鬼滅の恋姫   作:レイファルクス

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第拾捌話

 

 

イーグルの案内の下、一刀は刀鍛冶の里へ急いでいた。その理由は自分の担当刀鍛冶である鉄穴森からの手紙であった。

 

 

内容は『一刀の刀の修復が終わったので、受け取りに来てほしい』と言う内容だった。

 

 

しかし通常では急ぐ必要は無い。だが一刀は急いでいた。何故なら、手紙を読んだ瞬間、何か言葉に出来ないような気持ちが沸いたからだった。

 

 

まるで『刀鍛冶の里が鬼に襲われる』かも…と。

 

 

「(俺の取り越し苦労ならいいけど、拭いようの無いこの気持ち…。何かあるのか?)」

 

 

一刀は走るスピードを速め、刀鍛冶の里に向かった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「これは…!俺の嫌な予感が当たっちまったか…!」

 

 

一刀が見た光景は、刀鍛冶の里が金魚のような怪物に襲われている光景だった。

 

 

「皆を守らないと!『全集中 空の呼吸 参ノ型 隼一閃』!」

 

 

一刀は念のために持っていた刀で怪物たちの頚を斬る。しかし怪物たちは切断箇所から"頚を再生"させ、標的を一刀に定めた。

 

 

「んなっ!?こいつら頚を斬っても崩壊しねぇ!?鬼じゃねぇのか!?」

 

 

一刀は怪物の『ひっかく』攻撃や『かみつく』攻撃を避けながら怪物の倒し方を模索する。しかし刀鍛冶の里まで休み無しで、しかも全力疾走をした一刀の体は既に限界を迎えており、避けて着地した瞬間、足が縺れて転倒してしまった。

 

 

ガクッ「しまっ…!?」ドサッ

 

 

一刀は起き上がろうとするが、手足に力が入らず、起き上がれなかった。そして怪物の爪がうつ伏せになっている一刀の背中を引っ掻こうとして一刀が目を瞑った時

 

 

『恋の呼吸 壱ノ型 初恋のわななき』

 

 

ズバッ

 

 

怪物は突如斬り刻まれ、崩壊した。一刀は未だに来ない痛みに不審を感じ、恐る恐る目を開ける。

 

 

「一刀君、大丈夫!?」

 

 

一刀の視界に入ったのは、『恋柱・甘露寺蜜璃』だった。

 

 

「か…、甘露寺…さん」

 

 

一刀はお礼を言うために起き上がろうとするが

 

 

「一刀君、動かないで!イーグルさんから事情は聞いたわ。貴方の体は休憩無しの全力疾走で悲鳴を上げているわよ?暫くはここで休んでいてちょうだい。里の人たちは私が守るから」

 

 

蜜璃はそう言って襲撃を受けている所へ向かった。一刀はうつ伏せの状態から仰向けの状態になると、天を仰いだ。

 

 

「俺…、何やってんだろうな…」

 

 

一刀は今、自分の無力さに嘆いていた。

 

 

「無理も無い。お前は今まで休み無しで走り続けたのだからな」

 

 

すると側にイーグルが降り、一刀を励ました。

 

 

「今お前がすべきことは、"鬼を狩る"ことでも"刀を受け取る"ことでも無い。"体を休める"ことだ」

 

 

イーグルはそう言って一刀の側から飛び立った。

 

 

「イーグル…、ありがとう」

 

 

一刀は相棒に礼を言いながら体を休めた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

それから約二時間後、一刀の体から疲れが殆ど抜け、鬼狩りに支障が出ない程にまで回復した一刀は里を蜜璃に任せて鬼の気配がする方へ向かっていた。

 

 

「(鬼の気配を"複数感じる"。一番近いのは…)こっちか!」

 

 

一刀は鬼の気配を察知し、その場所へ向かう。そして到着した場所は一軒の小屋だった。だが、"何かがおかしい"。そう、"巨大な水の鉢"に『霞柱 時透無一郎』が逆さまに閉じ込められていたのだった。

 

 

『全集中 空の呼吸 弐ノ型 鷹爪』

 

 

一刀は抜刀し、無一郎を傷付けないようにしながら四連続の突きを鉢に打ち込む。すると鉢は割れ無一郎は無事救出された。

 

 

「ゴホッ、ゴホッ、ガハッ」

 

 

肺に水が入ったのか、無一郎はその場に踞り咳き込む。一刀は納刀しながら無一郎に近づき、背中を擦る。

 

 

「大丈夫か?無一郎」

 

