楽しそうにその光景を見ていた。
「おいおいおい、さっそくサブクエスト完了かよ。
死柄木が指示すると、脳無の消し飛んだ筈の両腕は瞬く間に生えると同時にすぐるへと凄まじいスピードで迫る。
「Ztni許nir」
言語ともとれないような何かを呟くと、黒い翼が脳無の両腕と下半身すらも消し飛ばした。
四肢を失いながらも、もがくように前えと進む脳無だったがすぐるの蹴りを食らい死柄木の元へと戻されてしまう。
「おい、聞いてないぞ! あいつ、とんだ化物じゃないか! 脳無、さっさとあいつを…………なっ!」
「死柄木弔!」
迫る危機を察知し、黒霧は死柄木を抱えて飛び退くが再生を終えた直後の脳無はなすすべもなく氷に閉じ込められてしまう。
「それ以上その腐った口を開くんじゃねぇ。うっかり殺しちまったらどうするつもりだ」
死柄木達を見下ろしていたのは今出している氷よりも冷たい、そんな雰囲気を纏った轟焦凍であった。
「…………スグ」
「…………焦……凍…………く……ん……」
焦凍はすぐるの正面に移動し、俯いた顔を上げさせると頬を全力でひっぱたいた。
「痛い…………な……」
「ああ、俺も痛ぇよ。お前がヴィランの腕を消し飛ばしたとき、胸が直接掴まれたみてぇに痛かった。スグ…………お前はヒーローになりたいんだろ?」
「なり……たい…………誰かが…………傷ついたり、悲しまないように…………してあげられるヒーローに……」
かつて心に決めた決意を、膝から崩れ落ちながらぼそぼそと返すすぐる。
「…………よし、だったら後で大反省会だ。そのために、あいつら全員捕まえねぇとな」
「一人でなんてダメだよ! 止めてよ、焦凍君!」
焦凍の無茶としか取れない宣言に、すぐるは先程までと違いはっきりとした言葉で懇願する。
「やめて欲しけりゃ立て!! なりてえもんちゃんと見ろ!! 」
全身を震わせるほどの叫びが焦凍から発せられ、すぐるは一瞬怯んでしまったが左手に炎を展開させヴィランへと立ち向かおうとするその姿は何よりも格好よく見えた。
心臓の鼓動がうるさいほどに高鳴り、焦凍の顔が見れそうにない。
「私は…………」
『やっと覚醒したね、すぐるちゃん』
何処かから名を呼ばれ、その声の人物を探ろうとすると景色があっという間に切り替わる。
一面の闇のみが広がる空間に、新雪のように真っ白な髪とルビーのように煌めく赤い瞳の女性が立っていた。
『初めまして、波動すぐるちゃん。私は死柄木代次。君の個性『
◆◆◆◆
死柄木代次という女性が突如として現れ、戸惑いを隠せなかったものの持ち前の思考力で彼女の話を聞くのがベストだとすぐるは考えた。
「君は本来“無個性”…………つまり、ただの無力な女の子として人生を送る筈だったのに私以上の適性を示してしまったからね。でも、こうして覚醒できたのなら何も問題はないよ。君の個性の前にまずは前置きとして、ワン・フォー・オールという個性の話からしようかね。これは、君が『一方通行』を本当の意味で使うにあたって重要なことだからね」
ワン・フォー・オールというのは『力をストックし、別の人間に譲渡する』という個性であること。
そしてワン・フォー・オールという個性は代々受け継がれ、オール・フォー・ワンという男を打倒するために戦ってきたこと。
また、オール・フォー・ワンは初代ワン・フォー・オール所持者『死柄木与一』と代次の兄であるということ。
最終的には与一とともに『一方通行』を用いて戦い、命を落としたこと。
自身が本当であれば“無個性”だったということも充分に驚かされたが、それよりも後に与えられた情報の衝撃の方が圧倒的に上であった。
「さて、それでは本題なのだけれど。私…………じゃなくて、君の個性の名は『一方通行』。君が『ベクトル操作』と呼んでいた個性の正式な名称さ。一方通行は半端な知能の持ち主だと扱うどころか、宿した時点で廃人確定な“個性”なわけ。長年かけてようやく宿すに値する君が産まれた。でも、個性の発現事態にも条件があるのだよ。それは…………」
「…………何にも負けない強い意思」
「その通り。君は姉を守りたいという意思を示し、見事“個性”を発現させた」
『さすがに適合しすぎて、発現したてで相手を殺してしまうほどになるとは思わなかったけれどね』とやれやれと首を横に振る代次。
「そして、強い怒りによって黒い翼を発動させるに至った。でも、それだけでは私がこうして話せるほどじゃない。次のステップに進むための大事な要素だからね。純粋な何かへの愛情をキーに設定したつもりだったけど、それがまさか、二人に恋心を抱いた結果だとは…………私も予想外だったけどね」
「そ、それは…………」
すぐるは確かに、初めて恋心を自覚した。
弟のように思っていたはずだった焦凍の勇ましい姿に惹かれたが、もう一人恋心を抱いた
角取ポニー。
チャットアプリで出会い、意気投合した大親友。
春休みに一緒に遊ぶようになってから度々、
だが、すぐるが焦凍に向けた感情とポニーがすぐるに向けた感情が同じものだと気がついた時にはもう手遅れであった。
ずっと気づいてあげられなかったことが申し訳なくもあったが、今まで幾度も行われてきたアピールを思い返せば愛おしくて堪らなくなる。
クスクスと笑う代次に、すぐるはムッと頬を膨らませて睨んだ。
「むぅ~、何がおかしいの?」
「こいつは失敬。でも、その想いは大事にしておいてくれたまえよ。『一方通行』が完全に目覚めたとき、その想いが必ず必要になってくる。…………おっと、そろそろ時間かな」
代次の身体は徐々に消え始めており、時間が残り少ないことを嫌でも分からせてくる。
「ありがとね、代次」
「おや、恨み言をぶつけられる覚えはあれど、感謝の言葉をくれるとは予想外だ。これまたどうしてだい?」
「もし、私がこの“個性”を使えていなかったらお姉ちゃんを守るどころか殺されてたと思う。そしたら、外に出るようになってからの楽しいことにも出会えなかった。…………だから、ありがとう」
「もう大丈夫みたいだね。…………よし、それじゃあ行ってきなさい!」
爽快な笑顔を見せ、代次はおもいっきりすぐるの背中を押し出した。
すぐるの姿は消え、肩から上だけが残された代次のみ。
「随分と純白な翼だったね、あの子」
焦凍君の名言がここで登場
すぐるちゃんとうとう焦凍君を意識、ポニーちゃんについても例外ではなく…………
代次は完全なオリキャラです
容姿に関しては物語シリーズの臥煙伊豆湖を白髪にした感じを想像してください