Re:神のみぞ知るセカイ   作:Minadukiyuuka

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お待たせしました!
栞編 第三話です。
今回のお話は原作に添いつつ、だいぶ分岐しています!



FLAG.08

引き続き汐宮栞さんを追いかけている私たちです…

私は開いた本を片目に栞さんがいる方を見やると『おさわがせしております‼︎図書委員 精鋭会議中‼︎』と言う立札が目に入った。

 

「え——という訳で、諸君‼︎いよいよ来週から、図書館に視聴覚ブースが誕生しますぞ‼︎」

一人だけ立って話している彼女が議題を言うと周りの人たちは拍手をし、思い思いの言葉を述べる。

「CDやDVDも借りられるようになるよ。」

「楽しみ————」

「もっと早く作ればよかったのに——」

「…… ……」

…そんな中でも栞さんは相変わらず無口です。

「増築で予算食ったのよ——」

「ね——バンプ入れよーね——」

「らきすた——」

「私も布教しちゃうよ—————」

「だかららきすた——」

「うるさいな——」

「…… …… …… …… …… ……」

栞さんは「ぎじろく」を書いていますが、なんだか浮かない顔をしています…

「来週の休館日に設置だから、ヒラの図書委員も全員動員よろしくゥ!」

「全員ってまた無理難題を。」

「中等部も——?」

ガタッ!

栞さんがいきなり席を立ち上がると、みんなの視線も彼女に集まりました。

「書記汐宮、何かな?」

司会役の彼女は栞さんに「何用か」を訪ねますが…

「…… …… …… …… …… …… …… ……」

栞さんは何も喋らず、ただただ時が流れていくだけでした。

「言いたいことがあるんじゃないの?」

「いつもこれだもん。」

「もしかしてトイレですか——」

そんな彼女に周りの人たちは思い思いの勝手なこと言いはじめてしまい、彼女は頬を赤らめ、もじもじとしだしてしまう。

「…… …… ……」

「何もなかったら解散ね——」

「じゃーまた来週————」

結局、彼女は一言も喋ることなく会議が終了してしまったのでした。

———————————————————————————————————————————

「神様——栞さんももーちょっと話したほうがいいのでは?」

私は先ほどの出来事を踏まえて純粋な質問を神様にしました。

「話したくないなら話さなくていいだろう?ボクは話さなくても平気だぞ。口なんてそもそも飾りなんだよ。ゲームするのに必要のないパーツだし‼︎ボイスコマンドのゲームは幸いクソゲーばっかりだ‼︎」

……こんな返事が返ってくると、やっぱり神様は神様なんだなぁと思ってしまう。

「ならどうして、駆け魂が巣くったんだろうー?…本当は、話したいと思ってたりして…」

「そんな月並な図書委員は却下だ。」

「神様は何様ですか——?」

そんなやりとりをしていると、こちらに浮かない顔をした栞さんがトボトボと歩いてきました。

 

(…… …… …… 話し始めるまで待ってほしいなあ…どうしてコミュニケーションに会話が必要なんだろう。私たちのご先祖さま、会話よりテレパシーを進化させるべきだったんだ。そうすれば口下手でも大丈夫だったのに…あーあ……)

先ほどの会議でのことを思いため息が出てしまう。世の中はなんでこんなに優しくないんだろう?

そんな私の目に飛び込んできた珍事。否、決して許されることのない忌むべき行為。

(……!!!……な……な……な……な……落書きしてる——‼︎)

私は勢いよく落書きされているその本を奪い取る。

(あ、この人…き、昨日の暴言人間…‼︎図書はみんなの公共物だよ‼︎怒。なのに落書きするなんて。怒。怒。なんという人なの⁉︎死ぬればいいのにこんな人‼︎)

