本編とは一切関係ないですがここ最近で一番驚いたのはCHUNITHMのキルミーコラボ。死んでなかったんだ、と思いましたね
これは理解不能な怪談などではない。里で今まさに起こっている確固たる事実であり、誰かによって仕組まれた状況だ。しかもその犯人は完全犯罪とはならないよう、敢えて痕跡を残すように動いた。
一つは一時的な発狂と昏睡。こんなことを他者にできるような者は限られてくる。確実に里の人間ではない。
犠牲者の共通点もある。これに関しては後から聞き込みをして分かったことだが、犠牲となった者たちの妻は毎日井戸端会議を開いていたらしい。犠牲となった順番に関してはよくわからない。少なくとも名前のいろは順ではないようだ。
そして最後にして最も重要な痕跡が、犠牲者の所有している畑と家の位置関係だ。多少強引ながらも少し前に覗き見した魔理沙さんの魔導書に書いてあったように五つの畑と家を線で結ぶと、魔法陣のような模様が浮かび上がる。
あとはこの陣の意味を知れば犯人にかなり近づけるはずだ。この私にミステリーで挑もうなどとふざけた真似をしてくれる。
しかしこう悠長に構えてもいられない。井戸端会議に関係していた者たちの家族が全て犠牲者となってしまった以上、この魔法陣はこれで完成してしまったかもしれないのだ。
すぐにでも魔法に長けている者から情報を……と考えたところで広場の人だかりが目に入った。
しめた、今日はアリス・マーガトロイドの人形劇の日だった。
彼女はあくまでも自分が魔法使いであることを隠しているつもりのようなので、周囲の子供たちには本当にただ糸で人形を操っているように見えているのだろう。実際私も何も知らなかった頃にはそう思っていた。
それにしても危機感の無い住民たちだ。連日人が襲われているというのに人外が行う娯楽に目を奪われるなんて。まぁ、こんな時にわざわざ人里で人形劇を行うくらいなのだから彼女はやや白めがつくか。
いや、だめだ。油断は命取りになる。彼女は今まさに魔法陣を起動しようとしに来ているのかもしれない。探偵に油断は許されないのだ。
人形劇が終わり、人形師の周囲から人がいなくなったことを確認して彼女に近寄る。一瞬優しそうな目を向けてきた彼女は私が焦っていることに気づいたのか、少し困惑した表情に変わった。
懐から里の地図を出し、十個の点を線で結んだ魔法陣を彼女に見せて何か知らないかと聞いてみたが、彼女はこんな陣を見たことが無いという。
「でもあれね、ちょっと違うけれど私の人形召喚に使っているものと似ている気がするわ。でも私は犯人じゃないわよ。人里がこんなことになっているのも今あんたに聞いて知ったばかりだし」
魔女の言うことは信用ならない。いくら彼女の人間友好度が高いとしてもだ。この澄ました顔の裏で何を考えているのかなんて分かったものではない。
「貴方ではないというのならば他には誰か心当たりが?」
「そうねぇ……紅魔館の引きこもり魔法使いとかならこの巨大な魔法陣の使い道を知っているかもしれないわね。彼女は知識と魔力だけは豊富だから」
「もしよろしければ紅魔館まで連れて行ってもらえませんか? 人里は今一刻を争う事態なんです」
「ふうん……そうは見えないけれど。まぁ連れて行くくらいなら良いわよ」
よし。これでこの魔法使いを人里から引き離す口実ができた。門番には誰であっても人里への出入りをさせないよう指示し、自警団や慧音さんにも人里を監視するようにお願いして出発の準備は万端だ。
「そうだ。出発する前に人形を何体か置いて行ってもいいかしら? 心配しなくても紅魔館からここまでの遠隔操作は不可能だし、後から回収して視覚情報を調べるだけよ。もしかしたら何か決定的な物が映り込むかもしれないでしょう?」
外の世界でいう監視カメラ……だったか。そんなような役割を人形にさせたいと申し出てきた。この魔法使いが味方であればこのような協力は大変ありがたいものだが、味方である保証はどこにもないし、遠隔で操作できないというのも本当の事か分からない。
「既に人間の目を方々に張り巡らせていますからその必要はありません。ありがたい申し出ですがお断りさせていただきます」
