鬼滅の恋姫   作:レイファルクス

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第拾玖話

 

 

『十二鬼月 上弦の肆・玉壺』との戦いに勝利した一刀たちは束の間の休息を取っていた。

 

 

ドゴンッ

 

 

「な…、何だ今の音は!?」

 

 

休憩のために座っていた一刀が立ち上がり、刀に手を掛けて周囲を探る。

 

 

「きっと炭華たちだ。音がした方角で多分戦っているんだよ」

 

 

無一郎も起き上がり、一刀に事情を説明する。

 

 

「んなっ、炭華ちゃんたちもこの里に来ているのか!?」

 

 

「あれ?僕言って無かったっけ?」コテンッ

 

 

驚く一刀に無一郎は首を横に傾けながら質問をする。

 

 

「いや、確かにそんなことを言っていた気が…」

 

 

一刀は朧気ではあるが、無一郎がそう言っていたことを思い出していた。

 

 

「とにかく、炭華"たち"が戦っているなら、早く助太刀に行かないと!鋼錢塚さん、失礼します!」

 

 

一刀は鋼錢塚がまだ研いでいる刀を奪い取り、音がした方へ走って行った。

 

 

「おい待て!その刀はまだ第一段階までしか研いでいないんだ!返せ!」

 

 

鋼錢塚が一刀が後を追い掛ける。無一郎と小鉄、鉄穴森は互いの顔を見た後、二人の後を追うように走った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「ハァッ…、ハァッ…、ハァッ…。…!、見つけた!」

 

 

一刀は息を切らしながら森を出ると、そこには頚に刀を食い込ませた鬼と、その後を追う炭華の姿があった。

 

 

「間に合え…!オリャアッ!」

 

 

ブオンッ

 

 

一刀は力一杯刀を炭華に向けて投げる。すると刀はまるで"投げられた槍"の如く飛んで行き、炭華の目の前に刺さった。炭華が目の前に刀が現れたことに驚いていると

 

 

炭華~!

 

 

叫び声が聞こえたのでそちらを振り向くと、一刀が崖の上におり、炭華を見ながら頷く。そして炭華が目の前の刀を引き抜き、物凄い速さで鬼に近づくと

 

 

『円舞一閃』

 

 

一気に鬼の頚目掛けて刀を振り、頚を斬った。

 

 

炭華は禰豆子の方を向くと

 

 

「お姉ちゃん気を抜かないで!"鬼はまだ死んでない"!」

 

 

禰豆子は炭華の"向こう側"を指差して近づきながら叫んだ。炭華は禰豆子 が指差した方を向くと、頚を斬られた鬼がその先にいる刀鍛冶の人の方へ向かっているのが見えた。

 

 

炭華は斬った鬼の頚を見ると、その頚の舌には"恨み"の文字が書かれていた。

 

 

「("恨み"!?本体は"怯え"だったはず!?舌の文字が違う!)しくじっちゃった!早く止めを刺さないと!」

 

 

しかし炭華たちから鬼までの距離は開いており、今の炭華の体力では追い付く前に刀鍛冶の人が襲われてしまう。更に崖を降りている玄弥はともかく、一刀や追い付いた無一郎たちでさえも追い付くのは不可能であった。

 

 

「お姉ちゃん、行って!」

 

 

ブオンッ

 

 

「ッ!?、禰豆子!?」

 

 

すると禰豆子が炭華を鬼の方へ"投げ飛ばした"。炭華は着地すると同時に再び跳躍し、"匂い"で本体がいる箇所を見極める。彼女は段々と嗅覚を鋭敏にすると、何故か"見えている所"が透明になり、本体が隠れている箇所が明らかになった。

 

 

「(見つけた!心臓の中!)」

 

 

炭華は刀鍛冶の人を掴んでいる腕を斬ると

 

 

「その命をもって罪を償え!!!」

 

 

ザシュッ

 

 

鬼の体を袈裟斬りにし、心臓に隠れている本体の頚を斬った。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 

「禰豆子!」

 

 

ダキッ!

