今回もオリジナルの話です!
話が重複しているので読みずらかったら申し訳ありません…
今日は 高原歩美 の誕生日!
歩美の魅力が強すぎて、尊くて、心臓に悪い…
桂馬side
夢を見た。
かのんのライブの後、ボクは久しぶりに夢を見た。
夢のわりに、やけに現実的な夢を……
『歩美、ボクは…』
『……ごめん』
『かのん、ボクは…』
『ごめんね…桂馬くん』
夢はそこで覚めた。
でもボクから離れていく二人を見て、何故だか涙がこぼれ落ちた。
「……もう、全部を隠すのは無理だ。それでも、彼女たちには……」
「…神様?」
部屋を覗き込んできたエルシィはどこかよそよそしかった。
「なんだ、エルシィか」
ボクは涙を拭いて見られたくない物を隠す。
すると、エルシィはボクの部屋に入ってきてボクの所まできた。
「やっぱり…お辛いですか?」
え?
「もし…神様がお辛いのでしたら、歩美さんとかのんちゃんの『記憶を消す』こともできます。」
記憶を消す。
もしかしたら、これ以上の解決手段はないかもしれない。
でも、それは落とし神としてのプライドを傷つけるものだった。
落とした女の子を幸せにしない。
その責任を放棄する。
そんなこと…あって良いはずがない。
「記憶は、消さなくていい。それよりエルシィ…一つ、頼みがあるんだが…」
「⁉︎か、神様が…私に頼みごと⁉︎な、なんですか?」
エルシィはまるで天変地異の前触れではないかと訝しんでいた。
失礼な!
ボクは契約書の続きをエルシィに突きつけて問いただす。
「《私ども地獄はあらゆる力を持って望まれるものを用意いたしましょう。》この言葉に偽りはないな?」
つまり、ボクが望めばそれを用意する。
それがエルシィのもう一つの仕事だろう。
「え、ええ。確かに、私に言ってもらえれば望まれるものを用意いたしますが…」
「それなら———を用意してくれ。」
ボクはエルシィに必要なものを言うと紙とペンを用意した。
ここからはボクのデータベースにもない。
ボクが彼女たちに言わなければいけないことを言葉にする。
そのためのシナリオを書き上げる。
彼女たちを幸せにする責任は、他の誰にも渡さない。
ボクは書き上げた手紙を封筒に入れる。
明日は、決戦日だ。
【学園】
ボクはこの日、誰よりも早く学校についた。
そして、封筒に入れた手紙を歩美の机に入れる。
それから、ずっとゲームをしていた。
何作クリアしたかわからない。
でも、乾いた何かが潤うことはなかった。
今まで、ゲームはボクの空気だったはずなのに、まるで毒ガスでも吸っているかのようだった。吸えば吸うほどボクの表情は険しいものになっていった。
ふと、現実に目を向ければ歩美が二階堂に怒られていた。
歩美は怒られていると思えば、顔を真っ赤に染めて慌てふためく。
……二階堂に、何を言われたんだ?
気にはなったが、ボクはもう一度ゲームの世界に入り込む。
すると、後頭部に強い衝撃が伝わる。
二階堂め!
…気のせいか?あいつ、いつもより怒ってなかったか?
