今が西暦何年なのかを知るには情報が足りない。前にも言った通りアンドロイドがこの辺にはいないから情報を得られないし日がずっと昇ったままだから日の浮き沈みで判断も出来ない。故に俺は今何年なのかを知ることは出来ていなかった。
薄々気付いている者もいるかもしれないが俺は機械生命体のネットワークから独立している。イヴの暴走やターミナルと呼ばれる赤い少女の干渉を受けないようにそれはもう厳重にしている。ダイヤモンドを手でこすって穴をあけようとするくらいには硬くしているつもりだ。尤も、これでも安心できないから最終目標は筆の先端でゆっくりと撫でて直径数キロのダイヤモンドに穴をあける位にするつもりだ。干渉されるなんて嫌だからな。
話はそれたが今の俺でも自分がどの時代にいるかを正確に知る方法はある。それは原作の出来事を発見する事だ。オートマタはレプリカントの続編だがその間には8000年以上の時が流れている。機械生命体が誕生したのが5024年となっているからそれより後なのは確実だ。そして俺の製造年月日はおおよそ8000年より後だ。そして今は11627年だ。
何故こんなに具体的に分かるかと言えば超々大型機械生命体グリューンが現れたからだ。グリューンとは原作では水没都市に出現したボスで救援要請を出していた空母を口で真っ二つにすると地上に向けて進みだして2Bと9Sを苦戦させた。更にEMPを放って2Bと9S以外のヨルハ部隊を殲滅。最後は空母に搭載予定だったミサイルを9Sが寸前まで軌道修正しながら口に突っ込み破壊された機械生命体だ。この機械生命体により空母(とそれに乗っていた乗員)を失い更に援軍として駆け付けたヨルハ部隊は全滅した。数人ほど助かったようだが全員満身創痍の状況に追い込まれていた。
そしてこの機械生命体はかつて地上に現れアンドロイドと機械生命体の両方に甚大な被害を与えたため海の中に凍結されたのだ。そして、その被害を与えたのが11627年。そう、もし海に凍結されるのが遅ければ拠点にまで被害を与えていた可能性があったのだ。つまり、俺が今いる場所は原作の舞台の近くという事だ。
加えて、今11627年という事は原作開始まで318年程なのだ。機械生命体の生みの親のエイリアンはいつの間にか絶滅していたのだ。本当にこいつがいてくれて助かった。俺の体感時間は10000年後半くらいだと思っていた。この調子なら原作が始まると思っていた時には終わっていた可能性が高かった。改めて周囲の情報の大切さを知ることが出来たよ。
そんなわけで俺は周囲に偵察機を出している。偵察機と言っても人が乗るようなデカい飛行機ではない。虫に擬態する小型のものだ。虫の顔の部分にカメラが搭載されたもので俺に、というか拠点のメインサーバーに映像と情報を送っている。充電で動くタイプの為近くで活動する機体は拠点に戻って充電を、遠くで活動する機体は充電専用の機体と共に活動させる。これで大分遠くまで索敵が可能になった。
それと、数年前?には自身を大きく改造した。最近になりアンドロイドがチラホラとやって来るようになったためその中から人型のアンドロイドを秘密裏にスキャンしては情報を集め漸く人型の義体にする事に成功したのだ。見た目だけなら完全なアンドロイドになれた俺は直ぐに予備の義体の製造も開始した。この体を手に入れた以上機械生命体の体を使うなんて嫌だからな。
ついでに人類を作れないかも試している。とは言え周りには人類の祖先たる猿がいない。そもそもまだ生息しているのかさえ分からない。だからその辺によくいる鹿や猪を弄っているが遺伝子に関しては機械以上に分からない。何をどうすればいいのか分からないから今は鹿と猪で交配できるようにしている最中だ。まぁ、人類の祖先であるラミダス猿人が誕生したのは約500万年前だ。つまり500万年かけて人類が誕生したのだ。たかが数年でどうこうできる問題ではないことは分かっているため気長に行っていくつもりだ。
遺伝子分野にまで手を出し始めたから最近では拠点が狭く感じるようになってきた。とは言え部屋はたくさんあるし歩くどころかダンス出来るくらいにはスペースがある。あくまで最初の頃に比べれば、というだけの話だ。
「なぁ、何してんだ?」
「……鹿の子宮で猪の精子が適合できるようにしている。邪魔するな」
そして、最近はどういう訳かあの双子のアンドロイドが俺の下を訪ねてくる(特にデボル)。デボルによると「アンドロイドに危害を加えてないかを監視する為。後素材をもらうため」らしい。確かに俺はアンドロイドと戦闘したことはない。アンドロイドと出会った事が少ないのが原因だし俺自身拠点に籠っている事が多いのが原因でもある。
態々遠い場所から来るときもあるし時には二人で訪れる事もある。
「あ、今日はバッテリーとケーブルを貰っていくぞ」
「勝手にしてくれ。……分かっていると思うが」
「ここの事は言わないだろ?安心しろって。お前がアンドロイドと敵対しない限り秘密にするよ」
「それならいい。それと別の場所に繋がる入り口を作成した。今後はそこから出入りしてくれ。ポポルにも伝えてくれよ」
「ん、分かった」
そう言って俺の後ろから作業の様子を眺めていたデボルは去っていく。最近ではあまりにも多く現れるからアラームが玄関のチャイムみたいな状況になっていたから彼女たちも登録してアラームが鳴らないようにした。周囲には虫型カメラもあるしアンドロイドがここに気付いて攻めてきても十分に対処は可能だ。
ああ、また駄目だった。どうも鹿と猪では上手くいかないのか俺が下手糞なのか失敗ばかりだ。別に失敗ばかりなのが嫌な訳ではないが熱中しすぎて時の流れを忘れてしまう時がある。なるべく自重しようにも気づいたら~、の状態になるから直しようがない。
そう言う意味では定期的にやって来るデボル(とポポル)は時間を教えてくれるから助かっているのかもしれないな。今度来た時は少しくらい会話してやるか。
デボルとポポルは救いたい