なんとなく行きたかった異世界に転生出来ないようです。《in鬼滅の刃》   作:めしめしうまうま

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第七話 優しい一太刀

 水源までの道中に採取した木の実と山菜を調理する桜仙。その間に伊黒と実弥は川で魚を獲りに向かった。

 

 そこには山の中で調理したとは思えない山菜料理と軽く摘める様処理された木の実を食べながら、下処理された川魚が焼き終わるまで雑談する男達がいた。

 日中は鬼が活動しない為、陽が出ている間に休息を取る。腹ごしらえが済むと、男達は睡眠を取り、陽が沈むまでに体力を万全にしておく。

 

 

>>>

 

 

 4日経った頃、異変に気づく。

 桜仙と実弥と伊黒はこの4日間常に行動を共にしていた。鬼を見掛ければ斬り、逃げ回る剣士を助け また鬼を斬る。するとある日を境に鬼と出会わなくなった。

 それから、桜仙達はバラバラに行動し始めた。

 

 

 実弥と伊黒と分かれてから1時間後、桜仙が対峙している体中を手で覆った大鬼が、この山に居る最後の1体だった。

 

「小僧 今は明治何年だ」

 

「今は明治45年だ。まぁ後少しで年号は変わるけど」

 

「何…年号は変わるのか」

 

「ああ、後3ヶ月後くらいにね」

 

「何ィイイイイ!!年号がァ!!年号が変わるだとオオ!!____ッブヘェェ!!」

 

「うるさいな。男が喚くな、みっともない」

 

 急に発狂するからつい手が出てしまった。年号が変わるくらいで発狂するなよ。喜ぶのは良いが。

 殴られた手を巻いた大鬼…手鬼と呼ぶ事にしよう。手鬼は殴られた衝撃で1m程吹っ飛んだ。

 

 何故桜仙は刀を抜かなかったのか。実はこの山に入ってからというものの、桜仙はまだ1体も鬼を斬って居なかった。

 

 それは実弥と伊黒と共に行動していたのが原因だ。

 

 鬼を見つけても、実弥と伊黒が直ぐに斬ってしまうからだ。その余りの反応速度に___まぁ余裕で張り合えるのだが、桜仙は2人程積極的に斬りかかっていなかったのだ。別に桜仙が鬼を斬る程の精神力が無い訳では無い。

 

 鬼は元々人間だ。なら、人間の頃だった記憶があるはずだ。もしも人間の頃の記憶が無いなら、眠らせてあげよう。この山に居るなら尚更だ。空腹になってまで鬼同士で共喰いし、生きながらえるのはどんなに悲しい事か。

 今ならカナエの気持ちが分かったような気がした。

 

 桜仙は斬る鬼を選ぶ。

 

 

 

 

 だが桜仙は気付かない。

 それがどんなに甘い考えなのかと。

 

 

 

 

 

「おい大丈夫か。殴った後で悪いけど、人間の頃の記憶はあるか?」

 

「くそっくそっくそォォ!!アア忘れもしない47年前 鱗滝がまだ鬼狩りをしていた頃だ!江戸時代…慶応の頃だった」

 

「質問が悪かった。鬼になる前の記憶だ。」

 

「鬼になる前…?そんな前の事覚えている訳が無い それよりお前 俺を殴りやがって、手足を千切って喰ってやろうかァ!!!」

 

 激昂した手鬼は、その体中に纏わせた大量の手で桜仙に襲い掛かる。だが桜仙は、「記憶が無いなら頸を斬るか…」と考えながら、その場を動かず手鬼の攻撃を捌く。逸らし 流し 時には斬り落とした。

 

「その大きな体を包む大量の手。きっと手に何らかの思入れがあるのだろう。もう安らかに眠るといい」

 

「ーーーッ…!!」

 

 納刀した桜仙が柄を強く握った瞬間、手鬼は無意識のうちに硬直した。それは圧倒的強者の威圧でもなく、死ぬ直前の走馬灯でも無かった。

 手鬼は桜仙と目が合った時、頸元が斬られた錯覚に陥った。その錯覚は余りにも現実的で、手鬼は斬られてもいないのに 斬られるであろう現実を、受け入れた。

 

 

 ーーー桜仙はその1秒後に刀を振った。

 

 

 優しい雨に打たれるように、痛みなく頸を斬る技。カナエに教えてもらった時、カナエの鬼に対する思いそのものの技。

 

 それは俺の最初の型になる。

 

 

 ーーー柳の呼吸 壱ノ型 居合・柳道

 

 

 不思議と辺りに何本もの柳が揺め咲き、手鬼への一本道を作る。駆けた桜仙が流れる様に刀を振り抜くと、柳の葉が一斉に音を鳴らし揺らめいた。

 納刀した後、その幻が消えて、手鬼の体は緩やかに崩れいった。

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