——その怒っている理由が自分の望んだもののせいだなんて、この時のボクは思いもしなかった。
【お昼】
ボクは歩美に軽く声をかけようとするが、歩美は猛スピードで教室から出て行った。
話したいことも、話さなきゃいけないはずのことも、考えたはずなのに…歩美を目の前にすると、それが全部消える。
そんな風に軽く落ち込んでいた時、エルシィが「二つの小箱」を持ってやってきた。
「神にーさま!お待たせしました!なんだか受理に手間取っちゃって…」
「いや、上出来だ。最悪、放課後までに用意できていればよかったからな。…………一度しか言わないから、よく聞けよ。…あ、ありがとう。」
ボクは二度とないだろう、エルシィを褒める行動をとった。
この後、これがないと話にならない。彼女たちに、悲しい思いをさせてしまうだけだ。
あの、夢のように。
この日のことを、ボクは一生忘れないだろう。
現実を見つめ、現実に引き寄せられ、現実に希望を抱いた、この日のことを……
歩美とかのんに、——を渡したこの日のことを。
放課後の屋上。
目の前には一人の少女。
彼女はボクのことを見てはくれなかった。
「……歩美、ボクは……」
ここが、きっとこの物語の岐路だ。
歩美side
【学園】
いつものように部活の朝練をして、着替えて、自分の席に着く。
当たり前になった生活習慣。そんな私にも恋人ができました。
その恋人がつい先日、学園の『星』と一緒にいるところを見てしまった私は彼に説明してほしい旨を伝えた。
そして、それはとうとうやってきた。
『歩美へ 南校舎屋上で待ってる。放課後、話したいことがあるから来てくれ。 桂馬』
机の中には桂木から私宛の手紙が入っていた。私は桂木の方を見た。桂木はいつものようにゲームをしていたが、その表情はどこか思い悩んでいるようだった。
「…ら…原…高原‼︎」
「は、はい‼︎」
私は授業中にも関わらず集中を欠いていたせいか、先生に指されたことに気がつくのに時間がかかってしまった。
「お前…私の授業 聞いてなかっただろう?」
私の目の前まできた二階堂先生は私を見下ろす形で問うてきた。
「す、すいませんでした‼︎」
私は起立して先生に謝る。すると先生は私の耳元で囁いた。
「…桂木を見るのもいいが、ちゃんと授業は受けろよ。」
私は見透かされた心のうちに、つい紅潮してしまう。
「な、なな…なんのことですか⁉︎」
私は精一杯ごまかそうとするが、先生には通じないようだった。
「まあ、ほどほどにしておけよ。何事も節度をもって、だ。」
そう言って、先生は桂木の席の後ろまで歩いて行き、教科書を振り上げる…
バシンッ‼︎
——と盛大な音が教室に響き渡る。
いつもの光景。いつもの日常。だけど、どこか、違っている様に私は感じた。
【お昼】
「…高原…」
私は目の前に立つ桂木の姿を見て、教室から離れたいと思った。
「ごめん 桂木!私 用事あるから!」
そう言い残すと、私は全速力で教室から逃げ出した。
もちろん、用事なんて何もない。逃げ出す言い訳が欲しかっただけだ。
逃げて、逃げて、行くあてもなかった私は、トイレに逃げ込んだ。
逃げ込んで、私は聞きたくもないことを聞いた。
「——ねえ、私 面白い聞いちゃったんだよね」
「何を聞いたのよ?どうせどうでもいいことでしょ?」
聞いたことのない女子の声だった。私はつい聞き耳を立ててしまう。
「この間さ、屋上でかのんちゃんがライブやってたのよ‼︎」
きっと、私が見たやつだ。
「えー‼︎それホントなの⁉︎」
「ホントもホント!…でね、ここからが驚くんだけど…実は、あの『オタメガネ』のために歌ってたみたいなのよ‼︎」
「何それ⁉︎かのんちゃんがオタメガネのためにライブ⁉︎デマじゃないの?」
「も−!ホントだってば‼︎」
——その後、彼女たちはトイレから出て行ったけれど、私の中には吐き出せない何かのせいでトイレから出れなかった。そのうち、昼休み終了のチャイムが鳴ったので私は無理やり体を動かして、教室に戻った。
【放課後・南校舎屋上】
私の前には、桂木がいる。
昼休みに逃げてしまった手前、顔を合わせずらい。
「……」
私は視線ばかり下がってしまう。
「……歩美、ボクは……」
なんでよ。なんで、歩美って呼ぶのよ?いつもみたいに高原って呼びなさいよ。じゃないと…調子狂うじゃない…
桂木が、かのんちゃんと会っていたことを私は知っている。
そのことを、私は桂木に伝えている。
いまさら何を怖がる必要がある?そう言い聞かせて、私は踏み込む。
「……ねえ、桂木…教えて、くれるんだよね?…かのんちゃんと、どうしていたのか…」
桂木の言葉を遮った私の問いかけは、私の一番聞きたかったことだ。
「それは…それが、ボクの仕事だから」
仕事?…一緒にいて、歌を聞くのが…仕事…?