私は言葉に出せない「怒り」の視線を向ける。

「あ——神にーさま、落書きしてる——」

「訂正だよ。その作者のゲーム年表は間違いだらけだ。本とは情報だ。正確でない情報なんて無意味だろ。」

言い訳だ。目の前の男の人はつらつらと自分のやったことを正当化し始める。

そして、そんな言い訳に私は納得してしまいそうになる。

本を愛する者として、許してはいけない行為のはずなのに。

(そ、それはそうかも…で、でも落書きはダメ‼︎こういう人は同じ理由でもって推理小説の序盤で、犯人の名前の横に、「こいつが犯人ですのじゃ」って書いちゃう人なのよ‼︎辞書のいかがわしい語句に全部丸つけたり…け…消す方の身になってほしいの‼︎)

危うくこの人の口車に乗るところだったけれど、大丈夫。私は今までにあった許されない行為を思い出し赤面しながらもこの人を怒っている。

けれど、この人はまたも許されないことを言い放った。

「訂正もすぐにできないなんて、本はやっぱり前時代的だな。」

その言葉は、この間のように私の中の何か…言葉にするなら、「堪忍袋」の緒を切った。

「あ、あ、あほぉおぉ!」

か細い声だった。喉を通る声はとても震えていた。

彼の耳元で言ったその言葉は、我に返った私をまた真っ赤にした。

私は背を向け、その場から去った。

(…… …… …… …… …… ……)

———————————————————————————————————————————

「神様が女の子を怒らせるのにも慣れてきましたよ。」

「怒らせてるんじゃない、話してるんだよ。」

まったく、何度言ってもわからない奴だな。

「話といっても、「ばか」が「あほ」に変わっただけですよ——」

「大違いだよ。いいか、『物言わぬ文系女子の女心肝臓診るがごとくなり‼︎』」

言ってわかるとも思えないが、ボクは文系女子攻略の極意を教える。

「外側に表れないからといって、内側も静かだとは限らない。裏で大きな変化が起こってるかもしれない。小さなサインを見逃すと、後で後悔するぞ。」

「すると栞ちゃんは肝臓系女子ですか?」

何だそれは。肝臓系なんていう女子はいない。

やっぱり理解できていなかったか…

とりあえず今はイベントのコンボをつなげるだけだ。今の流れを保つぞ‼︎

———————————————————————————————————————————

【放課後】

(…… …… あほも、なかったなぁ…… それにしても、どうしてあの男は……)

私はここ数日目に着くあの失礼極まりない男に言ってしまった言葉を思い頭を抱える。

「……はぁあ」

口をついて出たため息は私の気分をさらに悪くした。

手に取る本を開いてもなかなか文字が私の中に入ってこない。読んでいる時が一番楽しかったはずなのに……

「……の……あ…の……あの!」

その声は聞き覚えがあった。

「ごめんね、本読むの邪魔しちゃって。大丈夫だった?」

私とは決して交わることのないタイプの人間だと思ってきた。そんな人と私はお話をしている。

「……い…いいえ。これが、仕事ですから、気にしないでください」

……まただ。昼休みにやった会議では何も言えなかったのに……今はこうしてしゃべれている。

「…それで、どうでした?」

「うん‼︎前よりも上手くなったって褒めてもらえたよ‼︎」

「よかったです」

私は胸を撫で下ろした。自分がおすすめした本が役に立つと言うのは嬉しいです…

彼女はここ最近、頻繁にコーヒーの本を借りにきてくれる人だ。

何でも、喫茶店でアルバイトを始めたらしく、美味しいコーヒーを淹れられるようになりたいらしい。

「今度は……この本を読んでみてください」

私はカウンターに置いてあった本を彼女に渡した。

「ありがとう‼︎……もし、自信を持って淹れられるようになったら飲みにきてね!招待するから!」

「…はい、待ってますね……高原さん……」

そう言って私はほんの少し微笑んだ。

———————————————————————————————————————————

【さらに次の日】

ペンを持って本に書き込んでいる男がそこにはいた。

……ボクだった……

(また落書き‼︎何度言ったらわかるの?今日は言い訳聞かない‼︎今日こそ‼︎言うわ強気に‼︎言うわ……言うわ……言うわ……)

