私のヒーローアカデミア~ねじれちゃんの妹は最強?です~ 作:レイラレイラ
「すぅ…………はぁ…………」
精神統一を図るために私はスタートラインから少し離れたところに陣取って、お姉ちゃんが顔を拭くために使ったタオルを自分の顔に押しつけていた。
僅かに残ったお姉ちゃんの匂いや、使われた痕跡が私の心に安らぎを与えてくれる。
前にも言ったけど、私はお姉ちゃんが好きすぎるだけなの。
だからこれは愛ゆえの行動だと思ってほしいな。
精神統一もほどほどにして私は周囲に目線をやると、やっぱり皆同じように精神統一してたり準備体操してたりする。
相当の自信家であれば別かもだけど、やっぱり皆緊張してるんだね。
服装も動きやすいジャージとかがほとんどで、私みたいに中学の制服で来ている人は極少数みたい。
他の受験生の観察もほどほどにして私は意識を切り替える。
これが実戦を想定しているものだとしたら、そろそろ…………
『ハイスタートー!』
予測通り。
やっぱりカウントダウンなんて最初からやるわけないよね。
「せーのっ!」
足元のベクトルを操作して受験者達を飛び越し、そして一気に抜き去っていく。
さきほどまで大きく見えていたゲートがあっというまに小さくなっていって、自分でも驚いてる真っ最中。
私の個性は運動量・熱量・電気量みたいな、あらゆる種類の
こうして私に触れてるベクトルを操れば高速移動もできるし、そこらの小石とかもへたな銃器よりも凶悪なものになる。
『標的ほs…………』
「ほい」
移動中に現れた(たぶん)1p仮想敵をたまたま止めてあった車を蹴りあげて、敵と同等の質量を持った物体を弾丸みたいに撃ってぶつけたもんだからあっさりとペチャンコに。
道すがら仮想敵達を壊しつつ、倒していった仮想敵の数を計算する。
「えーっと、確か3pが三十五体と2pが二十一体に1pが四十四体だから…………」
ざっと計算すると191p。
始まって四分ならこんなもんかな。
「おい、どうなってんだ!」
「仮想敵が全然出ねぇぞ!!」
「あ…………」
後方で受験者達の悲痛な叫びを耳にして、思わず口元を押さえる。
音を反響させて仮想敵の位置を把握して手当たり次第壊してたもんだから、後ろにはちっとも残ってないんだ。
「皆ごめんね~」
私も必死だからね。
申し訳ないと思いつつも、移動しつつ仮想敵を処理していく。
スクラップと化した仮想敵を尻目に、私は最終目標の位置を目指してスピードを上げた。
最終目標…………もとい、ドッスン扱いされていた0p敵。
まだ私はそれに出くわしていない。
単純に索敵範囲外にいるだけならいいんだけど、もしも探知対策が施されてる敵だったら不意打ちを許すかもしれない。
有数ポイントの仮想敵を壊すのも面倒になってきた頃、体感時間で約五分ぐらい。
時間もギリギリになってきたところでようやく0p敵らしき存在が索敵範囲内に入ったみたいで、私は気合いを入れつつさらにスピードを上げた。
「おっきい…………」
やっと見つけた0p敵は見上げるほどに大きくて、思わず首が痛くなっちゃいそう。
たくさんあったビルは一息に破壊され、その迫力をひしひしと伝えてくる。
でも…………
「あの時の
地面をグッと持ち上げるイメージを脳内で描くと、隆起した地面が仮想敵を下から跳ね上げた。
その影響で地割れが起きて地面が大変なことになっていたけど、後処理は雄英がやってくれるよね。
手をおもいっきり振り上げて竜巻を発生させ、それを0p敵の胴体目掛けて放つ。
標的の胴体はそのまま竜巻によって貫かれて見事な風穴ができ、地面に自由落下を果たした結果として巨大な瓦礫の山になった。
『終了~!!!!』
私が仮想敵を倒したと同時に試験終了の号令が響く。
そんな中で私はあるひとつの仮説をたてていた。
0p一見で倒すメリットのない強大な敵。
試験の残り時間。
自分の身の安全。
そして、ヒーローとはどうあるべきか…………
「あっ! なるほどねー。お姉ちゃんはこんな面白い学校に通ってたんだ~」
私は試験の本質の推測に思い当たり、納得の気持ちと雄英に対する関心で一杯になった。
メリットなんて欠片もない、でもそういう事態でこそヒーローの素質が問われる。
こそが本当の意味での合格者であることに。
◆◆◆◆
──────一週間後。
ねじれお姉ちゃんそっくりの女の子を攻略(意味深)していると、どたばたと慌ただしく階段を上ってくる音が聞こえた。
足音からお姉ちゃんだとわかってるけど、取り敢えず気づいてない振りしとこ。
「スグ! あのね手紙、手紙がね! 来てたの!」
「お姉ちゃん、わかったから落ち着いて。ね?」
ノックもなしに飛び込んできたお姉ちゃんが持っていたのは、なんの変哲もない手紙。
お姉ちゃんは気を利かせてくれたのか、私に手紙を渡すとすぐに部屋を出ていった。
『キャーーーーーっ!!』
どったんばったんと階段を転げ落ちる音がしたけど、お姉ちゃん大丈夫かな?
本当なら今すぐにも駆けつけて、怪我をしてたら身体の隅々まで調べないといけない。
そしたら一度服を脱がせた方が処置しやすいし、これは合法だから…………合法だから…………
「はっ!」
いけないいけない。
ピンク色の妄想を振り払って、なんとか現実へと帰ってくる。
雄英高校からの手紙、やっぱり結果が出たんだね。
「合格してますよーに!」
まあ、あれだけポイントは稼いだから大丈夫だとは思うけど。
ビリっと便箋を破くと、小型の投影機が入ってた。
ボタンらしき突起を押して起動させると、空中にオールマイトの作画違いな顔が現れた。
『私が投影された!!』
普段からこんなテンションなのかなこの人、なんてぼんやりと考えているとオールマイトは続けて話し出した。
『何故私がいるのかって? それは他でもない雄英に勤めることになったからなんだ』
「まあそれ以外ないよね~」
『ええ何だい!? 巻きで!? すまない、後がつかえてるらしいから本題に入らせてくれ! 合格おめでとう波動少女!』
「よ、よかった~!」
『合格』という単語が聞こえた瞬間、無意識に張っていた力が抜けて背もたれに寄りかかる。
『筆記、実技とトップの成績で合格したのは素晴らしいことだが、他の受験生がポイントをほとんど取れなかったことは反省してくれ!』
「…………ごめんなさい」
やっぱりか~。
少し張り切りすぎちゃったからね、授業とかでは自重しないとダメかな。
『まあ、それはそれとして。ようこそ波動少女。
新しく始まる高校生活に期待と不安を覚えながら、私はお姉ちゃんに合格の報告をした。
すると、お姉ちゃんは自分のことのように泣いて喜んでくれた。
ご褒美に私の大好物のケーキとカレーを作ってくれた。
それも嬉しかったんだけど、やっぱり一番はお姉ちゃんが添い寝してくれたことかな。
もっともその夜は、お姉ちゃんと密着しているドキドキでちっとも眠れなかったけど。
最強さんの能力ですもの、チートなのは許してつかあさい