桂木は言い淀んだけれど、前を向いていた。……私とは、違って。
「仕事って、なんの仕事よ?」
少し、不機嫌になってしまった。表情に出てしまっているのが自分でもわかる。
「……女の子を、攻略…惚れさせる……それが、ボクの仕事だよ。」
…攻略?…惚れさせる?……それって……
桂木の口から出てきた正気を疑う言葉に、私はほんの少し…心当たりがあった。
私は、ほんの少し前の…大会前の練習を思い出した。…あの時の応援を、思い出した。今まであまり話したこともないような私に、いきなりどうして?と思っていた……けど、それなら…私は?私も…攻略されたの?私は攻略された内の一人なの?
私は何かを言おうとして口を開く。だけど、
「……っ」
口を開けば何か言葉が出てくると思った。
でも……結局、私は怖がる必要がなくても逃げてばかりだ。
自分のことを、どう想ってくれているのか、気になるくせに正直にそのことを聞けないでいる。
「…それでも、ボクは…!」
桂木は何かを言おうとして、言葉を切った。
何を言おうとしたの?どうして、言ってくれないの?
…やっぱり、ダメだよ…麻里さん
私は相談に乗ってくれた麻里さんの顔が鮮明にフラッシュバックする。
そしたら、なんだか涙が出てきた。
怒りの涙か、悲しみの涙か、私にもわからない。
「…桂木にとって、かのんちゃんはなんなの⁉︎」
ただの八つ当たりに近かったその問いかけは、私の醜い心が表に出てしまった証拠だった。
私が想っているのだから、私のことを想ってくれなきゃやだ。
そんな、醜い心。
私は、桂木のことが好きで…だけど、桂木の隣にはかのんちゃんがいて…どんなに想っても、届かないと思ってしまう。
この間、消えたはずの思い。なのに、その思いは私に喰らいつく。喰らいついて、私のことを離さない。
私の心の奥深くにある醜い…嫉妬。
たった一言。「お前が好きだ」と言ってくれれば……そんなことを思ってしまう。
「桂馬…くん?」
きっと神様のいたずらだ。そう思って私は後ろを振り向いた。その声が、誰の声かなんてTVを見ていればわかってしまう。
そう。私の後ろにいたのは、中川かのん だった。
「……かのん……」
「…その人は、誰…なの?」
——きっと、修羅場とはこういうことを言うのだろう。
「どうして、かのんちゃんが…?」
私は、遊びだったんだ……この時はじめてわかった。
私は説明して、振られるために呼び出されたんだ。
「桂馬くん…どうして、私を呼んだの?」
そう言って、かのんちゃんは携帯電話を見せる。
『かのんへ 南校舎屋上で待ってる。放課後、話したいことがあるから来てくれ。 桂馬』
「私のこと、好きだって言ってくれたじゃん‼︎」
え?
私は、自分だって言われたことのない言葉を言われたかのんちゃんが羨ましかった。
「……」
「私の歌 聞いてくれるって言ったじゃん‼︎」
「……」
どうして?
