最近、第二、第三の推しが私の中で急浮上してきている…
自分で書けば書くほどそのキャラのことが好きになっていくのが、なんだか怖い…
(一推しが食われる…)
PS 昨日はハクアの誕生日でした!おめでとう‼︎
栞 の回を書き終わって時間があればハクアの回も書こうと思っています。
【学園・南校舎屋上】
中川かのんがその姿を消した。
歌っていたはずのステージから忽然と消えたのだ。
…って、現実にそんなことがあってたまるか!
ボクは彼女がいた場所を注意深く見てみる。すると、
「…なんか透けてないか?」
限りなく透明に近い中川かのんの姿が、そこにはあった。
「ダメダ…ダメダ…ワタシノウタナンテダレモキイテナイ…」
あの頃と同じ…
『あれ、いたの?あんた?』
一緒にいたはずなのに、いつの間にかいないものとして扱われる。
あの頃と同じ…
『先生もよく見たんだけどなー、まさか連絡網にお前を書き忘れるとは…ごめん』
担任の先生が、連絡網の中に私の名前を書かなかった。
あの頃から、何一つ変わってない。新人賞をとっても、「完璧」だとほめられても、私は昔の私のままなんだ‼︎
「な、何も変わってない!私…まだ透明なの‼︎」
なるほど‼︎
ボクは気づいた。彼女が何に悩み、苦しんでいるのか。
「いや、ちがう!ちゃんと歌 聞いてたよ‼︎」
先程の居眠りからは無理があるだろが…
「ウソ‼︎寝てたくせに‼︎」
案の定、彼女は懐からスタンガンを抜くとボクに当てようと連撃をくり出し、最終的にボクの後ろにあった木に当てつけ、木を折って見せた。
スタンガンって、こんなこともできるのか…?
「寝てたのは……その……それほど素晴らしい歌だったからさ‼︎まるで天国にいるようだったヨ‼︎」
そういうと、彼女は操り人形の糸が切れたように、その場から力なくさっていった。
「い…生きのびた…」
ボクはスタンガンという恐怖から無事生還できたことに安堵した。
「神様——大丈夫ですか——かのんちゃんも怒りますよ、神様ずーっとムシしてるから…」
こいつ、隠れて見てやがったな…
いつの間にかエルシィはボクの隣にいて、文句を言ってくる。
「…それよりも…高原は?」
「…歩美さんだったら、先程メールで送ったように今日は部活を休んで帰りましたよ?」
「そうか……でもなエルシィ、ボクだって好きでやってんじゃないぞ‼︎あいつの、中川かのんの「悩み」を知るために揺さぶってたんだよ。」
「あ、ああまでして悩みを知る必要あるんですかぁー‼︎」
「当たり前だ‼︎攻略ってのは、悩みを聞かないことには始まらないんだよ‼︎『「悩み」はボクらのキラカード 命かけても手にいれな‼︎』大丈夫だ。悪い印象も、最後にフォローしたからな。」
「あれフォロー?」
「悩みを話し始めたら攻略は既に50%地点にいる。ここからは積極的に会いたい、が……難しいな……」
今まで、ゲームではハーレムルートを幾百、幾千とやってきた。しかし、現実ではこの体たらくだ。
高原に、どう接すればいいのかまるでわからない。
かけるべき言葉の選択肢は山ほどある。でも、その言葉が、高原を前にすると全く出てこない。
「…もう、歩美さんに事情を全て話してはどうですか?」
「それは最終手段だ…地獄だなんだと言っても信じてもらえないだろうし……高原を傷つける結果になる。それだけは…ダメだ。」
「………それで、かのんちゃんの方はどうするんですか?かのんちゃんは忙しいからあまり会えないですし…」
「……それならあとは、あいつの悩みを話せる奴が、他にいないことを祈るだけだ。」
「?」
エルシィはまるで何を言っているのかわからないのか、首を傾げていた。
[メールだよ♡]
ボクのPFPから慣れ親しんだメールを知らせる声が流れる。
来たな…
【なるさわテレビ・一階・ロビー】
そこにいる中川かのんは、さっきのまま…「透明」のままだった。
ま、まだ落ち込んでる…ほ、本当に透けてるのか?駆け魂と関係あるんだろうか?
