鬼滅の恋姫   作:レイファルクス

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第拾肆話

 

 

ここは吉原遊郭にある『ときと屋』の一室。そこには綺麗な服を着ている炭華と禰豆子の竈門姉妹がいた。

 

 

「あれ?何か聞こえた?」

 

 

禰豆子が耳に手を当てて音を拾おうとする。

 

 

「きっと一刀さんがあの『筋肉馬鹿』を制裁したんだよ!」

 

 

炭華は一刀が天元に制裁を与えたんだと言った。

 

 

「!?それじゃ、お姉ちゃんの手紙が届いたんだ!」

 

 

炭華が書いた手紙とは、平仮名で綴られた一刀宛ての手紙である。炭華と禰豆子はそれぞれの任務が無い日などは、一刀に勉学を教えてもらって(自分たちから志願)おり、平仮名の他にも漢字や片仮名、英語のアルファベットまでも教わっていた。

 

 

「それじゃ今頃…」

 

 

「私たちを売った"報い"を受けているんだよ!」

 

 

「「イエーイ!」」パチンッ

 

 

二人は一刀に教わった『ハイタッチ』をして、喜びを分かち合った。因みに天元の悲鳴は善逸にも聞こえており、『筋肉柱、ザマァ』と笑っていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

天元の悲鳴が響いてから数日後、この日は定期連絡のため集まる日であり、家屋の屋根の上には炭華と禰豆子、伊之助がいた。伊之助は自分が潜入していた荻本屋(おぎもとや)に鬼がいると言っているが、炭華と禰豆子は半信半疑の表情をしていた。そして『善逸が来るのを待とう』と言った瞬間

 

 

「善逸は来ない」

 

 

音も無く天元が現れた。しかも一刀の脳天締め(アイアンクロー)を受けた跡がくっきりと残っていた。

 

 

「善逸は昨夜から連絡が途絶えて行方知れずだ。俺は嫁を助けるために幾つもの判断を間違えた。先刻応援を頼んだから直に増援が来る。階級の低いお前たちは遊郭から出ろ。いいか?機会を見誤るな。生きている奴が勝ちなんだ」

 

 

天元はそれだけ言って姿を消した。炭華と禰豆子は自分が"一番下の階級"だからと落ち込んでいたが、伊之助が『俺たちの階級は下から四番目の"庚"だぞ?』と言って実際に藤花彫りで付けられた階級を見せた。

 

 

その後炭華と禰豆子、伊之助の三人はそれぞれの潜入先を調べた後、荻本屋で合流することになった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

炭華と禰豆子は隊服に着替え、ときと屋で世話になった鯉夏花魁の下を訪れた。そして幾度か話をした後、二人は頭を下げて部屋を出た。しかし、その部屋に鯉夏花魁を狙っていた上弦の鬼が現れ、彼女を襲った。

 

 

その鬼には左目に"上弦"、右目に"伍"の文字が刻まれていた。

 

 

ときと屋に鬼が現れたことを炭華は匂いで、禰豆子は直感で感じ取り、ときと屋へ引き返す。そして二人が目にした光景は、女の鬼が鯉夏花魁を『帯に取り込んでいる』所だった。

 

 

炭華は上弦の伍『堕姫(だき)』に鯉夏を放すよう叫ぶと、堕姫はそれに怒り、帯で炭華を吹き飛ばす。吹き飛ばされた炭華は家屋に激突しながらも受け身を取り重症を免れた。

 

 

堕姫は追撃のために炭華に襲い掛かる。炭華は堕姫を追いかけた禰豆子と一緒に『水の呼吸 肆ノ型 打ち潮・乱』を繰り出し、帯を斬り鯉夏を救出する。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

その頃荻本屋の伊之助は炭華たちを待っていたが待ちきれず、天井に頭を突っ込み鼠を呼ぶ。すると天元と"同じ装飾"を着けたムキムキの鼠が二匹伊之助の刀を持って現れた。伊之助はムキムキ鼠から刀を受け取り、"いつもの格好"になると、荻本屋の壁や床を破壊しまくった。そして通路の行き止まりの床下から穴がぽっかりと顔を覗かせた。