私は、自分だって言われたことのない言葉を言われたかのんちゃんが妬ましかった。
「どうして私だけを見てくれないの‼︎」
「……」
私には…言ってくれないのに…
「いい加減にして‼︎」
私は怒鳴った。
私の方が先だったのに…私には言ってくれなかった。
そして気づいた。桂木には……きっと私じゃダメなんだと。
そう思ったら、怒鳴らずにはいられなかった。
桂木は言葉を続ける。それは、かのんちゃんの問いかけに対する
「……それも全部……二人に話さなきゃいけないことがあるから、ボクはここにいるんだ。」
私は、真っ直ぐな桂木の目を見ることができなくて、視線を落とす。
私の醜い心が表に出てしまわない内にここから逃げ出したい。
そう思うと、私は桂木に背を向けていた。
「ごめん 桂木…私、帰るね…これ以上、辛い思い…したくないから」
私は結局、逃げることしかできないんだと思った。逃げて、どうにかなることでもないくせに、逃げ出す……それしか、できないと、わかっているから。
「歩美!」
逃げ出す私の手を、握ってくれる桂木の手が…暖かく感じる…
なのに、口から出てくる言葉は桂木を否定するものばかりだった。
「離して‼︎…どうせ、私も!かのんちゃんも!あんたにとっては、ただのゲーム!遊びだったんでしょ‼︎」
……これ以上、この優しい桂木を見ていたら戻れなくなってしまう。
だから私は自分から突き放す。
……だけど、桂木は手を離してはくれなかった。
「違う‼︎遊びなんかじゃない‼︎……確かに、成り行きこそ良くなかった。でも…ボクは、歩美も!かのんも!好きなんだ‼︎」
やっと……言ってくれた。
やっと……聞けた。
待ち望んだ桂木からの言葉。
私の胸は早鐘を打って鳴り止まない。
「な、何どうどうと二股宣言してんのよ‼︎」
頰の染まる感覚が伝わってくる。
いくら強い口調を使っても自分でもわかってしまう。
嬉しい…
調子のいい言葉ばかり並べて…これだって、演技かもしれないのに…
「初めてだったんだ‼︎……現実も、悪くないって……思えたのは。だから…」
桂木は私とかのんちゃんの前で膝をついた。
その姿はさながら、王子様のようだった。
そして、二つの小箱をポケットから取り出した。
「これが…ボクの選んだ道だ。……もしかしたら、辛い思いや、傷つけてしまうこともあるかもしれない。それでも、隣には…“歩美“ “かのん“ …お前たちにいてほしい」
そう言って小箱を開ける。その中には…
「…指輪?」
私の前に出された指輪には小さいけれど緑色に輝く宝石が付いていた。
「…つけて、もらえるか?」
あ、
私の頰に涙が伝う。
私の意思とは関係なく涙は流れていく。
桂木と関わるようになってから、私は泣いてばかりだ…それでも、この涙の意味は悲しみじゃないとないと、私はわかっている。
「…はい、喜んで」
私の指につけてくれた指輪が、私と桂木との…確かな繋がり。
私はその“繋がり“にキスをする。“繋がり“が、私の心を満たしていく。“繋がり“が、私は一人きりじゃないことを教えてくれる。
隣にいるかのんちゃんは私を見て少しだけ笑った。
「お名前、聞いても良いかな?」
「…私は、高原歩美 です…」
「そっか…私、歩美さんにも負けないから」
そう言ってかのんちゃんは左手を出した。
この手を握れば、私たちは——
「私だって、かのんちゃん相手でも負けないから!」
友達と同時にライバルだ。
【帰路】
かのんちゃん……かのんは残っている仕事があるからと言って先に行ってしまった。
私は桂木の手を握る。
もしこの先、桂木が他の女の子を惚れさせても私はもう悲しまない。
それが、桂木の選んだ道だから。私はその隣を走る。
桂木が苦しんだ時には、私がいる。
私は桂木の耳元で小さな声を出す。
「私が、一番だから…かのんにも負けないから。だから、私をちゃんと見ててね?」
桂木が目を丸くして驚いていたから、私は面白くなってつい笑ってしまう。
——私は、桂木が好きだから——
『おめでとう 歩美。一歩前進だな』
誰かが、私を祝福してくれた。
そんな気がした。
かのんside
つい先日のことだ。
私は鳴沢ホールでのライブを成功させた。
……そして、私は勇気をもらった。
桂馬くんから、心を満たしてくれるような勇気をもらった。
私は桂馬くんに、恋をした。
今日は桂馬くんに、
『かのんへ 南校舎屋上で待ってる。放課後、話したいことがあるから来てくれ。 桂馬』
と言われたので、マネージャーに相談して少しだけ時間を作ってもらった。
「話したいことってなんだろ?」
私は南校舎の階段を登りながらそんなことを考えていた。
「○☆△」
屋上からは誰かの言い合う声が聞こえてきた。
先客かな?