栞は早足でボクが座っている席に近づいてくる。そして昨日のように書き込んでいた本をバッと取る。でも昨日とは違う。

「それ、ボクの本。」

「!」

「図書館の本じゃないよ。返して。」

本で顔を隠しているけれど、でもその顔がどうなっているかは手に取るようにわかる。

(…… …… …… …… ……ど…どうして攻撃的に出た時に限って、こんな目に…なんなのこの人は…すいません…って言うべきかな…いや…こんな人に…すいませんなんて言うことない‼︎)

(……すいません。)

「あなたは落書き禁止‼︎いえ、全部禁止‼︎」

(私は静かに過ごしたいのに。)

「あなたがいると乱れちゃう。」

(すいません。)

「あなたは出入り禁止‼︎視聴覚ブースなんてできたら…あなたみたいな人ばっかり来て私の図書館が…」

歯止めなくこぼれ出てきた栞の言葉はそこで止まった。

一瞬、自分でも何が起こったのかわからなかったのだろう。

惚けたのも束の間、我に返った彼女は自分の口を押さえた。

「ずわー‼︎私…‼︎思ってることと話してることが逆になってる‼︎…… …… ……」

そう言って栞は小走りで行ってしまった。本を持ったまま……

「ボクの本…」

———————————————————————————————————————————

【さらに次の日】

本棚の影に隠れているが、視線が気になってしょうがない。

「出入り禁止って…言ったでしょう…わかってるんだ…また私にいやがらせするんだ…」

ボクは少し驚いた。

「ふつうに話してる。」

普通に喋れるようになるまで、もう少しかかると思ったのに……ボクの知らないところで、何かあったのか?

……でも、今はこの流れに乗ろう‼︎

(あれ、本当だ…あれれ?昨日話したせいかな。まことに怒りのパワーというのは恐ろしい…よく考えたら昨日も今日も私から近づいた。変だな 変だな。)

ボクはゲームの手を止めて頬杖をつく。

「……しかし、図書館はいい所だな。外はどこに行ってもうるさいよ。」

…でも、最近は誰かが近くにいるのも、うるさいのも……悪くない。

栞はボクの前に座って、本を置いた。

「そうだよ…図書館は…………素敵な場所だよ…現実の喧騒から守ってくれる。紙の砦なの…」

静寂がその空間に流れる。

「ボク、桂木桂馬だ。」

(…… ……)

「し…」

(……)

「汐宮栞……ですが…」

(…… …… ……)

「ご、ごゆっくり…」

視線を逸らし、辿々しく自分の名前を言って、彼女は行ってしまった。

(な…名前なんか言うことなかったのよ。危険人物なのよ‼︎あの人、急に名乗ったりするから…これは反射です、反射‼︎でも…あの人とは何か通じた気がした…気のせい気のせい。)

———————————————————————————————————————————

「神様すごいですね、あんな無口な娘ともちゃんと仲良くなりかけてます。攻略間近ですね————」

楽観的な発言だが、たしかにその通りだ…

ココロのスキマ…人嫌い…視聴覚ブース…本が好き…心の声…スキマはどこにある…

思案しながら歩いていたボクは「それ」が目に入った瞬間、足を止めた。

「それ」とは、受付カウンターに一人佇む栞の姿だ。その手には一枚の紙切れが握られていたが、彼女はそれをビリビリに破り捨てた。そしてボクなんか眼中にないかのようにツカツカと横を通って行った。

