『ミーンミンミンミーン』
セミ兄貴の迫真の鳴き声が街中に響く。
今、季節は夏真っ盛り。
人々はサマーシーズンの到来に浮足立ち、海に山に遊びに行きますよー、行く行く……となることはなかった。
それは、人に感染する新型ウイルスのせいなどではない。
もっと恐ろしいモノたちのせいだ。
数ヵ月前、突如として我々の住むこの世界に、見知らぬ異邦人たちが迷い込んできた。
彼らの名は『キカイノイド』。機械のガタイを持つ人型の知的生命体だ。
キカイノイドたちは、この世界とは異なる並行世界、キカイトピアで暮らしていた。
ある時キカイトピアに、『トジテンド』と呼ばれる悪のキカイノイド組織が現れる。
トジテンドはちょっと過激な討幕派も真っ青の、かなり過激な支配者層たちで、暴力という名の虐待によってあっという間にキカイトピアを手中に収めてしまったのだ。
トジテンドの頂点に君臨する帝王『ボッコワウス』は、キカイトピアからさらに侵略の手を広げ、1145141919810個はあろうかという異世界にまでその魔手を伸ばしていった。
数多ある並行世界は「お兄さん許して!」と許しを請う間もなく、次々と謎のアイテム『トジルギア』に閉じ込められてしまう。
「おいほら見てみろよ? 誰も来ねぇぜここ。すっげぇ異世界だからさ。誰も助けに来ないんだぜお前? えぇ? 絶対助からねぇぜ?」
いとも簡単に並行世界侵略を叶えることができ、ボッコワウスは愉悦に浸る。
そうして、無抵抗で自らの支配下に落ちたあらゆる世界を見て、あざ笑うのだ。あぁ~やっぱり怖えぇ。
だが、なぜか我々の世界だけはその難を逃れた。一体なにが、ダメだったんでしょうかねぇ~。不思議ですねぇ~……。
その代わり、この世界とキカイトピアは一つに
そしてトジテンドは、我々の世界をギアに閉じ込めることを諦め、武力による直接支配に切り替えた。
その先兵が、並行世界を閉じ込めたトジルギアの力を使うトジテンドの怪人、『ワルド』と呼ばれる強力な戦闘兵士。
今日も今日とてワルド怪人の一人、レスリングトピアの力を身に宿した『レスリングワルド』が街中で暴れまわっている。
「よっこらああああああああああ!!」
叫びと共に、人間やキカイノイド構わず、逃げ遅れた者たちを次々とレスリング技の餌食にしていくレスリングワルド。
みんなが外に出ることができないのも、この怪人がのさばっているせいだったのだ。
(平和な日常が脅かされるの)ねーもうほんと無理無理無理。救いは無いね!? ……救いは無いんですか?!
「あっ、おい待てい!」
だがそんなトジテンドの非道に、敢然と待ったをかける者たちが現れた。
「あぁん? お客さんレスリング!?」
レスリングワルドが声のする方に振り向く。
視線の先には一人の人間と、四体のキカイノイドが立っていた。
一人と四体は、数多の並行世界に存在した『スーパー戦隊』と呼ばれる正義の味方、その姿を真似て作られたコスチュームを身にまとっている。
「もしかして……これって……お客さんじゃないレスリング?」
五人の姿を目にしたレスリングワルドが、疑問の声を上げた。
それに対し、中央に立つ青い目をした白い戦士が返す。
「聞いて驚け! 俺たちは……」
「「「「「機界戦隊ゼンカイジャー!!!!!」」」」」
高らかに名乗りを上げる五人の戦士。
彼らこそ、我々の世界を守るために
あっ、(救いは)これかぁ!
「おっほっほっほ~元気だレスリング( ^ω^)」
「ああ、俺たちはいつも元気爆大だぜ!」
自らに敵対する相手が登場したにも関わらず、レスリングワルドは焦りを見せない。
それに対する白い戦士『ゼンカイザー』も余裕をもって返す。
「そんなこと(真面目に返事)しなくていいから(良心)」
敵と会話するゼンカイザーにツッコみを入れたのは、黄色の野獣(意味深)戦士『ゼンカイガオーン』だ。
「私は本気爆発ですか?」
「え、じゃあ自分は……その気で躍進?」
「ちょ、待てよ。俺の名乗りはどうなるんだ?」
後ろの方でガヤガヤ騒いでいるのは、青い冒険戦士『ゼンカイブルーン』。
紅一点の魔法戦士『ゼンカイマジーヌ』と、赤い恐竜戦士『ゼンカイジュラン』の三体。
「どうでもええわレスリング。じょっぱりだオイ!」
ゼンカイザーとゼンカイガオーンも加わってワチャワチャしている五人。
そこに向かって、興味なさげだったレスリングワルドは突然、意味不明な言葉と共に攻撃を仕掛けてきた。
レスリングが盛んなレスリングトピアの力を使うだけあって、レスリングワルドの攻撃もレスリングが主体となっている。
強烈なタックルでツッコんできたレスリングワルドを、ゼンカイジャーの五人は体を張って受け止める。
組み合ったまま拮抗するゼンカイジャーとレスリングワルド。
「あぁん!? 最近だらしねぇなレスリング!」
レスリングワルドは、正面に立つゼンカイザーの足を唐突に足裏で払いのけた。
これぞレスリングトピア名物、アニキックである。払い技なのにキック……?
「ファッ!?」
虚をつく仕打ちに驚くゼンカイザー。
レスリングワルドはそのまま、ゼンカイザーを他の四体まとめて横向きに、大きくなぎ倒してしまった。
不意打ちに加えて敵の力も強力なため、ゼンカイジャーたちは強く地面に叩きつけられることになる。
「あぁぁぁーっ痛い、痛い痛い痛い……」
「あぁぁぁぁい゛たぁいぃぃぃぃぃ」
思いのほかダメージがあったようで、五人はそれぞれ苦悶の声を上げている。
「へっぼwwぺぺーちょwww生徒会レスリング」
苦しむ五人をあざ笑うレスリングワルド。キカイノイドの鋼鉄の表情が、嗜虐の喜びに歪んで見える見える、太いぜ。
その様に怒りを覚えたゼンカイジャーたちは、痛みをこらえてグッと立ち上がった。
ええぞ! ええぞ! ヒーローええぞ!
「思い知らせてあげる!」
「行くぞオラァ!!」
「イ゛……イエァー!」
シャイなマジーヌにしては珍しく怒りをあらわにし、ゼンカイザーがチームを引っ張り、それにワンテンポ遅れてゼンカイブルーンが駆け出す。
「いい目してんね~サボテンね~。病院で入院ですたいレスリング!」
対するレスリングワルドも、今度こそゼンカイジャーを病院送りにしてやる! と気合を入れ直し構えをとる。
両者が再びぶつかろうとした所で
『ゼンリョクゼンカイ』
なんだこの機械音声!?
画面を唐突に四色の牙型の模様が覆いつくし、正面には『スーパー戦隊』の文字が……。
あっ、(察し)ふーん。
『第810931カイ! 愉快? 不快? 淫夢はなんか……あったかい! だチュン!』
デレッデレッデレッデーデーデン♪
以下オープニングテーマ、はーい、よーいスタート。(棒読み)
今回のお話はほんへで言う所さん!?のアバンにあたる部分で
あらすじの内容は次回のAパートとなります。