ソードアート・オンライン インテグラルファクターX ーアインクラッド・メモリーズー   作:No 77777

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総集編の後半です。


リクとキリト、ここ最近を振り返る

「…………暇だな、キリト」

 

「ああ……暇だな」

 

 リクとキリトは互いに気の抜けた感じで言った。

 現在、コハルがキリトの部屋のバスルームで入浴中。待っている男二人は時間を弄んでいる最中だ。

 こうなったのは夕方の狩りを終えた時、パーティーメンバーの一人であるエトワールが「明日に備えて、おふろで疲れを癒やそっと」と言ったのがきっかけだった。それを聞いたコハルは「SAOにお風呂があるんですか⁉」と驚いて詰め寄り、対してエトワールは、借りられる部屋の中にはお風呂がついているところもあるという話を弟のスバルから聞いたと答えた。

 コハルは自分も入らせてもらおうと一瞬思ったが、同じ部屋にいるスバルとレグルスも使うことを考えると迷惑ではないかと考え、言えなかった。そんなコハルの気持ちを悟ったリクは、親睦会でキリトの借りている部屋に入った時に『Bathroom』と書かれた部屋があったことを思い出して口に出すと、コハルはキリトに「お願いです、お風呂貸してください!」と必死に頼んだので、キリトはそれを承諾したのだ。

 レディーファーストということでコハルが一番に入ったが、男二人は明日に向けてしていたアイテム整理も終えてしまっている。リアルならスマホでチャットやらゲームやらで時間を潰せるが、浮遊城にそんなものはない。せめてトランプでもあればとリクは思ってしまうが、部屋にそれらしきものは見当たらない。

 

「キリト、明日はフロアボス攻略だけどよ、ここまで来るのにいろいろあったな」

 

「……ああ、そうだな」

 

 何気ないリクの言葉で、キリトは共にこの町に来てからの出来事を振り返り始める。

 キリトはトールバーナにたどり着いてから今いる部屋を借りた。それからは報酬にいいクエをクリアしたり、効率のいい狩場で経験値を上げたりしていたが、ある日町に帰った際にエトワール達とジェネラル達のオンリーワン商品を巡る諍いに遭遇したのだ。

 先にエトワールが購入したにも関わらず、ジェネラルは俺達に売れと迫ってきたらしい。雰囲気からして話し合いでは埒が明かないと思い、口論の中で同じ元テスターのスバルがエトワール側にいることも知ったため、エトワール達を助ける形で間に割って入ったのだ。

 キリトは問題を解決する方法としてデュエルを提案し、双方ともに承諾。ジェネラル側からはリーダーのジェネラルが、エトワール側は助っ人としてキリトが名乗りを上げた。理由はエトワール側の意見に賛同し、言い出しっぺでもあるからだ。互いに驚く上に、ジェネラルからは「ちょっと待て! テメェは関係ねーだろーが‼」と文句を言うが、キリトは軽い挑発で怒らせて了承を得させた。

 ルールは《初撃決着モード》の一本勝負で始まり、結果はキリトの勝利。ジェネラルは去っていった。

 エトワールにお礼を言われたキリトはその場を離れようとするが、スバルに呼び止められる。

 

『さっきのデュエルを見て、対人戦に慣れていた様子から俺と同じじゃないかとは思ってたけどよ、まさかお前だったとはな、キリト』

 

 結局、正体がバレてしまう。スバルは姉のエトワールと幼馴染のレグルスを紹介し、エトワールはお礼に昼食を奢ると言ってキリトをレストランへと連れて行った。食事中はベータテスト時代の話で盛り上がるが、食後にレグルスがデュエルの話を切り出す。

 

『それで、過去にお前が戦った中で強いプレイヤーはいたか?』

 

 キリトは特に印象に残ったプレイヤーの名を上げると、レグルスは俺とデュエルしてくれと申し出る。困惑するキリトだったが、彼の才能と実力を確かめるために受け入れた。

 場所をこのK・O農家の母屋の庭へと移し、デュエルを開始。ジェネラルの時とは違って接戦となり、やがてレグルスの思わぬ手で危うく敗北しそうになるも、キリトは咄嗟の判断で何とか防御して反撃し、勝利を掴んだ。

 生き残るために誰よりも早く、効率よくステータスを上げることに費やしてたキリトだったが、レグルスとのデュエルに夢中になってた間だけは、ベータテスト時代にゲームを楽しんでいた時の気持ちに、僅かな間だけ戻れた気がした。

 一方リクはその日の夕方、コハルと共にトールバーナを目指している最中であった。しかし、途中で男性プレイヤー達がダイアー・ウルフの群れに襲われている場面に出くわしてしまう。

 リクとコハルは助けようとしたが、三人のうち一人がすぐに攻撃を受けてHPバーがゼロになってしまう。その人はポリゴン片となって消え去り、コハルはあまりの衝撃に足が竦んでしまう。残る二人も殺られてしまい、必死に戦うリクは何とか敵を全滅させてコハルを守り切った。