 

 

伊之助はその穴に入ろうとするも、"頭しか"入らなかった。だが伊之助は腕の関節を"全て外して"再び穴へと突撃した。すると今度はすんなりと穴に入り、そのまま蛇のような動きで穴の奥へと進み、そしてとある空洞に辿り着いた。

 

 

その空洞には帯が掛かっており、その帯の中には人が入っていた。その中には天元の妻である須磨とまきをの姿もあった。伊之助は腕の関節を戻しながら見渡すと、帯の一つに善逸の姿を見つけた。『何してんだ、こいつ…?』と伊之助が呆れながら言うと、何処からともなく声が聞こえたので振り返ると、そこには先端に目と口が付いた蚯蚓帯がいた。

 

 

蚯蚓帯は伊之助に攻撃を仕掛けるが、伊之助は攻撃を避けながら取り込まれていた人たちを救出する。蚯蚓帯は再び人を吸収しようとすると、助け出された須磨とまきをがクナイを投げて帯を固定する。そしてムキムキ鼠から刀を受け取った善逸がすかさず帯を切り刻む。

 

 

その直後、空洞の天井が崩壊しそこから善逸が潜入していた京極屋の旦那から、雛鶴の居場所を聞き救出した天元が姿を現す。そして天元は帯を更に切り刻んだ。

 

 

しかし蚯蚓帯は天元が開けた穴から逃げ出し、天元たちも後を追った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

蚯蚓帯は炭華と禰豆子が戦っていた堕姫に入り込む。実はこの蚯蚓帯は堕姫の"分裂した一部"だったのだ。分裂していた一部を取り込んだ堕姫は"本来の姿"となったが、ここで運悪く外の騒がしさにクレームを言おうと人々が出始めた。堕姫はその人たちを殺そうと帯を振るう。しかし炭華と禰豆子が間に割り込み人々は重傷を負うが奇跡的にも死者は出なかった。

 

 

だが炭華と禰豆子は人を庇った性で堕姫の帯に斬られ、重傷を負ってしまった。そして堕姫は取り込んだ蚯蚓帯から得た情報を頼りに柱のいる方へ行こうとすると"誰か"に足を掴まれた。堕姫は振り返ると自分の足を掴んでいたのは一刀だった。

 

 

一刀は堕姫の頚目掛けて刀を振るう。しかし堕姫は自分の足を"引き千切り"難を逃れる。そして引き千切った足を再生させ一刀を一瞥する。

 

 

「お前は命を何だと思っている?人間はお前たち鬼とは違い、手足などを失ったら再生しない。何故それが分からない?何故命を踏みつけにする?」

 

 

一刀は怒りに染まった目で堕姫を睨む。すると堕姫は瓦を拳で殴り砕くと

 

 

「ごちゃごちゃ五月蝿いわよ!"命を何だと思っている?"だから何?鬼になればね、老いないし、食うための金も必要無い。病気になって死ぬことも無い。そして強く美しい鬼は、何をしても許されるのよ!」

 

 

堕姫がそこまで言った瞬間、一刀は堕姫を地面に向けて蹴落とした。堕姫は地面に激突するが、瞬時に自分が巻き上げた土埃から脱出する。

 

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

 

一刀のやり取りを見ていた炭華の側に禰豆子が苦しそうに体を引き摺って近寄る。

 

 

「"強く美しい鬼は何をしても許される"?ハンッ、馬鹿を言え。貴様は美しくない。寧ろ醜い分類だ」

 

 

一刀は屋根から飛び降り、堕姫を鼻で笑いながら炭華たちの側に降り立つ。

 

 

「貴様は自分の顔を鏡で見たことがあるか?随分と醜い顔をしているぜ?それに美しいのはお前じゃ無くてそこにいる禰豆子の方が美しい」

 

