少し今回は個人的に不出来な書き上がりとなってしまいました。
申し訳ございません。
本当なら最善を尽くして投稿したいところなのですが、少し近状が忙しくて。
来週から定期考査が始まるので次の更新は来々週になってしまうと思います。
すみません。
御感想御批判御指摘はテスト等関係なくいつでも受け付けておりますので気軽にどうぞ。
それでは。
絶体絶命という言葉がピンと来る状況にそう遇する生き物は世の中にどれだけ居るだろうか。
そう思えば例え本当に絶命することになっても貴重な体験をした、そう思えば幸せになれるだろう。
こんなワンフレーズを何かの本で読んだ気がする。
確か、外の、異国の本だったと思う。
魔理沙に盗まれたけど。
現在進行形でその絶体絶命状況な訳だけど、
「ぜんっぜん幸せじゃないわよ…!」
今は幻夢と一緒に居ることが一番幸せなのに…。
幻夢、先立つ不幸を許しなさい。
大丈夫直ぐ地縛して会いに行くから。
『……さん!…姉さん!』
ああ、幻夢の声が聞こえるわ。
神様からの最期の贈り物かしら。
『…夢!おい、霊……』
なんか余計なのも聞こえるわね…!
『なにやってんだぜ!早く逃げるんだぜ!』
「うるさいわね!静かにしなさいよ魔理沙!」
あまりの怒りで目を開けてしまった。
痛い程の光が視界に広がり、思わず手をかざす。
そしてその手の向こうに見えたのは、
「げ、幻夢…!?」
「…ね、姉さん…!は、早く!長くは保ちません!」
両手を前に突き出し、青く光る結界で自分を必死に守っている弟の姿だった。
壁によって止められた光は星型の火花を散らし、尚も喰らおうと絶えない。
「そ、そんな…なんであんたが…」
「流石博麗神社の巫女だぜ!」
違うわ!
そう叫びたくなった。
幻夢は確かに弟だ。
でも、さっき約束をしただけの、赤の他人のはずだ。
でも、幻夢が張っているそれは紛れもなく、自分も使うもの。
スペルカード、警醒陣。
どうして、と聞きたいが今はそんな状況じゃない。
幻夢の腕は抑えるのが精一杯と言わんばかりに痙攣し、歯を食いしばり俯いて居る。
「は、早く…!」
陣にピシ、と亀裂が走ると同時に幻夢が苦しげな声を上げる。
「で、でも…!」
ここで逃げたら代わりに幻夢が死ぬかもしれない。
「霧雨さん!姉さんを頼みます!」
「おう!行くぞ霊夢!」
魔理沙がこちらの胴を後ろから手を回して掴み、連れて行こうとする。
「でも…でもそしたら幻夢が…!」
泣きそうだった。
自分でも声が震えて居るのがわかる程だ。
「ぐ…!」
幻夢が呻く。
それに応じるかの様に陣のヒビがさらに大きくなる。
愛しい弟の苦しげな声に身体が反応したのか、一瞬だけ背筋が凍る様に力が抜け、そして一気に身体が持って行かれた。
「魔理沙!離して!」
「断るぜ…!」
凄まじい速さで光の柱とそれを受け止める小さな影は遠退いていった。
「いやぁ…!幻夢…いやぁあああっ!」
叫んだ。
ただ叫んだ。
今まで発したことのないような大きさで、例え喉が裂けようとも気にせず、嗚咽の方向をした。
魔理沙は大丈夫だ、と繰り返すけど大丈夫な訳がないのだ。
唯の人間が見おう見真似のスペルカードを使った程度では無理なのだ。
ごめんなさい、幻夢…。私が油断しなかったら…私にもっと力があれば…!
溢れ出る涙を拭い、愛おしい弟の姿を見つめる。
「……っ!?」
霊夢が見たのは笑みだった。
震える身体とはうらはらに柔らかく、胸を撃たれるような、あの笑みをこちらに向けている。。
…なんで…?なんで笑っていられるのよ…。
聞こえぬ、内心の声で聴いた。
その時、自分が恐ろしいほど落ち着いて居ることに気付いた。
『言ったはずです。必ず御礼はする、と』
聞こえないはずのない問いに答えが来た。
驚き、箒から思わず落ちそうになる。
耳からではない。
もっと奥、まるで脳に直接語りかけてくるような、そんな不思議な声だった。
そしてそれは紡がれる。
『姉さんを守り、そして悲しまさせません。まずそれを最初の御礼とします』
…あぁ…幻夢、貴方って…もしかして…。
うっとりするように思考する。
が、それは嫌な音に微塵にされ、意識を現実へと引き戻された。
幻夢の張る警醒陣の崩壊の音だ。
ヒビは完全な断裂となり、ガラスに似た破砕音と響かせながら光と同化して消えた。
「は…!」
襲ってくる死の光を身体の捻りも加えて精一杯避ける、が。
…それじゃだめよ幻夢…!
この先どうなるかが予想できてしまった霊夢は叫ぼうとした。
が、もうそれは尽くした。
枯れた声が喉から哀しく漏れるだけだった。
身体を捻るとどうしても一部を軸にして、そして身体の一部が一瞬残るのだ。
「……!」
幻夢の右腕が光に呑まれ、そして吹き飛んだ。
それは直ぐに消し炭になり、幻夢本体はその衝撃に弾かれ急降下する。
「任せろぜ!」
ある程度魔理沙も予想していたのか、幻夢の落下地点に急いで向かう。
「魔理沙急いで!」
「わかってるぜ!」
今幻夢は失神してしまっている。
いくら空が飛べても意識がなければ重力には逆らえない。
「…ったぁ!」
魔理沙が限界まで手を伸ばして幻夢の足を掴む。
ガクン、と箒は揺れ落ちかける。
「ふーう…間一髪だぜ」
「魔理沙!幻夢の…幻夢の右腕が…!」
なくなった腕は治るだろうか。
月の医者に頼めば生えて来るだろうか?
