境界線に立つモノ   作:レン

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続いた。筆者、二人称初めて。
拙い、勘弁。


貴方を信じて待つ

「ドクター、朝です。起きてください」

 

少女の声で貴方は目を覚ます。体の節々が痛い。どうやら昨日執務を終えたあとそのまま眠ってしまったようだ。

 

「おはようございます、ドクター。忙しいのは分かりますが、ちゃんとベッドで寝てくださいね。睡眠の効率が下がってしまいますから」

 

徐々に目が機能を取り戻していく。眼前に映るは茶色のうさぎ耳。目線を少し下げるとアーミヤが腕を組み、右の人差し指を立てて話していた。貴方はひとまず謝罪と感謝の言葉を述べ、今日の予定はどうだったかを聞いた。

 

「今日ですか?今日は外に出向くような予定はありません。ただケルシー先生が、18:00以降に時間がある時に自室に来るように、と」

 

了解の意を伝え立ち上がり、固まった関節を伸ばす。パキパキと小気味よい音が執務室に響き渡り、それを聞いたアーミヤが若干微妙な表情を浮かべる。

 

「ではドクター、これが今日の分の書類です。よろしくお願いしますね」

 

ドンッという耳を疑うような重低音が後ろから鳴り貴方は思わず振り返る。聳え立つは書類の山。否、あれは最早地球の臍(エアーズロック)。到底1人の少女が持ち運べるはずのない体積の暴力が貴方の机で氾濫していた。アーミヤの足音が遠ざかっていく。貴方は現実から目を逸らし、嘗ての―記憶を失う前の―自分は一体何者なのだろうかと思考する。実は自分は分身するアーツが使えていたりしたのだろうか。はたまた腕のようなものを何本も生やし操作したりしていたのだろうか。だが悲しいかな、幾ら余所見をしても現実は変わることは無い。早く手をつけないとこの書類たちは貴方の睡眠時間を貪るだろう。それに、貴方はケルシーに呼ばれている。それまでにひと段落つけておかないとおちおち話し合いもできやしない。貴方は渋々机に積んであった書類の処理を開始した。

 


 

それから時は流れ、貴方はなんとか書類を終わらせることが出来た。現在時刻は20:00。ケルシーは18:00以降に時間のある時と言っていたのでまだ許容範囲内だろう。恥も外聞もかなぐり捨ててたまたま非番で暇していたアンセルに補助を頼み込んだ甲斐があった。ものすごく嫌そうな顔をしていたが、今度夜しかやっていない美味しい屋台につれて行くという旨を伝えると一転して意気揚々と手伝ってくれた。チョロい。

ともあれ、貴方はケルシーの部屋に向かう。わざわざ自室に呼ぶくらいなのだから余程重要な話なのだろう。もしかしたら次の作戦についてかもしれない。気合いを引き締め直し、貴方はケルシーの部屋の扉をノックする。

 

「ああ、ドクターか。鍵は開けてある。入るといい。」

 

指示に従い扉を開けるとケルシーは何やら書類を纏めていたようだ。誰かのプロフィールだろうか?気になった貴方はケルシーに問いかける。

 

「ああ。なかなかに便利なアーツを持つ奴だ。今後、作戦等で役に立つだろう。」

 

そう言ってケルシーは紙の束を手渡してきた。ざっと数枚見通す。

プロフィール『オンライン』

アーツは思念伝達。彼女を通じて情報の双方向のやり取りが可能で、その際特別な機器は必要なく、彼女と直接面識があれば良い、と。

つまり彼女が居れば通信途絶とは縁のない活動ができるということだ。なるほど、確かに役に立つだろう。だが、肝心な彼女はどこにいるのだろうか。貴方はそうケルシーに質問する。

 

「知らん」

 

知らん。

 

「私も知らされていない。彼女曰く、『見つけて欲しい』だそうだ。それと、探すのは明日だ。彼女にもその旨は伝えてある。それまでにちゃんと資料に目を通しておくことだ。」

 

了解と伝え、貴方は外へと足を向ける。扉へたどり着いた時、貴方はケルシーに呼び止められ、振り返る。

 

「その資料には一部権限記録が含まれている。他の誰にも見せないように。それと……その。彼女を頼んだ」

 

ケルシーらしからぬ弱々しい口調に貴方は少し驚く。だが直ぐに持ち直し答える。

 

―任せろ

 


 

翌朝。貴方は誰に起こされる訳でもなく、自然に目が覚める。今日は珍しく1日非番の日だ。時刻は05:14。もう少し眠っていても良かったが、昨日読んだオンラインのプロフィールが安眠を遮ったのだ。この時間帯は朝が早い人がチラホラと動き始める頃。まだ活気は少なく静かなロドスだ。手早く朝食を終え、支度を済ませる。いつも通りの服装になった後、今日の指針を立てる。オンラインを探すと言っても貴方は彼女について何も知らない。まだ目覚めてそう日にちが経っていないこともあって1目見た事もない。闇雲に探しても見つからないだろう。彼女のことをよく知る人物にいつもどの辺に居るのかを聞いた方が良い。そのような事を考えながら扉を開けると貴方の足元に紫色のアネモネが1輪落ちていることに気がついた。おそらくこれはオンラインが置いたものだろう。であれば、その信頼に答えなくてはならない。

さて……

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