俺の拠点は大分機能的だ。
元は何かの施設だったらしいそこをリフォームという名の魔改造を施して自らの拠点へと変えた。地上二階、地下三階ほどの施設は今では部品の倉庫と俺の工房となっている。地上の施設は出入り出来る部分を塞いだだけで特に手は加えていない。これはボロボロの都市の残骸しかない周囲に合わせて擬態させるためだ。流石に綺麗に整えたら何かしら怪しく感じるからな。それで機械生命体はともかくアンドロイドに目を付けられるのは勘弁だ。今は出会った事は無いとは言え殺される可能性は少ないに越したことはない。
地上とは打って変わり地下は大分手を加えてある。研究室のような白い壁にしたり工房で使う機械を置いたりな。そして地上含めいたるところに監視カメラがある。それらは俺以外の生命反応、無論機械も含めて感知したら俺にすぐに情報が送られるようになっている。リアルタイムで確認できるようにもなっており地下の最深部には制御装置がある。
これだけの施設をつくるのは苦労した。何せ前世の俺はこんな事とは無縁の存在だったからな。500年くらいかけて扱い方を実践で学んだよ。おかげでこうした充実した施設や体を作る事が出来ている。
そんなわけで原作が始まるまでは外で機械生命体から部品を頂戴しつつこの拠点で改造や改築を行って過ごしていこうと思っている。原作に出てきた素材は既に大量のストックがある。他にも改造に必要な部品もそろっている。……本来なら態々外に出る必要はない。それでも外に出るのは外の確認がある。何時までも籠っていたのでは気づいたら原作終わってましたと言う事態になりかねない。ただでさえ外はずっと日が差し、この体はメンテナンスを行えばほぼ永久に近い時間稼働出来る。ちょっと休むで百年くらい経過していても可笑しくはないのだ。
そうして今日もデイリークエストの如く機械生命体を狩り、部品を集めた俺は拠点に向かっていた。その時、俺の頭にアラームが鳴り響く。これは、拠点に侵入者が現れた際になるアラームだ。初めてなったが同時に俺は警戒する。このアラーム音は地下に侵入された際になる物だ。地上ではなく地下。入念に偽装した地下への入り口が破られたという事だ。この時点でただの機械生命体の仕業ではない。自我を持っているのかさえ怪しい現状のあれらに偽装を見破って侵入する力はないしその意味がない。ならばエイリアンかとも思うがアンドロイドの可能性もあるだろう。とは言えアンドロイドの気配はない。索敵にも反応しないという事はこの辺には来ていないという事。それがいきなり敵の拠点に侵入などしないだろう。
侵入者の目的がいまいち分かりかねた俺は直ぐに監視カメラと連動する。俺の視界は右を元々見えている風景を、左を監視カメラの映像が映る。監視カメラには人と変わらない、二人の女性がいた。ボロボロになった体を引きずりながら拠点の中を進む赤い髪の女性型アンドロイド。……ああ、そう言えばいたな。オートマタより7500年近く前、レプリカントとゲシュタルトという名前が付けられた前作の登場人物が。俺は部品を持って一気に拠点へと駆けた。
「ファーストコンタクトだ。相手の反応が楽しみだな」
姉妹型アンドロイドであるデボルとポポルは動きが鈍い体を引きずりながら歩いていた。彼女たちはかつて人類を救うための任務についていたアンドロイドだが彼女たちの同型機の暴走により計画は頓挫。人類は滅亡する事となった。それを受けて彼女たち以外の同型機は全て破壊され彼女たちには罪の意識をインプットされ同じ暴走を起こさないようにテストモデルとして生きながらえていた。エイリアンとの戦いが始まると彼女たちも戦いに参加し事実を知るアンドロイドたちに邪険にされながらも必死に戦いや後方支援、治療やメンテナンスを行ってきた。エイリアンの優勢となりアンドロイドたちがレジスタンス組織として抵抗するようになると彼女たちは各地の拠点を転々と移動する事となる。
彼女たちを受け入れてくれる場所はなく自分たちのメンテナンスを行うとすぐに移動するを繰り返していた。
しかし、彼女たちは数日前に大量の機械生命体の攻撃を受けた。何とか退ける事は出来たが体中はボロボロでありデボルは右腕が動かず垂れ下がっておりポポルは左足がうまく動かなくなっていた。他にも体のあちこちに異常が発生し早く修理をしなければいけない状況になっていたがここはレジスタンスが活動していない地域でありそんな事が可能な施設はなかった。あったとしてもそれは機械生命体の施設であり攻撃を受ける可能性が高かった。
「デボル、頑張って」
「ポポル……」
デボルの動かない右腕を自身の方にかけながら辛そうにしている彼女を必死に支えるポポル。一歩一歩ゆっくりと、だが着実に進んでいく二人。とは言えこのままでは機械生命体に襲われ命が費えるだろう。
「デボル、少し休憩しつつ応急措置をしましょう」
「……分かった」
元気なく答えるデボルの体を引っ張りながら比較的頑丈そうな建物の中に入る。扉などは壊れていたが壁などは無事でありポポルはその中で外から見えない部屋に入りデボルを横にする。そして彼女の体を触りながら応急処置を施していく。
「ごめんな。もう、戦う力がないや」
「大丈夫よ。必ず、必ず治るわ」
「でも、このままじゃレジスタンスの拠点まで持たないだろ……」
「それは……」
デボルの言うとおりであった。ポポルはともかくデボルは人間でいえば致命傷レベルの傷を負っていた。このままでは遠からぬうちに死に絶えるだろう事はポポルにも分かっていたがだからと言って見捨てる事は出来なかった。
二人は二人だからこそこの状況を乗り越えて来れたのだ。どちらかが欠けては彼女たちの精神は持たないだろう。そして、それが同型機の暴走の原因でもあったが彼女たちは知らない事実である。
「何か、何か使えそうなものは……っ!?」
何かしら部品でもないかと周囲を見回したポポルは気づいた。部屋の隅に扉らしきものがある事を。その扉を持ち上げてみれば地下へと続く階段があった。
「階段……?」
「何か見つけたのかポポル?」
「え、ええ。地下に向かう階段みたいだけど……」
「ならここにいるよりはマシだろうしそっちに移動しよう」
「……そうね」
デボルの言葉にポポルは了承した。本来の二人ならこんな軽率な事はしなかっただろう。例え向かったとしても比較的軽傷のポポルが様子を見て安全だった場合にデボルを連れて降りたはずだ。決して偵察もしないで二人で降りたりはしなかったはずである。それだけ、二人はそんな事も考えられない程疲弊していたのだ。
しかし、結果だけを見ればこの動きは二人に取って好機となる。
そして、前世の記憶を持った元人間の機械生命体と人間の為に活動していたアンドロイドの出会いは近かった。