 

「ありがとう。大丈夫です、"北郷さん"」

 

 

無一郎は顔や体に刺さっている針を抜きながら一刀に礼を言う。

 

 

「俺のことは"一刀"でいい。同じ"柱"で"同期"だろう?」ナデナデ

 

 

一刀は無一郎の頭を無意識に撫でる。すると無一郎は少しだけ頬を染めた。

 

 

だがそこに鰭が刃物になっている金魚の怪物が襲い掛かる。

 

 

『全集中 空の呼吸 伍ノ型 荒鷲』

 

 

けれどその怪物は一刀の手によってバラバラにされた。

 

 

そして一刀は無一郎と共に小屋に入る。するとそこには、血塗れになりながらも刀を研いでいる男と壺から出ている異形の鬼・玉壺がいた。

 

 

無一郎はその鬼の頚に向かって刀を振るう。しかし玉壺は無一郎たちの存在に気付き、刀から逃れる。

 

 

「ヒョヒョ、私の『水獄鉢』から出られるとは、流石は柱と言うべきか。ヒョ?そちらの方は初めて見る顔ですな、では自己紹介をば。私は『十二鬼月 上弦の肆・玉壺』と申します。以後お見知り置きを」

 

 

「俺は貴様のような『魚と油が腐敗し混ざり合った匂い』がする鬼とは仲良くはしない。大人しくその頚を差し出せ」チャキッ

 

 

玉壺の自己紹介を一蹴した一刀は切っ先を向ける。

 

 

「折角の人の行為を無下にするとは…、美に欠けますなぁ」

 

 

玉壺は『やれやれ』といった感じで頚を横に振る。

 

 

「貴様のような醜い鬼が"人"を語るな」

 

 

「そうだよ。分かったならさっさと斬られてくんない?」

 

 

「…貴方がたはつくづく私の神経を逆撫でしますねぇ…」

 

 

二人の態度に玉壺は青筋を浮かべながら『プルプル』と震えていた。

 

 

「そこまで言うなら、私の力見せて差し上げましょう!」

 

 

『蛸壺地獄』

 

 

玉壺が一刀たちに壺を向けると、そこから蛸の足か幾つも生え、一刀たちをも飲み込み、小屋が破壊された。小屋にいた男、『鋼錢塚蛍』は何とか逃げ延びたが、刀と砥石は手放さず、着地した瞬間、再び刀を研ぎ始めた。

 

 

「(あの男、まだ刀を研いでいる…。馬鹿か?真面(まとも)では無い…)それもまたよし…。あの刀鍛冶より柱だ」

 

 

玉壺が視線を向けた先には、蛸足に捕まった無一郎と鉄穴森がいた。一刀は蛸足に捕まる直前に『陸ノ型 白鳥ノ舞』と『玖ノ型 嘴広鸛』を使い、難を逃れた。

 

 

「先程は少々手を抜き過ぎた。今度は確実に潰して吸収するとしよう」

 

 

玉壺が言い終わると、突如無一郎と鉄穴森を捕まえていた蛸足が斬り刻まれた。無一郎は着地すると

 

 

「俺のために刀を作ってくれてありがとう、鉄穴森さん(・・・・・)

 

 

刀身がまるで霞のような白色の刀を持って鉄穴森に礼を言った。

 

 

「…いえ、私はただ貴方の最初の刀鍛冶の書きつけの通りに作っただけで……」

 

 

「そうだったね。鉄井戸(てついど)さんが最初に俺の刀を作ってくれた。あの優しい人は心臓の病気で死んでしまった……」

 

 

無一郎と鉄穴森が話している間、玉壺は蛸足の攻撃のタイミングを探していた。そして二人の話が終わったのを見計らって蛸足の攻撃を繰り出す。

 

 

『霞の呼吸 伍ノ型 霞雲の海』

 

 

しかし無一郎も玉壺同様、攻撃のタイミングを鉄穴森と話している間に見計らっていた。そして蛸足が攻撃するのと"同時"に蛸足を切り刻み、頚を斬ろうとする。

 

 

だが玉壺は即座に壺の中に引っ込み、木の上にある壺から出てくる。しかし完全に回避していた訳でも無く、玉壺の頚が若干斬られていた。

 

 

「……舐めるなよ?小僧…!」

 

 

「舐める?舐める訳無いじゃん。だって舐めたら汚いもん。舌が汚れるもん」

 

 

「そう言う意味では無いのだが…、それもまたいい」

 

 

売り言葉に買い言葉。玉壺と無一郎は互いに嫌味を言う。すると無一郎が不意に首を傾げた。

 

 

「ずっと気になっていたんだけど…、その壺、何か歪んでない?左右対称に見えないよ?」

 

 

無一郎の言葉は玉壺にとっては"禁句"だった。

 

 

それは貴様の目が腐っているからだろうがアアアア!!!

