ソードアート・オンライン インテグラルファクターX ーアインクラッド・メモリーズー 作:No 77777
2022年 12月2日 第一層 迷宮区
「はあぁぁぁ‼」
雄叫びを上げながら、リクは亜人系モンスターである《ルインコボルド・トルーパー》に突進系ソードスキル《ソニックリープ》を放つ。
キィィィィィン‼
攻撃は抵抗するかの如く振りかざした手斧に阻まれた。
だが、想定の範囲内である。
「ジョーカー、スイッチ!」
「分かった!」
リクの合図で前に出た黒髪パーマのイケメンは、技後硬直で動けないにリク代わって素早く前に出る。
敵はリクの技を何とか相殺できたものの、重い一撃を防いだために硬直時間を課せられてしまう。
隙をついてジョーカーは短剣ソードスキル《サイドバイト》で敵の腹を横一線に薙いだ。
ガァァァァァ‼‼
武装獣人は苦悶の雄叫びを上げながら、ポリゴン片となって消えた。
「ふう……これで十体ぐらいは倒したかしら?」
ミトは一息ついてから、パーティーメンバーに尋ねる。
「正確には十二体だね」
「クロウさん、正確ですね」
物腰の柔らかそうなイケメンが訂正すると、コハルは素直に関心した。
「そろそろ休まないか? 確か、近くに安全地帯があったはずだ」
「そうだね。ドロップ品が集まったのかも気になるし」
スバルの提案にヒロが賛成し、他のメンバーも頷いた。
現在、リクとコハルはキリト、マーベラス達とは違うプレイヤーとパーティーを組んでいる。メンバーはジョーカー、クロウ、ヒロ、スバル、ミトだ。
昨日の夜、エトワールが他のプレイヤーとパーティーを組んでみようと提案したのだが、難色を示すプレイヤーもいた。だがZは「攻略を目指すなら、仲間のことは知っておいたほうがいい」という助言で、最後は全員が賛成したのだ。
編成には時間を掛けており、組みたい相手、装備、ステータス、人数、ベータテスト時代の経験を考慮したうえで何とか決まった。
リクはキリトと組みたかったのだが、エトワールと取り合いになったためジャンケンで決めることになり、敗北。
ちなみにレグルスはデュエルで決めることを提案したが、室内でやるには狭い。外でやるにも、万が一他のプレイヤーに見られたら色々と面倒になると周りから説得されたため、断念した。
スバルがリクと同じパーティーにいるのは、盾持ちのヒロが一人だけだとバランスが悪いこと、キリトの友達であるリク、コハルとも交流したいからという理由だ。
キリトの方はマーベラス、カストル、ポルックス、エトワール、レグルス、クロム、Kの七人と共に行動している。金髪の紳士もキリトに興味があったため、組み合わせに悪い気はしていない。
Zはソロで行動しているが、何をしているのか分からない。アルゴの方も相変わらず一人で情報収集をしている。
それぞれが目的を持って行動している中、リク達は街で受注したクエストを受けている最中だ。
達成条件は、先程倒した《ルインコボルド・トルーパー》のドロップするアイテムを五つ集めて届けるというものだ。
リクとコハルが最初に受けたクエスト同様、収集系の中に討伐系が混ざった面倒なものだが、コル、経験値が稼げる上に報酬も良い。
問題は倒すモンスターの強さだけだが、リクとコハルはマーベラスと組んでいた時にジョーカー、ヒロ、スバル、ミトはベータテスト時代に戦い方を覚えており、唯一初見だったクロウも早く対応できた。
安全地帯までたどり着くと、それぞれ壁に背中を預けて腰を下ろす。
ヒロの言った通り、全員ウインドウを開いて目的のアイテムがあるかどうか確認し、それぞれが持っている分を合計した。ギリギリ五つある。
「よし、後は依頼主のところに持っていけばクリアだな」
リクが言った途端、メッセージの受信音が聞こえた。他のみんなも同じような反応を見せる。
まさかと思い、まず送信元を確認する。
「アルゴからだ」
「え、私も来たけど……」
リクが送り主の名前を出すと、どうやらコハルも同じだったようだ。仲間達も「俺もだ」「僕も」「私も」と手を挙げた。
ここにいるメンバーが同時に情報屋からメッセが来た。考えられる理由は一つしかない。
全員、ほぼ同時にアルゴからのメッセを開く。