 

一刀は後ろにいる禰豆子に向かって親指で指差す。禰豆子は一刀に言われ顔を赤くしていた。

 

 

「彼女はお前と同じ鬼だが、人を一度も喰ってはいない。寧ろ人を守ろうとしている。その姿は正に"女神"と言っても過言ではない。それに引き換え、貴様はどうだ?命を何とも思わず、人を食糧としか見ず、挙げ句の果てに命を粗末にしている。貴様は美人では無く、"醜女"だ」

 

 

一刀は堕姫に刀を向ける。

 

 

「俺は貴様のような醜女鬼は嫌いだ、反吐が出る。覚悟しろ、今から貴様を滅する」

 

 

「やれるものならやってみなさいよ!」

 

 

『血鬼術 八重帯斬り』

 

 

堕姫は自分に向かって来る一刀に帯を差し向ける。

 

 

『全集中 空の呼吸 伍ノ型 荒鷲』

 

 

しかし一刀は伍ノ型を使い帯を斬る。その刀は柄を強く握り締めていたのか、若干赫色になっていた。

 

 

「(馬鹿な!?帯が斬られた!それに斬られた所が焼けるように痛い!しかも再生ができない!何なの?コイツは一体何なの!?)」

 

 

堕姫は動揺しながら帯を振るうが、悉く一刀に斬られる。そして一刀の刀が堕姫の頚を捉えた。しかし堕姫は頚を帯状にし威力を拡散させ斬れなくした。

 

 

一刀は堕姫から瞬時に離れ、目を瞑り深呼吸を一つする。そして目を見開くと、まだ怒りの色に染まってはいるが、若干落ち着いてはいた。

 

 

「貴様の"異能"は帯…か。その体から生えている帯で斬るだけでは無く、自分の体も帯状に出来るのか。…厄介だな」

 

 

一刀は後頭部を掻きながら愚痴を溢す。

 

 

「今度は斬らせたりなんかしないわよ?私の頚に刃を当てたなんて、そんな"偶然"、二度も有りはしないわよ!」

 

 

堕姫は帯を一刀に向けて放つ。しかし一刀は帯を今度は細切れにする。更には

 

 

「一刀さん、助太刀します!『血鬼術 爆血』!」

 

 

堕姫がいた所は丁度禰豆子の血が流れていた場所であり、禰豆子は自分の血鬼術である爆血を使いその上にいた堕姫を燃やす。一刀は禰豆子の血が流れている場所まで誘導していたのだ。

 

 

「禰豆子、感謝する!」

 

 

『全集中 空の呼吸 拾ノ型 鳳凰天舞』

 

 

そこに一刀が追い討ちを掛けるように拾ノ型を繰り出す。そこに

 

 

「おいおい、随分と派手にやってんなこりゃ」

 

 

蚯蚓帯を追いかけていた天元が姿を現した。

 

 

「「宇随さん!」」

 

 

突然現れた天元に炭華と禰豆子は驚く。

 

 

「あの、一刀さんの助太刀に行かなくてもいいんですか?」

 

 

炭華は禰豆子に手を貸してもらいながら立ち上がり、天元に質問をする。

 

 

「そこん所は派手に大丈夫だ。ついさっき、"あの鬼の頚を斬った"からな」

 

 

天元は堕姫を指差すと、戦っている堕姫の頚が落ちた。これには一刀はもちろん、斬られた堕姫自身も驚いていた。

 

 

「天元さん、頚を斬ったなら早く言って下さい。危うく空振りする所だったじゃないですか」

 

 

堕姫から離れた一刀は天元に愚痴る。

 

 

「悪ぃ悪ぃ。でも、そのお陰で手間を掛けずに済んだじゃねぇか?」

 

 

天元は一刀の頭を軽く叩きながらゲラゲラと笑う。

 

 

「アンタたち…、よくも私の頚を斬ったわね…!」

 

 