「そう、残念だわ。ではさっさと行きましょうか。身体に変な力を入れないで頂戴ね。下もなるべく見ないようにした方が良いわ」
かけられた言葉の意味を理解するより前に私の身体がふわりと浮き上がる。彼女お手製の人形が私の身体を支えて飛んでいるのだ。その数十五体。過保護かとも思えるような数だが、空を飛んだことのない私にとってはこれくらい安心感があった方が良い。
下を見ない方が良いという彼女のアドバイスは正しく、二間(4m弱)上昇した時点で私の足はすくんでしまった。そこからはずっと目を閉じているので今どのあたりを飛んでいるのか全く分からない。
「寒くないですか? もう夏ですよね?」
上空に行くほど気温が下がるというのは嘘ではなかったらしい。夏用の着物であることもあるかもしれないが、今の私の体感では雪が降りそうなくらい寒く感じる。
「あら、ごめんなさい。私って気温をほとんど感じないから何も気にしていなかったわ。そう言えば貴方は普通の人間だものね。高度下げるから丁度良くなったら言って頂戴」
「…………この辺りですかね。ありがとうございます」
空を飛ぶのも良い事ばかりではないようだ。上空ほど寒く風は強いし、夢に描いていたような景色を楽しむ余裕は一切ない。しかも一歩間違えれば落下死の危険があると来るのだから、私はもう二度と飛行なんてごめんだ。少なくとも普通の人間は地に足を付けて生きるのが一番お似合いだと思うし正しいと思う。
飛行のメリットを敢えて上げるならば比べるまでもなく移動速度が速い事と楽な事。目を閉じながら適当な雑談をしている間に、もう紅魔館が目と鼻の先まで来たらしい。首筋を伝う汗が、だんだんと地上に近づいていることを教えてくれる。
ほどなくして足が柔らかい草を踏んだ。紅魔館に到着したのだ。閉じていた目をゆっくりと開けると、太陽の眩しさよりも先にただただ紅い壁が目を刺激した。
「こんにちは、アリスさんに……稗田阿求さんでしたっけ。本日は何用で?」
「この子の付き添いよ。パチュリーに会いたいそうよ」
「パチュリー様でしたら今日は図書館ではなく小さい方の客間にいると思いますよ。例の客人が来てましてね」
「例の客人とは? 私はいても大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫じゃない? あの子は別に貴方を気にしないと思うわよ。あぁ、あの子って言うのは古明地さとり、地底の支配者でもある覚妖怪のことよ」
覚妖怪……確かかなり昔の縁起に名前だけ載せた気がする。会ったこともあったのかもしれないが、そのあたりの記憶は定かではない。しかしここ数代聞いていなかった妖怪がまだ存命だったとは。最近はまた鬼が現れたりもしたらしいし、九代目はかなり歴史的にも重要になりそうだ。
今日はその覚妖怪と吸血鬼のレミリア、魔法使いのパチュリーが何やら話しているらしい。アリスさんと紅美鈴の話を聞いている限りでは、実際に話をしているのはさとりとレミリアだけで、パチュリーはさとりが変な気を起こさないか見張っている? らしい。関係性がよく分からない。
「一応確認しておきましょうか。ここで待っていてくださいね」
そう言い残して紅美鈴は館の中へと消えて行った。一名を除く紅魔館の方たちについては既に縁起に纏める分の取材を行った。一応顔見知りではあるが、やはり妖怪の巣窟に来るというのはいつの時代も生きた心地がしない。
魔理沙さんが言うには、レミリアの相手なんて子供をあやすようなものらしいが、私にとってはレミリアのデコピン一発が命取りである。魔理沙さんでも手を焼くような吸血鬼の妹がまだいるという話だし、本当に下手を打てば明日が無い。
レミリアだけではない。此処に住む者は妖怪も人間も皆実力がトップクラスの化け物たちだ。そんな場所にやってくる古明地さとりという妖怪もそれに見合うだけの実力は持っているはず。地底の支配者というならばそれ以上か。
覚妖怪と言うからにはおそらく毛むくじゃらな猿のような妖怪が出てくるのだろう。言葉は通じるみたいだが、見るだけでも言葉を失いそうな気がする。でも覚妖怪って心を読むんだっけ……嫌だなぁ。
