愉快?不快?淫夢はなんか……あったかい!   作:ほろろぎ

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第六カイ

 迫真空手の世界チャンプ、遠野を新メンバーに加えた介人たち五人は、大急ぎでインムワルドの元へ向かっていた。

 セっちゃんからの連絡によると、人々がホモ化する中心は、下北沢であることが分かった。

 

「ホァーホァー、ホラホラホラホラ」

 

 下北沢の住宅街、そのまっただ中にインムワルドはいた。

 道行く男たちを捕まえては、必殺のホモビームを浴びせ次々とホモの道に堕としていく。

 運悪くその場に居合わせた人やキカイノイドは、蜘蛛の子を散らすように逃げていくが

 

「なんだよホラー、嬉しいダルルォ? ホラァー!」

 

 野獣のような瞳から放たれるホモビームは、容赦なく逃げようとする男だけを狙い撃つ。

 一人、また一人とホモにされる男たち。

 

「イヤァ……怖い……怖い……」

 

 インムワルドは、腰が抜け、逃げることもままならない男さえも見逃すことはしない。

 ジリジリと追い詰め、恐怖に怯え苦悶の表情を浮かべる被害者の顔を愉しむ。

 

「やだ怖い……やめてください……アイアンマン!」

 

 ついには海外のヒーローにまで助けを求める被害者。

 もちろんその声が海を越えて届くはずがない。

 しかし、この国にもヒーローはいるのだ。

 

「そこまでだ、インムワルド!」

「OH、デップー(マーベル)」

 

 だからマーベルキャラは来れないって言ってるだろいい加減にしろ。

 現れたのは日本が誇る五色の戦士たち。

 

「おーおーおーおー、どこ行ってたんだお前よー。逃げやがってよーおい」

 

 インムワルドは眼前に立つ介人と四人のキカイノイド、そして遠野を威嚇するように言う。

 対する介人は、不敵な笑みを浮かべ自信満々だ。

 

「インムワルド! 今度の俺たちは一味違うぜ。なんたってこっちには、迫真空手の世界チャンピオンの遠野さんがいるんだからな!」

「オッス、お願いしまーす」

 

 律儀に会釈する遠野からは、彼の生来からの生真面目さがうかがえた。

 介人とキカイノイドたちはどこからか、変身アイテムであるギアトリンガーとセンタイギアを取り出すと、介人の声を合図に変身の構えをとる。

 

「行くぜ! チェンジ全開!!」

「……あのー……」

「? どうしたんですか、遠野さん?」

「それ、僕は持ってないんですけどそれは……大丈夫なんですかね?」

「……あっ(察し)」

 

 そう、介人はここに来るまですっかり忘れていた。遠野に変身アイテムを渡すことを。

 だがそれは最初から不可能だったのだ。

 なぜなら、介人の両親が用意していたギアトリンガーとセンタイギアは五組しかない。遠野の分は元から存在していないのだ。

 

「バカじゃねえ? おい、笑っちゃうぜ!」

 

 介人の失敗をあざ笑うインムワルド。

 だが当の遠野は、まったく気にしていない様子だ。

 

「大丈夫ですよ、僕には迫真空手がありますから。それに、筋肉あれば十分じゃないっすか?」

 

 半笑いで介人のミスをフォローする遠野。

 彼の笑みで、介人も気落ちしていた心を持ち直した。

 あらためてギアトリンガーを構えなおす。

 

「行くぜ! チェンジ全開!!(二回目)」

『バン! ババン! バン!(迫真)』

 

 ギアトリンガーに、ヒーローサイドを上にしたセンタイギアをセット。

 グルグルグルとハンドルを回してトリガーを引くと、センタイギアに内包されていたヒーローエネルギーがスーツと化し、遠野以外の五人の体に装着される。

 

「秘密のパワー、ゼンカイザー!」

「恐竜パワー、ゼンカイジュラン!」

「百獣パワー、ゼンカイガオーン!」

「魔法パワー、ゼンカイマジーヌ!」

「轟轟パワー、ゼンカイブルーン!」

「迫真パワー、遠野レシート!」

 

「六人そろって」

「「「「「「機界戦隊ゼンカイジャー!!」」」」」」

 

 姿は変わらずとも、ちゃっかり名乗りに加わる遠野。

 ゼンカイジャーが大見えを切り終えたのを見計らって、インムワルドも多数の戦闘員を呼び出した。

 

「いいよ、来いよ、クダック! ほらいくどー」

「俺たちも、全力全開だぁ!」

 

 一気に乱戦となるゼンカイジャー+遠野とクダックたち。

 だが、しょせん量産型の戦闘員。六人のヒーローの敵ではない。

 数十体ものクダックたちは、瞬時に六人の手で倒されるのだった。

 

「配下が逝きすぎィ! 逝く逝く。 んにゃぴ……やっぱり、自分の手(で始末をつけるの)が一番ですね」

「じゃあオラオラこいよオラァ!」

 

 ゼンカイジュランに挑発され、すかさずインムワルドは飛び掛かった。

 ジュランソード、ガオーンクロー、ブルーンピッカーが振り下ろされる。

 

 バァン!(攻撃がはじかれる音)

 

「ダメだやっぱ! いくら攻撃しても、こいつ全然傷つかねえ!」

 

 インムワルドの堅牢さに、しびれた手をさすりながら叫ぶジュラン。

 

