ソードアート・オンライン インテグラルファクターX ーアインクラッド・メモリーズー 作:No 77777
「さっきのデュエルを見て、対人戦に慣れていた様子から俺と同じじゃないかとは思ってたけどよ、まさかお前だったとはな、キリト」
「…………はあ、やっぱり覚えてたか」
キリトは観念した。デュエルに勝てばメッセージが出現するのは分かっていた。それでバレる可能性が大きいことも承知の上でエトワール達を助けたのだ。
「その様子じゃ、俺がスバルだと分かってたようだな。いつから気づいてた?」
「……口論で、お前の仲間が名前を言った時からだ」
気まずそうに答えるキリトに、今度はスバルは「はあ」とため息をついた。
「ったく、分かってて助けておいて、終わったらすぐに消えるってのは、水臭いだろ」
「…………」
キリトは目を逸らした。スバルとは交流を持ったときから何度かゲームについて語り合ったことがあったが、人付き合いが不慣れなキリトは、内心では彼が自分をどう思っているのか不安であった。それは他のプレイヤー達との関係でも同じである。
そして何より、キリトは自分が人と深く関わる資格がないと思っている。デュエルが終わってすぐに去ろうとしたのも、そういう理由だ。
「あのさ、スバルはこの人と知り合いなの?」
話についていけないエトワールが割って入ってきた。
「ああ。昔、クエやったときに助けてもらって、それが縁で何度かパーティーを組んだ。フロアボス戦でも一緒に戦ったことがある」
「へえ」「ほう」
エトワールとレグルスは興味深そうに相槌を打った。ちなみにスバルの言う昔とはベータテスト時代のことである。現在、ベータテスターは訳合ってその事実を口にできないのだ。
「キリト、紹介する。こっちの背の高いカッコカワイイ女子は俺の姉貴のエトワール。そっちの細マッチョで物静かな男はレグルスで、俺と姉貴の幼馴染だ」
「よろしくっ」
「以後、宜しく」
エトワールは屈託のない笑みで、レグルスは落ち着いた感じの声で挨拶した。
「俺はキリト。スバルとは……さっき本人が言った通りの仲だ」
「つまり、友達ってことでしょ?」
「まあ……そう、なるかな……」
スバルのことを友達だと言い切れる自身が無かったキリトは、エトワールの言葉を曖昧に返した。
「ところで、キリトはお昼もう食べた?」
「え……まだだけど……」
「じゃあ、今日のお昼はさっきのお礼として、私たちがおごってあげる」
「いや、ちょっと待て姉貴。その指輪を買って、かなりお金を使ったはずだぞ。奢る余裕なんてあるのか?」
「まあ、それは私たちがワリカンすれば何とかなるでしょ。レグルスもいいよね?」
「……構わない」
「……はあ、仕方ないな。ま、俺もキリトに礼がしたいとは思ってたしな」
(何か、この二人も大変だな)
マイペースなエトワールに振り回されるスバルとレグルスを、キリトは気の毒に思った。
「ごちそうさまでした」
「いやー、ごめんねー。安いハムサンドぐらいしか奢れなくって」
「いや、選んだのは俺だからさ」
(俺達に気をつかってくれたんだな)
昼食を食べ終えたキリトにエトワールは笑ってごまかすように謝罪するが、彼は最もな理由をつけて許した。だがスバルは自分達の財布を考えてメニューの中で安い料理を選んだのだと察していた。
ちなみにエトワール達が選んだのも、キリトと同じものである。
一連の騒動が終わった後、四人は適当な店に入って食事をした。食事中はベータテスト時代の話で盛り上がるが、キリトは勇者プレイや失敗談といった、自分の話題をスバルが出る度にあやふやになったり抗弁したりして気疲れしてしまう。おかげでキリトは飯を食べ終えるのが一番最後になってしまった。
「ところで、あのデュエルは実に見事だった。相手に隙ができたと見せかけて、攻撃を誘って隙を作らせるとはな」
食事中、自分から会話に入って来なかったレグルスがデュエルの話を切り出した。するとキリトは、好きな分野に夢中なオタクのように笑顔で語りだす。
