ソードアート・オンライン インテグラルファクターX ーアインクラッド・メモリーズー 作:No 77777
SAOには、プレイヤー同士が一対一で戦うデュエルがあり、三種類のルールが存在する。一つ目はどちらかのHPが0になるまで戦う《完全決着モード》。二つ目は先に相手のHPを半分以下にした方が勝つ《半減決着モード》。そして三つ目の《初撃決着モード》は、相手に強攻撃をヒットさせるか、相手のHPを半分以下にした方が勝者となる。
デスゲーム開始が宣言された後、皆がHPに気を配っていた。当然、命を削り合うデュエルをしようとは誰も考えなかったし、それで物事を解決しようなどとは思わない。キリトが提案したように《初撃決着モード》を選べばHPが尽きるということはほぼない。しかし、命の生命線ともいえるゲージが減ってしまうという不安が誰もその考えに行き着かせなかったのだ。
この日トールバーナの街道でキリトとジェネラルによる、デスゲーム化したSAOで(多分)最初のデュエルが始まろうとしていた。キリトはウインドウを出現・操作し、対戦相手にデュエルの申請を行う。相手の前には受諾するか否かのシステムメッセージが出現し、ジェネラルは【YES】の文字を指でタッチした。
そして、デュエルが始まるまでのカウントダウンが始まった。時間は六十秒である。
「へへっ、俺の力を見せてやるぜ」
ジェネラルはヘラヘラと笑いながら、背中の鞘から剣を引き抜いた。
(武器は
相手の装備を確認するキリト。武器と防具は鍛えられていると、その分だけ輝きを放つ。両方とも少し光沢があるのを見る限り、ある程度は強化されているのだろう。
しかし、武器を鍛えている回数はキリトの方が上である。ベータテスト時代に攻略の最前線にいただけあって、どんなモンスターを狩ればドロップするのか、どんなクエストを攻略すれば手に入るかといった、強化に必要な素材を効率よく集める方法を熟知している。現に昨日も鍛冶屋でアニールブレードを鍛えたばかりなのだ。
問題は相手の実力である。武器のカテゴリを特定できたのは、ただ単に剣の形をしていることと、ベータテスト時代に見たことのあるものだったからだ。
両手剣はその名の通り両手持ちの武器である。片手直剣と比べてやや重量があり、ソードスキル速さ・正確さに欠ける分、一撃が重いのが特徴だ。両手武器の中でも扱いやすく、ベータテスト時代も人気の高い武器だった。
鍔迫り合いにでもなれば武器に重さのあるジェネラルが有利だが、機動力なら武器が軽くてステータスがAGI寄りのキリトに分がある。とはいえ、まだ相手の戦い方を知らないので一概には言えないが。
それにしても、残り三十秒だというのにジェネラルは余裕綽々と言った感じでやや重い両手剣を片手で振り回している。何かを考えたり、作戦を立てたりしているようには見えない。人を馬鹿にしたような表情から感じ取れるのは、いかにも自分を舐めた相手を早くぶった斬りたいという邪な感情だけだった。
そこからキリトは、相手のステータスがSTR寄りであること、対して強くなさそうだという予想をたてる。
「精々、俺を馬鹿にしたことを後悔するんだな!」
開始まで残り十秒。ジェネラルはようやく剣を両手で持って構え、キリトも戦闘態勢に入る。エトワール達のためにデュエルという解決策を提案し、代表として戦う以上、負けるわけにはいかない。
エトワールら三人とジェネラルの仲間、いつの間にか集まっていたギャラリー達が見守る中、遂にカウントは0になった。
「うおぉぉぉぉぉ‼」
デュエルが始まると同時に、ジェネラルは雄叫びを上げながらキリトに向かって来た。そのまま薙ぎ払うように振るう刃を、キリトは一歩下がりつつ片手直剣を両手で持って防御した。
「オラオラオラッ‼」
