迫真空手の世界チャンプ、遠野を新メンバーに加えた介人たち五人は、大急ぎでインムワルドの元へ向かっていた。
セっちゃんからの連絡によると、人々がホモ化する中心は、下北沢であることが分かった。
「ホァーホァー、ホラホラホラホラ」
下北沢の住宅街、そのまっただ中にインムワルドはいた。
道行く男たちを捕まえては、必殺のホモビームを浴びせ次々とホモの道に堕としていく。
運悪くその場に居合わせた人やキカイノイドは、蜘蛛の子を散らすように逃げていくが
「なんだよホラー、嬉しいダルルォ? ホラァー!」
野獣のような瞳から放たれるホモビームは、容赦なく逃げようとする男だけを狙い撃つ。
一人、また一人とホモにされる男たち。
「イヤァ……怖い……怖い……」
インムワルドは、腰が抜け、逃げることもままならない男さえも見逃すことはしない。
ジリジリと追い詰め、恐怖に怯え苦悶の表情を浮かべる被害者の顔を愉しむ。
「やだ怖い……やめてください……アイアンマン!」
ついには海外のヒーローにまで助けを求める被害者。
もちろんその声が海を越えて届くはずがない。
しかし、この国にもヒーローはいるのだ。
「そこまでだ、インムワルド!」
「OH、デップー(マーベル)」
だからマーベルキャラは来れないって言ってるだろいい加減にしろ。
現れたのは日本が誇る五色の戦士たち。
「おーおーおーおー、どこ行ってたんだお前よー。逃げやがってよーおい」
インムワルドは眼前に立つ介人と四人のキカイノイド、そして遠野を威嚇するように言う。
対する介人は、不敵な笑みを浮かべ自信満々だ。
「インムワルド! 今度の俺たちは一味違うぜ。なんたってこっちには、迫真空手の世界チャンピオンの遠野さんがいるんだからな!」
「オッス、お願いしまーす」
律儀に会釈する遠野からは、彼の生来からの生真面目さがうかがえた。
介人とキカイノイドたちはどこからか、変身アイテムであるギアトリンガーとセンタイギアを取り出すと、介人の声を合図に変身の構えをとる。
「行くぜ! チェンジ全開!!」
「……あのー……」
「? どうしたんですか、遠野さん?」
「それ、僕は持ってないんですけどそれは……大丈夫なんですかね?」
「……あっ(察し)」
そう、介人はここに来るまですっかり忘れていた。遠野に変身アイテムを渡すことを。
だがそれは最初から不可能だったのだ。
なぜなら、介人の両親が用意していたギアトリンガーとセンタイギアは五組しかない。遠野の分は元から存在していないのだ。
「バカじゃねえ? おい、笑っちゃうぜ!」
介人の失敗をあざ笑うインムワルド。
だが当の遠野は、まったく気にしていない様子だ。
「大丈夫ですよ、僕には迫真空手がありますから。それに、筋肉あれば十分じゃないっすか?」
半笑いで介人のミスをフォローする遠野。
彼の笑みで、介人も気落ちしていた心を持ち直した。
あらためてギアトリンガーを構えなおす。
「行くぜ! チェンジ全開!!(二回目)」
『バン! ババン! バン!(迫真)』
ギアトリンガーに、ヒーローサイドを上にしたセンタイギアをセット。
グルグルグルとハンドルを回してトリガーを引くと、センタイギアに内包されていたヒーローエネルギーがスーツと化し、遠野以外の五人の体に装着される。
「秘密のパワー、ゼンカイザー!」
「恐竜パワー、ゼンカイジュラン!」
「百獣パワー、ゼンカイガオーン!」
「魔法パワー、ゼンカイマジーヌ!」
「轟轟パワー、ゼンカイブルーン!」
「迫真パワー、遠野レシート!」
「六人そろって」
「「「「「「機界戦隊ゼンカイジャー!!」」」」」」
姿は変わらずとも、ちゃっかり名乗りに加わる遠野。
ゼンカイジャーが大見えを切り終えたのを見計らって、インムワルドも多数の戦闘員を呼び出した。
「いいよ、来いよ、クダック! ほらいくどー」
「俺たちも、全力全開だぁ!」
一気に乱戦となるゼンカイジャー+遠野とクダックたち。
だが、しょせん量産型の戦闘員。六人のヒーローの敵ではない。
数十体ものクダックたちは、瞬時に六人の手で倒されるのだった。
「配下が逝きすぎィ! 逝く逝く。 んにゃぴ……やっぱり、自分の手(で始末をつけるの)が一番ですね」
「じゃあオラオラこいよオラァ!」
ゼンカイジュランに挑発され、すかさずインムワルドは飛び掛かった。
ジュランソード、ガオーンクロー、ブルーンピッカーが振り下ろされる。
バァン!(攻撃がはじかれる音)
「ダメだやっぱ! いくら攻撃しても、こいつ全然傷つかねえ!」
インムワルドの堅牢さに、しびれた手をさすりながら叫ぶジュラン。
