ギストが先行して航路上のアラガミを排除し安全を確保した航路を進んでいたはずのアルゴノウトのキャラバン。
このキャラバンにはギストが航路の安全を確保した上に、キャラバンにも護衛のAGEの小隊を備えていた。今回の遠征に際してギストが確保した航路にさらに侵入するアラガミにも対応できるように万全の態勢を整えており、そのアラガミが想定外の強さを持っていたとしても新型AGEを召喚してすぐに対応できるように、対策を万全に整えていたはずだった。
しかし、そのアルゴノウトのキャラバンは──いつの間にか壊滅していた。
航路の終着点である合流予定ポイントに到達した後にギストは指示を仰ぐためにキャラバンへ通信をつなげたが、通信障害によりキャラバンとの連絡が取れなかったため、一度合流するために航路を引き返す。
そして最後に通信をとったキャラバンの位置まで戻ったところで、壊滅したキャラバンの姿を見つけたのであった。
「な、んで……?」
航路上に存在したアラガミはすべて討伐した。
キャラバンとは定期的に連絡を取っていた。仮にアラガミが航路の外から来たとしても感応レーダーで補足可能、護衛のAGE部隊もいる。彼らに対応できないキャラバンを壊滅させることができる強力なアラガミならば、ギストにも招集命令が飛ぶはず。
だが、キャラバンからは何の音沙汰もなかった。
考えられるのは、ギストを招集する間も無く感応レーダーが補足する領域外から一瞬で移動してきたアラガミに壊滅させられたという可能性。
ラーのような瞬間移動能力を持つアラガミの襲撃を受け、ギストを招集する間もなくキャラバン1つが壊滅したということ。
もしもそれが真実ならば、極めて危険なアラガミが出現しているということに他ならない。
「…………」
キャラバンの残骸が広がる惨状に降りたギストは、己を化物と恐怖しハイエナと蔑み差別してきたアルゴノウトの人間たちの死が広がる現場で、生存者を捜し始める。
そのアラガミがどういう存在なのか、どこに向かったのか。
被害を食い止めるために、そのアラガミを迎撃するために、正確な情報を入手する必要があった。
それが建前。
本音は、生存者がいると信じたかったからだ。
化物になった日に、アルゴノウトに転属した日に立てた誓い。
人間がもう誰も傷つかなくていいように、人間がもう誰も死ななくていいように、アラガミとの殺し合いは化物である自分だけが請け負い誰1人として死なせないと誓った。
それがこの化物によって傷つけられた人に、バランの悪魔の研究の犠牲者となったかつての同胞たちに対する償いになると信じて。
7年間、どれだけ傷ついても、どれだけ後ろ指を指されても、どれだけ差別されても、人間を守るために戦い続けてきた。
その誓いが、あっけなく壊された。
彼らを守らなければいけなかったのに、キャラバンがこのような惨状になる中で自分は盾にすらなっていなかった。
そして、死なせてしまった。
その現実を否定したくて、そして純粋にこの絶望の中でも生存者が1人でもいると信じて。
キャラバンの残骸に駆け寄り、瓦礫をどかして生存者を捜した。
「誰か……誰か! 生きている方は!?」
瓦礫を退ける。
ブリッジの残骸の中に、人の手があった。
それは制服の袖を羽織っており──そして、肩から先が血の跡のみとなりなくなっていた。
「生存者は!? 返事を、して下さい!」
トレーラーの格納庫に、人の手があった。
神機を握り手首に赤い大型の腕輪を装着した腕が見え──そして、肩から先が血の跡のみとなっていた。
「誰か……! 誰か! お願いです……1人、だけでも!」
祈るように叫んで、返事が聞こえない残骸を退ける。
残骸を退けると、人が入れそうな空間にヘッドホンと髪の毛が見えた。
ギストを何度も罵り、人としてみなさなかったオペレーターのものだとすぐに理解できた。
「お願いです……!」
生きていてください。
そう強く願って、近寄る。
そこにあったのは──身体が潰れ黒焦げになった“人の形をしたモノ”だった。
「……ッ!」
生存者は、いなかった。
キャラバンは文字どおり全滅していた。
命をかけて守ると誓った人々は、ギストの知らないところで殺されていた。
「まだ……ッ」
身体の震えが止まらない。
その場に崩れ落ちて、己の無力さと罪なき人々を殺した現実の非常に対して嘆きの声をあげたい。
折れそうになっている心を押さえつけて、立ち上がる。
泣いている時間など無い。
アルゴノウトのキャラバンは守れなかった。
死んだ人々を悼み涙を流すことは、後からでもできる。
その前に、彼らをこのような惨状に陥れた存在がいる。それに対応し、これ以上の被害を出さないように尽くさなければならない。