 

 

鬼を倒した炭華は後から追い掛けて来た禰豆子と抱き合った。

 

 

「炭華ちゃん、禰豆子ちゃん!」

 

 

そこに一刀たちが崖から降り、炭華たちの所まで辿り着く。炭華と禰豆子は一刀の顔を見た瞬間、目尻に涙が溜まり、一刀に一直線に突進。そのまま抱きつき転倒した。

 

 

背中を地面に打ち付けた一刀は起き上がろうとすると、炭華と禰豆子は一刀の胸の上で泣きながらしがみついていた。一刀は二人の頭に手を乗せてゆっくりと撫でた。

 

 

「良かったな、炭華。禰豆子」

 

 

やっとの思いで崖から降りた玄弥はその光景を見て微笑んでいた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

炭華が討伐した鬼『十二鬼月 上弦の参・半天狗』が倒された時と同じ時、とある屋敷の一室、その部屋にいた"少年"は本棚にある本を散らかしていた。

 

 

「ついに…、ついに太陽を克服している者が現れた…!!でかした…、よくやったぞ半天狗!!」

 

 

"少年"は余りにも嬉しかったのか、その部屋に入室していた女性の首を"刎ねた"。女性と一緒に入室していたメイドが驚いていると

 

 

「これでもう"青い彼岸花"を探す必要も無い。クククッ、永かった…、しかしこの為…、この為に千年増やしたくも無い同類を増やし続けたのだ…!十二鬼月の中にすら現れなかった稀有な体質、選ばれし鬼…!"あの娘"を喰って取り込めば私も太陽を克服できる!」

 

 

"少年"は徐々に姿を歪め、二十代後半の青年の姿となった。だがその瞳は猫のように縦長で、指から伸びる爪は長く鋭く、口から見える歯も鋭くなり牙となっていた。

 

 

そう、この"少年"こそ鬼殺隊の怨敵、『鬼の始祖・鬼舞辻 無惨』だったのだ。

 

 

無惨は騒いでいたメイドの首も刎ね殺し、姿を消した。その後騒ぎを聞き付けた屋敷の者が部屋に雪崩れ込むと、首が無い女性とメイドの死体があるだけで、無惨はいなかった。屋敷の者は警察を呼び、殺人事件として捜査するが、犯人(無惨)は見つからなかった。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

炭華たちは『刀鍛冶の里防衛戦』の後、傷ついた体を癒すために蝶屋敷で療養していた。

 

 

「そうなんですか…、もう拠点を移されるんですね…」

 

 

「"空里"って言うのが幾つも合ってな。こう言った襲撃に備えて作ってあるんだとよ」

 

 

炭華は見舞いに来ていた仲良しの隠の『後藤』から話を聞いていた。

 

 

「そう言えば、空柱様の知り合いの一人が移転に同行するって言ってたな、確か名前は…"李典"って言ってたかな?」

 

 

「あ、その人なら知ってますよ!」

 

 

炭華と後藤は様々な会話に花を咲かせていた。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

この日産屋敷邸では、『緊急柱合会議』が開かれていた。招かれた柱は風、蛇、恋、霞、岩、蟲、水、そして空である。一同は会議が開かれるまでの間を部屋で待っていた。

 

 

「あーあァ、羨ましいことだぜェ。なんで俺は上弦に遭遇しねぇのかねぇ」

 

 

実弥は未だに上弦に遭遇していなかったので、羨ましがっていた。

 

 

「こればかりはな、遭わない者はとんとない。甘露寺と時透、その後体の方はどうだ?」

 

 

小芭内が実弥を慰めつつ、二人の容態を聞いた。

 

 

「あっ、うん。ありがとう、随分よくなったよ!(伊黒さんが心配してくれてる!キュンキュンしちゃう!)」

 

 

「僕も…、まだ本調子じゃないですけど…」

 

 

蜜璃と無一郎は小芭内の質問にそれぞれ答える。

 

 

「これ以上柱が欠ければ鬼殺隊が危うい…。死なずに上弦二体を倒したのは尊いことだ」

 

 

行冥が涙を流しながら蜜璃と無一郎を褒める。

 

 

「今回のお二人ですが、傷の治りが異常に早いです。何があったんですか?」

 

 

しのぶが蜜璃と無一郎に傷の異様な治りについて質問をする。

 

 

「胡蝶、その件も含めてお館様からお話があるだろう。その後からでも遅くはないと思うが?」

 

