機械生命体「俺ハ人間サ」   作:鈴木颯手

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あれ……。可笑しいな。話が全然進まない……


第十三話「決戦の前に……」

「レイン!」

「デボル……。久しぶり。それとポポルも」

「何かついでみたいな言い方ね……」

 

 資源回収ユニットにカチコミ、襲撃をかける準備を整えている間にデボルとポポルが久しぶりに拠点にやってきた。ゲーム開始前にアネモネの拠点に移ってもらっていたせいで会う事は出来ていなかった。その為か、デボルは俺の顔を見るなり俺に突っ込んできて抱きしめてきた。きっと人間だったら瀕死の重傷を負っていただろう威力だが今の俺はアンドロイド風の超魔改造機械生命体だ。この程度ではダメージすら入らない。むしろデボルから感じる二つの柔らかい感触が心地よくさえ感じるが今はそれどころではないな。

 

「デボル。そろそろ離してくれ」

「むぅ……。せっかく久しぶりに会えたのに……」

「すまんすまん。レジスタンスの拠点に移動してもらって以来放ったらかしだったからな」

 

 デボルとポポル。二人にも真実を話す必要がある。俺は二人に対して真実を伝えて来なかった。予想外の出会いだったという事や話す必要が当時はなかったという理由もあるが今の関係を壊したくなかったからかもしれない。なんだかんだ言ってデボル達との日々は楽しかった。隣にいて、会話が出来るというものが素晴らしいと思いだした瞬間でもあった。デボル達と出会っていなければ俺は心を壊してヨルハ達を人形のようにコレクションにして展示していたかもしれない。生きた状態で。

 

「……ていうかお前の拠点にいっぱいいるな」

「ああ、皆俺が助けた者達だ。11Bはともかく2Bと9Sは知っているだろう?」

「一応、な」

 

 デボルは俺の後ろにいる2Bと9Sに何処か睨みつけるような視線を向けているが頭を撫でてやればふにゃりと笑みを浮かべて表情を柔らかくした。まるで猫みたいだと思いつつ二人を拠点内に案内する。

 最近はゲーム通り問答無用で襲い掛かって来る機械生命体が増えた。気軽に外を出歩こうものなら周辺の機械生命体の熱烈な歓迎を受ける事になるだろう。今の時期は9Sが目を覚ます前、A2が動き出したころだ。ゲームなら最終的に対立する二人も俺の介入によって仲良く談笑する事が出来る仲になっている。何なら昨日はA2と2Bが訓練を行っていたくらいだ。ゲームをプレイした俺にとってその光景は達成したかった目標の一つだった。

 

「それで? 態々私達を呼び出した理由って何かしら? こう見えても私達は忙しいのよ?」

「何を言っているんだポポル。時間なんていくらでも作れるだろう?」

「……」

 

 デボルの発言にポポルは頭を押さえてしまう。確かに今の発言は少しあれだな。()()()()()()()()()()()()()()()()()()二人にもレジスタンス内での立場があるだろうしもっとあちらを優先に……、って。そもそも俺が頼んで二人をあのキャンプに向かわせたわけだしポポルはともかくデボルは嫌がっていた事を考えると仕方ない事かもしれないな。

 

「まぁ、今回は結構重要な話だ。キャンプの近くに建った塔は分かるだろう?」

「ああ、あれが出来てから機械生命体が凶暴になったな」

「その原因たる塔の破壊をする事にした。その為に協力してほしいんだ」

「……いきなりだな」

 

 想像以上の重要な話だったのか、二人の表情は真剣なものになる。少なくとも普段浮かべる温和な表情とは違う、どちらかと言えばレプリカントで戦った時のものに近いだろう。

 

「人員は見ての通りこのメンバーで行う。二人にはそのサポートを頼みたい」

「任せろ! って言いたいがレインはどうするんだ? まさかこいつらと一緒に戦闘に参加するなんて、言わないよな?」

「貴方は戦闘は苦手だって言ってなかったかしら?」

「確かに戦闘は苦手だが別に出来ない訳じゃない。それに直接的な戦闘は他の者に任せるさ」

「つまり戦場に立つって事か? なら……!」

「いや、デボルとポポルにはここで全体の指揮及び支援をしてほしい。俺が出る以上そう言った事を出来るのは二人以外にいないからな」

 

 そもそも9Sを除けば誰もが戦闘職だ。A2、11Bを始め2Bだって本当はE型と言うB型を超える戦闘能力を有している。その分バックアップは誰もが苦手としていて任せるのは不安だ。そうなると9Sに任せるという手もあるが彼はスキャン出来る人材として前線に出てもらわないといけない。2Bをサポートさせるという理由もある。同じ理由でA2と11Bにもサポートがいるだろう。11BはともかくA2なら問題なさそうだが念には念で、な。

 

「そんな訳で二人には司令塔となって俺たちをサポートしてほしい。安心しろ。俺達は死ぬつもりはないし生き残るために戦うんだからな」

「……勝算はあるのね?」

「そもそもこれだけの戦力があって敗北する可能性の方が低いだろう?」

 

 慢心している訳ではないがゲームの時を軽く超える戦力が集まっていると思っている。これなら怪我は有れど全員生還する事も可能だ。いや、そうでないといけない。せっかく救える命を救ってきたんだ。このままハッピーエンドまで持っていきたい。

 

「私は了承してもいいけどデボルは……」

「……」

「ダメか?」

 

 懸念はデボルか。俺に抱き着き顔を下げる彼女が今どんな様子なのかを知る事は出来ない。だが、葛藤はしているんだろうな。俺に抱き着く手が震えている。

 

「……分かった。どうせお前の事だ。きちんと生き残る術はあるんだろう? ならばこっちはそれを高められるようにサポートするだけだ」

「……ありがとう」

 

 デボルの言葉に自然と笑みを浮かべる。信頼されるというのは心が温かくなるな。だが、その前に……。

 

「それと二人には話しておきたい事があるんだ」

「何だ? まだ何かしてほしい事でもあるのか?」

「そうじゃないよ。ただ……」

 

 そこで一旦話を途切り、心を落ち着かせてから話す。

 

「俺の出生について、二人には話しておきたい」

 

 自らの過ちではないが同型機の暴走により人類の滅亡が確定し、記憶を消され罪の意識を刷り込まれた被害者とも被疑者とも言える古いアンドロイド。二人は転生者(元人間)である俺をどう思うのか? これまで意図的に且つ無意識に避けていた本当の事を話す。まるで鉛の如く俺の動きを阻害する緊張感を感じながら俺は二人を奥へと誘導した。心のどこかでこの関係が続いてくれる事を、願いながら……。

 

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