今回から「汐宮栞」編です!
確かに現実を選んだ、二人の彼女を選んで手を取った。だが、それとこれとは話が別だ。
目の前に整然と並べられたゲーム機媒体。やはりボクの体にはこれが無いとダメなんだ!
ボクはそれを操作し目まぐるしく場面は巡っていく。トゥルーエンドへ導かれていく彼女たち。そして思う。落とし神たる者、すべての女の子を幸せにしなければいけない、と。
「桂馬―!そろそろ学校行かないと間に合わないわよ!」
下から響く母さんの声が少し、ほんの少し憂鬱な現実に引き戻した。ただ、嫌な気はしなかった。それは悩みの種が取り除かれたからだろう。
ボクは着替えを済ませ階段を降りる。
「あ、かみにーさま!おはようございます‼︎」
そこには割烹着を着たエルシィが居た。手にはお玉を持っているが、そのお玉には変な液体が着いていた。まさか…
「おい、エルシィ…料理を、したんじゃないだろうな…?」
「?はい‼︎神にーさまに食べてもらいたくて『お昼ご飯』作っておきましたよ!」
そう言ってエルシィはどこから出したのか、風呂敷に包まれた大きな弁当箱…と言うより重箱をボクに見せた。
ボクの背中に嫌な汗がツーっと流れていく。
思い出すのはあのゲテモノパスタ。味は悪くはなかったが、あの腹痛は二度とゴメンだ!
「い、いらん‼︎そんなものはさっさと片付けろ‼︎」
「えー⁉︎せっかく上手くできたのに‼︎食べてくださいよ〜神にーさま〜」
「いらん‼︎ボクはまだ死にたくないんだ‼︎」
ボクがそう言うとエルシィはほんの一瞬呆けた後、満面の笑みで言い放った。
「それは〜歩美さんとかのんちゃんがいるからですか〜?」
「っ‼︎そ、そんな事より、ボクは先に行く」
コイツに揚げ足を取られるなんて…ボクは紅潮してしまったのを誤魔化すようにエルシィの隣を早足に通り過ぎる。
そして靴を履き終わったあたりでエルシィも小走り駆けてきた。
「待ってくださよ〜神様〜!」
ふん、知ったことか。
ボクはエルシィを置いて玄関の扉を開けた。いつもより周りが明るいように感じるのはなぜだろう。そんなことを考えながらボクはゲーム機を取り出した。
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【学校】
「エルシィ!お前、少しは一般常識を勉強しろ!」
そう言ってボクは今朝方見た「あの弁当箱」についてエルシィに怒鳴る。
「お前は人間界のこと知らなさすぎる‼︎何度も言わせるなっ!今時のパートナーキャラは『知性』と『個性』が必要なんだ‼︎」
そう!今時のパートナーキャラには必要不可欠な要素、それがコイツには全くと言っていいほどない!きっとコイツには『知性』という言葉が一番縁遠いだろう。
どこに捨ててきたんだか…
「わ——じゃあ神様は今時のパートナーですね。」
…返ってきたエルシィの言葉に一瞬フラつく。一体、どこまでご都合主義なんだコイツは!
「お前主観で話すな‼︎お前がパートナーなの‼︎」
そう、ボクが主人公なんだ。
「私もちゃんと教習受けました‼︎人間界のこともちゃんと勉強しましたよ——日本史なんか「優」でしたよ。ハカセですっ。」
コイツが「優」?ありえない。
ボクは確認のためエルシィに問う。
「……ちなみに、日本史で最後に習ったことはなんだ?」
「確かこんな…」
エルシィは思い描いた光景を空中に映し出す。
『上喜撰 たった四はいで 夜も寝られず』
そこには黒い船に驚く古き日本風の服装をした集団が描かれていた。
…江戸時代、幕末だった…
ボクは落胆とともに怒りをもってエルシィに言い放つ。
「グラウンドの横に図書館がある。そこで世の中のこと勉強しろ!」
まったく、コイツの上司はなにをしているんだか…
へっくし
どこかからかくしゃみが聞こえたが、まぁいいか。
【昼休み・図書館】
私は神様に言われた通り図書館に訪れていました。
その図書館には所狭しと本が並んでいて次へ、また次へ私をユウワクしてきます。
「へ——図書館ですか…こちらの学校はなんでも揃ってるんですね…よーし、勉強しましょう‼︎いっぱんじょーしきいっぱんじょーしき。」
そう息巻いて、一冊の本を手に取りました。
真っ赤な車が印刷された子供向けの本を…
——数十分後——
「う…うう…ううう————————っ!か…かっこいい……ま…真っ赤です‼︎消防車……今の時代はこんなものがカッポしているんですね…」
私は感動しました!も、もっと、この車のこと、知りたいです〜〜他にも消防車ないかな…本多い…
私は辺りを見回して消防車の本がないのを確認して全体へと目を向けた。この本の山から消防車の本だけを探すのは骨が折れそうですし…
「そうだ…‼︎一般常識ではこういう時は受付で聞く‼︎ですよ‼︎」
そう言って私は図書館の中を歩きました。…歩きました。
「あ…あったー。あの——すみません————えと、この本と同じような本はどこに…」
私はやっと見つけた受付の文字に駆け寄り質問するが、そこにいた少女は読んでいる本を置こうとはしなかった。
胸には「図書」の文字があった。
この人、だよね?
「…… ……」
そこにはページを繰る音だけが響いていた。やがて読んでいた本が読み終わったのか彼女は本を閉じましたが、私には気づいてくれません…
……聞こえてない…?