「なんだ?栞の奴…」

違和感を感じた。そして、それはボクだけじゃなかった。

「何か変でしたよ?」

エルシィもそう感じたようで、ボクたちは栞が破り捨てた紙切れに手をつけた。

「プリント………」

それは公的に発行されたプリントの残骸だった。だが、それ以上のことは何もわからない。流石に破られた紙から内容を読み取るなんてことはできない。

ボクが半分諦めかけたときエルシィは羽衣でプリントの残骸に触れる。

「復元してみましょう‼︎羽衣さんお願い‼︎」

羽衣は瞬く間にプリントを復元し、その姿が露わになる。

「できました————役に立った!」

エルシィは満足そうにプリントをボクに見せる。

なるほど……これか…

そこに書かれていたのは、「視聴覚ブース導入に伴う、蔵書処分のお知らせ」だった。

「エンディングが……見えたぞ‼︎」

ボクは確信した。しかし、物語はボクがいなくても進んでいく。……進んでしまうのだ。

———————————————————————————————————————————

本当に嫌になってしまう。

どうしてだろう?どうして、本が処分されなくちゃいけないのだろう?

私は本を読みながら帰宅の路についていた。ただ本の内容はあまり入ってこない。

それは私の内に幸せな気持ちと不幸な気持ちが混在しているからだろう。

不幸な気持ちの要因は言わずもがな、蔵書処分についてである。言いたいことがはっきり言えなかった私にも非があるだろう。しかし、それとこれとは話が別だ。図書館の本を処分するなんて、許せない。

そんな不幸な気持ちと同居している幸せな気持ちがいる。

なぜなら、この度私が高原さんにお呼ばれされたからである。つまり、招待である。

『ねぇ!私が淹れたコーヒー飲みにきてよ!』

そう言われたのは今日の放課後だった。

私は少し口角が上がったことを自覚して頭を振る。

そう、これはお礼だ。

今日、彼女が淹れたコーヒーを飲んでそれが美味しかったら彼女はもう図書館に来てくれないのだろう。

少し寂しくもあるが、それでも私が彼女の力になれたのならそれは喜ぶことだ。

私はカバンの中から彼女からもらった喫茶店の住所が書いてあるメモを取り出す。

この辺だと思うんだけど……

太陽も沈みかけであたりは橙色に染まっている。

そんな住宅街を進んでいくと、看板が立っていた。

『カフェ・グランパ』と書かれたそれは高原さんからもらったメモの喫茶店名と同じだ。

Openという札も出ているし、やっているんだろうけど……こういうお店に入るのは緊張してしまう。

そんな私は窓からお店の中を見てみる。

「…あっ、高原さん…」

カウンターでコーヒーを淹れている高原さんの姿が目に入って安堵した。

ここで合ってたんだ……

私は店内をもう少し観察してみる。

すると席に座っているお客に目が止まる。

独特な寝癖……鋭い目つきに、メガネ……そして手に持ったゲーム機……

そう、それはあの人……桂木桂馬だった。

私の空間に土足で乗り込んできた、失礼な人……でも、少し気が合うと思った。その人が席に座っていたのだ。

私は咄嗟に身を隠す。

あれ、何だろう?

私は胸の当たりを抑えた。心臓が強く鼓動した。

ドクン、ドクンと鳴り止まないその鼓動の理由がわからない私は引き寄せられるようにもう一度店内を覗く。

すると、高原さんがちょうどコーヒーを運んでいるのが見えた。

それをあの人の席まで持っていくと、彼女は頬を赤らめながら彼の目の前に置いた。

ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ

先ほどよりも強く、早く心臓は脈打つ。

何故だろう。見ていたいのに、一刻も早くこの場から離れようとする私がいた。

彼は高原さんが淹れたコーヒーに口をつけ、驚いたような顔をする。それを見て彼女は嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑っていた。

あっ

そうか、そうなんだ……

私は走っていた。走るのなんて嫌いなのに。疲れるのなんて、嫌で嫌でしょうがないはずなのに。

そうだったんだ、私……

私の眦から尾を引いて涙が落ちていく。

 




読んでいただき本当にありがとうございます。
次回はほとんどがオリジナルなので上手く書けるか分かりませんがお楽しみに‼︎
そして、お気に入り登録してくれた方、感想を書いてくれた方、読んでいただいた方、本当にありがとうございます‼︎
これからも怠けず書いていきますのでどうぞよろしく‼︎
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