「か…、一刀さん…。その胸の痣……」
しのぶは一刀の胸に現れた痣を見て震えていた。
「……そうか、納得がいった。『何故紅蓮朱雀を使ってもいないのに、
一刀は納得したように何度も"ウンウン"と頷いていた。
「納得している場合では無いですよ!?貴方は只でさえ歳が二十五に近いというのに、紅蓮朱雀を使って寿命が縮まっているんですよ!?なのに、痣まで浮かんでしまったら、死んでしまう…かも……しれないんですよ…」
しのぶは一刀の胸に凭れながら怒り、最終的には泣いてしまっていた。
「……ごめん。でも、こうでもしないとあのクソ野郎に、無惨には勝てないだろうから」
一刀はしのぶを自分から離れさせると、童磨に向けて刀を構えた。
「…行くぞ。空の呼吸 終ノ型 紅蓮朱雀!」
一刀は終ノ型を使い、全身や刀に炎を纏わせた。
「うわぁ~、凄いね!全身や刀に炎を纏わせるなんて!でも、それで俺"たち"に勝てるかな?」シャリン
童磨は結晶ノ御子を二体造りだし、一刀に攻撃を仕掛けようとする。
「空の呼吸 漆ノ型 漆黒鴉」
しかし一刀は"炎の斬撃"を飛ばし、結晶ノ御子を全て砕いた。
「今の俺にそんな小細工は通用しない。俺の炎は命の炎、その炎は万物を全て焼き焦がす。たとえ貴様の最大の血鬼術を使っても俺には無意味だ」
「覚悟しろ、これから貴様を完膚なきまでに叩きのめす」
一刀は刀の切っ先を童磨に向ける。
「だったら、やってもらおうかな?」
『血鬼術
童磨は自身の最大の血鬼術である"氷の菩薩"を造りだした。
『空の呼吸 壱ノ型 燕返し』
しかし、痣と紅蓮朱雀を使用している一刀の敵では無かった。一刀は燕返しを使い、菩薩を簡単に一刀両断してしまった。
「な…」
この結果には流石の童磨も驚きを隠せなかった。
「言ったはずだ、"俺には無意味だ"と。さあどうする?お前の切り札が効かないと分かった今、素直に頚を差し出すか?それとも、無様に無駄な抵抗を続けるか?」
「俺の答えは…、決まってるよ!」
童磨は血鬼術を連発し、一刀に襲い掛かる。
「無駄な抵抗を続ける…か。無様で醜い。素直に頚を差し出すなら、痛みを感じずに葬ったものを…」
童磨の血鬼術は一刀に届く寸前で悉くその炎によって蒸発してしまった。
「何故だ…、何故だ何故だ何故だ、何故だーーー!!」
ヤケになった童磨はいつもの冷静さは何処に行ったのか、鉄扇を振りかぶり、一刀に肉薄しようとする。
「これで終わらせる。空の呼吸 拾ノ型 鳳凰天舞!」
一刀は接近する童磨に向かって鳳凰天舞を繰り出す。そして一刀の攻撃は童磨の鉄扇を斬り裂き、身体をサイコロステーキ状に斬り刻んだ。
「そんな…、俺は…ただ…、みんなを…、幸せに…、したかった…だけ…、なのに……」ボロボロ
童磨は崩壊しながら泣いていた。
「下手な芝居はよせ。どうせ感情すら無くなっているんだろ?そんな三文芝居でお涙頂戴できると思うな」
紅蓮朱雀を解除した一刀は崩壊する童磨を一瞥しながら冷たくあしらう。そして童磨に背を向けしのぶの下へ歩くと、童磨は完全に崩壊した。
…
……
………
「一刀さん!」ダッ ガシッ
「お…っと。しのぶ、どうした?」
しのぶの側まで来た一刀は駆け寄ったしのぶに抱きつかれた。そして一刀はしのぶに声をかける。
「………」
しかし、しのぶは一刀に抱きついたまま何も言わなかった。一刀はしのぶの気持ちを察したのか、無言のまましのぶを抱き締めた。
…
……
………
「お見苦しい所をお見せしました……//////」
正気に戻ったしのぶは顔を赤くして手で覆っていた。一刀はそんなしのぶを苦笑しながら頭を撫でていた。
「「じぃ~~~っ」」
「のわっ!?」
「はぅあっ!?」
その様子をカナヲと伊之助が扉の陰から見ており、それに気づいた二人がびっくりして変な声を出してしまった。
「はわわ、あわわ、はわわ、あわわ」