中川かのんは脅迫状代わりに使ったCDを出して、その裏面をボクに見せた。
「このメルアドってやっぱり桂馬くんのだったんだ…CD、私のコートに返してあった…私…透明じゃない?私の歌……届いてた?」
「あ、ああ…いい歌だった…」
詰め寄ってきたかのんにボクは返答をする。すると、かのんの体はみるみる「元通り」になった。…そして底抜けに明るい声が返ってきた。
「ほんと⁉︎ああ、よかった……あのままじゃ仕事にならなかったもん。」
あのまま仕事をやっていたら、間違いなく放送事故だぞ…
「……」
「やだなー久しぶりに、ちょっと落ち込んじゃった。」
あれがちょっと…?
かのんは自分で自分を小突き、ちょっと落ち込んでいたことを告白する。
「このCD封あいてたね、桂木くんちゃんと聞いてくれてたんだっ?それで、あの…またメールしていいかな?私…学校の友達いなくて、ちゃんと話した人、桂木くんが初めてなんだ。」
話したか?スタンガンをバシバシ当てられていただけのような…
ボクは当然イエスと言いたいが…なんだろう…このイヤな予感…
[メールだよ。]
懐から聞こえた声に、ボクの嫌な予感は警鐘を鳴らす。「それを見たら、後戻りできないぞ」と。
『ヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネ………』
画面一面に書き込まれた「ヨロシクネ」の文字…それだけじゃなく、その光景は下にスクロールしても全く変わらなかった。一体、何行書いたんだ?
「ヨロシクネ♡」
…その日から、ボクのPFPはメール音が鳴り続ける悪夢が始まった。
【翌日・某所】
[メールだよ♡]
ボクはかのんに呼び出された。それは、ボクがゲームを買っている時のことだった。
「ごめんね呼びだして。ちょっと落ち込むことがあって。」
こんなことで腹を立てたり、挫けたりしない!根気良く!
ボクはかのんに励ましの言葉を送った。
[メールだよ♡]
ボクはかのんに呼び出された。それは、ボクが食事をとっていた時のことだった。
「収録で失敗しちゃった…」
こんなことで腹をたてたりは…しない!根気良く!
…その後もかのんからの呼び出しは途絶えることがなく、 そのメールの数は1日に36回に及んだ。
[メールだよ♡]
「私泳げないの…ステージから落ちたら…」
…根気良く…
[メールだよ♡]
「寝ぐせが直らないの…」
根気にも限度があるぞ‼︎
【翌日・学園】
「…ねえ、エリー 最近、桂木 忙しそうだけど、何かあったの…?」
あの日、麻里さんに励ましてもらって、桂木にいざ話しかけようと思ったら桂木はまるで何かに追われているように忙しくしていた。
「…えーーっと……今、兄さまは兄さまにしかできない仕事をしています!」
エリーはまるで何かを誤魔化すように言ったけれど、桂木にしかできない仕事。そう聞いて、私はエリーがこのクラスに初めて来た時言っていたことを思い出した。
『今に‼︎お兄様はこの世のすべての女性の憧れになるんですから‼︎』
私には、エリーが何を言っているのかわからなかったけど、今現実に一人 桂木の隣に現れた女の子がいる。
「…桂木にしか…できない仕事。それって、私には手伝えないの?」
桂木にしかできなくても、私にだって手伝えることはきっとある。せめて一つでも、私に手伝えることがあるのなら…しかし、そんな希望は容易く否定される。
エリーは首を横に振った。
「お手伝いはできません…本来、私が兄さまを手伝わなくていけないんですけどね。あははは……でも、この仕事は、兄さまにしかできません。私たちがからめば、それはきっと、かえって兄さまの邪魔になってしまいます。」
エリーは、どこか寂しそうに私にはできないと、そう言った。