「だったらこれはどうだ! マジーヌ!」
「ヌヌッ!」
ゼンカイザーとゼンカイマジーヌは、インムワルドから距離をとり、ギアトリンガーのガトリング砲を乱射する。
無数の光弾がインムワルドの全身に降り注ぐが
「カスが効かねえんだよ」
体表から煙は上がるものの、やはりインムワルドは痛みさえ感じていない様子だ。
標的をゼンカイザーたちに定めたインムワルド。
二人のもとへ駆け出そうとした所で、横合いから飛んできた蹴りに不意を突かれる。
蹴りを放ったのは遠野であった。
「んなんだお前!?」
「あっ……すいません」
不意打ち攻撃をしてしまったことに、つい遠野は謝ってしまった。真面目だなぁ……。
遠野の体を見たインムワルドの目つきが変わる。
どうやら彼の肢体にホモ特有の情動が刺激されたようだ。
「TDN人間にしては、なかなかいい体してんねぇ道理でねぇ!」
「自分……強いっすよ?」
見つめあう遠野とインムワルド。二人の間に張り詰めた緊張の糸が通される。
やがて、二人は同時に構え、同時に拳を打ち込んだ。
二人の力は拮抗し、拳と拳で互いの動きを抑え込む形となる。
さらにもう片方の拳を両者は繰り出す。
さらに右足、左足と、次々と技を繰り出すも、そのどれもが互いに同じ力であり、一進一退の攻防が繰り広げられていた。
プロの格闘家とプロのホモビ男優。
一流のエンターテイナー同士の迫真のやりとりに、ゼンカイジャーたち五人は手を出せずにいた。
ことの成り行きを、息をのんでじっと見つめること数分……。
幾多の攻防を繰り返し、やがて遠野とインムワルドは互いの手を止めた。
そして、
「やりますねぇ!」
「あぁ^~いいっすねぇ^~」
遠野とインムワルドは、硬い硬い握手をした。
「ぇこれ……どういうことっすか?」
「おそらく、プロ同士言葉を交わすより、拳を交えたことで仲良くなった……のではないですかね」
ゼンカイブルーンの言う通り、インムワルドは遠野と体を通したやりとり(意味深)を深めたことで、世界総ホモ化という野心が清められたのだ。
「あ? ってことは、これで一件落着って感じか?」
「そうだね、ジュラン。見て、街のみんなも元に戻ったみたい。ガオーンも早く正気に戻って、どうぞ」
「おっ、そうだね。まあ、僕が介人のことが好きなのは元からだけどね。ン///……チュパチュパ……」
「あ、はい……」
一方のインムワルドも、すっかり遠野と打ち解けていた。
「戦うお前は美しかったって、はっきりわかんだね。
まるで神の住む星に舞い降りた神秘の光なんだよなぁ。
俺も†悔い改めて†、これからはまっとうな一般通過キカイノイドとして、この街で生きることにするゾ」
「そうですか……。先輩がここで暮らすなら、僕もこの街で腰を落ち着けようかな……」
「まず家さぁ、屋上あんだけど……一緒に住んでかない?」
この短時間で、インムワルドを先輩と呼び慕うまでに交流を深めた遠野。
インムワルドもまんざらでは無く、更生し人と共に生きる道を選んだ。
これにてハッピーエンドで終わり! 閉廷!
「と言いつつ……?」
不意に、誰も聞いたことのない第三者の声が響いた。
声の主の姿は見えない。
代わりに、建物の壁から片腕だけがヌッ!と除く。
その腕には、ギアトリンガーに酷似した紫色の拳銃──通称『
ギアトジンガーの銃口から、暗黒色の禍々しいエネルギー光弾が撃ちだされた。
発射されたそれは、インムワルドの体を容赦なく打ち抜く。
「先輩!?」
「アァッ! ハァッ! イキスギィ!」
ギアトジンガーから放たれたのは闇の力。
それによって、インムワルドは浄化されたはずの悪の心を、無理やり増幅させられてしまったのだ。
遠野を突き飛ばし、やたらめったらとホモビームを乱射し、狂ったように暴れ始めるインムワルド。
「先輩!? なにしてんすか? やめてくださいよ本当に!」
遠野は必至で声をかけるが、すでに理性を失ったインムワルドには届かない。
「オォン! アォン!」
インムワルドは、ついさっき正気を取り戻したばかりの、まだ動けないでいる市民の方へと向かっていく。
「これマジ? ハッピーエンドの流れに対してフラグ折れるのが唐突すぎるんだが」
「急いで止めないと!」
だが、動こうとするゼンカイザーを止めたのは、だれあろう遠野であった。
「遠野さん!? なにを」
「……先輩は、僕と組み手を交えることで確かに正義の心を持ち得ました。そんな先輩があんな風にさせられたのなら、僕が止めたいんです!」
「でも、生身の遠野さんじゃ……」
言い淀むゼンカイザーにセっちゃんから無線が繋がる。
それこそ、起死回生の一打となる連絡だった。