 コハルの手を取って立ち上がらせ、何とかトールバーナにたどり着くが、次の日もコハルはショックで元気を出せなかった。リクはそんなコハルのためにベータテスト時代に美味しいと評判だったジュースを買うために離れるが、その間にコハルに話しかけてきた人物がいた。

 

(初めてアイツと会った時は、コハルの事でギクシャクしたな……)

 

 マーベラス。俯いたままのコハルが気になったその金髪の紳士は、話を聞いて『はじまりの街』に戻ったほうがいいと勧めるが、悪いタイミングで戻ってきたリクと一触即発の状態になってしまう。誤解していたマーベラスはデュエルを提案し、勝ったらコハルと関わらないという条件をリクに叩きつける。スポーツマンだったリクは承諾し、デュエルをすることになった。

 リクはマーベラスの軽量盾による正確かつ素早い防御と早い剣さばきに苦戦するが、両利きであることを活かした相手の意表を突く作戦で勝利を収めた。

 マーベラスは剣を交えた事で相手を知り、誤解していたことを伝えて謝罪。リクも納得して和解した。

 丁度その時、デュエルを見ていたディアベルに声を掛けられる。フロアボスに挑戦するメンバーを探しており、リク達をスカウトしに来たとのことだ。マーベラスは参加の意を示すが、キリトを探しに来たリクとコハルはすぐには決められないと返事を保留にする。

 その後、マーベラスはリアルでも腐れ縁である双子の兄弟――カストルとポルックスを紹介。迷惑を掛けたお詫びとしてキリトを探すのを手伝うことを約束した。コハルもこれから先の事を考えた上で、攻略会議に参加することを決意したのだ。

 

(それから親睦会に参加して、ようやくキリトに会えた)

 

 リクとコハルはマーベラス達としばらくパーティーを組み、キリト探しと平行して狩りをしていたが、ポルックスはZから元テスター達を集めて親睦会を開く趣旨のメッセを受け取る。何かあると察したポルックスは仲間達と話し合った末、参加することにした。

 夜、マーベラス達と共に集合場所であるK・O農家へと向かったリクとコハルはそこでついにキリトと再開した。さらにキリトに助けられたエトワール達にベータテスト時代に最前線にいたジョーカー、クロム、ヒロ、ミト、浮遊城でジョーカーと友達になったクロウ、リアルでもZと知り合いのK、情報屋のアルゴ、そしてZが集まってきた。

 自己紹介を済ませたところで、Zは親睦会を開いた目的を伝える。それは、元テスター達のせいで攻略会議が荒れるというもので、その対策を伝えるというものだった。

 

『それで今、ビギナーたちの間である噂が流れている。二千人のプレイヤーが死んだのは、元ベータテスターたちのせい、だってな』

 

 ベータテスターは知識面ではビギナー達よりも優位。タチの悪いテスター達はそれを利用し、狩場を荒らしてレベリングを妨害したり、クエストを独占したりしている。そのせいで、他のプレイヤーたちは強くなれず、最悪の場合には無理してフィールドに出た挙げ句に命を落とす。会議の当日は、誰かが元テスター達にその責任を追求する可能性が高いとのことだった。

 その後、最初の攻略会議ではZが危惧した通り、キバオウというプレイヤーが怒りの声を上げて主張したのだ。

 

『ベータ上がりどもはなぁ、こんクソゲームが始まったその日に、ビギナーを見捨てて消えよった。奴らはウマい狩場やらボロいクエストを独り占めして、ジブンらだけぽんぽん強うなって、その後もずーっと知らんぷりや』

 

 更には会議に参加している元テスター達に謝罪と賠償を要求する始末だった。

 Zが考えた作戦は、アルゴが作った攻略本が、元テスター達の協力によって作られていることをビギナーのKが伝えるというシンプルなものだ。

 作戦が実行されようとした時、それを先にエギルという黒人のプレイヤーが主張した。キバオウは反論できずに引き下がり、最悪の事態は避けられたのだ。

 それからは順調に進み、いよいよフロアボス戦は明日に迫っている。

 

(あ、そういえば、アスナは大丈夫なのか?)

 

 リクはふと、同じく攻略に参加する女性フェンサーのことを思い出した。

 二回目の攻略会議ではボス戦に挑むためのパーティーを作り、リク、コハル、キリトの三人はエトワールと同じパーティーに入らせてもらった。アスナは最後の一人で、あぶれていた(本人は否定していた)ところをエトワールに誘われたのだ。

 

「なあ、キリト。エトワールとアスナは知り合いなのか?」

 

「急にどうしたんだ?」

 

「いや、エトワールは親しげにアスナに話しかけてきた感じだったから、会議の前から面識があったのかって思ってな」

 

「まあ、会議の前に会ってはいたけど、出会った頃はケンカしてたからな。俺もあの場にいたけど」

 

 キリトはリクに、アスナに出会った時の事を語り出す。

 親睦会の次の日、キリトは参加者のみんなで予め決めておいたパーティーメンバー(エトワール、レグルス、マーベラス、カストル、ポルックス、クロム、K)と共に迷宮区で狩りをした。その帰りに裂帛した声がダンジョン内に響いたので、気になってその方向へ向かって行くと、一人のプレイヤーがmobと戦っている最中だった。そのプレイヤーこそアスナなのだ。

