初めての方ははじめまして、そしてよろしくお願いいたします。
そうでない方もよろしくお願いいたします。
学校の文学作品集に東方の二次創作を載ってるのを見かけて、自分でも書けるじゃ、と思った愚か者です。
にわかです。
色々甘い点、解釈している点、物知らずな点があるかと思います。
ので、発見しましたらどうかご指摘ご意見頂きたいかと。
さてさて、長話が過ぎました。
それでは、幻想入りした少年、何番煎じかわかりませんがお楽しみください!
『どんな処にも青空は等しくあり、雲で隠れようと決して消えたわけではない。隠れただけなのだから』
こんな話を俺は何処かで読んだ気がする。
この前後にもっと話があった筈なのだがこのワンフレーズしか覚えていない。
いや、もしかしたら知らないのかもしれない。
読んだ当時はとても感動した気がする。
当たり前の事の筈だったのに。
しかしーー
『おはよう、幻夢。朝ごはんまだ〜?』
遠くから間延びた寝起き声が聞こえる。
どうやら姉さんが起きたようだ。
手元に視線をやる。
熱く熱せられたフライパンには目玉焼きが二つ。
黄身を崩さぬように皿へと運ぶ。
我ながら洗練されてる、そう思った。
それを盆の上に乗せて居間に相当する部分に持っていく。
姉さんは既に、しかし着替えず髪も結んでない状態で目をこすって待っていた。
ーーしかし、常識や日常、そして世界までに『当たり前』など存在しないそれがーー
「お待たせしました。霊夢姉さん。目玉焼きです」
「相変わらず上手いわね…」
「ありがとうございます。冷めぬうちに食べましょう」
「あんた…もぐもぐ…今日は…もぐもぐ…何処…もぐ…行くんだっけ?…もぐもぐ…」
「食べながら喋らないで下さい。今日は紅魔館で掃除と花壇の水やり、あと妹様とケーキを焼く予定です」
「ホントあんたあの姉妹に好かれてるわね」
「……さて、そろそろ俺は行きますよ」
ーーそれがここ、『幻想郷』だ。
「あ、幻夢。帰りにレミリアからお茶貰って来てくれるかしら?」
が、何があっても霊夢姉さんだけは揺るがない。
****
どの付くほどの田舎、者によっては人里と呼ぶ町がある。
四方を山々が囲み、空気が澄み、人々が未だに電気を頼らない、数奇稀な場所だ。
そこから更に山奥、行く者に理由を尋ねたくなる程の場所、山の中腹部分に古ぼけた神社が一つ。
長い石段の先にある色あせた赤い鳥居には『博麗神社』の札板が掲げられている。
その先の境内で一定のリズムの竹箒の音が鳴る。
紅白の服で身を包み、賽銭箱の周りを執拗に履く彼女の名前は博麗 霊夢。
歴とした巫女である。
その、まだあどけなさすら残る霊夢は、
「なんで誰もお賽銭入れに来ないのよーー!」
飢えていた。
「全く…二週間前に最後のお煎餅を食べてから人っ子一人、いや、妖怪一匹来ないじゃない…」
博麗神社は『幻想郷』にある。
ここでは霊夢のような人間は極一部しか住んでおらず、住人の大半は妖怪や鬼、精霊と言った人里ではおとぎ話に出てくるようなそんざいである。
そして歴代の博麗の巫女は幻想郷と人里を分ける結界の守護者なのだが…。
「私が飢え死んでもいいわけ!?」
ご覧の通り、全く威厳やオーラが見えない。
本当に神職者なのだろうか?
箒を放り出して天に向かって叫ぶ姿からはーー
「ちょっと、文?さっきからなにブツブツ言ってるのよ。聞こえてるわよ」
「あやややや、これはこれは」
そして私はこの幻想郷のブン屋、つまるところの新聞記者、射命丸文です。
今日は私の発行している『文々。新聞』のネタ探しをしてたのですが……大したものも無かったため霊夢さんの一日に密着取材しようと思いここまで来たわけです。
「大方、新聞のネタがないから私の一日でも記事にしようって思ったんでしょ」
「そ、そんなことないですよー」
何という鋭い勘。
腐っても結界の守護の巫女と言うことですか。
ここは一旦引いて体勢を立て直してからーーおや?
「霊夢さん、霊夢さん」
「なによ?あんたが羽ばたくと集めた葉っぱが飛ぶんだけど?」
「参拝者が来るみたいですよ」
「なんでそれを早く言わないのよ!」
数秒前に放り投げた竹箒を急いで拾うと、霊夢さんはやや奥で落ち葉はきを再開しました。
「成る程、そこは参拝者を賽銭箱に向かわせる道を塞がないどころか寧ろプレッシャーを与えて嫌でもお金を投げてもらうという位置取りなんですね。流石です」
「いいからあんたはどっか行きなさい!邪魔よ!」
「あややや、失礼しました」
羽ばたき一つで高くまで上がって見守るとしますか。
「……おや?」
あれは人間ですか…?
