今回はオリジナルです!
桂馬がかのんにあっていた時,歩美はこんな想いだった、と言うのを書いてみました!
原作には無い部分なので上手く書けているかは分かりませんが是非読んでください!
【同時刻・帰路】
「あっ‼︎…私、忘れ物しちゃったみたいです!取ってくるので、先に帰っておいてください!」
わざとらしくそう言って、エリーは私を置いて学校へと駆けていく。私だけが、一人…
昨日、かのんちゃんの歌が聞こえてきて私は高等部の校舎を全て見て回った。そして、見つけてしまった。南校舎の屋上で、桂木が…私の恋人が、ベンチで一人 かのんちゃんの歌を聞く姿を。
私の心はまるで「以前」の様に騒ついた。あの、大会前の様に…
桂木は、私の。
私が、桂木の恋人。
……なのに、その隣に自分ではない誰かがいるだけで、不安になって、怖くなった。
でも、それは私だけだったみたいだ。
今朝には、あいつはケロッとしていて、普通に話しかけてきた。何食わぬ顔で…いつもみたいに。それが、私には耐えられなかった。許せなかった。不安に思ったのも、怖くなったのも、私だけで。私が好きな桂木への恋が、私の独りよがりな恋に思えてしまうから…
だから、私は聞かなかった。どうして、かのんちゃんと一緒にいたのか。聞かなきゃいけないはずなのに、聞かなかった。私は、この自分に芽生えた恋が偽物であると思いたくなかったから。
「はぁ…」
私はため息一つつき、俯いて帰路についた。この不安も、怖いのもきっと気のせいだろうと思い込むことにして…
そしたら、私は途端に何をすればいいのかわからなくなった。
帰ればいいのか?
学校に行けばいいのか?
部活に行けばいいのか?
桂木に…会いに行けばいいのか?
何も、わからなくなってしまった。そして、ただ道に立っているだけだった私に声をかけたのは何の偶然か、桂木のお母さんの 麻里さん だった。
「あら、歩美ちゃんじゃない!こんなところで何してるの?」
「…麻里さん…」
私の眦にはほんの少し涙の跡があった。それを見られたくなくて、私は嘘をついた。
「いえ、何でもないんです!ただちょっと目にゴミが入っちゃっただけで…」
そう言って、元気なふりをして、目を擦って誤魔化す。
「歩美ちゃん…大丈夫?」
……きっとこれは目にゴミが入ってとか、そういう事ではないだろう。
やっぱり、親子だな…嘘をついても、すぐに見抜かれてしまう。
擦る手を止めて、私は苦笑を浮かべる。
「大丈夫じゃ、ないかもです。」
「…よかったらコーヒー飲んで行かない?サービスするわよ。」
優しいな…
「…じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
私は麻里さんと一緒に「カフェ・グランパ」に向かった。
どうやら、私も一人ではないみたいだ…
【カフェ・グランパ】
「好きな席に座ってね。今日はもうお店閉めちゃうからくつろいでて。」
麻里さんは入口にかかっているプレートを「CLOSED」にした。
「コーヒー、淹れてくるわね。」
私は入り口にほど近い一人がけのソファーに座った。
座った席からは丁度、麻里さんのコーヒーを淹れる姿が見えた。その姿が、私にはキレイに思えて、つい見惚れてしまう。……若いなぁ……
しばらくすると、麻里さんはおぼんにコーヒーカップを二つ乗せてやってきた。
麻里さんは私の前の席に座ると持ってきたコーヒーカップの一つを私の前に置いた。
「それで、桂馬と何があったの?」
持ってきた自分の分のコーヒーを飲みながら聞かれたけれど、私は何を答えればいいのか分からなくなって、出されたコーヒーを一息に飲み干す。ブラックのままだったけれど、そのコーヒーは今まで飲んだどんなコーヒーよりも美味しく感じた。
おいしい…
そう思った瞬間、大粒の涙が止めどなく溢れてきた。溢れて、溢れて、空のコーヒーカップにポタポタと溜まっていく。
そんな私を見て、麻里さんは言った。
「歩美ちゃんは…我慢、してたんだね?」
私には、麻里さんが心を見透かしているのではないかと思えるほどだった。
我慢…我慢、か……そうか、私は我慢をしてたんだ。不安で怖いのを誰にも話せなくて、我慢してたんだ。
「ありがとう」
感謝を告げられた私は、なぜ?という気持ちが私の涙を止めた。
「桂馬の事、ちゃんと考えてくれて ありがとう…でもね、きっとそれは違うと思うんだ。」
え?