すると彼女は、
「Z」
私は1ミリも反応されず、そのまま眠られてしまいました…
「す、すみませ——ん!」
私は気づいてほしくて大きな声で彼女に呼びかけた。
すると彼女は慌てふためき積んであった本を崩してしまった。
それが恥ずかしかったのかその顔は今朝見た神様みたいに赤くなっていた。
そして長い沈黙の後、彼女は言い淀みながら声を発した。
「…… …… …… …… …… …… な……何か……用でござるか?」
………??
「ござる?」
私は珍しい言葉を聞いたため彼女に問い返す。すると自分でも恥ずかしかったのか口元を隠していた本で今度は顔全体を隠してしまった。そして、読んでいた本のタイトルと表紙を見てなんとなく納得した。
『もっとあぶない岡っ引き④』
そこには日本史で学んだような服装をきた男性がプリントされていた。
読んでた本のセリフがうつったのかな…?
「……何かご用でしょうか…」
彼女はまだ頬を赤くし言い直した。
っ!そんなことより‼︎
「あの——消防車が載ってる本、他にないですか?」
私は先ほど読んでいた消防車の本を見せながら彼女に聞いてみる。
「…… …… ……」
…なにも答えてくれませんでした。
ただ、すごく凝視されたので声をかけてみる。
「あの…」
するとまた本を盾にして一歩引いてしまう。
「…… …… …… …… …… ……放課後に……来てください……」
結構な間の後に彼女はそう答えた。
「ほうかご?放課後ですか?」
今すぐ読みたいのに〜
私は自分の聞き間違えだったのでは、と思い聞き直す。
「…… …… …… …… …… …… …… …… …… …… ……」
しかし彼女は黙ったまま、なにも答えてはくれませんでした。
口を閉ざしているのに、その表情はとても困っているように見えました。
彼女からの返事を待っていると違う返事が頭につけた駆け魂センサーから返ってきたのです。
ドロドロドロドロ
駆け魂サイン‼︎
「…… …… …… …… …… …… ……静かにお願いします…」
彼女はまた結構な間をとって、少し怒ったように私に注意した。
この人…この娘が…‼︎
【放課後・図書館】
「神様——‼︎こっちです こっちですよ———っ!図書委員の娘に反応が‼︎」
……ボクは駆け魂を見つけたというエルシィに引きずられて図書館まで来た。
「またか……もう図書館は行きあきたよ。」
ボクはPFPを操作しながらエルシィにそう答える。
「え……」
「最近ゲームで絶対出てくるんだよ、図書委員が…今や図書委員は激戦区中の激戦区だ‼︎よっぽどの優秀な奴じゃないと やる気ゼロ だな‼︎」
「*Sigh* 優秀…じゃなかったような…だって消防車の本教えてくれなかった…」
エルシィは呆れたふうに言うが、これは重大なことだ。ていうか…
「しょーぼうーしゃ?……中途半端な奴だったら、抗議のユーザーハガキ出してやるっ!」
「どこ宛に…?」
…さぁ?
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ズン
そこには台車に乗せられた数えられないほどの本があった。それを一人の少女が運んで来たのだ。途中、バラバラと数冊落としてしまったがそれだけで大変さはひしひしと伝わってくる。
台車を押しているのが、駆け魂の入っている娘か…一体、何冊あるんだ?
「…… …この図書館で消防車が書いてある本……全部です…これで…458冊あります…ここまでが消防車がテーマの本…これはさし絵に消防車が載っています…これは根津という刑事の思い出話で火事のくだりが……」
彼女は数冊本を手に取ってスラスラと説明をする。
なるほど、だから放課後だったのか…
ボクは彼女がなぜエルシィを放課後に呼んだのかわかった気がした。
「フーン うちの図書館、すごい検索ができるんだな。」
「…… …… …… ……」
ボクが検索のことをすごいと言うと彼女はボクを凝視した。
?…なんだ?
(「…検索じゃありません。」「大体 覚えているのです。」「私…図書館の本…全部読んでいますから…」なんて言っちゃあダメダメ‼︎全部読んでるなんて言ったら、気味悪がられちゃう。わ——‼︎じゃあ消防車の本こんなに持ってきて、それはどうなの?こっちのほうが気味悪いじゃない。2、3冊でよかったのかも… ……しかも得々と説明しちゃって…バカバカ‼︎もう一度どんな消防車が見たいんですかって聞こうかな…いやいや、そんな今さら。前に聞いてなかったのかーって言われそうだし。って、そんなこと言ってる間に、どうしよう… …… ……もう話すタイミングなくなったか…… …… …… …… …… ……)
とぼ…
彼女は何かを言おうとしているのか表情をコロコロと変え、最終的に何も言わずに去って行った
「無口な人ですね。」
エルシィは聞こえないように小さい声でボクに話しかけてきた。
(「人とふれあうのは苦手…でもいいの…」「本さえあれば…ここにいれば…私は大丈夫…」「この城のなかで…私は生きて行くんだ…」)
「なかなかよさそうな奴じゃないか。」
「そうでしょうか……」
ボクは本を読む彼女の姿を見ながらエルシィに言った。
「神様…今回もまた難敵そうですね…」
「ところでお前はなんの勉強をしてたんだ?」
目的を忘れたであろうエルシィにボクはそう尋ねた。
学校の方が大分落ち着いて来たので投稿を再開します。
待っていてくれた皆様、本当に、本当にありがとうございます。
そして、誕生日を祝えなかったみんなにこの場を借りて謝りたいと思います。
月夜、結、栞、天理、誕生日を祝えなくてごめん。今年こそは絶対に祝うから!
更新頻度を上げてできるだけ早くトゥルーエンドに辿り着きたいと思いますので、お気に入り登録よろしくお願いします!