 

 

私の壺のオオオオ、どこが歪んでいるんだアアア!!!

 

 

『血鬼術 一万滑空粘魚』

 

 

案の定ブチ切れた玉壺は自分の手に壺を出し、そこから一万匹の魚を無一郎に向けて放つ。

 

 

「一万匹の刺客がお前を骨まで喰いつくす!!」

 

 

『霞の呼吸 陸ノ型 月の霞消』

 

 

『霞の呼吸 参ノ型 霞散の飛沫』

 

 

しかし無一郎は陸ノ型で魚を全て斬り、参ノ型で全てを弾き飛ばした。そして無一郎の刀が玉壺の頚を捉え、斬った。

 

 

はずだった。

 

 

無一郎が斬ったのは脱皮した玉壺の皮だった。

 

 

「お前には私の"真の姿"を見せてやる「はいはい」この姿を見せるのはお前で三人目「結構いるね」黙れ、私が本気を出した時生きていられた者はいない「すごいねー」口を閉じてろ馬鹿餓鬼が!!

 

 

「この透き通るような鱗は金剛石よりも尚硬く強い。私が壺の中で練り上げたこの完全なる美しき姿に平伏すがいい」

 

 

脱皮した玉壺の姿は下半身が海蛇のような形をしており、指には鋭利な爪と間に水掻きがあり、手から肩にかけて鱗がびっしり着いていた。

 

 

「………」

 

 

「何とか言ったらどうなんだこの木偶の坊が!!!本当に人の神経を逆撫でする餓鬼だな!!!」

 

 

「いやだってさっき『黙ってろ』って言われたし…、それにそんな吃驚しなかった…」

 

 

『し…』と言おうとした無一郎に玉壺が拳を振り上げ、そのままラッシュをする。すると殴られた所が魚になっていた。

 

 

「木の上に逃げるとは…、面倒なことだのう…」

 

 

無一郎は殴られる寸前に木の上に退避していた。が、玉壺の拳が擦っていたのか、無一郎の隊服の一部が魚になっていた。

 

 

「いや単純に生臭かったから。鼻が曲がりそうだよ」

 

 

無一郎は魚に変えられた隊服を払いながら退避した理由を言った。

 

 

「どうだね私のこの"神の手"の威力は?拳で触れたものは全て愛くるしい鮮魚となる。そしてこの速さ!!この体の柔らかさも強靭なバネとなり、さらには鱗の波打ちにより縦横無尽自由自在よ」

 

 

玉壺は自分の力を自慢する。

 

 

「ふぅん。でも、どんな凄い攻撃でも、当たらなかったら意味無いでしょ?」ニマー

 

 

無一郎は笑いながら玉壺を貶す。

 

 

「それに、忘れてない(・・・・・)?」

 

 

『全集中 空の呼吸 肆ノ型 雀ノ涙(すずめのなみだ)

 

 

ザシュ

 

 

「ヒョ?」

 

 

「俺の他に誰かいた(・・・・)ことを」

 

 

ゴトリ

 

 

玉壺の頚が地面を転がる。玉壺の視界に入ったのは刀を振り抜いた一刀だった。

 

 

「(しまった!もう一人(・・・・)いたのを忘れてた!まさか今まで"気配を消していた"なんて…)」ボロボロ

 

 

玉壺は崩れ逝く中、一刀の存在を忘れていたことを後悔していた。

 

 

「貴様の壺の"色彩"と絵柄"は美しかった。だが…」

 

 

一刀は玉壺の作った壺の色彩と柄を褒め、一度口を閉ざす。

 

 

「あの壺の形にあの絵柄は無いわァ。今度生まれ変わる時には、もう少し勉強をした方が良いぞ?」

 

 

そして口を開いた一刀の言葉は、玉壺の壺を"否定する"言葉だった。

 

 

「この…蛆虫…共…が……」

 

 

玉壺はそれだけ言って崩壊した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「時透殿、北郷殿!大丈夫ですか!?」

 

 

「あ、鉄穴森さん。俺は大丈夫ですよ」

 

 

木の上から降りた無一郎とその側にいた一刀の下へ鉄穴森がやって来た。

 