いつか鈴奈庵に置いてある雑誌で見たゴリラみたいな妖怪だったらどうしよう。なんて考えている間に門番が戻って来た。流石は妖怪。この暑さの中走っていったのに呼吸が乱れるどころか汗一つかいていない。その頑丈さが時たま羨ましくなる。
「問題ないそうですよ。阿求さんも全妖怪を纏めているいずれ取材することになるでしょうし、会ってみるのをお勧めします。いざとなればお助けしますよ」
「こら美鈴、そんなこと言ったら本気にしちゃうでしょう? 大丈夫よ、阿求。さとりはそれほど悪い妖怪じゃないわ。嫌な妖怪ではあるかもしれないけれどね」
悪い妖怪でない、というのを事前に知っておくだけでも心の持ちようは変わる。アリスさんならば変な嘘をつかないだろうと思うし。
「アリスさんも初めてでしょうから案内しますよ」
「いえ、結構よ。貴方が走って行った時に後ろから人形を走らせたから、道順も部屋の場所もバッチリ分かるわ」
ここからその客間とやらの距離でも遠隔操作は訳無いということか。これはこのアリス・マーガトロイドという魔法使いについても油断できなくなってきた。ここから人里までの距離と比べれば、確かに紅魔館内部の部屋は近いといえる。しかし、この距離であっても紅美鈴に追いつく速さで人形が正確に操作できるのだと考えれば認識も変わるというものだ。
先ほど人里にいる時は、里に置いた人形を後で回収して調べると言っていたが、今しがたの人形操作を考えるとリアルタイムで視界ジャックができる可能性も高い。
落ち着け稗田阿求。まだまだ誰が容疑者なのか分からないのだから一瞬でも油断してはならない。
「そう言えば阿求はレミリアたちとは顔見知りらしいけどフランドール……レミリアの妹には会ったことがあるの?」
「まだありませんね。魔理沙さんから聞くまでは存在すら知りませんでしたし、聞いたのもここの取材が終わった後でしたしね。アリスさんは?」
「見たことしか。でも話だけ聞いている限りでは会わない方が身のためだと思うわ。スペルカードというルールを度外視した戦いになれば私でも勝ちの目は薄いでしょう。予測不可能な破壊攻撃って話だから。何にせよ直接会うのはお勧めしないわ」
アリス・マーガトロイドも相当に実力のある魔法使いだと聞いている。その彼女をして勝ち目が薄いと言わしめる力か。確かに軟弱な私では何もできないまま死んでしまうに違いない。まぁそれはどんな妖怪が相手でも変わらないことだろうけれど。
紅魔館の廊下を歩くのはいつも落ち着かない。私の屋敷の廊下より三倍ほども幅が広いし、窓が少ないせいで全体的に雰囲気が暗い。そのくせ不自然に明るいキャンドルがいくつも置いてあるものだから古の日本人としての脳が拒否反応を起こしているのだ。あとは何より履物のまま部屋にあがったりするのは少々気が引ける。
洋式の館と和式の屋敷にはたくさんの違いがある。玄関の大きさであったり扉の開き方、部屋を隔てる物もそうだ。里の家の多くは小さいので、作りが異なるが、私の屋敷ではほとんどの部屋が壁ではなく
一方で紅魔館のような洋館では一つ一つの部屋が壁と扉で明確に仕切られている。その代わりにパーティを催すための広間が設けられているのだ。機能的ではないが権威を示すのには丁度良い空間の使い方なのだろうと思う。
部屋の大きさもまちまちで、客は通される部屋の大きさで自分の立場を知ることができるとかできないとか。レミリアは自室にも執務室にも客を入れないらしいので、今から入る部屋がそのどちらでもないのだけは確定であるが、ここはとにかく部屋の数が多すぎてどこが何をする部屋なのかさえ全く分からない。
アリスさんが目的の部屋の扉をノックしているのも私の屋敷では見ない光景だ。襖や障子はノックに適さないからである。
ノックに答えて出てきたのは十六夜咲夜。紅魔館に棲む唯一の人間だ。時を操る能力を持つ人外めいた者ではあるが一応人間である。彼女が何故レミリアに忠誠を誓うようになったのかは不明であるし、どのようにして紅魔館に拾われたのかも一切分からない。聞いても知らんぷりして流されてしまうだけだ。