その声は階段を登れば登るほど大きくなっていく。
——この声は、桂馬くん?
私は南校舎屋上の扉を開ける。そして、そこには桂馬くんと…知らない女の子がいた。
「…桂木にとって、かのんちゃんはなんなの⁉︎」
その姿が鮮烈だった。その表情を見れば、この子がどう言う存在かすぐにわかった。
「桂馬…くん?」
だから、私は聞かずにはいられない。この光景を見せるためにわざわざ呼んだの?
あの日言ってくれた「好き」は、偽物だったの?
「……かのん……」
桂馬くんは私の名前を呼ぶと、その口を閉ざした。
「…その人は、誰…なの?」
私は桂馬くんに、目の前にいる女の子について聞いた。
「桂馬くん…どうして、私を呼んだの?」
私には、どうしてこの場に呼ばれたのか全く見当がつかなかった。……いや、なんとなく想像はついていた。
その想像が当たっていないことを祈るように、私は桂馬くんに聞いた。
…そしたら、言葉が溢れてきた。
それは、桂馬くんが私に言ってくれた言葉。
「私のこと、好きだって言ってくれたじゃん‼︎」
「……」
どうして?どうして答えてくれないの?
「私の歌 聞いてくれるって言ったじゃん‼︎」
「……」
どうして?どうして言ってくれないの?
「どうして、私だけを見てくれないの‼︎」
あっ
私の口から出た願望が、私にはどうしようもないものに見えた。
「……」
……桂馬くんは、答えてくれない。
私を止めてくれなかった。
それが、答えだと思った。
「いい加減にして‼︎」
私を止めてくれたのは、名も知らない女の子だった。
きっと、彼女も私と同じなんだと思った。
彼女も、桂馬くんが好きで、その気持ちが溢れているんだ。
私の、気持ちは……
「……それも全部……二人に話さなきゃいけないことがあるから、ボクはここにいるんだ。」
桂馬くんはそう言って、私たちを見据えた。
「ごめん 桂木…私、帰るね」
そう言って、走り出す彼女の気持ちが、私にはわかるような気がした。
聞きたくないんだ。
聞いたら 私たちは気持ちを一つ、捨てなければいけなくなるから。
その気持ちを捨てることが、苦しいから、聞きたくないんだ。
「歩美!」
桂馬くんは彼女の手を取った。
私も…後ろを向いて走り出せば、追いかけてくれるだろうか?
