「う…、く……」
「「一刀さん!」」
妓夫太郎の最後の抵抗である『円斬旋回・飛び血鎌』を喰らった一刀は気を失っていた。そして数十分後、呻き声を上げ覚醒した。
「ここは…」
体を起こそうとする一刀を顔を覗いていた炭華と禰豆子がやんわりと抑えた。
「一刀さん、まだ無理しないで下さい」
「一刀さんは紅蓮朱雀の代償もあって起き上がれる程体力が残っていないんですよ」
二人は一刀に自身の状態を伝える。
「そうだったのか…、ありがとう二人とも。こんなにも柔らかい枕まで用意してくれて…」
「実は、一刀さんが乗せている枕は私の膝ですよ」
一刀の頭を乗せている枕は何と、"禰豆子の膝枕"だった。
「ウェイ!?」ガバッ
一刀は頭を乗せている枕が禰豆子の膝枕だと分かると、オンドゥル語を口にしながら飛び起き上がる。怪我をしている者がいきなり激しい運動をすると、傷口が開く恐れがある。無論一刀も例外では無く、起き上がった瞬間に体中が痛み、再び禰豆子の膝枕に倒れた。
「私の膝枕…、そんなに嫌でしたか…?」
禰豆子が一刀の顔を覗きながら涙目で訴える。
「嫌では無いが…、余りにも衝撃的な事実だったから、びっくりしただけだ。膝を貸してくれてありがとう」
一刀が禰豆子を労うと、禰豆子はにっこり笑って一刀の頭をゆっくり撫でた。
…
……
………
一刀が禰豆子の膝枕を借りてから数分後、漸く立ち上がれるまでに回復した一刀は起き上がった。
「……随分とまぁ、手酷くやられたなぁ…」
一刀が周囲を見渡すと、そこには倒壊した遊郭の家屋が散乱していた。これは妓夫太郎の"最後の攻撃"によるものだった。
「炭華ちゃ~ん、禰豆子ちゃ~ん…」
すると何処からか声が聞こえた。三人は聞き耳を立てる。
「炭華ちゃ~ん、禰豆子ちゃ~ん」
今度ははっきり聞こえ、声がした方へ向かう。すると瓦礫に足を挟まれた善逸がいた。
「「我妻君!」」
「我妻、良く無事だったなぁ…」
「無事じゃ無いですよ?!起きたら体中痛いし、両足も骨が折れてるし、一体何がどうなっているんですか~!?」
「いや、そんだけ騒げたら大丈夫だろ…」
一刀たちは善逸が無事であることに安堵するが、騒いでいる姿を見て何故か少しがっかりしていた。
「それよりも、伊之助がヤバいよぉ~!心臓の音が段々小さくなっているんだよぉ~」
善逸が指を指した場所に伊之助が横たわっていた。一刀は直ぐ様近づき胸に手を当てる。
トクン…、トクン…、トクン…
善逸が言った通り、伊之助の心音が徐々に小さくなっていた。
「私に任せて下さい!『血鬼術 爆血』!」
すると禰豆子が自分の血鬼術を使い伊之助の体を燃やす。すると伊之助の爛れていた体が徐々に治っていき
「腹減った!何か食わせろ!」
伊之助が覚醒した。一刀は驚いていると
「お忘れですか?これは『無限列車』の時と"同じ"ですよ?」
禰豆子に言われ、一刀は思い出したのか、手を軽く叩く。
「そうか!禰豆子の血鬼術は『鬼に対してのみ』効果を発揮するんだ!」
「その通りです。後、一刀さんも嘴平君同様、毒が回っていましたので燃やしておきました」
禰豆子は笑いながら一刀に言う。
「ありがとう禰豆子」ナデナデ
「はにゃ~ん❤️」
一刀が禰豆子の頭を撫でると、禰豆子は顔を蕩けさせた。
…
……
………
「いやぁ~!天元様、死なないで下さい~!」
天元の妻の一人である須磨が天元に向かって泣き叫んでいた。
「最後に言い残すことがある…。俺は今までの人生「天元様死なせたらあたしもう神様に手を合わせません!」…」
