自分の部屋で義体のメンテナンスを行っていると扉の前に設置したセンサーに反応があった。感知したのはアンノウンのヨルハ部隊の機体、11BやA2は登録しているからアンノウンとは出て来ない。つまり2Bと9Sで間違いないだろう。俺は扉を開けるとメンテナンスを一時中断して扉の方を向く。そこにはやはり2Bと9Sがいた。
「その様子だと覚悟は決まったようだな。2Bには真実を伝えたのか?」
「ええ、彼女には知っている事を全て話しました」
「そのうえでここに来たという事はそれだけ聞きたいという事で良いな?」
俺の言葉に二人は頷く。何処か二人の距離が近くなった気がする。と言うよりも2Bの態度が柔らかくなった感じか。互いに意識しているが告白はしていない両想いの男女の様な感じを受ける。ニーアファンだった俺としてはニヤけてしまいそうになるが雰囲気的にそんな事は出来ない。やったら間違いなくこれからの話の信ぴょう性が薄れる。
「さて、何から話すか……」
「なら先ずは貴方の正体から聞かせてもらえますか」
「ふむ、そうだな。そこから話すとしよう。……いや、もっといい方法があるな。9S、俺をハッキングしろ」
「は?」
「俺の記録を直接見せる。この方が手っ取り早いからな。2Bには9Sが見たものを共有すればいいだろうしな」
「確かにそうですが、良いのですか?」
「問題ない。流石に危害を加えるような事をしようとすれば抵抗するがな」
機械にとって自分を司る領域へのハッキングは自殺行為に等しい。何せゲームでは9Sのハッキングで破壊や操作される機械生命体がいたからな。その辺の対策はきっちりしているから余程の事がない限り問題ないと思うが。
「早くしろ。時間はまだ大丈夫だがこれからは無駄な時間はないからな」
「……どうなっても知りませんよ?」
「構わないとも」
俺の言葉に9Sは少し戸惑い気味ながらも俺へのハッキングを開始した。成程、これがハッキングされるという事か……。あまりいい感じはしないな。
「これは……!」
俺の記憶を読み取ったらしい9Sが驚いている。ヨルハ部隊の特徴の目を覆うゴーグルの上からでも目を見開いているのが分かる。9Sは信じられないようで固まっているがやがて回復したようで俺に向き合った。
「これが事実なら、僕たちの存在は一体……」
「それを決めるのはお前自身だ。取り敢えず2Bにも情報を上げたらどうだ?」
「っ!そ、そうですね。ですが……」
「9S、私は大丈夫だから」
少し渋っている9Sに2Bが優しく話す。それにしてもマジで石川由依の声だな。これだけでもこの世界に転生してよかったと思えるかもしれない。と言うかやっぱり2Bと9Sの距離が近いな。最終的にはくっついて初々しい姿を見せて欲しいな。
そんな事を考えていると漸く決心したらしい9Sがデータを渡し2Bも真実を知る事となった。
「……成程。貴方が色々と詳しい理由について、理解できた」
「まさか、空想上の世界だったなんて……」
「とは言えここは紛れもない現実だと思うぞ。お前らはきちんと自分の意志で動き、戦い、悩み、苦悩している。これが現実でないと疑うのならそう言った事も全て疑うという事だ。そうなれば何も信じる事なんて出来ないさ」
「確かにそうですね」
「……」
俺の言葉に二人は納得したようだ。
さて、そろそろ二人に提案するとしよう。この後の流れを知った二人なら問題ないとは思うがな。
「これで真実を知った訳だが二人はどうしたい?俺としては協力関係を築きたいと思っている」
「“塔”への対処の為ですね」
「そうだ。他にも事前に知っているからこそ出来る対応策もある。だが、それには人手が欠かせない。A2や11Bだけではどうしても足りないが二人が入れば選択出来る事が増える」
「……2Bはどう思いますか?僕としては受けても良いと思うのですが」
「私も問題はない。だけど、一つだけ聞きたいことがある」
「ん?なんだ?」
2Bからの質問なんて珍しいな。そう言うのは9Sの方が積極的に行っている気がするが。
「データを見たけど一応貴方は機械生命体でしょう?」
「そうだが、まさか同胞を殺す事に躊躇しないのかとか聞きたいのか?俺に取っちゃ機械生命体に対して同族意識はないぞ」
「そうじゃない。貴方にとって人間はどういう存在?」
2Bの質問の意図が分からない。俺に取って人間は転生前の種族だ。それ以外の何物でもないだろう。
「貴方のデータには人間を一から作り出そうとする研究データもあった。だけど、どう見ても非効率すぎる。本気で人間を作りたいのならもっと効率よくやっている
貴方に取って、人間はどうしても復興させたい種ではないの?」
……ああ、成程。確かに2Bに言われて納得したよ。俺の研究はあまり進んでいない。もしも本気なのなら月面サーバーへのアクセスなり直接侵入なりでデータを集めるべきだった。それを俺はなんだかんだ言ってやらなかった。それはつまり
つまり俺は、心の底では人間をどうでもいいと思っていたという事だ。ああ、そう思えばここに転生したのは必然だったのかもな。何せ、人間はいないんだから。