「あいつは、バカで、ゲームばっかりやってるようなやつだけど……歩美ちゃんの事、ちゃんと考えてると思うから。だったら、歩美ちゃんは我慢なんかしないで、ぶつかればいいんだよ」
ぶつかって、いいのかな…?
そう言われて、私の中で何かが吹っ切れた。
私は、桂木が…好き。だから、あいつの隣には私がいたい。かのんちゃんが相手でも、それは、変わらない。
「ありがとう、ございます…なんだか、見えた気がします!」
「いいのいいの……それで、何が原因なの?やっぱりあいつが変なこと言っちゃった?それとも「恋のABC」でもやっちゃった⁉︎♡」
…なんか、変なテンションになった…?
麻里さんは目を輝かせて前のめりに聞いてきた。
「ちょ、ちょっと……」
「あ、やっぱり恥ずかしい?でもね!将来的に「娘」になるかもしれないなら今のうちから聞いておきたくて!」
麻里さんって、こういう人だったんだ……
私はこの先、一生 麻里さんには逆らえないだろうと、この時思った。それは力ではもちろんのこと、人としての器の大きさでも……
「あ、あはは…」
気づけば私はさっきとは違った苦笑を浮かべていた。
「ねえ、聞かせてよ!」
——その後、私は私たちに何があったのか、麻里さんに話した。
「…桂馬って、やっぱり底抜けのおバカなのかな…?」
麻里さんは額に手を当てて自分の息子に思案していた。
「教育、間違ったかなぁ…」
「そんな事ないですよ‼︎」
私にはこの時、教育は間違っていないと、はっきり断言できた。
「確かに、あいつはゲームばっかりやってるし、バカだと思う変な奴ですけど…私は、そんな変な部分も含めて全部、好きですから‼︎そんなあいつを育てた麻里さんの教育が間違いだなんて、私は思いません‼︎」
「歩美ちゃん……やっぱり、「この間のお話」真剣に考えてくれない‼︎」
少しばかり目を潤ませた麻里さんは私の手を取って懇願する様に言った。
「この間のお話」…それはきっと、もっと私たちにとって先のお話。私には想像が付かないような、そんなお話。純白のドレスに包まれて、お互いの愛を確かめる。そんなお話…
「でも、私…まだ17歳ですし…」
「大丈夫 大丈夫!私だって桂馬を産んだの18の時だし!私だってサポートするから!」
「でも……」
きっと、私のこの煮え切らない態度が麻里さんには許せなかったのだろう。
麻里さんはメガネを外し、髪を解いた。
「…歩美ちゃん…歯ぁ食いしばりな!」
麻里さんは拳を構え、私はそのあまりの怖さから殴られることを覚悟して、目を瞑った。
……ぷにっ
「…はひ…」
私が覚悟していた痛さは一向に訪れず、頬を引っ張る独特の痛みが残るばかりだった。
「みゃりしゃん?」
「…ぷっ、あはははは!」
ちゃんとした発音ができない私が面白かったのか、麻里さんの顔は笑顔だった。
「ごめんごめん!…でもね、結婚で必要な覚悟なんてさ、その人とずっと一緒にいる。ってだけだなんだよ。だからね、好きな人がいる。その人とずっと一緒にいたいと思えたら、それはもう、結婚の覚悟はできたって事なんだよ。」
それなら、私にその覚悟は……
「——はい!今日のお話はここまで!そろそろ暗くなるから、気をつけて帰りなよ。」
そう言って、麻里さんは私の背中を押し出してくれた。
もう、「以前」の様な不安も怖さもない!
私は桂木が好きで、私は桂木の隣にずっといたいんだ!
「麻里さん、ありがとございました。また、遊びに来てもいいですか?」
「いつでも来てね。歓迎するから!」
そうして、私はもう一度 帰路についた。
今度は…ちゃんと話すからね。桂木…
読んで頂きありがとうございます!
今回は少し短めだったので、もしかしたら次回の更新が前倒しになるかもしれません!
※FLAG.05の進捗具合によりますので、確かなことは言えません。最悪、予定していた一週間後には必ず更新します!