幻想郷にあんな人居ませんよね。
理由はわかりませんが入って来てしまったのでしょう。
「これはいいネタの予感がしますよー」
ペンと手帳、写真機の準備は完璧です、さあ。
落ち葉はきに徹していた霊夢さんも予想外の来訪者に気づいたようで、箒をおいて駆け寄りました。
あの人間…霊夢さんと同じくらいの年齢の男性でしょうか?
幻想郷に居ないタイプの人間です、これは絶対記事にしなくては。
ええと、容姿は良好、身長は霊夢さんくらい、服装は見慣れませんからやはり幻想郷外のものでしょう。
髪は長く黒、と。
よし、取り敢えずこれだけメモしておきますか。
「貴方、人間よね?なんでここにいるのかしら?」
「……あの…み、水を…」
「水?」
「…水を下さい……もう、かれこれ一週間飲んでなくて…」
それだけ言うと人間は倒れこんでしまいました。
「ちょ、ちょっと貴方!?文、水持って来て!」
「わ、私ですか?」
「あなたの方が速いでしょ!急ぎなさい!」
「は、はい!かしこまりましたぁ!」
相変わらず人使いの荒い人だこと…。
しかし、これで次の一面は確定ですね!
****
「…んぐ…んぐ…ふう。生きかえりました。本当にありがとうございます。これはなにか御礼をしなくてはいけませんね」
「勿論御礼は頂戴するわ。けど、その前に幾つか質問させてくれる?」
「…御期待に答えられるかはわかりませんが、どうぞ」
きっと紫あたりが神隠しして来たんだと思うけど一応聞いておくわ。
もし違ったらかなり面倒だけど。
「先ず、貴方の名前を教えてくれる?」
「………」
「どうしたの?まさか自分の名前を知らないって言うんじゃないでしょうね」
それは流石に無いですよー、とちゃっかり後ろに座って手帳を構えている烏天狗は無視するととして、
「……ま、まさか…なの?」
「…知らない、と言うか覚えていない、の方が適切ですね」
「…これが記憶喪失ってやつですか…?」
恐らく、と目の前の彼は答えた。
「じゃ、じゃあここに来るまでの事は覚えてる?」
「はい、長くなりますが。……一番古い記憶は森の中で目を覚ました事です。その時には既に自分が何者か、何故そこにいるか忘れてました。幸い、川があったのでそれに沿って一日歩いていると大きな湖がありました。そしてそこで、青い服を着た妖精と名乗る幼女に出会いました」
「ああ、チルノね」
「遊んで、と言うので三日三晩かくれんぼやらして遊びました」
「……あんたもついてないわね」
「その後ーー」
「あ、ちょっと待って…。何か引っかかるわ」
確かあのバカ妖精は出会った人間誰彼構わず凍らせようとするはず…。
「ねえ、貴方、凍らされなかった?」
「いえ。あ、でも『キンッキンに凍っちゃえ!』と何度か冷たいものをかけられましたよ、ははは」
「………」
「あの、霊夢さん?私の記憶が正しければチルノの冷気は人間程度だったら氷漬けにして殺すことが…」
「わかってるわよ!」
ビクゥッと文が腕を抱きしめるように縮こまるのが感じ取れた。
……烏天狗でも鳥肌ってたつのかしら…?
いや、今はそんなことはどうでもいい。
少し疑問が残るけど、考えるのは話を全部聴き終えてからでも遅くはないはず。
「続けて頂戴」
「はい、そのチルノちゃんと遊んでいると…ええと…確か、ルーミア?という幼女が加わりまして」
ルーミア…また危ないのが。
…いや、確かあの子は積極的に人は襲わなかったはずよね。
「『お腹すいたー。チルノ、それちょっと分けてー』とかなんとか言ってると思ったら鬼ごっこですよ、ははは」
「……あんた、本当に人間?妖怪じゃないわよね?」
「はは、妖怪だなんて。冗談を」
「……」
ぐっ、と後ろで必死に書きつけている烏天狗を掴み、背中に生やす黒翼を見せる。
「はい、文、自己紹介」
「え?あ、私はこの幻想郷でブン屋をやっている、烏天狗の射命丸文と申します。よろしくお願いします」
「妖怪は普通に居るわよ、この幻想郷にはね」
「そうですか。射命丸さん、こちらこそよろしくお願いしますね」
「ちょ、ちょっと!?」
思わず身を乗り出してしまった。
昔の事だから自分がどうだったか忘れちゃったけど、この人、やっぱり少し普通じゃ無い…。
今まで何人か幻想郷に入ってきた人を見たけど、皆違わず妖怪やその他の存在に驚き慄き怯えてきた。
けど…
「こほん…貴方は驚かないの?」
「空を飛ぶ青髪の少女を目の当たりにしてから全てを受け入れると決めましたから。はは、世の中、広いですね」
「………」
思わず絶句してしまった。
ここまで器が大きいというかのんきというか…そんな人間は初めて見た。
…少し、一緒に居たいかも…。
「ーーって私はなに考えてるのよ」
「私からも質問いいですか?」
私の何かを察したのか、文が手を上げた。
もちろん、嫌な顔一つせず、少年はどうぞ、とはにかんだ。
トクン
…な、なに…今の…?