 細剣から放たれるソードスキル《リニアー》は元テスターのキリト、ポルックス、クロムから見ても完成度の高いものだったが、戦闘の運び方が危うかった。キリトが注意すると、アスナは「問題あるの?」と反発。更にアスナは三日か四日も安全地帯で野宿して狩りをしていたようで、やがて倒れてしまった。

 ジャンケンで負けたキリトがおんぶして運ぶことになり、やがて町に戻る途中の森で休憩中にアスナは目を覚ました。しかしお礼を言わず、冷たい態度のアスナにエトワールは遂にキレて口論となってしまう。エトワールの説教にも耳を貸さず、アスナは懲りずにまた迷宮区へと向かおうとしたのだ。

 そんなアスナを止めるために、キリトはこの日に攻略会議が開かれることを伝えた。アスナは自分を引き止める意図があると理解しつつも、町へと方向を変えた。

 キリト達もしばらくしてから町に着き、パーティーを解散。キリトは昼食を取り、店でポーションを購入してから広場へと向かったが、ちょうど黒パンを食べようとしているアスナと偶然にも再開。キリトは隣に座ると、前の村のクエスト報酬で手に入れたクリームを分けてあげた。黒パンにクリームを塗って食べるアスナは、無我夢中だったそうだ。

 

「そんなことが……」

 

 一連の話を聞いたリクは、アスナが精神的に追い詰められていたことを悟った。今も生きている八千人近くのプレイヤー達の中にも、きっとそういう人達はいるだろう。だとすれば、フロアボス戦に参加する自分達の責任は、彼らに希望を与えることを考えれば、より重大である。何としてでも、ボスを討伐せねばなるまい。

 

「でもまさか、アスナとミトが友達だったとはな」

 

「キリト、何でミトは最初の攻略会議でアスナに気づかなかったんだ?」

 

「うーん……アスナはフードを被ってた上に後ろの席だった。対してミトはそれより前の席にいて、アスナから見れば後ろ姿だ。互いに友達だとは気づきにくい」

 

「なるほどな」

 

 アスナの友達あるミトは元ベータテスターで、当時は屈強な男性のアバターであった。つまりネナベである。親睦会でミトが女性だったと知ったときは、参加していた元テスター全員(誘ったZは例外)が驚きを隠せなかった。

 そんなミトがアスナに気づいたのは、二回目の攻略会議が終了した後だった。編成したパーティーにはそれぞれ役割が与えられており、キリト隊とジョーカー隊はボスの取り巻き――ルインコボルド・センチネルの排除を任された。ジョーカーの提案で、少しでも部隊同士の連携に慣れるために狩りをしようという話になり、全員が賛成してさっそくフィールドに出ようとしたところ、急にミトはアスナにフードを取るよう要求したのだ。

 アスナは言う通りにすると、互いに顔を見合わせたことでリアルの友達だと認識した。話の過程でエトワールがアスナの名前を出したのがきっかけになり、感づいたのだろう。さらにミトは色々と話したいことがあるからという理由でアスナと共にパーティーを抜けさせてほしいと仲間達に頼み、ほぼ全員からOKをもらって離脱した。

 

「まあ、今頃は女子二人で色々と語り合ってるんじゃないか。SAOにダイブしてから今日までのこととかさ」

 

「ああ、アスナの事はミトに任せておけばよさそうだな。それよりキリト、一つ提案がある」

 

「ん、なんだ?」

 

 話をしている内に、リクは暇を潰す方法を思いついた。少し躊躇ったせいで間が空いたが、意を決して言った。

 

「俺とデュエルしないか?」

 

「ぶ――――――っ‼」

 

 牛乳を飲んでいたキリトはつい吹きこぼしてしまう。

 

「お前、いきなりなに言ってるんだ!」

 

「暇だから体を動かしたいんだ。それに、キリトも一回やってるだろ」

 

「いや、あれはエトワール達を助けるために仕方なくだな……はあ」

 

 キリトは観念した。どんな理由であれ、デュエルしたことに変わりはないのだ。実際には、レグルスの分も含めて二回なのだが。

 

「分かったよ。俺も暇だったし、お前がどれくらい強いのか確かめたいしな」

 

「なら、決まりだな」

 

 こうしてキリトはリクと共に、レグルスとデュエルした母屋の庭へと移動。後に二大英雄となるプレイヤー二人の最初のデュエルが始まったのである。

 しかし、風呂から上がったコハルが部屋に誰もいないことに気づき、外から金属がぶつかり合う音がして降りてきたところでデュエルを目撃。両者一歩も譲らない接戦だったが、注意されてデュエルは中断となってしまった。

 

 

 




総集編、いかがだったでしょうか?

 書くためにこれまでの話を読み返しましたが、書いた自分が忘れていた部分があったり、間違いを修正したりで大変でしたが、僕自身もリクとキリト、仲間達の歩みを振り返ることができました。

 次回はいよいよ初のフロアボス戦です。楽しみにしていてください。
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