機材も軒並み破壊され、生存者もおらず、何も情報が無い中での捜索となる。
この情報が無い中でキャラバンを一方的に破壊できるアラガミを捜索し接敵するなど、自殺行為だ。接敵できる可能性すら低く、接敵したとしても勝てる保証など無い。
それでも、やらなければならない。
キャラバンを壊滅させられれとなれば、ギストはその責任の追及を免れることはできず殺処分されるだろう。
だがたとえ殺処分される未来しかないとしても、その前にこれ以上誰かが死なないように、彼らを襲った理不尽な死に潰される犠牲者を出さないように、人間を1人でも守るために、この惨状を生み出したアラガミを倒さなければならない。
「急がなければ……」
アルゴノウトのキャラバンの残骸を後にするギスト。
周辺に足跡などが無いかを捜索しつつ、別のキャラバンが襲撃を受けていないかの情報を探るために通信機をつなげる。
『──ガッ……! ──ガガッ……!』
すると、その通信機にノイズ混じりの音声が聞こえてきた。
どこかのキャラバンがギストの通信機に、というよりも周辺のキャラバンに向けて救援要請の通信を飛ばしているようである。
似ている。
不自然な通信障害を受けた、アルゴノウトのキャラバンに通信を飛ばした時と。
距離は決して多くないはずだが、まるで通信妨害がされているようなひどいノイズが入っている。
『──ちら……ア……ヘッド──……キャラ……謎の──襲撃を──交戦ちゅ……!』
かろうじて聞こえる音声に耳を集中させる。
それは、Bルート航路を進む後続隊のキャラバンである“アローヘッド”の派遣したキャラバンからの救援要請だった。
ノイズ混じりでも切羽詰まっている様子がわかる声である。
何らかのアラガミと接触し、交戦状態となっているらしい。
グレイプニル本部の派遣してきたアローヘッドのキャラバンは、今回の遠征に参加する各ミナトのキャラバンの中でもバランの船団とほぼ同格の最大規模の船団となっている。
当然規模に応じて戦力も多大であり、灰域種アラガミのような強力なアラガミ以外ならば十分に単独で対応できるはずである。
そのアローヘッドが救難信号を出すほどの事態。
「…………ッ!」
アルゴノウトのキャラバンをこのような状態にした元凶のアラガミがそこにいる。
瞬時にそう感じたギストは、Bルート航路へ向かって走り出した。
もう、間に合わないなんてことはさせない。
1人でも多く、守り抜いてみせる。
化物との殺し合いは、化物である自分の役目。人間にこの負担をさせ、不幸を生み出すわけにはいかない。
今度こそ誓いを果たしてみせると。
足がちぎれても構わないという気概で、アローヘッドのキャラバンのもとに急ぐギスト。
──だが、世界はどこまでも残酷だ。
そこでギストを待ち受けていたのは、欧州の人類が未だ邂逅を果たしたことがない新種のアラガミと、それがもたらす災厄の惨状が生み出す結末であった。
次回も引き続きギストにアングルを当てます。
未知のアラガミがアローヘッドのキャラバンを襲う!
ハイエナはその惨劇を止めることができるのか!?
オリジナルアラガミの設定
アメノカク②
必要最低限の捕喰以外で自ら他の生物に対する攻撃を仕掛けない大人しい気質のアラガミであるアメノカクだが、神機に対しては非常に攻撃的な性質を見せており確認次第積極的に神機使いの排除を試みる性質がある。通常ならば傷1つ付けられないため灰漠種アラガミであるアメノカクにとって神機は脅威にはなり得ないはずだが、何故神機に対して攻撃的になるか詳細は不明である。灰域種アラガミから進化したと思われる灰漠種アラガミの一種であるアメノカクは、体内に対抗適応因子を有しており、灰域種アラガミに見られる捕喰攻撃の動作を行うことが確認されている。その動作は自身の身体を雷光に変化させ、人間の目では捉えられない瞬間移動のような高速起動により8度の突撃を繰り出しゴッドイーターを捕喰するというもの。人間の目はもちろん、レーダーによる観測でもその動きを捉え切ることは不可能に近く、ジャストガードで防いでも怯むことなく次の突撃を繰り出してくるため、対応は極めて困難。また、強烈なオラクルエネルギーは通信障害を一帯に発生させ、一度活性化すれば電子機器の破壊する膨大な電撃を放つようになり、灰域踏破船の制御システムを破壊してしまう。これによりアメノカクの襲撃を受けたキャラバンは救援要請を出すことも逃げ出すこともままならなくなる。
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