ダイレスリングワルドを倒し、トジテンドの野望をまた一つ阻止した介人たちゼンカイジャー。
今週のノルマもパパパッとこなして……終わりっ! と、意気揚々と帰宅している最中に、悲劇は起こった。
介人の自宅である駄菓子屋兼カフェ、『カラフル』の近く。あずま寿しの前まで帰ってきた五人。
「あぁお腹空いちゃったよ~もう」
「今日夕ご飯なんだろう」
「カレーとかじゃなかった?(訛り)」
などと仲良く会話しながら歩いている。
「卵はいってるかな今日」
「卵ォ!?」
ジュランの言葉に驚きの声を上げる介人。
その時つい余所見をしたせいで、すぐ前を歩いていたキカイノイドにブツかってしまったのだ。
「あっスイマセン(素)」
即座に謝る介人。
ブツかられたキカイノイドは、ゆっくりと後ろを振り返り
「チッ」
と舌打ちをする。
全身黒塗りの高級そうなボディーをしているキカイノイドは、見た目といい態度といい、明らかにヤクザ者である可能性が濃いすか?
「おい、やべぇよ……やべぇよ……」
「どうすんだよ……」
「どうすんだよ……」
「朝飯食ったから……」
初めて接触するタイプの人間に、介人もジュランたちキカイノイドも動揺を隠せない。
ブルーンにいたっては意味不明なことを口走っている。
「おいゴルァ! 免許持ってんのかコラ」
「アッアッアッアッ」
キカイノイドは介人の前までやってくると、恫喝するように声を荒げた。
対する介人は恐怖でいっぱいいっぱい裕次郎。ウォンツモードになり言葉が出ない。
「お前らゼンカイジャーとかって奴らだろ。ヒーロー活動免許もってんのかおう」
以前、介人とジュランは変身&巨大化した状態で、大々的にメンバーの募集活動を行ったことがあった。
その時のことは、その場にいたTVクルーのカメラにも収められていたため、周辺にバラま~きされ五人がゼンカイジャーであることは周知の事実となっている。
「おいゴルァ免許見せろ。あくしろよお前」
「はい(小声)」
執拗にゼンカイジャーであることの証明書を見せろと催促するキカイノイド。
介人は仕方なく、変身のためのアイテム『ギアトリンガー』と『ゼンカイザーギア』をポケットから出した。
キカイノイドは二つのアイテムを取り上げると、本物かどうかじっくりと検分し
「よしお前オルルェについてこい」
委縮するジュランたち四人を残し、介人を連れていずこかへと去っていった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
介人が黒塗りの高級キカイノイドに連れ込まれたのは、事故現場から歩いて数分の所にある事務所の中だった。
室内は革張りの椅子が一脚と、しおれた観葉植物くんがあるのみだ。
あとはコンクリートの外壁がむき出しで、誰かが住んでいるとは思えない寒々しさを覚える所である。
「ギアトリンガーとセンタイギア返してください、オナシャス!」
開口一番、介人は変身アイテムの返却を願う。
しかしキカイノイドは、その冷徹な目を向けこう言った。
「やだよ、おう。お前トルルァエズ犬の真似しろよ」
「へっ?」
「犬だよ。ヨツンヴァインになんだよこの野郎。あくしろよ。おい。返さねえぞ」
「やれば返していただけるんですか?」
「おう、考えてやるよ。あくしろよこの野郎」
せっかちなキカイノイドに要求され、介人は仕方なく四つん這いになる。
「なにお前、犬のくせにお前服着てんだよこの野郎オイ! 脱ぐんだよあくしろよ」
「ハイ……」
「ズルルゥンもだよ、あくしろよ」
上着を脱いだところで、ズボンも脱ぐよう言われ、やむなく全裸をさらす介人。
情けない格好……恥ずかしくないの? とキカイノイドの嘲笑する声が耳に入ると、介人は羞恥で顔を真っ赤にした。
その時のゼンカイザーの恥ずかしがる姿にドキドキするって
ヒーロー凌辱だぜ!
「おほ^~」
介人の裸体を舐めまわすように、上から下までじっくりと見つめるキカイノイド。
その視線に寒気を感じながら、介人は再度懇願する。
「言うこと聞いたんだからギアトリンガー返してください! オナシャス! センセンシャル!」
「この程度で許してもらえるわけがな~い」
不意に聞こえた声。それは眼前の黒塗りの高級キカイノイドのものではなかった。
しかし聞き覚えのある声は、確かに部屋の中から発されたもの。
ガサッ、と観葉植物くんが動く。それは本物の観葉植物ではなかった。
「あっ、お前は!」
驚く介人。
観葉植物だと思っていたものは、立体映像によって擬態していたトジテンドの幹部、イジルデだったのだ。
観葉植物くんは全てを見ていた?
