ソードアート・オンライン インテグラルファクターX ーアインクラッド・メモリーズー 作:No 77777
新たな来客
リクとコハルがドラッグストアに立ち寄る少し前、丁度ダイシー・カフェに新たな来客が現れたところであった。人数は六人で、男性が四人、女性が二人である。
「どうも、実力派プレイヤーZこと迅悠一、ただいま到着」
その内の一人、前髪をオールバックにした男性は掴みどころのない笑顔で挨拶した。
「そしてアインクラッド一のカタナ使い、Kこと
後に続くように、灰がかった癖のある茶髪をした顎髭の男性も飄々とした感じで挨拶すると、皆が微妙な表情になる。
ZとKは攻略の中盤からナルシスト的な自称をするようになったのだが、脱出した後も相変わらずのようだ。
しかし、二人ともSAOトップクラスの実力者なのは確かである。Zはまるで未来を見ているかのように相手の行動を予測して攻撃することから
Kは自称する通り、誰もが認める最強のカタナ使いであり、いつの日か《神刀》の異名で呼ばれるようになった。攻略組にもクラインを始めとしたカタナ使いがいたが、彼らと比べても実力は群を抜いており、互角に渡り合えるのはキリトやリク、Zといった一部のプレイヤーだけであった。
なお、Zとはライバル関係であり、SAOに囚われる以前から交流がある。
「せっかくの再開なのに、変な空気になっちゃった」
「その通りだけどさ、あのマイペースっぷり何とかならない?」
「いや、無理だと思うぜ。っていうか、姉貴も人のこと言えないだろ」
泣きぼくろのある黒髪のショートヘアの少女――サチが言うと、長身の少女は長身の少年に訪ね、相手は諦めの答えを返した。
長身の少女と長身の少年は、それぞれ
姉弟は身長の高さから異性に好かれており、姉の方は明るくてマイペースな性格。本人曰く、カッコカワイイを極めているとのことで、髪は明るい茶色のショートヘアで、顔はどこか可愛くてモデル体型であるため、同性にもモテている。
弟の方も背が高くてかっこいいルックスをしているが、姉とは違って普通の性格である。異性にはモテているものの、恋人にしたいと思えるような女の子を見つけられずにいたが、SAOでサチと出会って両思いとなった。
「お前達、辛辣だな」
呆れて姉弟にそう言うのは、黒髪のソフトモヒカンをした男であった。シャツの上からでも分かるほどのイイ筋肉をした細マッチョのイケメンは
落ち着いた性格をしているが、兄貴肌で人々から慕われやすく、SAOにいた頃も男女問わず人気があった。
「おう、お前らもよく来たな」
丁度、エギルが厨房からカウンターに出てきた。ドアーベルの音で、かつての仲間が新たにやって来たことに気づいたのだ。
Z達も店主に気づくと、こんにちは、と挨拶した。普段は飄々としたZとKも、年上に礼儀正しく挨拶するほどの常識はある。
「それでエギルさん。準備のほうはどうなんですか?」
「ああ、順調だ。料理は俺以外にもアスナとシノン、GVが手伝ってくれてるからな。店内もキリト達が掃除してくれた。まだ連絡が来ないことを考えれば、主役が来る前には間に合うはずだ」
Zは気になっていることを尋ねたが、予定に問題はなさそうだ。もし猫の手も借りたい状況なら皆と手伝うつもりでいたが、残りの時間はゆっくりできそうだ。
ちなみに、Kには大人しくさせるつもりでいた。彼は日常では残念な人であることを、付き合いの長いZは知っているのだ。最悪の場合、状況が悪化してしまうと勘が告げていた。
「ああ、それとだな、さっきジョーカーから連絡が来たんだが、ザ・ファントムの五人とクロウは予定より遅れてくるそうだ。実家から届いた荷物をギルドの仲間と一緒に整理してたみたいだが、かなり時間が掛かったらしい」
エギルがかつての仲間の遅刻を伝えると、キリトは「そうか。分かった」と理解した。
ザ・ファントムのリーダーであるジョーカーは、他のメンバーと違って実家が都心部から離れている。SAOに囚われる前、ある理由でジョーカーは喫茶店の屋根裏部屋で一年を過ごすことになった。事件に巻き込まれたのもその八ヶ月目である。
