「...さて、どうしたものか。」
俺は今、城下町に滞在している。
ログインしたはいいが、レベル上げに最適な場所等を知らないのだ。普通は案内人の様なNPCが用意されていると思うのだが...
「他の人に聞いてみるか...」
丁度、金髪の人が歩いてきた。
装備からしてユーザーだろう。俺は早速、話しかけてみる。
「すみません、少し良いですか?」
「ん?どうしたのー?」
「この辺にレベル上げに最適な場所があれば教えてほしいのですが...」
「...あぁ!初心者さんかー。それなら、少し離れた場所にある森がいいよ。人もいるし、協力したりするのもいいんじゃないかな。」
「なるほど、ありがとうございます。」
「あはは、頑張ってー。」
俺は一礼、金髪の人は手を振り、別れた。
早速、その森へと行ってみよう。
だが、先程から怪しい視線を向けられている。
警戒しておこう...
「...ここか。」
森へ辿り着いた。
どのくらいのレベルのモンスターがいるか分からないが、初心者向けなので大丈夫だろう。
それに、このゲームは恐らく現実での身体能力が反映されている。
俺は怪盗として活動していて、屈強なシャドウ達とも戦ってきた。
低レベルのモンスターなど、敵ではないだろう。
...そう、低レベルなら。
「...おい、そろそろ出てきたらどうなんだ。」
森へ来ても尚、怪しい視線を感じていたので声をかける。
警戒MAXで。
「おぉ?気付いてたのか。」
大柄で黒いコートを羽織った男が出てくる。
...それも沢山だ。
「...何者だ。」
「俺達はこのゲームに革命を起こすチームだ。」
「革命だと?」
「初心者共を下につけ、調子に乗った奴らを力でねじ伏せ、高級装備、高級アイテムでこの世界を集団で支配する。そういう革命だ。」
「...」
俺はその言葉を聞き、拳を握る。
警察、政府という自分を陥れた集団を見る目で睨みつけ、反論する。
「小物だな。その革命は素晴らしいとも思わないし、全く心に響かない。」
「あくまでも俺達の下につかないって事か。」
如何に大きな集団でも、己の正義を貫く意志を持ち、俺はこう答える。
「勿論だ。」
「...残念だよ。お前は戦力になると思ってたんだけどな。お前ら、やれ。」
ザッザッと、絶望の足音が近づいてくる。
だが、こんな絶望など何度も経験してきた。
「...こい。」
俺は一歩下がり、戦闘態勢をとる。
奴の仲間の一人が突撃をしてきたが、それを回避して片手剣でカウンターを決める。
それを何度も繰り返すが、仲間の一人が魔法を撃ってくる。
「くっ...」
「オラァ!」
魔法の攻撃を回避したが、その隙をついて物理攻撃をしてくる。
その攻撃に反応できず、大ダメージを喰らってしまった。
「ぐっ!」
どんなゲームでも、上級者には抗えない。
力の差という無慈悲なものが存在するからだ。
現実での身体能力が反映されているとはいえ、ペルソナや魔法も使えず、そもそものステータスも負けている...
「さっきまでの威勢はどうした?」
「くっ...!」
「そういう調子に乗った奴らを潰す。その革命の糧になれ!」
奴の仲間全員が魔法の準備をする。
装備からして上級者だろう。
現実と同じだ。MMORPGもカーストが存在する。
警察や政府の様な... 闇の心を持つ者も...!
だが...
「俺は...諦めない。」
「あ?」
そう、怪盗として活動していた頃、
悪に抗う大切さ
絆の力の大切さ
それらを覚え、掴んできた。
「...!」
ステータスが何だ、上級者が何だ!?
俺は抗い続ける。誰が相手でも...!
『反逆の心を思い出した様だな...』
ドクン
「あぁっ...!?」
『お前の覚悟、しかと聞き届けたぞ。』
「ガァッ...!!」
頭が割れる、心臓が破裂するような痛み、苦しさが一気にくる。
だが、どこか懐かしい。そうだ、これは...!
『再び、契約する時だ。』
「ハァ...ハァ...!!」
痛み、苦しみ... それらが静まり返ると、仮面が顔についているのに気が付いた。
ドミノマスクだ。仮面を剥がしたくなる衝動に駆られる...!
「アァッ...!ガァッ...アアアアァァァァ!!!!」
皮膚もろとも仮面を剥がし、体中が蒼い炎に包まれる。
『我は汝、汝は我...』
部屋着が怪盗服に変貌していく。
まるで、俺の心が、反逆の心が写された様な...
『己が信じた正義の為に、全ての悪に抗う者よ!』
『その怒り、我が名と共に再び解き放て!』
『たとえ地獄に繋がれようと全てを己で見定める、強き意志の力を!』
「来い...」
「【アルセーヌ】!!」
俺は... もう一人の自分を再び呼び覚ました。