自称【流浪の魔法使い】   作:へたくそ

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いざこざ

どこまでも続く砂漠。そして砂漠を照り付ける二つの太陽。草木も育たないそんな地を1人の人間が歩いていた。その人間は薄汚れたローブで体全体と顔を覆い、右手にが身の丈程ある木の杖を持っている。

 

今この人間が歩いている砂漠をよくよく見てみると、チラホラと生き物の骸骨が転がっている。その中には人間ものらしき骸骨もあった。そんな骸骨を横目に歩いていると、目の前の砂漠が大きく盛り上がり巨大なワームが現れる。全長は30メートルはあるであろう巨体。この砂漠の地に住むモンスターだ。周りに転がっている骸骨は皆、この巨大ワームに襲われたもの達の末路。この砂漠全体がワームの住処となっている。この砂漠に入れば最後、一般人が叶う相手ではない。

 

 

 

「サンドワーム、ここまでの個体が存在するとは。ここまで大きな個体は初めて見た。売ったらいくらくらいするかな」

 

 

 

しかし、そんな事はこの男にとっては取るに足りない事でしかない。ぞれは何故か、答えは単純明快である。何故なら・・・

 

 

 

「ファニシ・ネロ」

 

 

 

彼がそう唱えると、サンドワームの下から大きな水の渦が現れる。その渦はあっという間にサンドワームを覆う。それと同時にサンドワームは大きな悲鳴のような声を上げる。その悲鳴は数キロ先にも大きな影響を及ぼすと思えるくらいの巨大な悲鳴で、大気が揺れているのが分かった。しかし、彼はそれに全く動じず、静かにサンドワームが閉じ込められている渦を見ていた。そして10秒後、渦はなんの前ぐれもなく弾け飛んだ。そしてそこには、さっきまでいたサンドワームが消えていた。

 

 

 

消滅の水(ファニシ・ネロ)。文字通り、対象を一欠片も残さずこの世から消滅させる水を生み出す魔法。神々から禁じられた魔法の一つ、消滅魔法の一種。何故そんな魔法を彼が使えるのか。それは先ほど言いそびれた答えと同じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはハサル王都にある冒険者ギルド。ここでは冒険者にクエストを依頼したり、モンスターの買取などを行なっている機関。王都には他にも2つの支部があり、王都の安寧に貢献している。だが冒険者には荒くれ者が多く、こんな真っ昼間から浴びるように酒を呑む者は少なくない。

 

これだけ聞くと王都の中枢機関の一つとは思えない程の有様である。だが有事の際、彼がこの王都に大きく貢献した事は一度や二度じゃない。それこそ、この王都が誕生してから500年余り、数え切れないほどの危機を乗り越えてこれtらのは間違いなくギルド、ひいては冒険者達のおかげだった。

 

 

 

「おいそこの姉ちゃん。ちょっとこっち来いよ」

 

「申し訳ございません、まだ仕事があるので・・・」

 

「あぁ?俺を知らねえのか?Aランク冒険者『一閃の鬼人』だぞ?俺の言うことが聞けねえのか?」

 

 

 

しかしここ最近では一部の冒険者で目に余る行動があるのも事実だった。冒険者にはランクが存在し、低い順からE ,D ,C ,B ,A ,AA ,Sとなっている。Bランクからは王城で国王の側近として仕える騎士団と同等級の実力と権力、更には二つ名を与えられる事により他の者から認知されやすくなる。

 

例えばこの男、一閃の鬼人を名乗るAランク冒険者。Aランクともなるとこの王都でも数少ない権力の持ち主で、国王に対する発言も許される。例えば、Bランク冒険者が「モンスターの大群が迫ってきた」と国王に進言しても、まずはモンスターの大群の有無の確認、そしてその存在が王都に害をなす存在かを国王が見極める。そこで害があると判断したならば軍を動かし、なければそのまま放置する。

 

だがこれがAランク冒険者の一言となると、すぐ様に国王は軍を動かす。BランクとAランクではそこまでの差があるのだ。

 

 

 

「で、ですがこちらも仕事なので・・・」

 

「仕事ならAランクの俺を奉仕しろって言ってんだよ!」

 

 

 

男はギルドの受付嬢である女性を無理やり引っ張り、隣の席に座らせる。そして男は女性を逃さないように肩に手を回し、いかがわしい手つきで女性の体を触り始めた。

 

