ソードアート・オンライン インテグラルファクターX ーアインクラッド・メモリーズー 作:No 77777
十四時五十分。アインクラッド最初となる攻略会議まで残り十分となる中、噴水広場にはキリトを始めとするプレイヤー達が集まっていた。
キリトの隣には、迷宮区で出会った細剣使いの女性プレイヤー――アスナもいる。
パーティーが町に入ってから解散した後、キリトはエトワールら三人の泊まっているNPCベーカリーで共に昼食をご馳走になった。
それでもまだ少し時間に余裕があったため、エトワール達は迷宮区で手に入れた素材で武器を強化すべく鍛冶屋へ、キリトはポーションを購入するために店に立ち寄ることにしたのだ。
用事を終えたらそのまま広場へ向かうことにして別れたのだが、買い物を終えたキリトは行く途中でベンチに座っているアスナを見かけたのだ。
町中でもフードをかぶっていたアスナは、ちょうど黒パンを食べようとしていたところだった。おせっかいがしたくなったキリトは隣に座り、前の村のクエスト報酬で手に入れたクリームを分けてあげたのだ。
黒パンに塗って食べたアスナは、かじりつくように早く食べていた。口では言わなかったが、無我夢中で食べていた様子を見るに美味しかったに違いない。
それからは共に噴水広場へと向かい、今に至る。親睦会に参加していたメンバーは既に到着していた。
ただ、アルゴだけは離れた場所の物陰から様子を伺っている。アルゴは攻略には参加こそしないが、事の成り行きは気になるようだ。
キリトは周りを見渡し、参加者の人数を数える。
(五十五人、か……)
キリトから見れば少ない数だった。
SAOは最大七人までの一パーティーを八つまで束ね、最大五十六人までの
(……こんなに、たくさん……)
一方、アスナはこの人数を多いと認識していた。
誰でも死ぬのは怖い。だから死のリスクが大きいフロアボス戦に参加するのは少ないと思っていたのだ。
キリトとは対象的だが、少なくともアスナは少しだけ希望を感じられた。
とりあえず二人は階段に腰掛ける。キリトはリクと目が合ったが、互いに目を反らした。
親睦会では、会議では知り合いだとバレないようにするため、話しかけないことを事前に打ち合わせている。元ベータテスターだとバレる可能性を少しでも下げるためだ。
「ハッ、お前ら来てたのか」
キリトは聞き覚えのある声に反応した。だが、それは自分に向けられたものではなかった。
「三日前、迷ってたって聞いたからな。ビビって来ないのかと思ってたぜ」
「あれから考えて、攻略するって決めたの」
どうやら、ジェネラルとエトワールが口論している最中のようだ。ジェネラルの挑発的な発言に対してエトワールの声は不機嫌そうで、一緒にいるスバルとレグルスも表情は険しい。
「そいつは良かった。せっかくの高価な指輪が腐っちまうかと思ってたぜ」
「そうならなくて、よかったね」
エトワールのそっけない態度にジェネラルはチッと舌打ちをする。そんな光景を見ていたキリトは「はあ」とため息をついた。
「兄貴、そいつらを助けたヒーローも来てるぜ」
仲間の一人が右親指でキリトの方を示すと、ジェネラルはそちらに視線を向けて近づいてくる。
「テメェも来てたか。ま、あれほどの実力者なら、来てもらわなきゃ困る」
(お前は大して強くなかったけどな……)
偉そうなジェネラルに、キリトは無言のまま心の中でツッコんだ。
デュエルしたことをストレートに言わないのは、当事者の一人だという事実が周りにバレないようにするためだろう。
デスゲームでデュエルした自分がどう思われているかを気にしているのか、ただ単に負けたことを知られたくないのかは分からない。あるいは両方かもしれない。
「言っておくが、強いからって調子に乗って、足引っ張んじゃねえぞ」
「……ああ、善処するよ」
キリトが穏便に返すと、ジェネラル達は空いている階段へと移動して座り込んだ。