守谷の奇跡巫女を縛って近くに置いておけば再生するだろうか?
竹林の奇跡ウサギの鍋を食べさせたらなんとかなるだろうか?
「右腕?ああ、カス当たりして袖が外れてたけど火傷ひとつないぜ」
「え?」
そんなはずはない。
確か幻夢の右腕は光に食い千切られたはず…。
しかし見るとそこには確かに白く細く繊細で美しい腕が無傷であった。
見前違えたはずが無い、と自分の眼を信じたいところが、
「よかった…」
…いまは見間違いの方がいいわね。
「魔理沙、私は幻夢を神社に寝かせに行くけどあんたはあの超絶破壊光線発射兵器を回収して来なさい」
それだけ言うと愛すべき弟をまるでお姫様を扱うかの様にそっと、抱き、飛んだ。
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幻夢の身体は見た目以上に軽かった。
そのおかげで運ぶのも、布団に寝かせるのも容易だったが、
「……私より軽いってどう言うことよ…」
まあ、そんなこことも愛おしいのだが。
幻夢は今、自分の布団に寝かせてある。
……万年床…じゃなくて、今日はたまたま出しっぱで良かったわ。
あれから幻夢の右腕だけじゃなくてあちこちを見た、が外傷は全くと言っていい程になかった。
「……こんなに可愛い顔してもやっぱり男なのねっ…」
もちろん、あちこちには下半身も含まれているわけで。
現実の奇怪妙妙を知った霊夢は一人で頬を染めていた。
……ごめんなさい幻夢、私、あなたが寝ている間に勝手に見ちゃった…。
今度、私の方を見せてあげるからそれでおあいこに……。
考えれば考える程に頭の中が淫夢色に染まっていく。
はじめは字面だけだったがやがて情景絵面をも思い浮かべる様になって、
「きゅわーっ!」
耐えきれなくなって、両の手のひらで真っ赤に染まった顔を隠してのたうちまわった。
「なに妖獣でも出さない様な声あげて転がってるのよ…」
「ゆ、紫っ!?」
突然天井が切り裂かれ、そのスキマから金髪の女性が苦笑いを見せている。
慌てて体裁を取り繕うと立ち上がる。
「………で、今更何の用?」
「何事もなかったかの様に振舞おうとするのは流石と言えるわね」
…ぐぬぬ。
「用事は貴女の安全の確認よ」
「よく言うわ。私達が死にそうだったのに助けにも来ないで」
思わず毒付いてしまったが気にはしない。
寝ていると言えど幻夢の眼前、下手に格好悪い姿は見せられない。
八雲紫、幻想郷で一二を争う大妖怪、その能力は境界を操る程度の能力。
故にスキマババア。
「あんたの能力だったら私達を救うことくらいわけないでしょ」
「そうね、でも」
続く言葉は直ぐは出なかった。
その代わりに差し出されたものがある。
「…随分と怪我したのね」
包帯が巻かれた右腕がこちらの視界を埋める。
指先から少なくとも見えている腕全てに巻いているものだから強い痛々しさを演出させている。
そしてやっと言葉が繋がれた。
「助けたくても助けられなかったのよ」
「はあ?」
「誰か、いや何かが私の能力に干渉してたのよ。お陰で境界を開こうとした瞬間腕が燃えたわ」
まるでミイラの様な腕がこちらの視界から消えていく。
代わりにその人差し指は幻夢を指し、
「気を付けなさい」
一瞬イマイチ意味がわからなかった。
幻夢を?気を付けろ?それってつまり、
「幻夢を大切にしろってこと?」
「違うわ」
…ぐぬぬ。
「十中八九、私に干渉して来たのは【それ】よ。だからーー」
「【それ】じゃないわ!私の弟、博麗幻夢よ!」
目の前が真っ赤に染まった。
魔理沙が幻夢を粉砕しかけたよりも強く。
頭の芯まで熱くなって、握った拳は掌に爪の跡を残している。
…いくら紫、いや大妖怪でも今の発言は許せない…!
例え身元出所不明でも今となっては私の大切な家族、それを【それ】呼ばわりなんて…!
「………はぁ…。私の言い方が悪かったわ、謝る。だからそのみっともない涙を拭いなさいな」
「……っ!?」
言われて初めて気がついた事だ。
いつの間にか熱い滴が頬を伝っている。
…今日は良く泣く日ね。
袖で涙を拭き取って目の前の隙間妖怪と正対する。
「その子、幻夢だっけ?随分と安直な名付けね」
「うっさいわね」
「その幻夢が私の腕を燃やしたのは確かよ。だからもう一度言うけど気を付けなさい。その子、何を秘めているかわからないから」
それだけ、とスキマの冬眠ババアは此方に反論を許さない様に言い切ると天井の境を閉じて消えていった。
「……そんなことわかってるわよ」
…全くの人間が直ぐに空を飛んだり、ありもしない霊力を使って結界を張るなんて普通じゃない。
でも、
「そんな不思議なところも素敵よ、幻夢」
寝ている頬を撫でると、愛弟はまるで赤ん坊の様にその手に自分の手を重ねた。
「ねえ…さん」
呟く様に漏れた寝言は陽の傾き始めた空に消えていった。
感想御指摘お待ちしております。