「…そっか…」
私にできることがないのなら、私は…
『ぶつかればいいんだよ』
背中を、強く押されたんだ。
ガラガラ
私は桂木が廊下に出たのを横目に捉えた。その桂木が、左右にフラフラとしていたのも…
私は慌てて廊下に出る。すると、桂木は壁にもたれかかっていた。
「…ねえ、桂木…」
私は桂木の背中に声を投げかける。
そして、桂木はその疲れた顔をこちらに見せると、途切れ途切れに言葉を発する。
「…高原…ボクは…お前に、言わなきゃ、いけないことが…」
私は桂木の言葉を切って喋り始める。
「いいの…まだ、いいから。あの時、屋上で中川さんと一緒にいたのも、今 忙しそうにしてるのも、桂木にしかできない仕事が終わってからでいいから…教えて…?」
私は言った。桂木にぶつかった。ぶつかれたよ、麻里さん…
「…わかった…全部終わったら、話すから。」
桂木の顔は少しだけ、ほんの少しだけだけれど、晴れたような…そんな気がした。
そして、桂木はお腹を押さえながトイレと向かっていった。
「私、待ってるから…」
私の呟きはきっと桂木には届いていないけれど、私はそれでいいと思えた。
【数日後】
[メールだよ♡][メールだよ♡][メールだよ♡]
1日36回に及ぶメール着信の悪夢。そして、向かった先のほんの小さな問題。その精神的攻撃は、落とし神であるボクをも苦しめて、ボロボロにした。
「神様―しっかりしてくださーい。」
そんなボクは現在、荷物としてエルシィに運ばれている最中だ。
見えてきたのは、隣の鳴沢市にある大きなホールだった。
【鳴沢臨海ホール】
「桂馬くーん‼︎こっちこっちー‼︎」
かのんは今までボクを呼ぶときは決まっていつも落ち込んでいた。しかし、今日のかのんは根本的に何かが違った。て言うか、元気だった。
「あれ?落ち込んでない…」
「桂馬くん‼︎私、今日すっごいライブするの‼︎一万人も入るんだって。こんな大きな所でやるの初めて‼︎す…すごいでしょっ!」
緊張しているのか、そのテンションはいつにも増して高かった。
でも、「落ち込んでいないのならボクを呼ぶな」という気持ちが表に出てしまって、感謝の言葉がカタカナ発言になってしまう。
「へ——それ言うためにわざわざ……アリガト。」
かのんはボクに背を向け、ホールに向かって話し始める。
「夢みたい…私を見に、みんながやってくるなんて。なーんの取り柄もないし…誰からも相手にされない存在だったのに…私はもう、透明じゃないっ!」
まるで、過去との決別。今までの自分の否定だった。
でも、
「かってにせ——」
ボクにはどうでもいいことだった。
だからボクは、イヤホンで外界の音をシャットアウトした。もちろん、手にはPFPが握られている。
「もーゲームばっかりして‼︎話 聞いてたの——⁉︎」
「聞いてる。」
ボクはかのんへ生返事を返す。
「も——っ、せっかく衣装見せてあげようと思った…のに……」
その声は少し残念そうだったがPFPの画面を覗き込んで、一変した。一変して、喜びに満ち溢れていたと思う。
「あ———‼︎私の歌——‼︎」
ボクの片耳から奪ったイヤホンを自分の耳にはめて、ボクのすぐ真横まで近づいた。
「ああ⁉︎」
ボクは驚きから悲鳴にも似た声が出てきた。
「桂馬くん、私の歌聴いてる——」
まるで、今までやられた仕返しをやられているようだ。
「や、やめろ‼︎よ、予習だよ予習‼︎」
「なんの予習———?」
くそっ‼︎からかいやがって‼︎
「私の歌…よかった?」
かのんはボクの前まで来ると、胸元が見えてしまう姿勢で聞いてきた。
や、やめろー‼︎
「よかったらほめてほしい——ほめてほめて———」
そう言って、おねだりを求める姿はまるで犬だ。