 

義勇がしのぶに話し掛ける。

 

 

「………」

 

 

新しく柱となった一刀は緊急とは言え、柱合会議に参加するのが今回が初めてだったので、相当緊張していた。

 

 

「大変お待たせ致しました。本日の柱合会議、産屋敷耀哉の代理を産屋敷あまねが務めさせていただきます。そして当主の耀哉が病状の悪化により、今後皆様の前へ出ることが不可能となった旨、心よりお詫び申し上げます」

 

 

そこに耀哉の妻のあまねが入室し、会議の進行の代理や耀哉が床に伏せたことなどを説明しながら謝った。

 

 

ババッ

 

 

するとその部屋にいた柱全員が平伏した。この時、一刀は他の皆より若干、遅れて平伏した。

 

 

「承知…、お館様が一日でも長くその命の灯火燃やしてくださることを祈り申し上げる…。あまね様も御心強く持たれますよう…」

 

 

柱の代表として行冥が挨拶を返した。

 

 

「柱の皆様には心より感謝申し上げます。すでにお聞き及びとは思いますが、日の光を克服した鬼、竈門禰豆子様の存在を鬼側に感づかれました。鬼舞辻無惨は己も太陽を克服する為に目の色を変えて狙ってくるでしょう。大規模な総力戦が近づいています」

 

 

あまねは行冥の返事に感謝し、会議の議題を伝えた。

 

 

「上弦の参・肆との戦いで甘露寺様と時透様の御二人に独特な紋様の痣が発現したという報告が上がっております。御二人には痣の発現の条件を御教示願いたく存じます」

 

 

「痣…ですか?」

 

 

あまねの言葉に蜜璃が疑問を浮かべる。

 

 

「戦国の時代、鬼舞辻無惨をあと一歩という所まで追い詰めた始まりの呼吸の剣士たち(・・・・)。彼らには鬼の紋様と似た痣が発現していたそうです。伝え聞くなどして御存じの方は御存じです」

 

 

あまねの言葉に皆が驚いていた。

 

 

「ですので、何卒御教示願います。甘露寺様、時透様」

 

 

あまねは二人に対して頭を下げる。

 

 

「(あまね様素敵…!)はっはい!あの時はですね、確かに凄く体が軽かったです!えーっとえーっと…」

 

 

「"ぐあああ~"ってきました!"グッ"てしてぐぁーって心臓とかが"ばくんばくん"して耳が"キーン"てして"メキメキメキィ"って!!」

 

 

蜜璃の擬音だらけの説明に皆の目が点になっていた。実は甘露寺蜜璃は原作の炭治郎同様、『説明がド下手』だったのだ。

 

 

「甘露寺さん、それじゃ説明になりませんよ…」ボソッ

 

 

一刀は小声で呆れ、小芭内は自分の額に手を当てていた。

 

 

「申し訳ありません…、穴があったら入りたいです…」

 

 

蜜璃は余りもの恥ずかしさからか、その場に踞ってしまった。しのぶはさりげなく蜜璃にハンカチを手渡していた。

 

 

「痣というものに自覚はありませんでしたが、あの時の戦闘を思い返してみた時に思い当たること、いつもと違うことがいくつかありました。その"条件"を満たせば恐らくみんな痣が浮き出すと思います。今からその方法を御伝えします」

 

 

今度は無一郎が説明を始めた。

 

 

「前回の戦いで僕は毒を喰らい動けなくなりました。呼吸で血の巡りを抑えて毒が回るのを遅らせようとしましたが、僕を助けようとしてくれた少年が殺されかけ、以前の記憶が戻り強すぎる怒りで感情の収拾がつかなくなりました」

 

 

「その時の心拍数は"二百を越えていた"と思います。さらに体は燃えるように熱く、体温計の数字は"三十九度以上"になっていたはずです」

 

 

無一郎の丁寧な説明に皆が呆然としていた。

 

 

「ちょっと待ってください。そんな状態で動けますか?最悪命にも関わりますよ?」

 

 

そこに医術の知識があるしのぶが疑問を口にする。

 

 

「そうですね。だからそこが(ふるい)に掛けられる所だと思う。そこで"死ぬ"か"死なない"かが恐らく痣が出る者と出ない者の"分かれ道"です」

 