「イジルデ!? なにしてんすか、やめてくださいよ本当に!」
「こう見えても吾輩はシャイですから、シャイ。人見知り激しいですから」
介人の言葉にずれた返答をするイジルデ。
「お前がいるってことは、もしかしてそのキカイノイドも、トジテンドの仲間なのか!?」
「そうだよ。こやつこそ、我がトジテンドが誇る最恐最悪の怪人。その名も……」
謎のキカイノイドの黒塗りのボディーが変化する。
あらわになったのは、野獣のような
「オッス、(よろしく)お願いしま~す」
男性タイプの声色にしては、妙に高いハイトーンボイス。
とても軽い調子で、『インムワルド』は敵対するゼンカイジャーのリーダーに挨拶をした。
介人はとっさに変身しようとするが……
「おっ先輩こいつギアとか探し始めましたよ。やっぱ好きなんすねぇ」
すでにギアトリンガーとゼンカイザーギアは、目の前のインムワルドに取り上げられていた。
おまけに今の介人は服すら身に着けていない。しかし彼はヒーローやから、自分の身は自分で守れるはずです。(無慈悲)
「クッ、全部お前たちの作戦だったのか……!」
まんまと敵の罠にかかった自分に対して、介人は悔しさに顔をゆがめた。
「さあ、ヒーロー解体ショーの始まりや」
イジルデの指示で、インムワルドが無抵抗な介人にジリジリと迫る。
あかんこれじゃ介人が死ぬぅ! その時
バァン!
勢いよく事務所の扉が開け放たれた。
「おっ、大丈夫か大丈夫か」
介人を助けに飛び込んできたのはジュラン、ガオーン、マジーヌ、ブルーンの四人。
すでに全員、ゼンカイジャーへの変身は済ませている。
「ちょっと遅かったんちゃう?」
「ま、(ヒーローがピンチに到着するのに)多少(の遅刻)はね?」
仲間が救援に来てくれたことに、介人は安堵の表情を浮かべた。
そんな介人の姿を見て、ゼンカイマジーヌは驚きの声を上げる。
「ぬぬっ!? なんで介人は裸なんすか!?」
介人が事情を説明しようとする前に、インムワルドが口を開く。
「俺に掘られたいから来たんだら?」
「いや、違う」
「はい、って言え」
「はい」
トジテンドの奴隷になる介人。
「マ↓ジ↑? 僕の介人(意味深)になんてことを……ふざけんな!」
憤怒に身を焦がしたゼンカイガオーンが声だけ迫真の勢いで、武器であるガオーンクローを振りかざしインムワルドに切りかかる。
「なんすかそれ(素)」
しかし、ライオンの爪を模した鋭いクローの攻撃を受けても、インムワルドは微動だにしていない。
ゼンカイジュランがジュランソード、ゼンカイブルーンもブルーンピッカーを構え攻撃に加わる。
が……
「カスが効かねぇんだよ(無敵)」
三人のゼンカイジャーの同時攻撃をもってしても、インムワルドには傷一つ付けることができない。
「これマジ? ただの怪人にしては強すぎるっす!」
ゼンカイマジーヌが冷や汗を浮かべ、そう漏らした。
「無駄だよ。そのインムワルドは、810個という複数のホモトピアの世界を束ねた、最恐のインムギアを取り込んでいるのだ」
「つまり……このインムワルドは通常のワルドより810倍も強いということですか!?」
イジルデの話を聞いて、驚愕の事実にたどり着くゼンカイブルーン。
今のゼンカイジャー達は、普段であれば五人で一体の怪人を相手にするところを、八百体以上もの数を相手取っているのと同じことなのだ。ウッソだろお前!? ブルっちゃうよ……。
「さあ、インムワルドよ、ゼンカイジャーにとどめを刺すのである!」
「爆砕かけますね~」
イジルデの命令で、インムワルドは攻撃のためのエネルギーをため込み始める。
これほどまでに強力なワルドの全力攻撃を受けては、ゼンカイジャーといえどただでは済まないことは必至だ。
「あっ、そうだ。ヌヌヌマジーヌ!」
攻撃が繰り出される前に、唐突にゼンカイマジーヌが魔法を発動する。
魔法で作り出されたのは、彼女が手にする、なにか柔らかそうな長方形の白い物体。
マジーヌは、スマホでも操作するようにその白い物体をタップし始める。
そして、そのやわらかスマホを急いでインムワルドの顔に押し当てた。
「う、羽毛……」
インムワルドはというと、うめくような声をこぼすと突然倒れてしまった。
「なんだと!? う、羽毛……」
いきなり昏倒したインムワルドに驚いたイジルデ。
ゼンカイマジーヌはイジルデにも同様に、やわらかスマホを顔に当て眠らせてしまう。
「……よし! 今のうちに逃げるっす!」
眠り込んだイジルデを適当に放り投げ、ゼンカイマジーヌは介人たちに撤退することを宣言した。
ジュランとガオーンは渋ったが、現状ではインムワルドを倒す手段がないとブルーンが説得。
かくして、奪われたギアトリンガーとゼンカイザーギアを(インムワルドたちが寝ている隙に)取り戻すことには成功した介人。
しかし逃走の果てに、インムワルドを打倒する策はあるのだろうか……。