 

 

「やっぱりな。前々かいい女だとは思っていたんだよ。光栄に思え、お前は今日から俺の女になるんだ!」

 

「ま、待ってください!離してください!触らないで!誰か助けてください!」

 

 

 

女性は必死に抵抗するが、相手はAランク冒険者。一般の女性の力でどうこうできるはずもない。周りの冒険者達も、流石にAランク冒険者が相手となれば関わりたくもなく、見て見ぬふりをする。

 

しかし他の受付嬢達は違った。

 

 

 

「エルド様、私達受付嬢はあなた方様の奉仕を目的として働いてはおりません。その子を離して下さい」

 

 

 

エルドと呼ばれる男の座っている席の後ろには、5人の受付嬢が立っていた。その立ち姿はあまりにも綺麗な姿で、高貴な気品をさえも感じる。それと同時に、言葉にはできない程の威圧感を感じた。

 

 

 

「あぁ?なんだお前。俺に指図する気か?」

 

「指図というわけではございません。ですが、私たち受付嬢の役割はあくまでも冒険者様方が受けるクエストのサポートや、採取した薬草や資源、モンスターの買取です。エルド様の私的欲求を満たすために働いてるわけではございません。もし、このままその子を離してくださらないというのなら、こちらとしても、ギルドマスターにご報告する事になりますが、いかがいたしますか?」

 

 

 

ギルドマスター。文字通りこのギルドを管理する最高力の一つで、国王直々に任命されるか、前任のギルドマスターに任命されるかのどちらかで決まる。そして任命の際に細かい規定はなく、Bランク以上の冒険者であれば任命できる。そしてギルドマスターに任命されると、冒険者時のランクに関係なく、Sランク冒険者と同等級の権力を持つことができる。

 

 

 

「せ、先輩・・・」

 

「さぁ、その子を離して下さい」

 

「あぁ?それで俺が言うことを聞くとでも思ったのか?ギルマスは俺に何もできねえよ。何せ俺がいなきゃこのギルドは終わったも同然になるからな!俺のクエスト達成率は100%。しかもAAランクの任務を後2回達成できれば俺は昇格できる。そんな俺をギルマスは厳しい処分は下せねえ。二週間の謹慎が精一杯だろうよ」

 

「・・・」

 

 

 

エルドの言う事は正しかった。ギルドの運営資金はクエストを達成する事によって発生する。そしてその運営には莫大な資金が必要となるのだが、このギルドに所属してる冒険者は少なく、またBランク冒険者はたった3人、それ以外の数十人余りはいまだにDランクしかいない。本来ならばすぐにギルドに解散命令が下ってもおかしくはないのだが、エルドが高ランクのクエストを達成させる事によってそれを免れているのだ。

 

 

 

「はっはっはっは!どうする!?確かにお前達5人なら俺を止められるかもしれないぜ!?けどな、女だからといってお前ら5人を相手にするとなると、流石の俺も本気を出さなきゃいけなくなるな?どうするよ?今ここでおっ始めるか?」

 

「貴方と言う人は・・・」

 

 

 

Aランク冒険者。5対1ではあるが、向こうは先頭のエキスパート。数が有利はいえ戦えば無傷では終われない。いや、むしろ向こうは多対一の銭湯の方が得意なはずだ。冒険者は基本的に一対一での戦闘の方が圧倒的に少ない。それはモンスターは基本群れで生活している為、討伐の際には必ずと言って良いほど多対一の戦闘になる。つまり今この状況は、向こうの得意分野なのだ。

 

 

 

「リーダー。やりましょう。流石にこの男の行動は度が過ぎています」

 

「カタリナさんの言う通りです、リーダー。それに今回は新人のエルちゃんを狙って手を出しています。これは絶対に許せないです」

 

「私も2人に賛成ですよリーダー。私は今、腸が煮えくり返りそうです」

 

「とりあえずぶっ潰しましょう、リーダー」

 

 

 

他の4人も、自分達の後輩にちょっかいを出した事に腹を立てて戦闘体制に入る。この5人の受付嬢達は、普通の受付嬢とは違いBランク冒険者と同等かそれ以上の実力を持っている。だがそれでもBランクの彼女達とAランクが今ぶつかったとしても、Aランクである男の勝率のふおが高いだろう。しかし彼女達の中でそれは戦いを避ける言い訳にはならない。結束力の高い受付嬢という職業についてる彼女達は、仲間が困っているのであれば助けに行くしか選択肢はない。