 

しのぶの疑問に無一郎は淡々と答えた。

 

 

「心拍数を二百以上に…、体温の方は何故三十九度なのですか?」

 

 

無一郎の説明にあまねが質問をする。

 

 

「はい。胡蝶さんの所で治療を受けていた際に僕は熱を出したんですが、その時に体温計なるもので計ってもらった温度三十九度が痣が出ていたとされる間の体の熱さと同じでした」

 

 

無一郎はあまねの質問に淡々と、分かりやすく答えた。

 

 

「チッ、そんな"簡単なこと"でいいのかよォ」

 

 

実弥は舌打ちしながら"痣の条件"を"簡単なこと"と言った。

 

 

「まて不死川、これは簡単なことでは無い。心拍数を二百以上、さらに体温を三十九度以上に保つ。これがどんなに難しいのか分かって言っているのか?」

 

 

そこに義勇が実弥の言葉を撤回させる。

 

 

「確かに。もし途中で体力などが尽きてしまったりしたら…」

 

 

「最悪、動けなくなり鬼の餌になる」

 

 

しのぶの懸念を一刀が口にする。それを聞いた柱は閉口した。

 

 

 

 

……

 

 

………

 

 

そして幾つかの話をして、会議は終わりあまねは退室した。

 

 

「皆に言っておきたいことがある」

 

 

すると不意に義勇が皆の方を向き、話し始めた。

 

 

「俺は今、水柱としてここにいるが、俺は正式に最終選別に合格してはいない」

 

 

「俺は同じ育手の下にいた"錆兎(さびと)"と一緒に受けたが、俺は初日に鬼の攻撃を受けて気絶してしまった。目が覚めたのは最終選別が終わった後だった。錆兎は一人で山にいる殆んどの鬼を斬ったんだ」

 

 

義勇は自分の過去の話を始めた。

 

 

「そう言えば聞いたことがあります。その最終選別では、『死者が一人"だけ"』だったとか…。でもその殆どが隊員では無く、隱になったり、辞退したりとか…」

 

 

しのぶは思い出したのか、その最終選別の死者の数を言った。

 

 

「最終選別で鬼を一体も斬っていない俺が柱…、いや、鬼殺隊に席を置くこと自体が烏滸がましいと思っている。だから…」

 

 

義勇が何かを言おうとした瞬間

 

 

バキィッ

 

 

「!!?」

 

 

『!!?』

 

 

一刀が義勇を"殴った"。

 

 

「な…、何を…」

 

 

義勇が殴られた頬を押さえながら一刀を見る。

 

 

「『何を』だと…?不座虚んな!アンタはそうやって"逃げてる"だけだ!アンタは…、錆兎って人から『何も託されずに繋いでいかないのかよ!』」

 

 

一刀は頭に血が昇っているのか、いきなり義勇の胸ぐらを掴んで叫ぶ。

 

 

『何も託されずに繋いでいかないのかよ!』その言葉に義勇はかつて錆兎に頬を叩かれた記憶が甦った。

 

 

「一刀…、すまなかった。お前のお陰で大事なことを思い出した」

 

 

義勇は一刀に向かって頭を下げる。

 

 

「いえ、俺の方こそいきなり殴って申し訳ありませんでした」

 

 

一刀も頭に昇っていた血が下がったのか、掴んでいた手を離し義勇に謝る。

 

 

「皆、こんな弱い俺ではあるが、これからもよろしく頼む」

 

 

義勇は柱の面々に向かって頭を下げる。

 

 

「何言ってんだァ?んなもん頼まれなくたってよろしくするわァ」

 

 

「不死川の言う通りだ。そもそも貴様は柱としての自覚が足りなかったんだ。これからは柱として、強いては鬼殺隊の一員として頑張ってもらわないと困る」

 

 

実弥と小芭内が他の柱の気持ちを察したのか、代表としてその思いを口にする。義勇は頭を上げて柱の顔を見渡すと、皆頷いた。

 

 

「皆、ありがとう!」

 

 

義勇は涙を浮かべて微笑んだ。

 

 

その後行冥が『一つ提案がある』と言って内容を話した。そしてその話も終わり、緊急柱合会議は幕を閉じた。

 

 

 

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