 

僕も大丈夫。今すごく気分がいいんだ。それにすぐ炭華たちの所へ行かないと

 

 

一刀は大丈夫そうだったが、無一郎は明らかに無理している感じだった。

 

 

「顔色がものすごく悪いんですが、本当に大丈夫ですか?」

 

 

鉄穴森も無一郎を心配しているのか、無一郎に質問をする。

 

 

僕のことはいいから、こてつくんのところへいってくれないか…

 

 

ガスッ

 

 

ドサッ

 

 

そこに一刀が無一郎の首に手刀を当てて気絶させ、横向きに寝かせた。

 

 

「明らかに大丈夫では無さそうだったから、気絶させた」

 

 

一刀は悪びれる様子も無く淡々と言った。

 

 

「そ…、そうでしたか…。あ、いけない!崩壊した小屋にお預かりしていた北郷殿の刀もあったんだ!」

 

 

鉄穴森は急いで崩壊した小屋に向かおうとすると

 

 

「その刀って、これですか?」

 

 

そこに鉄穴森と同じ火男(ひょっとこ)のお面をした少年が一刀の刀を持って現れた。

 

 

「おぉ小鉄少年!無事だったか!怪我は大丈夫なのかい!?腕やら腹やら斬られていたけれど!」

 

 

鉄穴森は小鉄と呼ばれた少年の周りをぐるぐると回る。

 

 

「大丈夫じゃ無いです。腕の傷はわりと深くて今でも押さえていないと血が止まんないんです。あと腹の方は…」

 

 

小鉄は腕の傷を体で押さえつけながら懐を探る。

 

 

「炭華さんから預かってたこの"鍔"を入れていたので助かりました。もしこれが無かったら今頃内臓を撒き散らして死んでいたでしょうね」

 

 

小鉄が懐から出したのは、『元炎柱・煉獄杏寿郎』が使っていた刀の鍔だった。

 

 

実は炭華は無限列車の任務の後、杏寿郎の生家である『炎屋敷』に禰豆子と一緒にお邪魔しており、帰り際に杏寿郎"本人"から受け取っていたのだった。そしてその鍔を"お守り"のように大切に持っており、今回、小鉄に預けていたのだった。

 

 

「きっと杏寿郎さんや炭華ちゃんが君を守ってくれたんだろう」ナデナデ

 

 

一刀はしゃがんで小鉄の頭を撫でる。小鉄はお面で顔が分からないが、嬉しそうにしていた。

 

 

「今から君の腕を止血する。じっとしていてくれ」

 

 

ビリビリッ

 

 

一刀は羽織っていた自分の羽織を外し、それを引き裂いて包帯状にする。そして引き裂いた羽織で出来た包帯を小鉄の傷口と上腕部(脇の付け根)に巻き付けた。

 

 

「これで…、良しっ!」

 

 

最後に腕を固定させて一刀の応急措置は完了した。

 

 

「これはあくまでも"応急措置"だ。後日、鬼殺隊の"蝶屋敷"に来るといい。俺の名を出せば大丈夫だ」

 

 

一刀は小鉄に蝶屋敷に向かうことを勧めた。

 

 

「ありがとうございます。それとこれを…」

 

 

小鉄は治療中、一刀の刀を地面に置いており、それを拾い上げて一刀に差し出した。

 

 

「ありがとう」

 

 

一刀は小鉄にお礼を言って刀を受け取った。

 

 

「北郷殿、どうでしょうか?刀がかなり刃零れや磨耗が激しかったので、改めて打ち直したのですが…」

 

 

彼の担当刀鍛冶である鉄穴森は内心ドキドキしながら一刀に聞く。

 

 

「えぇ握り心地や使い勝手はいつも通り最高です。鉄穴森さん、わざわざ打ち直してくれて、ありがとうございました」

 

 

一刀は鉄穴森に向かって頭を下げる。

 

 

「いえいえ!私の方こそありがとうございます。刀がこんなになるまで使って頂いて!貴方の担当刀鍛冶として誇らしく思いますよ!」

 

 

鉄穴森も一刀に向かって慌てて頭を下げる。

 

 

「俺たち鬼殺隊は貴方たち刀鍛冶の方がいなければ鬼を倒すことができない。これからも、よろしくお願いします」

 

 

一刀は頭を下げたまま鉄穴森に礼を言った。そしてその言葉は二人の会話の途中から目を覚ましていた無一郎も聞いていた。

 

 

 

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