「だったらこれはどうだ! マジーヌ!」

「ヌヌッ!」

 

 ゼンカイザーとゼンカイマジーヌは、インムワルドから距離をとり、ギアトリンガーのガトリング砲を乱射する。

 無数の光弾がインムワルドの全身に降り注ぐが

 

「カスが効かねえんだよ」

 

 体表から煙は上がるものの、やはりインムワルドは痛みさえ感じていない様子だ。

 標的をゼンカイザーたちに定めたインムワルド。

 二人のもとへ駆け出そうとした所で、横合いから飛んできた蹴りに不意を突かれる。

 蹴りを放ったのは遠野であった。

 

「んなんだお前!?」

「あっ……すいません」

 

 不意打ち攻撃をしてしまったことに、つい遠野は謝ってしまった。真面目だなぁ……。

 遠野の体を見たインムワルドの目つきが変わる。

 どうやら彼の肢体にホモ特有の情動が刺激されたようだ。

 

「TDN人間にしては、なかなかいい体してんねぇ道理でねぇ!」

「自分……強いっすよ?」

 

 見つめあう遠野とインムワルド。二人の間に張り詰めた緊張の糸が通される。

 やがて、二人は同時に構え、同時に拳を打ち込んだ。

 二人の力は拮抗し、拳と拳で互いの動きを抑え込む形となる。

 さらにもう片方の拳を両者は繰り出す。

 さらに右足、左足と、次々と技を繰り出すも、そのどれもが互いに同じ力であり、一進一退の攻防が繰り広げられていた。

 

 プロの格闘家とプロのホモビ男優。

 一流のエンターテイナー同士の迫真のやりとりに、ゼンカイジャーたち五人は手を出せずにいた。

 ことの成り行きを、息をのんでじっと見つめること数分……。

 幾多の攻防を繰り返し、やがて遠野とインムワルドは互いの手を止めた。

 そして、

 

「やりますねぇ!」

「あぁ^~いいっすねぇ^~」

 

 遠野とインムワルドは、硬い硬い握手をした。

 

「ぇこれ……どういうことっすか?」

「おそらく、プロ同士言葉を交わすより、拳を交えたことで仲良くなった……のではないですかね」

 

 ゼンカイブルーンの言う通り、インムワルドは遠野と体を通したやりとり(意味深)を深めたことで、世界総ホモ化という野心が清められたのだ。

 

「あ? ってことは、これで一件落着って感じか?」

「そうだね、ジュラン。見て、街のみんなも元に戻ったみたい。ガオーンも早く正気に戻って、どうぞ」

「おっ、そうだね。まあ、僕が介人のことが好きなのは元からだけどね。ン///……チュパチュパ……」

「あ、はい……」

 

 一方のインムワルドも、すっかり遠野と打ち解けていた。

 

「戦うお前は美しかったって、はっきりわかんだね。

まるで神の住む星に舞い降りた神秘の光なんだよなぁ。

俺も†悔い改めて†、これからはまっとうな一般通過キカイノイドとして、この街で生きることにするゾ」

「そうですか……。先輩がここで暮らすなら、僕もこの街で腰を落ち着けようかな……」

「まず家さぁ、屋上あんだけど……一緒に住んでかない?」

 

 この短時間で、インムワルドを先輩と呼び慕うまでに交流を深めた遠野。

 インムワルドもまんざらでは無く、更生し人と共に生きる道を選んだ。

 これにてハッピーエンドで終わり! 閉廷!

 

「と言いつつ……?」

 

 不意に、誰も聞いたことのない第三者の声が響いた。

 声の主の姿は見えない。

 代わりに、建物の壁から片腕だけがヌッ!と除く。

 その腕には、ギアトリンガーに酷似した紫色の拳銃──通称『ギアトジンガー(・・・・・・・)』──が握られている。

 

 ギアトジンガーの銃口から、暗黒色の禍々しいエネルギー光弾が撃ちだされた。

 発射されたそれは、インムワルドの体を容赦なく打ち抜く。

 

「先輩!?」

「アァッ! ハァッ! イキスギィ!」

 

 ギアトジンガーから放たれたのは闇の力。

 それによって、インムワルドは浄化されたはずの悪の心を、無理やり増幅させられてしまったのだ。

 遠野を突き飛ばし、やたらめったらとホモビームを乱射し、狂ったように暴れ始めるインムワルド。

 

「先輩!? なにしてんすか? やめてくださいよ本当に!」

 

 遠野は必至で声をかけるが、すでに理性を失ったインムワルドには届かない。

 

「オォン! アォン!」

 

 インムワルドは、ついさっき正気を取り戻したばかりの、まだ動けないでいる市民の方へと向かっていく。

 

「これマジ? ハッピーエンドの流れに対してフラグ折れるのが唐突すぎるんだが」

「急いで止めないと!」

 

 だが、動こうとするゼンカイザーを止めたのは、だれあろう遠野であった。

 

「遠野さん!? なにを」

「……先輩は、僕と組み手を交えることで確かに正義の心を持ち得ました。そんな先輩があんな風にさせられたのなら、僕が止めたいんです!」

「でも、生身の遠野さんじゃ……」

 

 言い淀むゼンカイザーにセっちゃんから無線が繋がる。

 それこそ、起死回生の一打となる連絡だった。

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