「ふう...取り敢えず明日の練習メニューはこんな感じで良いかな」
ここは、トレセン学園と呼ばれるウマ娘の養成所。俺はここでトレーナーを務め、色々なウマ娘と出会い色々な経験をした。
しかし、最近困っているというより悩んでいる事がある。俺がここに来て初めて担当したウマ娘「ライスシャワー」についてだ。
初めて彼女を見た時、俺は、何事にもめげずに努力する彼女の姿に惹かれ直ぐにスカウトした。
色々な困難を乗り越え、その頭角を表していき少し前にはURAチャンピオンにも輝いた。
俺はそんなライスを誇りに思っていたのだが、URA優勝のウマ娘を育てたと言うこともあり俺自身も忙しくなってしまい、最近ではライスと掛け持ちで別のウマ娘も担当する事になった。
それからだ。彼女が少しずつ変わっていったのは...。例えば、俺が別のウマ娘と他愛のない会話をしてるとまるで妨げるかの様に俺に話しかけて来たり等、まるで俺が他のウマ娘と関わらせないと言わんばかりに。
俺は、あまりにも支障をきたす様なら直接言おうと考えていた。
しかし、ある時それは起きた。
朝、俺は休みの為ダラダラと寝ているとインターホンが鳴った。俺は、こんな朝っぱらから何だと思ってドアを開けるとそこには私服姿のライスがいた。
「おはよう!お兄様!」
俺は絶句した。
理由は、ただ一つ。俺は、一度もライスを家に連れて来たことも無ければ教えたことも無かったからだ。
「お兄様ってば昨日も遅くまでお仕事してたよね。幾らお休みだからって無理したらダメだよ。そ、それともライスまた何かお兄様に迷惑掛けちゃった...?」
それにどうしてライスは俺が遅くまで仕事をしていたのを知ってるんだ...。
「お兄様?どうしてさっきから黙ってるの?もしかして、もうライスの事なんてどうでも良くなったの?....ねえ...お兄様...」
ライスは瞳を暗くさせながらそう言った。
「ラ、ライス一旦落ち着いてくれ。此処にいられても困る。だから、一旦上がってくれ」
「...うん」
俺は家にライスを上げお茶でも出そうかと準備をしていた。
その間もライスはずっと俯いており表情すらも読み取れなかった。
俺はそのあとライスと向かい合う様に座りしっかりライスと向かい合おうと思った。
「ライス。聞きたい事は色々あるが、取り敢えずなんで俺の家の場所を知ってるんだ?」
するとライスはゆっくりと顔を上げニッコリと微笑むと
「ライスね、ずっとお兄様のお家までついて来てたんだ。ライスはお兄様と3年も一緒にいた。でも、ライスはお兄様の事を全然知らない。
ライスね、お兄様の事もっと知りたいって思ったんだ。お兄様のお家もお家で何をしてるのか普段ライス以外の人と何をしているのか。考えれば考える程お兄様の事でいっぱいになるの。
ねえ?お兄様。ライスはどうすればいい?ライスはどうすればお兄様を独り占め出来るの?
あの、ウマ娘を消せばライスだけヲミテクレルノ?」
「ラ、ライス...」
俺は正直怖かった...。
今、目の前にいる少女は明らかに俺の知っているライスじゃない。レースの時とはまた違う威圧感というか目を合わせるとすら怖かった。
俺がライスに怯んでいると、暗い瞳をしたままライスが言った。
「そういえばお兄様?この間、あのウマ娘を家に連れ込んでいたよね...。ライスを差し置いて...。」
俺は、血の気が引いた。何でそれを知ってるんだ。さっきの仕事の事といい。何で!!
「でも、ライスはちゃんと分かってるよ。偶々、お兄様のお家の近くを走っている時に転んでお兄様が介抱してあげたんだよね。」
何でそんなことまで知ってるんだ!いや...まさか...!!
「羨ましかったなぁ。ライスも怪我をすればお兄様に付きっきりで看病して貰えるのかな...。」
ライスは目を虚にして言う。
そんな時俺は意を決してライスに言った。
「ライス...。」
「どうしたの?お兄様」
「お前、まさか盗聴器でも仕掛けてたのか...?」
そう言うとライスはキョトンとした表情した後直ぐに微笑みながら
「うーんとね、半分正解だよ」
「...半分?」
半分って何のことだよ...!?
「盗聴器と監視カメラ、後いつでもお兄様のお家に行ける様に合鍵も作ったんだよ!ほら!」
そう言うとライスはまるで新しいおもちゃを与えられた子供の様な嬉しそうな表情で鍵を見せつけた。
か、鍵なんて作ってたのか!?だから盗聴器とか監視カメラとか仕掛けることが出来たのか...。
「にしてもお兄様の体って凄くがっちりしてるんだね。ライス思わず見惚れちゃったよ」
ライスがうっとりとした表情で言うがそれ以上に気になったのが
「で、でも鍵なんてどうやって...」
「お兄様の大家さんライスのファンらしくてね、大家さんにライスとお兄様の関係とか後、将来結婚するんだって話したら喜んでくれたよ。」
楽しそうに話すライス
俺は、正直恐怖を通り越してショックの方が大きかった。
「お兄様?どうして泣いてるの?」
「...え?」
どうやら俺は気づいたら泣いてたみたいだ。多分、元々気弱でそれでも勝ちたいという明確な意思を持った強い子であったはずのライスを此処まで歪めてしまった己の未熟さに泣いていたのだろう。
そんな事を知る由もないライスは、すっと立ち上がり、恐怖からか思わず立ち上がっていた俺を抱きしめ、ゆっくりと近くにあったベッドへと押し倒して来た。
抵抗も出来ただろうに...。それでも俺はされるがままだった。
「泣かないで?お兄様。お兄様のライスはずっと此処にいるから。お兄様の為ならあのウマ娘の分まで走り切ってみせるから。それでね、引退したらお兄様と結婚して子供も作って幸せな家庭を築きたいな。」
そう言うとライスはそっと俺にキスをした。
「だから今日はそのための予行練習!ライス、頑張るからお兄様はライスにだけ身を委ねてればいいからね」
俺に出来る償い、それはきっと恋焦がれて壊れてしまったヒーローを愛し続ける事だろう。
「お兄様...ううん。〇〇さん大好きです。ライスは貴方の事を愛してます。だから、これからもズットイッショニイヨウネ。」
かつて、天皇賞を勝ち取った「孤高のステイヤー」はニッコリと満面の笑みを浮かべ一人の男にその愛を捧げるのだった。
もしかしたら、見覚えのある人もいるかもしれませんが、一応pixivでもyuki という名前で小説を投稿しており、今回はその中の一作をそのまま持ってきましたw
これから、pixivで投稿している小説も此方に上げていこうと考えていますのでよろしくお願いします。