ボクは、紅潮してしまった頬を誤魔化すようにそっぽを向いて、かのんの頭を撫でた。そして、かのんは笑顔に満ちた表情をしていた。確かに、笑顔に満ちていた。
「じゃ——ね——」
そして、かのんはホールの方へと走っていった。
「さすが神様——‼︎絶好調ではありませんか‼︎もうさっきのナデナデじゃなくて、口づけでもよかったぐらいですよ——‼︎もう彼女の心のスキマは、埋まってるはずです‼︎」
残念だが…そんなことには決してならない。
エルシィの安直さに落胆していると、一際大きい声がボクたちにも聞こえてきた。
「捜して‼︎」
その姿を見るに…マネージャーと言ったところだろうか。
マネージャーの表情には明らかに焦りが見えた。
「かのんちゃんがいないぞ‼︎」
「失踪した‼︎」
スタッフの慌ただしいフンイキがこちら側まで伝わってくる。
「えー⁉︎そんな———」
エルシィも信じがたい事実に驚いていたが、ボクは違った。確信があった。
来たぞ…‼︎エンディングが…見えた‼︎
「かのんちゃんが失踪って……神様のおかげであんなに元気だったのに…また逆戻りしちゃった⁉︎」
逆戻り?そんなことあるもんか。ここは現実だぞ。
「落ち着けポンコツ悪魔。ちゃんと、前に進んでるよ。ここが…最後のイベントだ。」
慌ただしく騒ぎ立てるエルシィに声をかけ、覚悟のギアを一段上げる。
「おいエルシィ、ここは最重要ポイントだぞ。絶対、一番にかのんを捜し出すんだ‼︎このイベントは他の誰にも渡さない‼︎ギャルゲーマーの‼︎名にかけて‼︎」
他の誰かになんか渡さない。これはボクがやらなきゃいけないことだから…
「捜すといっても、かのんちゃんは気配をなくせるんですよ?この広い場所で透明人間をどうやって捜すんです?」
全くだ。しかし、そんな悠長なことは言っていられない。
「困った時はひとまず、選択肢総あたりだ‼︎」
目の前の選択肢をすべて、地道に正解に近づくやり方。
「それどういう方法ですか⁉︎」
「手当たりしだい捜すぞっ。」
ボクは走り出す。一分一秒が惜しい。
「フツーに言ってくださいよー。」
エルシィは文句を言いながら羽衣で空を飛び回る。
ボクは色んなところに行った。
ホール周辺に、来場客の並ぶ列、その他にも探すべきところは手当たりしだい探した。しかし、それでもかのんを見つけることはできなかった。
「いませんね——」
エルシィはベンチに腰掛けて文句を垂れる。見つからない。それでも、コンサートの時間は刻一刻と迫ってくる。
「コンサートの開演までに見つけないと…中止になったらアウトだ‼︎しかし見えない奴を…どうやって見つけるか…」
ボクが見つからないかのんと止まらない時間に落胆していると、エルシィが何かを思いついたような表情をする。
「神様‼︎駆け魂センサーがありますよ‼︎透明でもこれで位置がわかります‼︎かのんちゃんの駆け魂はキロクしてあります‼︎再探索しましょうっ!」
そう言ってセンサーをいじり始める。
ドロドロドロ
…いじり始めた途端、その音はなり始める。それはつまり、
「ち、近いですよ‼︎ど…どこだろ…?」
ドロドロ
そう言って、エルシィはベンチからどんどん離れていく。しかし、かのんは思ったよりも近くにいた。
「!いたっ!」
かのんはボクの真横に座っていた。それなのに、気づけなかった……
「か…かのん…」
ボクは周りが見えていない、自分の世界に入り込んでしまったかのんを呼び起こす。
「け…桂馬くん‼︎」
かのんはボクの姿を見ると、目を丸くして驚いた。そして、どこか嬉しそうだった。
「…何してんだ?今日はすごいコンサートするんじゃなかったのか?」
ボクは少し強い口調でかのんに問いただす。
「そ…うなんだ…そうなんだけど…そうなんだけど…そうなんだけど‼︎」