彼女は私たちが二人だけなのを確認して部屋へ招き入れた。いつの間にかアリスさんの周囲を飛んでいる人形が二体に戻っている。いつ回収したのだろうか。全く気付かなかった。
入った部屋は思いのほかこじんまりしていて、とても地底の主を迎え入れるような部屋とは思えなかった。扉から一番遠い(と言っても直径八尺ほどの円卓の奥側)椅子にレミリアが座り、他の二人が均等に距離を空けて座っている。
「今日はレミィ……リアではなく私に話があるんですってね。阿礼乙女が里を出るなんて珍しい」
パチュリー・ノーレッジ。やややる気の無さそうな顔をしているが、目は油断なく私を見つめている。確かに私が仕事以外で里の外に出るのは珍しい。
「おや、では今日は仕事で来たのではないのですね」
これが古明地さとりなのだろう。想像していた化け物の如き見た目ではないが……なるほど、二人が嫌な妖怪であると評した理由は今の一言でよくわかった。無許可の読心に加えて躊躇なくそれを口に出す行為。なかなかにいやらしい。
「挨拶が遅れましたね。私は貴方の思っている通り、古明地さとり。覚妖怪の生き残りです。稗田と会うのは初めてですね」
「……はじめまして。ご存じの通り稗田阿求です。また取材をさせていただくこともあると思いますのでその時はよろしくお願いします」
とりあえずこう言っておけばいいだろう。えらく華奢で打たれ弱そうな妖怪だが変に上手に出るのはよろしくない。妖怪というのは総じてプライドが異様に高い者たちだからだ。
うわ、私の方を見てクスクス笑っている。そう言えばあの妖怪は心を読めるんだった。まったくやりづらいことこの上ない。
一先ず古明地さとりを無視してレミリアとパチュリーに軽く挨拶をして用件を伝える。こちらの二人は心を読まれる心配がないので少々気楽であるが、その間にも古明地さとりには心を読まれ続けているので居心地が悪いったらありゃしない。
こんな状況で普通に話し続けられる魔女と吸血鬼が如何におかしいか、この耐え難い空間に数分も居れば誰でも分かるだろう。
「ふうん。人里の人間のみを襲う謎の症状と描かれた魔法陣……確かにこれは召喚魔法に使うものに似ているわね。私が小悪魔や精霊を召喚する時にはこんなのを使うわよ。規模はこれよりはるかに小さいけれどね。こんなに大きな魔法陣は……そう、ここに越してくる前にレミリアが使った眷属召喚クラスかしら」
どうやらアリスさんもパチュリーもこれが召喚魔法に使う陣に似ているということで意見が一致した。嘘ではないのだろう……あ、そう言えば今この部屋には強力なウソ発見器があるんだった。
「古明地さとりさんはどう思います?」
「私に聞かれても困りますよ。私は魔法を使わないので……あぁ二人の意見に嘘があるかと言えば正直なところ分かりません」
心を読む妖怪が何故嘘かどうかを見抜けないのか分からない。心を読めるのならば、嘘か誠かだけでなく彼女たちが今何を考えているのかすら分かるはず。
「ふふ……その辺りは私では不十分でしょうね。この手の問題には外の世界で売っているウソ発見器の方がよほど便利です。何せ心は隠すことができますが血圧や心拍数は自由に変化させられませんからね。心を隠すのは当然難しい事ですよ。しかしできないわけではない。八雲紫クラスの大妖怪ならば行う事はできます。魔法はそれを簡単にするかもしれない。私はここで何も断言できませんよ、探偵さん」
この妖怪は絶対に私の反応を見て愉しんでいる。もしかしたらこの場に居る全員の心を読んだうえで犯人に目星をつけているのかもしれない。ネタバレが一番つまらないとはいえ、この私を馬鹿にするのは別の話だろう。
もう絶対にこの妖怪には頼らない。人を小ばかにしたようなにやけ顔を見るだけでイライラするだけだし。
「それならそれでありがたいですね。私は面倒ごとが嫌いなので」
阿求が心の中で他者の名前を呼ぶときは基本的に呼び捨てです。ただし慧音や霊夢、魔理沙などある程度関りのある者は例外。アリスは基本的には例外側
稗田邸の構造は設定として作った物ですのでお気になさらず
この続きとなる話は次回以降も基本的に阿求視点で書くつもりです