ゲームをクリアして退院した後は実家で過ごしていたが、帰還者学校の設立及び入学に伴い、喫茶店を経営する人物の温情で再び居候する許可を得たのだ。
「それじゃ、適当な席に座っててくれ。ドリンクを持ってくるから、ちょっと待ってな」
エギルはそう言うと、再び厨房へと戻っていった。皆が後ろ姿を見届けた後、キリトはふと気になったことを訪ねた。
「ところで、マーベラスたちは? レグルスたちがいるから、てっきり一緒に来るって思ってたけどな」
「アイツらと俺達は家が逆方向だからな。LINEで話し合った結果、ここで落ち合ったほうがいいということになった」
レグルスは冷静に説明した。
マーベラスとは、SAOでレグルス、エトワール、スバルの所属していたギルドのリーダーである。三人は結成時の初期メンバーなのだ。
「あ、ごめん。ちょっと待って……おっと、噂をすれば」
エトワールは手に持っている明るいピンク色のバッグからメールの受信音の鳴るスマホを取り出し、画面をタッチして内容を確認する。
「マーベラスたち、もうすぐこっちに着くって。せっかくだし、からかっちゃおう。『私たちが先に着いたよ。残念でしたー』と」
「いや姉貴、最後は余計だろ。もうちょっと大人の対応しろよ」
「別にいいじゃない。私たちの関係なんだし」
「いや、けどよ……」
モデル体型でカッコイイ姿とは裏腹に、子供のような対応でメールを返そうとするエトワールに弟はツッコんだが、本人は聞き入れない。
「スバル君、同じギルドの間柄だから、あまり気にしすぎちゃだめだよ。それに、エトワールさんのそういうところが魅力だと思うから。他のみんなも同じだと思うよ」
「……まあ、サチがそういうなら」
恋人の説得にスバルは何とか引き下がった。
「うんうん。サチは分かってるねー」
「あ……」
そう言いながら目の前に寄ってきたエトワールが笑顔でサチの頭を撫でると、本人は思わず顔を赤くしてしまう。
エトワールが同性にモテるもう一つの理由は、この無自覚に人をたらし込む行為にある。そのせいで弟と幼馴染、ギルドのメンバーはいろいろ苦労してきたのだ。
「おい、やめろ! 俺のサチに手を出すな!」
「えー、ただ頭を撫でてるだけじゃん。まるで私が恋人を奪おうとしてるみたいじゃない」
「姉貴にそのつもりがなくても、いろいろ面倒なんだよ! いい加減、自分が天然のタラシって自覚を持てよ!」
「いやー、そんなこと言われてもねー」
スバルが注意してもエトワールには反省の色が無い。
「レグルスさん。どうしよう」
「放っておけ。よくある姉弟ゲンカだ」
困惑したサチはレグルスに助けを求めるが、彼は止めようとはしなかった。この状況を見慣れた幼馴染は、いずれケンカ疲れで落ち着くということを知っているのだ。
「わ、わかりました」
サチは納得し、レグルス、Z、Kと共にケンカ中の姉弟をスルーしてキリト達のところに向かい、近くの席に腰掛ける。
「にゃははは。トワっちは相変わらずだなー」
「すまない。せっかくの再開だというのに、騒がしくなってしまった」
アルゴが愉快に笑う中、レグルスはキリト達に謝罪した。
「気にすんなって。むしろエトっちとスバルがいつも通りで、賑やかになったぜ」
「うん、微妙な空気が良くなったかも」
だがクラインとシアンは、むしろ場の空気を変えてくれたことに感謝していた。
「微妙な空気? 別に息苦しくはないけどな」
「いや、太刀川さん。そういう物理的な意味じゃないから」
「むしろ、そういう空気にしたZさんとKさんが謝るべきだと思いますけどね」
頭が残念なだけに微妙な空気の意味を理解できないKにZがやんわりとツッコむ中、リーファがやや険しい表情で言った。そんな光景を見てキリトは「あ、あはははは……」と苦笑いした後、視線を今もケンカ中のエトワールとスバルに移す。
キリトは二人を見て、SAOで姉弟とその幼馴染に初めて出会った日のことを思い出していた。
ワートリより太刀川慶、参戦!
そして本作のオリキャラも参戦!
なぜオリキャラを作ったのかは、そう遠くない日に説明するので、その日までお待ち下さい。