天元が何かを言おうとするが、それを須磨が遮る。それにキレたまきをが須磨を黙らせようと石を掴み須磨の口に入れる。それを雛鶴が止めようとする。天元は呆然としていると
「宇随さん、お待たせしました!今から『鬼の毒』を焼き飛ばします!『血鬼術 爆血』!」
ボウッ
駆けつけた禰豆子が爆血で天元を燃やす。
「きゃああぁぁ!?何をしているんですかあなたは!?天元様はまだ生きているのに火葬なんて酷すぎますよ!?お姉さんは怒りました!お尻ペンペンします!」
禰豆子が天元を燃やす所"しか"見ていなかった須磨が禰豆子のお尻を叩こうと手を上げる。
「ちょっと待て。こりゃ一体どういうことだ?俺の体から毒が派手になくなった」
すると天元が不思議そうに毒が消えたことを言った。それを聞いた雛鶴たちは泣きながら天元に抱きついた。
「私の血鬼術は『鬼に対してのみ』効果を発揮します。なので宇随さんの体にあった毒"だけ"を燃やしたんです」
禰豆子は胸を張りながら説明をする。
「そんなことあり得るのかよ…?地味に混乱するぜ…」
「まぁ誰しも最初は納得しませんよ。現に俺だって疑いましたから。それに言うでしょ?『百聞は一見にしかず』と」
そこに炭華におんぶされている一刀が現れた。
「随分とやられましたね」
「そう言うお前だって最後の攻撃を派手に喰らっていたじゃねぇか。毒は大丈夫なのか?」
「えぇ、禰豆子のおかげで綺麗さっぱり無くなりました。でもまだふらつきますね。炭華、ここで下ろしてくれ」
一刀は炭華にお願いして下ろして貰い、腰を落ち着けた。
「一刀さん、私たちは鬼の頚を探しに行きます。確認するまでは安心できませんので」
炭華と禰豆子は一礼をしてその場を去った。
…
……
………
その後炭華と禰豆子が一刀たちの所へ戻ると、そこには"先客"がいた。
「ふぅんそうかふぅん。伍ね下から二番目だ上弦の。伍とはいえ上弦を倒したわけだ、実にめでたいことだな。伍だがな。褒めてやってもいい」ネチネチ
その先客とは、応援に来た『蛇柱・伊黒小芭内』だった。小芭内は天元たちを見下しながらネチネチ言っていた。
「左目と左手を失ってどうするつもりだ?
小芭内なネチネチと天元に質問をする。
「悪いが俺は"柱を引退"する。流石にもう柱として戦えねぇ。お館様も許して下さるだろう」
何と天元は"柱を引退する"と言ったのだ。
「ふざけるな俺は許さない。ただでさえ若手が育たず死んでいるんだ。柱は煉獄が抜けた後そこの北郷が柱になったが、お前が抜けたら空席が出る。お前程度でもいないよりはマシだ、死ぬまで戦え」ネチネチ
だが小芭内はそれを許さず戦えと言う。
「お言葉ですが、若手は育っていますよ?」
そこに一刀が口を挟む。
「あぁ一刀の言う通りだ。育ってるぜ?"お前の大嫌いな若手"がな」
天元も一刀の口に乗っかる形で言った。そして小芭内は"それだけ"で"誰のこと"か分かってしまった。
「…まさか、生き残ったのか?この戦いで。竈門炭華と竈門禰豆子が」
「「はい、生き残りました」」
「!?」バッ
小芭内は声がした後ろの方を振り向くと、そこには炭華と禰豆子がいた。因みに一刀と天元は"見えていた"のだが、小芭内と彼の首に巻き付いている相棒の
「お帰り、二人とも。鬼はどうなっていた?」
「上弦の伍は完全に崩壊しました」
「私とお姉ちゃんが確かに確認しました」
一刀の質問に二人は答えた。
「そうか、ご苦労様。頭撫でてあげるからこっちにおいで」
「「は~い❤️」」
一刀に言われ二人は一刀の側まで向かう。そして一刀が二人の頭を優しく撫でると
「「はにゃ~ん❤️」」
幸せそうな表情で蕩けてしまった。