「ああ、デュエルはプレイヤー同士の戦いだからな。mobと戦う時のようにはいかない。勝つために必要なのは、まず相手がどんな戦い方をするか考えることだ。そのために、開始までの六十秒間に相手の装備を見る必要がある。例えば、さっきのジェネラルって奴は両手剣を持っていたから、一撃の重さを重視するタイプだと予想できる。次に、デュエルが始まったら相手がどう出るかを見ることだ。ジェネラルはただ闇雲に剣を振り回していたから大したことない。でも実力者同士だと駆け引きが重要になってくるし、場合によってはこちらから攻める必要も出てくる。それから、後は――」
「ちょっと待って。話が長いんだけど」
途中、エトワールが遮った。表情には疲労の色が見える。デュエルなどしたことのない上に話の内容が細かいため、彼女の頭がついていけなかったのだろう。
「ああ、悪い」
つい夢中で一方的に話してしまったことにキリトは謝罪し、スバルは姉の様子を見てつい笑ってしまった。
そんな中、普段は落ち着いているレグルスは僅かに口角を上げた。そして、興味津々でキリトに尋ねる。
「それで、過去にお前が戦った中で強いプレイヤーはいたか?」
「えっと、そうだな……」
キリトは腕組みして記憶を遡る。
「強い奴はけっこういたけど、印象に残ってるのは剣捌きが早いクロムと、盾で防いでからの突きが正確なヒロに、トリッキーな動きで翻弄するジョーカー。それから、一番厄介だったのはZだな。まるで未来を見ているみたいに攻撃を避けられて、何度も反撃を食らったよ」
「確かにな。けど俺的には、ポルックスやシエルも引けを取らないぜ。アイツら、今頃どうしてるんだろうな?」
「……ああ……そうだな……」
何気ないスバルの言葉に、キリトの心がチクリと痛んだ。
自分が『はじまりの街』置いていったのは、リクとコハル、クラインだけではない。ベータテスト時代に、共にゲームを楽しんだ仲間やライバル達も見捨ててきたということが、今になって分かったのだ。
そんなキリトの気持ちに気づいたのか、スバルは言う。
「キリト、みんな生きていくのに必死なんだ。あまり思い詰めるなよ」
「スバル……」
かつての仲間の言葉で、キリトは少しだけ気持ちが軽くなった気がした。
そんな中、レグルスが静かに立ち上がった。
「……キリト、助けてもらっておいて何だが、一つ頼みがある」
「レグルス?」「おい」
真剣な表情をするレグルスに、エトワールとスバルは何か嫌な予感がした。幼馴染の姉弟は、レグルスがSAOを初めた理由と話の流れからして、キリトに何を頼もうとしているのかを察しているのだ。
少しの間を置き、物静かな細マッチョの男は両手をテーブルにつけて頭を下げ、口を開いた。
「……俺とデュエルしてくれ」
「……は?」
突然の申し出に、キリトは間抜けな声を出してしまった。
「先程のデュエルを見て、更にお前の話を聞いてウズウズしてきたんだ。俺はお前と戦ってみたくなった」
「い、いや、ちょっと落ち着けって」
レグルスは冷静さを保っているように見えるが、キリトはどこか並ならぬオーラを感じていた。
その隣でスバルは「はあ」と、本日何度目か分からないため息をついた。
「キリト。悪いけどよ、レグルスの我儘に付き合ってやってくれないか?」
「レグルスって、一対一のバトルを見るのもするのも好きなんだよねー。SAOだって、デュエルがあるからやりたくなったみたいだし」
「そ、そうなのか」
エトワールの苦笑いの弁護にキリトはとりあえず納得したが、内心では困惑している。
SAOはMMORPGなので、本来ならモンスターを狩りつつフィールド・ダンジョンを探索し、ボスを倒すのを楽しむもの。なのにデュエルをやるためにプレイするのは珍しい方である。
キリトは「うーん」と少し考えた。レグルスが自分から申し出たことを考えれば、よほど腕に自信があるのだろう。三人はまだ攻略を決めたわけではなさそうだが、そうなった時のために、レグルスの才能と実力をここで確かめておくのも悪くない。
「分かった。相手になるよ」
「ありがとう。よろしく頼む」
既に顔を上げていたレグルスが快く手を出すと、キリトは笑顔でその手を握って握手を交わす。
こうして、キリトとレグルスのデュエルが成立したのであった。
今回、新たなパロキャラとオリキャラが出てきました。
パロキャラはキリト、オリキャラはスバルの方が名前を挙げています。パロキャラあ出た原作のヒントは、クロムがアトラス、ヒロはクローバー・ワークス、ジョーカーはその両方です。