かのんは、どうしてかうまく話せないでいた。そしてその原因も、ボクにはわかっていた。
「また 透明になるのが怖い?アイドルになって目立たない自分から抜けだした…でもいつも不安なんだ。人から注目されなくなったら…ほめられなくなったら…また透明になる気がして…」
「そ…そうなの…そうなの‼︎桂馬くんは私のことなんでもわかってる‼︎」
「ぐ、ぐーぜんだよ。そんな話に出あったことがあるだけだ。」
「桂馬くん…桂馬くん…」
かのんはボクに抱きつくと、まるで縋り付くように、どこか悲しそうに言った。
「桂馬くんずっと私といて‼︎私を勇気づけて‼︎私を見てて‼︎あんな沢山の人にほめられるのムリだよ…今回こそ…私…失敗する…」
「君は失敗しないよ。」
眦に涙を浮かべたかのんは鳩が豆鉄砲を食ったような表情をして、ボクから数歩離れた。きっと、想定外だったんだろう。きっと、いつものように自分の言ったことを肯定して、励ましてくれると思ったのだろう。
「君は、失敗しない!…少なくとも、ボクはそう信じているし、お前の歌は…そうさせるだけのものを連れてきた。」
かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!かのん!
かのんを呼ぶ声。それはホールから響く、かのんを望む者たちの声。かのんを見てくれている者たちの声。
「…確かに、お前はスタンガンを使うし、小さいことでボクのことを呼びつけるし…正直、嫌いだった。」
ボクがそう言うと、かのん はまるでこの世の終わりのような顔になった。
だけど…まだ終わらせない‼︎
「でも…だからこそ‼︎お前の歌は輝いていた‼︎…ボクは、お、お前の歌 いいと思うぞ…だ、だから‼︎……」
ボクは深呼吸した。今からすることは非人道的だ。もしかしたら傷つけてしまうかもしれない。
それでも、言わなければ…始まらない…
「…だからボクは、かのんが…好きなんだ…」
「私…私は…君のために…歌っていたい‼︎…それで、いいのかな?」
ボクはかのんを引き寄せて耳元で囁く。
「いいよ。かのん は、失敗しない。だから、行っておいで…」
「…ありがとう。……行ってきます……」
そう言って、かのんはボクの首に手を回して、そっと唇を重ねた。
そして、かのんの中から駆け魂は出ていった。
「駆け魂勾留‼︎」
少し離れた場所にいたエルシィは瓶に吸い込まれていく駆け魂に蓋をした。
その後、かのんのライブは大成功し、彼女は自ら光り輝く、「星」になった。
彼女のライブで、ほんの一瞬だけ歓声が止んだ。それは、つまらなかった、退屈だった、期待不足だった……と言うことではなく、ただすごかった。観客みんなを圧倒するライブを、彼女はしたのだ。
「…桂馬くん、私のライブ…どうだった?」
ライブの後、少しだけ時間ができたと言ってボクはかのんに呼び出された。
かのん は少しだけ不安そうに聞いてきた。
きっと、自信はあるけれど、確かな言葉が欲しいのだろう。
「……まだまだ、だな。」
「…そっか…」
かのんは少しだけ残念そうに言うと視線を下げた。
「…でもまあ、現実のアイドルも、悪いもんじゃないって、思えたよ…」
「⁉︎そう…そうだよ‼︎現実のアイドルも悪くないよ‼︎……待っててね桂馬くん‼︎絶対‼︎いいライブだって言わせて見せるから‼︎」
そう言ってかのんは軽く頰にキスをした。
「またね、桂馬くん!」
かのんは少し頰を染めて走っていった。
これで終わり…と言う訳にもいかない。
ボクは向き合うべき現実を直視した。——幸せにするために——
次回は、桂馬がついにハーレムルートへの第一歩を踏み出します!
オリジナルなので、修羅場の書き方が甘いかもしれませんが是非読んでください!
更新は5月2日を予定しています!