胸の奥が揺れたような…。
「本当に何も覚えていないんですか?」
「ええ…。この…幻想郷…でしたっけ?に入ってからの事しか。あ、でも日本語やその他、自分の情報以外だったら覚えてます」
「ほうほう、例えば」
キラリ、と文の目が光る。
まるで餌を見つけ、狙いすました烏の様に。
「知識や勉強、あと料理なんかも」
「料理!」
「れ、霊夢さん…」
「決めたわ、貴方、記憶が戻るまでここに住みなさい」
「え?いや、しかし…迷惑でしょう?」
少年は笑い、両手を前に突き出し、振る。
なんて遠慮深いのかしら。
トクン
…まただわ。
また、胸の奥が…。
この笑顔を見る度に胸が跳ねる様に高鳴る。
病気かしら…後で永琳の所いかなきゃ。
「貴方が下手にふらついて死ぬ方が迷惑よ」
「…そうですか。なら、そのご好意に甘えるとします。よろしくお願いしますね……ええと…」
「どうしたの?」
「いえ…お名前、まだ聞いてなかったので」
す、と静かに立ち上がる。
…流石に正座じゃあ格好がつかないわよね?
本当は足が痺れて辛かったけど気合で直立する。
「…ぷ」
足が震えているのがわかったのか、後ろで文が押し殺した笑いをした。
…後でその手帳ビリビリに引き裂いてやろうかしら。
まあ、いいわ。
こほん、と咳を一つ。
「私は博麗霊夢」
自分の最高の笑顔で手を差し出す。
その手は優しく少年に取られ、殆ど力を加えられず立ち上がった。
「よろしくお願いします、博麗さん」
…博麗さん、か…。
久しぶりに苗字で呼ばれた気がした。
普段なら『霊夢でいいわよ』と言う所だがーー
「違うわ。霊夢『姉さん』よ」
「ふえ?」
「霊夢…『姉さん』?」
少年もだが文も意味がわからないと言った声を上げた。
何かツッコまなければいけないが、なんと言えば良いのかわからない、そんな感じが文からはひしひしと伝わった。
が、無視する。
「そうよ。流石に他人を住ませると色々面倒事が出てくるの。だから貴方は、いやあんたはこれから私の弟よ幻夢」
「幻夢…それが新しい俺の名前ですか」
幻夢…博麗幻夢、と何度も少年ーー幻夢は自分に刷り込むように唱えた。
「こうしちゃ入れません!直ぐに記事を書かなければ!」
「あ、ちょっと、文!?」
「射命丸さん!?」
ドシュ、と生き物かどうか怪しい音を残して文は空の彼方に消えて行った。
…相変わらず速いわね。
「あ」
「どうかしたのかしら幻夢?」
何かを思い出したように出来たての弟は廊下に出て正面に向かって走りはじめた。
「どうしたのよ一体…」
慌てて追いかける。
幻夢はお賽銭箱の前で立ち止まって居た。
…なにしてるのかしら?
後ろで小首を傾げてると幻夢は懐から財布を取り出しーー
ジャラジャラジャラ
中身をぶちまけるように賽銭箱に全て入れた。
「あんた…」
「お金、無くて困って居たんでしょう?」
「くっ…」
なぜわかった、と叫びたくなった。
が、早速姉の尊厳を失う訳にもいかないからぐっと堪えた。
「姉さん、あんまり食べてないでしょ?肌が荒れてますよ」
「で、直接渡す訳にはいかないから賽銭箱に入れたのね。ありがと」
イヤミだったはずなのに幻夢は「どう致しまして」と笑う。
トクン
…やっぱり…。
幻夢が笑うと胸が苦しくなる。
如何だったでしょうか?
前書きにも書きましたがご意見ご感想ご指摘、どんな物でも常時受け付けております。
では最後に、これからよろしくお願いいたします、と。
ではでは