 

そして今まさに、BランクとAランク喧嘩が始まろうとしていた時。ギルドに1人のローブの男が入ってきた。

 

 

 

「すみません。ここギルドであってますよね?」

 

 

 

いつ戦闘が始まるか分からない緊張感の中、突如聞こえたその声の持ち主は、その場にいた者達全員の注目の的になった。その男は砂漠でサンドワームを消滅させた人物だった。その男を見るだけで誰も質問には答えない。そんな状況に疑問を抱いた男はもう一度言い直した。

 

 

 

「あの、ここギルドですよね?」

 

「え?あ、はい。そうですが、少々お待ちください。今取り込み中でして」

 

 

 

リーダーと呼ばれていた受付嬢が戸惑いながらも質問に答えた。そしてローブの男から目を離し、エルドに視線を戻した。その目は誰がどう見ても穏やかなモノではない。

 

 

 

「おうおうなんだ?せっかくのお客だぜ?さっさと対応しろよ、受付嬢」

 

「そういうならその子から手を離して下さい」

 

「それはできねえ相談だな。そうして欲しけりゃ、力ずくでそうさせてみな!」

 

 

 

ローブの男はこの状況についていけず、近くにいた冒険者に訳を聞いてみる。

 

 

 

「これ、一体どういう状況なんですか?」

 

「ん?あぁ、あのエルドって言う男が新人の受付嬢に手を出したんだよ。けど普通の受付嬢が抵抗しても無意味だし、俺達がどうこうできる問題でも無いんだ。けどあの5人の受付嬢は別の話でな。そこらへんの冒険者よりも強い上に、受付嬢は結束力も固い。だからどうにかして助けようとしてるんだけど、相手が相手だからな・・・」

 

「あの男の人、そんなに強いんですか?」

 

「当たり前だろ!Aランク冒険者だぞ?この王都で10人、このギルドではあいつだけなんだよ」

 

「そうですか、ありがとうございます。それじゃチャチャっと終わらせてきますね」

 

「は?お、おいお前ちょっと待って!どうすんだよ!」

 

 

 

ローブの男は制止の声も聞かずに歩き出した。顔はローブで覆われて見えないが、その影から赤い目はだけは見えた。その目はどこか物を言わせない力を感じた。

 

 

 

「あぁ?なんだてめえ。向こう行ってろ、こっちは忙しいんだよ」

 

「いえ、そういうわけにもいかなくて。僕も時間がないので、その人を離してくれませんか?」

 

「・・・なめてんのかお前。何俺に指図してやがる。ぶち殺すぞ」

 

「穏やかじゃありませんね。そんな性格でよくAランクになれましたね。実はAランクって嘘だったりするんじゃないですか?貴方見たところそんなに強くなさそうですし」

 

「・・・てめえ、舐めるのも大概にしろや。もういい、まずそこの女どもは後だ」

 

「ちょっと!良い加減離してください!」

 

 

エルドは席を立つ。しかし横にいる受付嬢からは手を離さなさず、担ぎ上げ逃げれないようにした。受付嬢も足をバタバタとして抵抗するが、男は気に止めていない。

 

 

 

「まずはてめえからぶっ潰してやらあ!」

 

 

 

エルドは受付嬢を担ぎ上げたまま、ローブの男に飛びかかる。その脚力のせいか、エルドが立っていた木の床が大きく凹んでいる。そして10メートル程離れているローブの男の上空に一瞬で辿り着き、そのまま拳を振るった。Aランク冒険者の肩書きは伊達ではなく、その拳の威力は大きなもだった。ローブの男のいた場所の木の床を突き破り、大量の木屑が舞った。

 

 

 

「へっへっへ。俺になめた口を聞かなきゃまだ死なずに済んだのにな。ざまあねえぜ」

 

 

 

驚異的な破壊力を持った先程の拳をまともに受ければ無事では済まないだろう。直撃した体の部位は間違いなく、原型を止める事はできないであろう威力。誰もがローブの男の死を疑わなかった。これで命があったのならばかなりのラッキーだろう。それはあくまでも運が良ければの話だ。いくら腕に自信がある冒険者といえど、あれを喰らえば間違いなく死ぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰が死んだって?」

 

 

あくまでも直撃したらの話だが。

 

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