「あの人達、知り合い?」
「あ、ああ、数日前にちょっとな……」
アスナに尋ねられたキリトは、曖昧に答えた。
詳しく話すと、デュエルしたことまで話さなければならなくなる。今のSAOでそんなことをしたなんて知られたら、正気の沙汰ではないと思われてしまうかもしれない。
「随分と上から目線で、生意気な人たちね」
アスナの言う通り、それはキリトも感じていた。
現在、SAOで最前線に立つプレイヤーは一割未満。そういう現実がジェネラル達を驕らせ、自分達が勇者なのだと思いこんでいるのだとキリトは推測している。
やがて攻略会議の開始時刻――十五時となった。青髪をした一人のプレイヤーが立ち上がり、噴水の前にやって来る。
「はーい! それじゃ、始めさせてもらいます!」
その人物こそ、攻略会議を計画した張本人だ。その場にいた全員が気を引き締める。
「みんな。オレの呼びかけに応じてくれてありがとう! オレはディアベル。職業は気持ち的にナイトやってます!」
爽やかな笑顔で言うと、周囲から「ははは」と笑いが沸き起こる。
「ジョブシステムなんてねーだろ!」
「勇者志望かぁ⁉」
「かっこいいぞ、ナイト様ー!」
茶化されても、ディアベルは嫌な顔一つしない。参加者の緊張を解くことが彼の狙いなのだ。
ディアベルとはイタリア語で悪魔を意味する言葉だが、爽やかさといい、名前に似合わず騎士っぽい雰囲気をしている。
「それじゃ、まず最初にみんなに伝えたいことがある」
青髪のナイトは先程の笑顔から、真剣な表情に変わった。
「……今日、オレたちのパーティーが迷宮区の最上階へ続く階段を発見した。つまり、明日か明後日には、ついに辿り着くってことだ。第一層の……ボス部屋に!」
その事実を聞き、「おおっ!」と感嘆の声を出す者、ざわめき出す者、いよいよかと言わんばかりに表情を引き締める者と様々な反応を見せる。
「ここまで来るのに一ヶ月もかかったけど……それでも、オレたちは示さなきゃならない。ボスを倒し、第二層に到達して、このデスゲームもいつかきっとクリアできるって、プレイヤーみんなに伝えなくちゃならない。それが最前線にいるオレたちの義務なんだ! そうだろ、みんな!」
非の打ち所がない立派な演説にパチパチ! と拍手が鳴り響く。
ディアベルのおかげで参加者達の士気は高まっている。攻略という一つの目的のために、今ここにいるプレイヤー達の思いがまとまっていることをキリト達は感じていた。しかし……
「ちょお待ってんか、ナイトはん」
そんなプレイヤー達の気持ちに水を差すかのように、最前列で座っていた一人のプレイヤーが声を上げる。
広場にいる全員がその人物を注視した。男性プレイヤーで、小柄だがガッチリした体格、中でもサボテンのように尖ったような茶色の髪が印象的だ。
男は立ち上がると、数歩前へ出る。親睦会に出たメンバーは、嫌な予感がしてならない。
「わいは《キバオウ》ってもんや。ボスと戦う前に、言わしてもらいたいことがある。こん中に、今まで死んでいった二千人のプレイヤーにワビぃ入れなあかん奴らがおるはずや」
キバオウは名乗ると、参加者達を見渡しながら濁声で言い出した。
それによって、会場は先程の盛り上がりから一転し、緊迫した空気になる。
「……キバオウさん、君の言う《奴ら》とはつまり……元ベータテスターの人たちのこと、かな?」
「決まってるやないか!」
ディアベルが厳しい表情を浮かべながら尋ねると、キバオウは断言した。
今、元ベータテスター達の恐れていることが現実になろうとしているのだ。
パーティーの上限ですが、原作では六人までですが、アイメモでは七人までにしています。そのため、レイドの上限も増えてます。
あと補足なのですが、アスナがフードを被っているため、ミトはアスナの存在に気づいていません。
いつ気づくのかはいずれ書きますので、お待ち下さい。