ソードアート・オンライン インテグラルファクターX ーアインクラッド・メモリーズー   作:No 77777

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再開(後編)

「きゃあああ!」

 

 青イノシシ相手に短剣ソードスキル《サイドバイト》を放ったコハルだが、空振った挙げ句に転んでしまう。

 敵はコハルに向かって再び突進してきたが、リクが割り込んで剣で防御。とりあえず《スラント》を首に放ち、葬る。ベータテスト時代と全く同じ状況になってしまった。

 リクはコハルに歩み寄り、微笑んで手を差し伸べる。

 

「大丈夫か?」

 

「うん。ありがとう」

 

 リクの手を掴んだコハルは引っ貼られる勢いに任せて立ち上がったが、困り顔になってしまう。

 

「どうして攻撃が当たらないのかな? 教わったことは覚えてるのに」

 

「やっぱり、武器を変えたからだろう」

 

「うん、そうだよね」

 

 これは間違いないと二人は確信していた。

 そもそも、コハルがベータテスト時代に使っていた片手直剣と今使っている短剣では性能が全然違う。短剣は片手直剣と比べてリーチが短く、軽い。使い手に求められるのは、機動力を重視した戦い方なのだ。

 

「もし短剣が扱いづらいなら、片手直剣に戻すのも手だぞ?」

 

「ううん。まだ慣れてないけど、悪い感じはしないから。もう少し頑張ってみる」

 

 助言するリクだったが、コハルはまだ諦めずに使い続ける意思を示した。

 テニスプレイヤーだった頃に、自分に合った重さのラケットを選ぶことは重要であった。そんな過去の経験からのアドバイスだったが、まだ自分のスタイルに合わないとは思っていないようだ。

 とはいえ、ベータテスト時代は片手直剣と両手剣のソードスキルしか使っていないリクに、短剣による戦い方を教えるのは難しい。

 片手直剣でも機動力は大切だが、リーチの短い短剣ではそれがさらに重要になってくる。こればかりはコハルが経験を積んで学んでいくしかない。

 

「わかった。慣れるまでは俺がサポートしてやるから、頑張れよ」

 

「うん。ありがとう」

 

(せめてそれくらいの手助けはしよう。それが今の俺にできることだ)

 

 コハルのためにリクがそう思った時だった。

 

「おぅおぅ、お二人さん。初日から中がいいねぇ」

 

 突然、二人の前に青年が現れた。

 長身で顎髭を生やしており、額に赤いバンダナを巻いている。

 

「この人、コハルの知り合いか?」

 

「ううん。ベータテストの時には見かけなかったけど」

 

 リクとコハルは互いに囁き合いながら確認するが、二人にとって青年は赤の他人の様だ。

 

「まあ、そう警戒すんなって。俺、クライン。よろしくな!」

 

 クラインは親しげに自己紹介をした。

 警戒すんなと言われても、知らない人がいきなり話しかければ何か裏があるのではと思ってしまって仕方がない。

 

「で、俺達に何の用だ?」

 

「いや、女の悲鳴が聞こえたんでな。助けに行こうと思って全力疾走で向かったんだけどよ、まさかパートナーがいて、助けっちまったとはな。結局、俺の出る幕がなかったってことよ」

 

「は、はあ……」

 

「そ、そうですか」

 

 内心、リクとコハルは呆れていた。

 つまり、女性の前でカッコつけたいという下心でこちらに来たということだ。

 

「おーい、クライン!」

 

「「――――っ!」」

 

 別の男性の声が聞こえた。その方向を見たリクとコハルは、思わず目を見開いた。

 今こちらに近づいてくる男性プレイヤーは、かつてベータテストの最終日に二人を助けた恩人だったからだ。

 

「お前、まだmobも倒せないのに何一人で突っ走ってるんだよ」

 

「ああ、悪ぃ悪ぃ」

 

 呆れながら言う黒髪イケメンに対してクラインは軽い感じで謝罪すると、二人に向き直る。

 

「お前らにも紹介するぜ。こいつは」

 

「キリト!」「キリトさん!」

 

「…………え?」

 

 クラインよりも先に二人は黒髪イケメンの名を言った。当の本人は面食らう。

 

「なんだお前ら、知り合いだったのか?」

 

「お前たち、何で俺の名前を?」

 

「いや、何でって……ベータテストの最終日に、俺たちを強ザコから助けてくれただろ?」

 