「しのぶ、落ち着け」
恥ずかしい所を見られたしのぶはパニックを起こし、それを一刀が宥めていた。
「はわわ、はわ、はわわわ、はわー!?」
「……えっと…、しのぶ姉さん、何て言ってるの?」
「『一体何時から見ていたの!?』…って言ってる」
パニックを起こしたしのぶが何かを言っており、内容が分からなかったカナヲが一刀に通訳をお願いすると、一刀はあっさりと通訳してしまった。
「えっと…、お兄ちゃんが鬼が造った菩薩を斬った辺り…、かな?此処に来る途中で彼と会ったから、一緒にお兄ちゃんたちを助けに行こうとして…」
「さっきの場面に出会したって訳か…」
一刀とカナヲが視線を向けた先には、しゃがんで顔を隠しているしのぶの背中を伊之助が撫でている光景だった。
「カナヲ、このことについては他言無用だ。しのぶを更に傷つけることになりかねないからな。伊之助にも言っとく」
「分かった」
一刀はカナヲにしのぶの羞恥を誰にも話さないことを約束させた。
…
……
………
その後、パニックに陥っていたしのぶが復活し、四人は無限城の童磨の部屋を後にした。
「よし、それじゃあ鬼を倒しつつ、はぐれた仲間を探しに行くとするか!」
一刀は右にカナヲ、左にしのぶをくっ付けた状態で通路を歩き、その後ろを伊之助が追いかける形となっていた。
何故カナヲとしのぶが一刀にくっ付いた状態でいるのか?それは二人共『ただ一刀にくっ付いていたいから』という何とも乙女らしい理由であった。
「カアァ!岩柱・悲鳴嶼行冥、風柱・不死川実弥、霞柱・時透無一郎、並ビニ不死川玄弥!苦戦ノ末上弦ノ壱ヲ討伐!討伐!ナオ、時透無一郎、不死川玄弥、重症ノタメ戦線離脱!戦線離脱!」
「我妻善逸、上弦ノ陸ト遭遇!討伐!討伐!」
「蛇柱・伊黒小芭内、恋柱・甘露寺蜜璃、水柱・冨岡義勇、並ビニ竈門炭華!
「並ビニ蟲柱・胡蝶シノブヲ除ク柱全員痣ヲ発現!痣ヲ発現!」
すると胸の辺りに札を着けた鴉が別の場所で戦っていた隊員の情報を言いながら飛んでいた。
「どうやら、助けはいらなかったようだな」
一刀は鴉からの情報を聞き、一安心していた。
「一刀、ここにいたか!」
するとそこにイーグルが目の前に現れた。
「無惨を見つけた!今一般隊員が取り囲んでいるが、奴らでは餌になるのが関の山だ!一刻も早く来てくれ!場所は俺が案内する!」
イーグルは口早に言うと、何処かへと飛び立った。一刀はしのぶたちに視線で合図を送ると、全員が頷きイーグルの後を追った。
…
……
………
イーグルに案内されてたどり着いた場所は、吹き抜けになっている一角で、そこには"肉の繭"があった。しかし肉の繭は既に破れており、周辺には無惨に殺された隊員の亡骸が転がっていた。
すると無限城が揺れだした。無限城は新たに上弦の参となった鳴女の血鬼術によって建築された城であって、鳴女が死んだ今、無限城は崩壊の一路を辿っていた。
一刀たちが慌てているその時、一刀の後ろに突如"黒い穴"が現れ、そこから腕が伸びたと思うと、一刀の肩を掴み、そのまま穴の中へと引き摺り込んでしまった。
しのぶたちは急なことで思考が追い付いていかなかったが、その黒い穴から先程とは違う野太い腕がしのぶたちを掴み、黒い穴へと引き摺り込んでいった。
…
……
………
「よいしょ…っと!これで全員ね」
「ひい…、ふう…、みい…。うむ!全員のようだな!」
一刀たちが黒い穴に引き摺り込まれてから間も無く、一刀たちは引き摺り込まれた穴とは"違う穴"から引っ張りだされた。
「あなたたちは…、一体…、誰…ですか…?」
しのぶは自分たちを引っ張った者たちに震えながら質問をする。
「うふふ、子犬みたいに震えちゃって。まあ私たちの美貌に当てられて震えるのは当然ね。私たちってなんて罪なお・ん・な❤️」
「私は絶世の漢女、貂蝉よん❤️」
「儂は卑弥呼。漢女道亜細亜方面前継承者よ」