ジェネラルは勢いに任せてそのまま乱暴に切り下ろし、袈裟斬りを何度も繰り返してキリトの剣を打ち付けまくり、その度にキリトは後ずさっている。
「ははっ、ジェネラルのアニキを挑発した割には大したことないな!」
「女の子の前でカッコつけようとしたのが間違いだったんですってー」
「いっけー兄貴!」
「そのまま畳み掛けろ!」
ジェネラルの仲間達はリーダーが押していると思っている。
一方、真剣な眼差しでデュエルを見ていたスバルは、エトワールとレグルスに問う。
「なあ、黒い髪の奴の戦い方、見ててどう思う?」
「うん、何だか……焦ってるようには見えない」
「確かに、戦いを諦めた男の目ではないな」
「やっぱり、そう思うか」
スバルから見ても、キリトはまるで相手を見極めている様な感じであった。
キリトが防御に徹しているのは二つの理由がある。一つは相手の実力を計るためだ。ベータテスト時代にピンからキリまで様々なプレイヤーとデュエルをしてきたが故に、だいたい相手の実力は分かるようになった。
相手の猛攻を剣で受け止め続ける中、キリトはジェネラルの実力を理解した。
(こいつ、弱いな)
剣の振り方は稚拙で力任せ、ただ単に押すことしか考えていない。対人経験のないビギナーであることは明らかだった。mobを倒すことには慣れてきたのだろうが、デュエルの相手は考えて動く人間である。アルゴリズムで動くモンスターとは違うのだ。
相手の力量は分かったが、防いでばかりではデュエルは終わらない。決着をつけるには、こちらもアクションを起こす必要がある。
「「「――――っ‼」」」
エトワールら三人は驚きのあまり目を見開いた。ジェネラルの攻撃を受け続けていたキリトが後ろに仰け反ったのだ。
ジェネラルは相手に隙ができたことに口元を歪め、両手剣を剣先を後ろに向けて横に構え始めた。両手剣基本ソードスキル《ブラスト》の発動体勢だ。
「もらったぁぁぁぁぁ‼」
刃がライトエフェクトで輝き、ジェネラルは勝利への一撃を放つ。
「――ふっ!」
「なっ――!」
しかし、強力な薙ぎ払いをキリトは華麗なバックステップで避けた。
これが防御に徹していた二つ目の理由である。キリトは相手に自分が押していると思い込ませて調子に乗らせ、わざと隙を見せて相手にソードスキルを使わせるように誘発した。後ずさっていたのは、いつでも技を避けられるよう距離を取るためだ。相手が退路を断つために、こちらを壁際に誘導する可能性も考えて周りにも気を配っていたが、そんな心配は無用であった。
(くそっ、動けねぇ‼)
ジェネラルはソードスキルの代償である技後硬直に襲われ、さっきまでの余裕とは真逆に焦り始める。当然、キリトはその隙を逃すはずがない。地に足を着けるとすぐダッシュでジェネラルの方に向かい、そのまま勢いよく片手直剣の剣先を突き出す。
「ぐっ――‼」
見事にジェネラルの腹に突き刺さった。手応えを感じたキリトは剣を勢いよく引き抜く。
【WINNER / Kirito 0:53】
巨大なシステムウインドウが、勝者を称えるファンファーレと共に出現した。《デュエル
「勝負あったな」
「……クソっ、覚えてやがれ! 行くぞ、お前ら!」
キリトが凛と勝利宣言すると、ジェネラルは捨て台詞を言い放ち、仲間達と共に不快な表情を隠す気もなく去っていった。潔く負けを認めたわけではなさそうだが、難癖をつけられなかっただけましだろう。
ふう、と一息つくキリトに、エトワールら三人が歩み寄ってくる。
「キミ、ありがとね。ホント助かったよ!」
「どういたしまして。それじゃ、俺はこれで」
「ちょっと待て」
お礼を言うエトワールにキリトは何気なく返してその場を去ろうとしたが、スバルに呼び止められる。
「さっきのデュエルを見て、対人戦に慣れていた様子から俺と同じじゃないかとは思ってたけどよ、まさかお前だったとはな、キリト」