A2を味方にする事が出来たわけだが正直に言って突発的な事でも起きない限り彼女の出番はない。というのも原作まで時間はあるし他に原作の内容を変えるつもりはないからだ。エンゲルスはどうしようもないしアダムとイブは原作が始まらないと対処のしようがない。森の国はA2がいない以上国王が死ぬ事はないがそれだけだ。グリューンに関しては……、下手に接触して被害が出るのを避けたい。グリューンを破壊したミサイルもダメージを与えた迎撃砲も無いからな。それ以後の展開は介入の余地が現段階ではない。つまり原作が始まらないとやる事がないのだ。
まぁ、やる事はないがやる事を作る事は出来る。その一つが遊園地の魔改造だ。ボーヴォワールを倒してからはこの遊園地一帯の掌握を開始した。遊園地にいる機械生命体をこちら側につかせたのだ。ネットワークから切り離し俺ほどではないが高性能の防御プログラムを用いて第三者の介入を防ぐ。元々彼らとしては今までと大してやる事が変わらないため、抵抗はほとんどなく掌握出来た。
次に劇場の下に拠点を建設する。これは地下にあった施設を再利用していく。まだゲームクリエイターはいないようで無人のここを改造していく。骨組みも少し心配だったのでそちらの方も手を入れていく。
「A2。次はケーブルを取ってくれ」
「分かった」
A2には悪いが当分の間はこうして雑用をこなしてもらう事になる。A2は名前の通り戦闘特化のアンドロイドだからな。それ以外だとこういう事しか出来ない。とは言え工作が得意なヨルハの機体がいたかは分からないがな。
ここの拠点は三か月ほどで完了させ一年かけて遊園地全体を手直ししていく予定だ。急がないとアネモネがこの近くに拠点を構えるからな。流石にそうなれば怪しむ可能性があるからな。
それとずっと使っていた拠点には最近デボルとポポルが住み着くようになった。なんでもここから行ける場所にあるレジスタンスの拠点は行ったためどこにも行きづらくなったらしい。その為気兼ねなく入れる俺の拠点に居座るようになったのだ。デボルが遊園地の件を聞いてこちらに来ようとしたがさすがに止めた。デボルたちが見てくれているおかげで拠点を離れてこっちに集中できるわけだし、ポポル一人だけだと何かが起きた時に対処できない事もあるだろうし……。というか二人で乗り越えてきたのに今更離れるなんて出来るわけないだろうからな。
そう言った事を伝えたらボソボソと何かを呟いて諦めてくれたが一体何を言っていたんだ?ポポルは若干あきれ顔でこちらを見てくるし……。まぁ、デボルの顔がにやついていたから大丈夫だとは思うけど……。
「A2」
「何だ?」
「そろそろ遊園地内の巡回を頼む。ないとは思うがアンドロイドが様子を見に来る可能性や機械生命体同士の争いとかあるかもしれないからな」
「わかった」
A2はかなり不服そうだが頷いて上に行った。やはり機械生命体を倒したいという思いはあるのだろう。若しくは完全に雑用しかしてない現状への苛立ちか。ボーヴォワールも予想に反して瞬殺だったからな。せめて数回はA2の攻撃に耐えてほしかったよ。
さて、A2が巡回を終えて戻ってくるまでに今やっている区画は終わらせたいな。もう少し本気を出してちゃちゃっと終わらせるか!
最近デボルの強い要望でレインの拠点に住み着く事になった。でも、デボルの言っていた通りこの拠点から行けるレジスタンスの拠点には全て行ったと思うわ。だからそれ以上の場所に行くとなるとこの拠点にはこれなくなる。デボルはそれを嫌がっていたし私もその気持ちを汲んで行動していたわ。
最初こそここに住み着く事に躊躇いはあったわ。レインは既にアンドロイドと区別がつかないようになっているけど機械生命体である事に変わりはないわ。だから何かあったら真っ先に狙われる事になる……のだけど私も彼が何かをするとは思えないわ。数か月前に最新型のアンドロイドを連れてきた時は驚いたけど結局彼がなんでそう言った行動を取っていたのかはわからなかったわ。いつの間にか潜水艦までつくっていたし、態々オワフ島に行って保護なんてあまりにも可笑しすぎるわ。でも彼は問い詰めても教えてはくれないと思う。デボルは気づいていないけど彼は私達との間に壁を作って接してきている感じがする。多分余計な事を言わないようにするためだと思うけど壁を感じるのは少し悲しく感じるわ。
それとデボルは最初ここに住むという事で喜んでいたけど肝心の彼は少し離れた場所にある遊園地に拠点を作るとかでここにはいなかった。しかもA2という保護したアンドロイドを連れて。彼女と彼が二人きりになるのを防ぐ目的もあったのにそれが失敗したことでデボルは最初そっちに行こうとしていたわ。でも、彼にここを守ってほしいと言われてからは大人しくなったわ。「家を守る……。こ、これは主婦?」とか「信頼してくれている……。えへへ」と言っていたけど。確かこういうのをチョロインっていうのだったかしら?意味は忘れてしまったけど人類が良く使っていたのが記録にあるわ。
そう言う訳で私とデボルは彼のいない拠点で日々を過ごしている。……でも、彼のいないここはある意味新鮮だけど少し物足りなさを感じるわね。私も彼に心を開いているという事なのかしら?
レインと共に行動するようになってから私は不満しかなかった。毎日毎日レインの雑用と遊園地のステルス巡回しかやらないのだ。機械生命体を殲滅する為に作られたヨルハの機体としてはその本領を発揮できない現状に不満しかない。
この遊園地で唯一起きた戦闘、確かボーヴォワールという個体名の機械生命体も一撃で決着がついた。止めは彼が差したがそれが無くても遠くないうちに機能を停止していただろう。周辺の機械生命体でも殲滅できれば気も晴れるのかもしれないがそれは禁止されている。なんでもこの辺はレインの拠点と違いアンドロイドが良くくる場所らしく知られる訳にはいかない私では出歩くのは危険だった。ならば遊園地内の機械生命体は、と考えたがボーヴォワールを破壊してからここの機械生命体を全て支配下に置き完全に制御している状態にある。だから私を見ても襲ってくる機体は皆無だ。むしろ構って欲しいとばかりに引っ付いてきて鬱陶しい事この上ない。だから最近の巡回では機械生命体にも見つからないようにステルスを心掛けている。……アタッカーとしては優先順位の低い能力ばかりが強化されている現状にさらに腹が立つ。
ヨルハにいた頃は感情を表に出すことを禁止されていたがここではそう言う事は必要ない。むしろ感情をドンドン面に出していいと言われているがそういう気分にはなれない。もし、感情を出せば八つ当たりや怒りをレインにぶつけてしまう気がするからな。
だから私は感情を押し殺しつつレインの言っていた原作が始まる約4年後を今か今かと待っている。そうすれば今よりも動く事が出来るようになるのだから。