一刀たちを引っ張った張本人、貂蝉と卑弥呼はクネクネしながら自己紹介をした。
「………」
「「………」」
「あら?この子たち、目を開けたまま気絶しちゃったわよ?」
「儂らの美貌に耐えられなかったと見える。正に罪な美貌よの。そうは思わんか、貂蝉よ?」
「そうねぇん。確かに同性をも気絶させる程の美貌を持つ私たちって、罪な女ねぇ」
「(そいつらはお前らの
その様子を見ていた左慈はそう心の中で呟いていた。
「「何か?」」クルリ
「何でも」プイ
左慈の心の中を読み取ったのか、貂蝉と卑弥呼が左慈の方を振り向き、左慈は思わず顔を背けた。
…
……
………
「さてまずは自己紹介させて頂く。俺の名は左慈。あそこでクネクネしているのが認めたくは無いが仲間の貂蝉と卑弥呼。
左慈の前には、一刀を始めとして、しのぶ、カナヲ、伊之助、義勇、炭華、小芭内、蜜璃、行冥、実弥、玄弥、無一郎、善逸の十三名がいた。
「于吉、無惨の様子は分かるか?」
「えぇ。無惨は今、産屋敷邸があった場所で自暴自棄になって暴れていますね」
左慈は于吉に無惨の様子を聞き、于吉は手に持っている水晶を覗きながら情報を伝えた。
「聞いた通りだ。奴は今、産屋敷邸跡地にいる。あそこは開けた場所だから陽光も入りやすい。ならば、あの場所に縛り付けるのが最善の策だ。これからお前たちを
左慈はおもむろに手を自分の横に向ける。するとそこには先程一刀たちを引き摺り込んだ黒い穴が現れた。
「そうそう、不死川玄弥と時透無一郎は行くなよ?お前たちはまだ怪我が治っていないんだからな?」
行こうとしていた玄弥と無一郎にさりげなく釘を刺す左慈であった。
…
……
………
そして一刀たちは左慈が作り出した黒い穴を通り、無惨の前までやって来た。
「貴様ら…、一体、どれだけ私を怒らせれば気が済むんだ…」
一刀たちが見た無惨は、まるで"怒りの炎"に包まれているような感じだった。
「それはこちらの台詞だ。貴様こそ、一体どれだけの人間を喰ったり鬼に変えた?罪無き人々の命を弄んだその愚かな行い、貴様の命をもって償え」
一刀は刀を抜刀し、切っ先を無惨に向ける。するとそれが合図だったのか、次々に柱たちが抜刀する。
「御託はいい、掛かって来い。ここで貴様ら全員喰らってやる」
無惨は自分の腕を横に振るう。すると腕が鞭状になり、一刀たちに襲い掛かった。
「散開!」
一刀が号令を発すると、柱たちはバラバラに逃げ、無惨の攻撃を避けた。
そして鞭の軌道上にあった木々が根元から"切り倒された"。
「おいおい、冗談じゃねぇぞ!あんなの喰らったら一瞬で御陀仏じゃねぇか!」
一刀は切り倒された木々を見て肝を冷やしていた。
「何だ?威勢の良いことを言ったくせに、これしきのことで根を上げるのか?」
「抜かせ!俺たちはまだまだやれるぜ!」
一刀は紅蓮朱雀を使用し、己の力を強化させる。そして柱も次々に痣を浮かばせた。その中には痣が浮かばなかったしのぶも額に蝶の痣が浮かんでいた。
…
……
………
その様子を左慈たちは于吉の水晶を介して見ていた。
「……どう見る?」
左慈は視線を外さずに于吉に声をかける。
「どうでしょうか?こればかりは何とも言えませんね」
于吉もまた、水晶から視線を外さずに左慈の質問に答えていた。その時、左慈たちの後ろに"誰か"が到着した。その気配を感じた二人は振り向くと
「ようやく到着したか…っと、まさか、"お前たち"まで来るとはな。これは良い意味で予想を裏切ったな」
後ろの者たちに声をかけた。
「時間が惜しい。早速だが向かって欲しい。この決闘の勝利はお前たちに掛かっていると言っても過言では無いからな」
左慈の言葉に"協力者たち"は頷いた。その様子を見ていた玄弥と無一郎は口をパクパクさせていた。
それはまるで、『もう一人の自分』を見ているような感じだった。