『攻略会議が今日開かれることになっタ。開始時刻は十五時ちょうどダ』
* * *
「今日の夕方か。随分と急だな」
同じ頃、キリト達もメッセの内容を確認していた。
リク達と違って道中だが、モンスターを倒したばかりで、次にポップするまで読む余裕ぐらいはある。
「たぶん、最前線のパーティがボス部屋にたどり着いたか、その手前まで来たってことだろ」
ポルックスの予測は当たっているだろうと、誰もが思った。
「SAOがデスゲームになってから、一ヶ月近くになるからね。一日でも早くプレイヤー達に希望を与えようって考えかもね」
マーベラスの言う通り、第一層の攻略が未だにできていないが故に、百層クリアなんて無理と思い込んで絶望している人達は少なくない。
現に攻略の最前線に立っているプレイヤーは、今生き延びている八千人の中で一割にも満たないのだ。
長期的に見れば、攻略にはもっと多くのプレイヤーが必要になる。だからこそ、SAOは攻略できることを証明しなければならない。
「じゃあ狩りはこれくらいにして、そろそろ町に戻った方がいいんじゃないかな? もうすぐ正午だし」
「うん、丁度お腹空いてきたところだしね。ごはんは何食べる?」
「それは町に着いてからでもいい」
クロムの提案をエトワールはすぐさま賛成したが、後のマイペースな発言にレグルスはツッコんだ。
「俺はもう少しイケるけどな」
「K、これ以上はマナー違反だからな」
「じゃあ、仕方ないか」
Kはまだやる気マンマンだが、カストルに正論で注意されて納得した。
「それじゃ、帰るか……」
見切りをつけ、キリト達は踵を返した。
はぁぁぁぁぁ‼
ちょうどその時、裂帛した声が迷宮区の廊下に響き渡る。
さすがにキリト達は反応した。声の大きさからして、そう遠い場所ではない。
「ねえ、今女の人の声聞こえなかった?」
エトワールが尋ねると、他のみんなも頷く。
甲高い声質からして、声の主は女である可能性が高い。
「見に行かない? ちょっとだけ」
「い、いや、そっとしておいた方がいいんじゃないか?」
「そうだぜ。邪魔しちゃ悪いだろ?」
エトワールの提案をカストルとポルックスはオブラートに包んで反対した。リアルの女性に苦手意識のある双子の兄弟は、本心ではあまり関わりたくないのだ。
「けど、そのプレイヤーがどんな状況なのかは分からないだろ。もしピンチなら、助けることも考えて行ったほうがいいと思う」
「確かに、キリトの言う通りだね」
「うん、俺もそう思う」
「同感だ」
「ああ、俺もそのプレイヤーを見ていたい」
キリトの考えにマーベラス、クロム、レグルス、Kも賛成し、双子の兄弟は互いに顔を見合わせ「はあ」とため息をついた。
「決まりだな。声はあっちからだな」
キリトが剣で示した方へ、メンバー達は歩いていく。
聞こえてくる女性の声、モンスターの叫び、武器同士がぶつかり合う金属音を頼りに進んでいくと、曲がり角で遂に見つけた。
武装獣人と戦う、フード付きのケープを羽織った細剣使いのプレイヤーを。
「ふっ……はぁぁぁ!」
「ねえ、あの人かな?」
「多分、そうだと思う」
エトワールに尋ねられたキリトは答えた。百パーセントとは言い切れないが、さっきまで聞こえていた声と同じはずだ。
見るかぎり、戦っているのはそのプレイヤー一人だけ。他に仲間がいる様子ではない。
「みんな、あれ!」
クロムが声を上げた頃には、女性プレイヤーの細剣はライトエフェクトによる輝きを放ち始める。
ソードスキルの発動体勢に入ったのだ。キリトは剣を体の中心に構えている状態から、細剣の基本技《リニアー》だと分かった。他のみんなもベータテスト時代や公式サイトの動画で見ている。
「「「「「「「――――――‼」」」」」」」
女性プレイヤーが放った一撃に、その場にいた全員が目を丸くし、思わず見とれてしまった。
視認を許さないほどの凄まじいスピード、技を出した時の美しさ。元ベータテスターのキリト、クロム、ポルックスの三人から見てもその完成度は高い。
これがキリトと、後に《閃光》と呼ばれる女性プレイヤーの運命的な出会いであった。
タイトルの通り、遂にキリトが未来の正妻と出会います。
次回は彼女とエトワール達の間で一悶着ありますが、果たして?