そんな、気持ちが込み上げてきた。でも、そこで追いかけられなかったら。そう思うと、走り出すことができなかった。
「離して‼︎…どうせ、私も!かのんちゃんも!あんたにとっては、ただのゲーム!遊びだったんでしょ‼︎」
そうか
私はつい、納得してしまう。
彼にとって、私と一緒にいたのはゲームだったんだと思うと、ここに呼ばれた理由も必然だった。
でも、桂馬くんはその言葉を否定した。
「違う‼︎遊びなんかじゃない‼︎……確かに、成り行きこそ良くはなかった。でも…ボクは、歩美も!かのんも!好きなんだ‼︎」
その言葉が本物だと、私にはわかった。
私は言葉を届ける仕事をしているから。
彼の言葉に嘘がないことがわかった。
「な、何どうどうと二股宣言してんのよ‼︎」
彼女の言葉は嘘だ。
本当は、嬉しいんだ。私だって嬉しい。
桂馬くんは今、嘘偽りのない言葉を私たちに言ってくれている。
その事実が何より嬉しかった。
「初めてだったんだ‼︎……現実も、悪くないって……思えたのは。だから…」
そう言って、桂馬くんは私たちの前で膝をついた。
その姿が私には…私を守ってくれる騎士に…見えた。
そして、桂馬くんはポケットから二つの小箱を取り出した。
「これが…ボクの選んだ道だ。……もしかしたら、傷つけてしまうこともあるかもしれない。それでも、隣には…“歩美“ “かのん“ …お前たちにいてほしい」
そう言って、桂馬くんは小箱を開けた。
その中には…水色に輝く宝石をあしらった指輪が入っていた。
「…つけて、もらえるか?」
私は頰を染め、コクリと頷いた。
「…よろしく、お願いします」
きっとこの先、他の誰にも言われない言葉を、私は桂馬くんからもらった。
私、もらってばっかりだな…
指につけた指輪が夕日に照らされて輝く。
その光はまるで、あのライブの日のようだった。
『待っててね桂馬くん‼︎絶対‼︎いいライブだって言わせて見せるから‼︎』
あの約束が、いつになるかはわからない。
でも……私の歌うその歌が あなたに届くように。
私は隣にいる彼女を見る。
ああ、この人は本当に桂馬くんのことが好きなんだな。
そう思ったら、なんだか口角が上がった。
同じ人を好きになった彼女なら、きっと私も仲良くなれる。
「お名前、聞いても良いかな?」
私は彼女の名前を聞いた。
この先、長い付き合いになる 友達の名前を…
「…私は、高原歩美 です…」
彼女…歩美さんは私をまっすぐに見つめる。
心根がまっすぐなんだと思えた。
「そっか…私、歩美さんにも負けないから」
私は歩美さんに左手を出す。
私の手を握ってくれた彼女の顔はどこか誇らしげだった。
この手につけた指輪がほんの少し接触する。
「私だって、かのんちゃん相手でも負けないから!」
私たちは、友達と同時にライバルになった。
——その後、私は桂馬くんからもう一つあるものをもらった。
「……ネックレス?」
それはネックレスと呼ぶにはなんの装飾もない、ただの輪っかだった。
「これなら……仕事中でも指輪、つけてもらえると思って……」
桂馬くんは照れているのか少しだけ視線を逸らした。
ああ、どうしてこの人はこんなに可愛いんだろう
……でも確かに、指輪をずっとつけておくわけにはいかない。
「桂馬くん、ありがとう。ずーっと大事にするからね!」
「あ、ああ…」
桂馬くんの隣で、私は歌う。
たとえ桂馬くんが他の女の子を見ていても、私の歌が聞こえるように。
この指輪は、そう思わせてくれる“繋がり“だった。
私は残っている仕事があるから、もう行かなきゃいけない。
一緒に帰る桂馬くんと歩美さんを見て、…いつか、桂馬くんと一緒にお出かけしたいな…
そんなことを思うたび、私は首から下がったネックレスについた指輪を想う。
私たちはいつだって繋がっているんだ。
——桂馬くん、大好きだよ——
『めでたいのぉ! かのん!わらわも嬉しく思うぞ!』
私のことを、一緒に喜んでくれる声。
そんな声が聞こえた気がした。
読んでいただき、本当にありがとうございます!
次回は 汐宮栞 の回に入ります…が、私の試験が近いため更新が遅くなりそうです。
申し訳ない。
アニメ初心者の時に見たこの作品で、栞が好きだったなぁ。
原作を買ってからも所作の一つ一つに萌えていました…(笑)
女神編で笑って、不覚にも泣いた……
そして、やるせない思いになった。
この作品は、そんな思いを活力に書いている作品です。
共感できたり、こんな話が見たい、要望があれば感想どうぞ。待ってます!
私もできるだけ時間の合間を縫って更新できるように頑張ります!