「去って行く際、『待って下さい、せめてお名前を!』って私が呼び止めたんです。思い出せませんか?」

 

 キリトはリクとコハルのことを覚えていないようだったので、二人は記憶を呼び起こさせるために必死になった。

 

「……ああ、あの時の! それで、ええっと……名前は……」

 

「リクだ」

 

「コハルです」

 

 名前だけは思い出せなかったようなので、改めて名乗った。

 二人は少しがっかりしたが、あの時の状況は思い出してくれたので良しとした。

 

「何だお前ら、知り合いだったのか?」

 

「ああ、実はな……」

 

 クラインが予想外の急展開についていけないため、リクは自分たちの出会いについて簡単に説明した。

 特訓中に突然現れた強ザコに苦戦する二人のもとに颯爽と現れ、華麗に敵を瞬殺して去っていく。窮地に駆けつけたヒーローの如く登場したキリトの活躍を聞いたクラインは、悔しそうな声を上げる。

 

「んだよそれ! そんなアニメや特撮に出てくる主人公の様な活躍しやがって! 羨ましいぞ!」

 

「いや、あくまでそういうロールプレイだから!」

 

「あ、ところでキリトに相談があるんだけど、いいか?」

 

 クラインに詰め寄られるキリトに助け舟を出す形で、リクは話を逸した。

 内容はコハルが短剣を使いこなせていないことだ。片手直剣で戦ったときは上手く攻撃を当てられていたことも伝える。

 一通り話を聞いたキリトは少し考えた後、答えた。

 

「戦い方をまだ見たわけじゃないから、はっきりとは言えないけど、攻撃モーションが合ってないんじゃないか? 短剣は軽いから、力を入れすぎないように調整して、システムのアシストに合わせてみたらどうだ?」

 

 説明を聞いたリクとコハルは少し納得した。

 武器が変われば技も変わるのは当然だが、ソードスキルは武器の特徴を生かしたものが多い。

 基本、重量級の武器は初動と動きが遅い分、一撃が重くて威力が高い。逆に軽量級は一撃が軽い分、初動と攻撃スピードが早い。

 通常攻撃でもソードスキルでも、武器の特徴を理解して力加減をコントロールすることが、攻撃を当てる上で大切なのだ。

 

「わかりました。次に戦う時は、少し力を緩めてみます」

 

 コハルが話を理解したので、リクはとりあえず安心した。

 ベータテスト時にキリトが使っていたのは片手直剣であったため、性質の違う短剣の扱い方についてアドバイスができるのかどうかという不安があったからだ。だが説明には説得力がある上に、コハルならできそうな気がしたので大丈夫だろう。

 

「よーし、こうして会えたのも何かの縁だ。キリト先生のバトル講習会を開くとするか!」

 

「いいですね。そうしましょう」

 

「え? いや、何勝手に」

 

 クラインの提案にコハルは喜んで受け入れるが、話が勝手に進んでいる。キリトは止めようとするが、リクに肩を掴まれる。

 

「いいじゃないか。みんなでワイワイやるのも悪くない」

 

「……ま、それもそうか」

 

 結局、折れたキリトは承諾し、四人でバトル講習会を始めることになった。

 まずパーティー申請とフレンド登録を済ませ、その後は出現したmobと一対一で戦闘。短剣を使いこなせていないコハルと、未だmobを倒していないクラインを交代させながら極力攻撃させ、危なくなったらリクがサポート、キリトは戦い方を見て的確にアドバイスする。

 途中で休憩を挟んだ時は安全な場所に移動し、ポーションを飲んで(その時クラインが「うわっ、まっず!」と言った時のしかめっ面に三人はつい笑ってしまった。)回復しつつ、互いにどういう経緯で出会ったのかを話した。

 クラインはたまたま路地を走っていくキリトを見かけ、迷いのない表情と行動っぷりから、彼がベータテスターであると判断し、追いかけて呼び止めたとのこと。「ちょいとレクチャーしてくれよ!」と頼み込み、パーティーを組んだそうだ。

 リクもベータテストの最終日にコハルと出会い、彼女に戦闘の手ほどきをし、その後は先程話した通りキリトに助けられたことを話す。

 一通り話し終えたところで、四人は倒したmobがリポップしたのを確認すると、訓練を再開。

 夢中になっている内に、やがて夕日が沈む時間帯になった。

 

 

 

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