…
……
………
ここは人喰い鬼の始祖『鬼舞辻無惨』の根城である『無限城』。そこに"虹色な瞳"に"上弦"、"弐"と刻まれている『上弦の弐・童磨』が現れた。
「ヒョヒョヒョ、これはこれは童磨殿。お久しぶりですなぁ、かれこれ九十年ぶりですかな?」
すると"壺"から現れたのは小さい無数の手と、魚のヒレのような耳、そして"目"がある所に"口"があり、"口"がある所と額に"目" がある異形の鬼『上弦の肆・玉壺』だった。
「やぁ玉壺、久しぶり!お前がくれた壺、女性の生首を生けて俺の部屋に飾ってあるよ~!」
童磨は"笑いながら"玉壺に話す。
「怖ろしい怖ろしい。暫く会わぬ内に玉壺は数も数えられなくなっておる。呼ばれたのは百十三年振りじゃ。割り切れぬ数字…、不吉な丁、奇数!怖ろしい怖ろしい…」
その近くには頭の
「あれは首を生ける物では無い…、だがそれもまたいい」
童磨の『壺の間違った使い方』をされて玉壺は少し引いていた。
「鳴女殿、『黒死牟』殿はもうお見えかな?」
童磨は自分たちを呼んだ琵琶を持った女の鬼『鳴女』に質問をする。
「『上弦の壱』様は最初にお呼びしました。ずっとそこの座敷にいらっしゃいますよ」
鳴女が言った場所に童磨が目を向けると、そこには座敷に座っている侍の鬼『上弦の壱・黒死牟』がいた。
「私は…ここにいる……、無惨様が…御見えだ…」
すると童磨たちの頭上、天井の所に無惨が"逆さま"の状態で薬を調合していた。
「妓夫太郎が死んだ。上弦の月がまた欠けた」
「誠に御座いますか!それは申し訳ありませぬ!妓夫太郎は俺が紹介した者故…、どのように御詫び致しましょう?目玉をほじくり出しましょうか?それとも…」
「貴様の目玉など必要無い。妓夫太郎は負けると思っていた。案の定堕姫が足手纏いだった」
童磨の言葉を無惨は一蹴した。
「始めから妓夫太郎が戦っていれば…いや、もうどうでもいい。私はもうお前たちに期待しない」
「産屋敷一族を未だに葬っていない。"青い彼岸花"も見つけていない。私は…貴様らの存在理由がわからなくなってきた」
無惨は怒りを露にする。その怒りに黒死牟、童磨、半天狗はうちひしがれる。
「無惨様!私は違います!貴方様の望みに一歩近づくための情報を私は掴みました!ほんの今しがた……」
そこで玉壺の言葉が切れる。その理由は
「私が嫌いなものは"変化"だ。状況の変化、肉体の変化、感情の変化。
無惨が玉壺の頚を持っていたからだった。
「私が好きなものは"不変"。完璧な状態で永遠に変わらないこと」
「百十三年振りに上弦を、それもこの半年の内に"二体"も殺されて私は不快の絶頂だ。
無惨は掴んでいた玉壺の頚を無造作に放り投げた。
「私は"上弦だから"という理由でお前たちを甘やかしすぎたようだ。これからは死に物狂いでやった方がいい。玉壺、
無惨はそこまで言うと、鳴女の血鬼術で姿を消した。
「鳴女殿、私と半天狗を同じ場所へ飛ばして下され!」
鳴女は玉壺に言われた通り、半天狗と玉壺を同じ場所に飛ばした。
「童磨よ…、私も居ぬ……。鳴女よ…頼む……」
鳴女は黒死牟を飛ばし、無限城に残ったのは童磨と鳴女だけとなった。
「お~い鳴女殿!もし良かったらこの後俺と「お断りします」…」
童磨は鳴女をデートに誘おうとした時に童磨の心情を察した鳴女は即座に断り、童磨を飛ばした。
「失礼します。教祖様、信者の方がお見えです」
「ああ本当かい?待たせてすまないね。じゃあちょっとこれかぶってから。どうぞどうぞ、入って貰っておくれ」
童磨は懐に入れていた帽子を被って信者の入室を促した。