すると堕姫の声がしたので振り返ると、自分の頚を抱えた堕姫が地面に座り込んでいた。堕姫の顔、特に右半分は禰豆子の爆血で燃やされ爛れていた。

 

 

「絶対…、ぜったい…、ゆるさないんだからぁ~!(泣)」

 

 

堕姫はギャンギャン泣き出す。天元、炭華、禰豆子の三人は泣き出した堕姫にドン引きしたが、一刀だけは堕姫に違和感を感じていた。

 

 

「……妙だな」

 

 

「何が妙なんですか?」

 

 

一刀の呟きにいち早く反応した禰豆子が一刀に質問をする。

 

 

「あの醜女鬼は頚を日輪刀で斬られているのに、未だに崩壊していない…」

 

 

「「「!?!?!?」」」

 

 

一刀の言葉に三人はハッとなり堕姫の方を見る。確かに堕姫はギャンギャン泣いてはいるが、崩壊の兆しすら見えなかった。

 

 

「斬られたぁ、頚斬られたぁ~!お兄ちゃん、お兄ちゃ~ん!」

 

 

「ううぅ~ん」ズズズ

 

 

堕姫が『お兄ちゃん』と叫ぶと、堕姫の体、特に背中から痩せこけた男の鬼が現れた。天元はすかさず二体の鬼の頚を斬ろうとする。だが天元の攻撃は空振りに終わり、そこから少し離れた所に鬼たちはいた。

 

 

「全く、泣いたってしょうがないだろぅ?頚くらい自分でくっ付けろよなぁ。顔は火傷かぁ?顔は大事にしろよなぁ、折角綺麗な顔に生まれたんだからなぁ」

 

 

男の鬼は堕姫の頚をくっ付けながら火傷を拭う。すると爛れていた顔が元に戻った。

 

 

「お前らかぁ?俺の妹を虐めた奴はぁ?」

 

 

男の鬼は両手に鎌を生成しながら振り返る。

 

 

「お兄ちゃん、アイツらだよ!アタシを虐めた奴らは!」

 

 

堕姫は泣きながら一刀たちを指差す。

 

 

「そうかぁ、なら俺は取り立てるぜぇ。やられた分は必ず取り立てる」

 

 

「死ぬときグルグル巡らせろ、俺の名は妓夫太郎(ぎゅうたろう)だからなぁ!」

 

 

『血鬼術 飛び血鎌』

 

 

男の鬼『妓夫太郎』は両手の鎌から無数の"血色の斬擊"を繰り出す。

 

 

『全集中 空の呼吸 陸ノ型 白鳥ノ舞』

 

 

一刀は炭華と禰豆子を両脇に抱え陸ノ型を使い回避する。天元も一刀たちとは反対方向に避ける。

 

 

「逃がさねぇぜ。『曲がれ、飛び血鎌』」

 

 

すると血色の斬擊は方向を変え、全て"一刀たち"の方へ向かって来た。一人の天元を狙うより、『炭華と禰豆子』と言う"荷物"を持った一刀の方が狙いやすいと判断したようだ。

 

 

「一刀!」

 

 

そこに天元が割り込み自分の刀で斬擊を斬った。

 

 

「天元さん、助かりました!」

 

 

「礼なんて地味に後回しだ。今はアイツらを倒すぞ!」

 

 

「了解です!炭華、禰豆子。もう大丈夫か?」

 

 

「「はい!」」

 

 

二人の返事を聞いた一刀は二人を降ろし、刀を構える。炭華と禰豆子も一刀に習い抜刀する。

 

 

「さぁ、ド派手に鬼を倒すぜぇ!」

 

 

「「「了解!」」」

 

 

天元たちは堕姫&妓夫太郎兄妹鬼に睨みを効かす。

 

 

「やれるものならやってみなぁ、俺たちは『二人で一つ』だからなぁ」

 

 

堕姫は妓夫太郎の肩に乗り、妓夫太郎は両手の鎌を天元たちに向ける。その空気は正に『一触即発』だった。

 

 

 

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