まちがったシンジくんをエヴァパイロットにしてしまった 作:鰹節の丸煮
まじでこんな感じ。やっぱ旧劇見ると何かしら覚醒しちゃう気がする。
シンジは激怒した。必ず、かの邪知暴虐のマセたメスガキを除かねばならぬと決意した。シンジは世事が分からぬ。シンジは尋常たる一介の中学生である。生まれてから少しして母を亡くし、父には祖父母のもとへとやられて以来手紙の一通、電話の一本たりとももらったことがない。ゆえに愛には人一倍敏感であった。
つい数週間前のことである、シンジはあの善人気取りのくせしてその実、田舎者なことこの上ないいけ好かない祖父母とその息子のもとを
シンジには母もいなければ妹や兄もいない。一人っ子である。友人は腐れ縁といったほうがいいやつが一人いたが、互いに“坊っちゃん” “山嵐”と呼び合う程度には鼻つまみ同然の扱いを周りから受けている有様であった。
この友人はシンジが祖父母のもとを離れるときに唯一、見送りに来てくれた人間であったが、その時に餞別としてくれたものの内に高橋洋子の秘蔵カセットテープこと、『ファリィア セタメッソ ファリィア トゥスェ』とやらがあった。シンジはこれを一生の宝にするとその時に誓った。またその時に友人から彼の住所と電話番号の書いた紙の切れ端をもらったから、なくす前にと自分の手帳にそれを書き留めておいて、そのうえで
(この懐中時計はシンジが自分で小遣いを貯めて、さびれた時計屋で買ったものである。いわゆる若気の至りで、使わないままため込んでいた金を憂さ晴らしにパァッと使ってやろうと思って買ったのだが、これが意外と値段のかいはあったということなのか、日付曜日をあらわしてくれるような使い心地がよいものであったからズルズルと使い続けている)
だがそんな友人のくれた秘蔵のブツとやらは案外トンチンカンな代物だった。蓋を開けてみればそのテープにはイミ不明な怪音声が収められたのだった。それらはおそらく友人の声によって読み上げられていたのだろうが、その声は異様に幼くつたないもので、そんな声が舌足らずな発音で異世界の言語そのものといってよいような気味の悪い文言をただひたすらに読み上げているのである。
そうして最後に、成長したいつも通りの友人の声が唐突に「だいぜんじがけだらなよさ、にみやペェジ」といやにゆっくりと発音して──テープは終わるのである。
シンジは正直これを一生の宝にしたことを後悔した。
けれどシンジは一度決めたら頑として変えることのないことで有名であった。
中学校始まって初めての席替えで自由な席に座ってよいとされ先にシンジが座ったというのに、その後からさもおまえが邪魔でおまえが悪いのだと言わんばかりに「席ゆずってくんない?」といってきた女子に対しては紳士然としながらも、はっきりと厭だと応じた。俺たちの方がおまえより人生満喫してるからと言わんばかりにその後にまた、席を譲れと笑顔の裏で暗に求めてきた先ほどの女子の彼氏っぽい、クラスでも屈指のイケメン(体格もいい)には、オマエにはぜってー譲らねえよ、と面と向かっていってやった。
もちろんそれをすればクラスで自分がどんな立ち位置に置かれるかはシンジも十分に理解していた。彼の愛読書には重松清も多分に含まれていた。
その結果、あぶれ者の友人ともいえぬような腐れ縁な男と青春を浪費する羽目になっても、シンジは懲りやしなかった。
この第三新東京市にきてもそれは相も変わらず、転校してすぐに校舎裏へと呼び出しを食らい、お前のせいでワシの妹がケガをしただのなんだのと因縁をつけられたときには、思わず苦笑いしつつも「君が
碇シンジという少年はどうしようもなくそういう人間であったのだ。
だから彼はその不気味なテープを相も変わらずもらったときと同じようにプラスチックケースに入れ、自分の机の中に彼なりに大切に保管していた。友人が別れ際にテープと一緒にくれた『寺山修司少女詩集』も一緒に、「肩」のページに挟まれていた葉っぱの葉脈を模している
で、あるからにして。それらが自身の居候しているとあるズボラな女性の借りぐらししているコンフォート21たるアパート、その一室にある廊下に机の引き出しに入れておいたもの一切とともにぶちまけられて粗末に扱われ、「廃棄」されていたのを見つけたとき、碇シンジは激怒した。
"友人"は原作で特に語られてはいませんが、原作キャラです......と言い張ってみる。嘘です、ほぼオリキャラです。女体化するまえのマリです、と言い張ってみる。......すみません嘘です。