博麗覡のバイト茶飯   作:八月一日

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遅くなって申し訳ありません。
最近、眠りに着く時間が異様に早くなって全く書けていませんでした…本当にすみません。

今回はこの【バイト茶飯】のサイドストーリー的なものの冒頭となります。
イメージ的には紫side、と言いましょうか。
幻夢君のお話はもう少しだけお待ちください。

それでは、とうぞ。


第一炎

陽が傾き始め、一日が後半に入った頃、一人の少女が屋敷の縁側に座り、自身の腕を見つめていた。

巻かれた包帯の下には焼け爛れた皮膚がある。

何かがずれている。

彼女はそう思った。

自分でも修正できない境界のズレ。

近々、何かが起こる。

そう少女ーー八雲紫は不思議な確信を得ていた。

『紫様ー!大変です、紫様ー!』

急ぐ足音と共に式神 藍の声が聞こえた。

足音は次第に大きくなり、背後でブレーキ音と共に消えた。

「そんなに慌ててどうしたのよ?」

「ハァ…ハァ…や、屋敷の…玄関に、紫様の友人を名乗る者が…」

息を切らしながら藍は言った。

……ここを知っているとしたら…。

紫の屋敷は幻想郷の外れに建っている。

しかしその場所は霊夢ですら教えていない。

ーーただ一人を除いて。

「どうします、紫様?曲者でしたら私が追い払いましょうか?」

「いや、その人は多分本当に私の友人よ。それにーー」

「それに?」

「貴女じゃあ、敵わないと思うわよ、藍」

え?と、言葉が後ろから漏れたのがわかる。

藍とて決して弱くはない。

下手な妖怪や妖精程度だった手も触れず倒すだろう。

それ程の妖狐だ。

しかし、

『よう、紫!元気だったか?』

この女には勝てまいて。

目の前に現れた青の火の玉は直ぐに巨大化し、その中から一人の少女が姿を表した。

大きな傘を被り、そこから垂らした布で顔の右側を隠しているがそれでも表情は読み取れる。

傘には色とりどりの珠が幾つか弦下げられている。

見た目だけで言えば自分よりも幼く見えるだろう。

胸も相応だ。

「なかなか待たせるもんだから来ちまったよ」

「紫様…一体この方は…?」

「私の友人で半妖半霊よ。名前は納ーー」

「今は忌道院(きどういん) 怨櫃(おんき)と言う名だぜ」

危うく旧名を言いそうになったのをこちらの紹介を遮って旧友は名乗った。

「なあ、おい紫の式よ」

「な、なんですか…?」

す、と自分が出てきた蒼炎に手を入れ藍に視線を向ける。

引き出した手にはどうやってしまっておいたのか、油揚げがつままれていた。

「ゆ、ゆ、紫様…!」

節操もない顔で藍がこちらを見てくる。

今にも飛びかかりたいが理性が辛うじて抑えている、と言ったところだろうか。

流石にこの状態にはさせておけないので目だけで頷いて見せた。

「では頂きます。……はむ…はむ…くーぅん…」

目を輝かせて藍は怨櫃の持つ油揚げに飛びかかった。

咥えた瞬間、その目はマタタビを得た猫のようにほころび、とろけるように伏した。

その頭を撫でながら怨櫃は、

「ははっお前の式神は可愛げがあっていいな」

「貴女が教えてくれた術のおかげよ」

ほうか、と半分布で隠した顔ではにかまれる。

…全く、半分と言えど幽霊ってずるいわね。

以前会ったのは何百年前かしら…その時と全く変わってないじゃない…!

もう見た目は私の方が年上…。

「ん?どうした紫。怖い顔して、悩み事か?」

「貴女のーー…」

若さに嫉妬している、と言おうとしたがやめた。

自分に合わないし、なにより口に出すとより敗北感が増すからだ。

………いや、考えてみれば一つ面倒ごとがあるじゃない。

「ええ、ちょっとね。丁度貴女の能力が必要だったのよ」

「おうおう、なんでも言ってくれや。お前の為だったわたしゃ出来る限りを尽くすぞ。」

「頼もしい限りね」

無い胸を張った旧友の顔は絶対的な自信と信頼で染まっている。

…年は伊達に食ってないないということかしら?

「で?この火種妖怪に何を燃やして欲しいんだ?」

「はむ…はむ…火種妖怪?初めて…はむ…聞きました……ごくん」

獣フォルムだった藍が顔を上げた。

見てみれば油揚げは食べ尽くされている。

服に着いた服を払いながら彼女は小首を傾げて見せる。

「怨櫃は『火種と炎を操る程度の能力』の持ち主よ」

「おうよ、この世どころか黄泉地獄天界、ありとあらゆる火種と炎はわたしのもんさ」

どーだ、と、言わんばかりに更に平たい胸を貼る怨櫃。

その被る傘の頂点には気分が高揚した印だろうか、普段は消している白い炎、『不知火』が点火した。

…年寄りは自慢が好きってことかしらね…。

口には出さない。

「貴女には一室、とある烏天狗の部屋を焼いて欲しいのよ」

「なんだ、そんなか。だったらこれで十分だな」

そういうと怨櫃は表にした手のひらの上に傘から垂れている珠のひとつを乗せる。

「『狐火』」

橙の火は点火と共に膨れ上がりすぐに手のひらから零れんばかりの大きさとなった。

「その烏天狗は射命丸文という名よ。くれぐれも焼かない様にね」

「焼き鳥は好きだが烏は食わんさ」

そんな軽口を叩きながら火種妖怪は火球に口を近づける。

まるで盃に汲んだ酒を飲む様に艶のある動きで ふ、と息を吹いた。

すると炎は空間に吸い込まれる様に萎み、消えていった。

「これでよし、と。明日にゃ炭の骨組みだけが残って居るだろうよ」

「やっぱり貴女は頼りになるわね」

懐友は素直に言葉を受け取り、頷く。

「あ、あの…」

「ん?どうしたんだ?紫の九尾」

「藍よ、怨櫃。彼女は八雲藍」

「おお、そうか。悪かったな、藍。それで何用だ?」

えと、その…と藍は口籠もらせながら何かを伝えようとする。

しかし頬は紅染し、とても何かを恥じらっていた。

空を見た怨櫃は、

「安心しろ」

優しく微笑った。

先程までの見た目相応の子供の笑顔ではなく、大妖怪としての気品や伊達ではない歳と共に築かれた大人の笑いだった。

しかし胸はない。

視線と表情はそのままで怨櫃はこちらに向かって、

「紫、わたしゃしばらく幽々子んとこに居候してっから。暇があったら遊びに来いや」

「え、ええ、わかったわ…」

一瞬、話が飛躍したように感じたがそれはなんとか一瞬で補完できた。

…つまり、自分は暫く幻想郷(ここ)にいるから油揚げはまた食べられる、と言うことね…。

「さて、じゃあわたしはもう行くとするよ」

「あらそう?もう少しゆっくりしていかない?」

「いやさ、ちょっとここ百数年で変わったとこでも探しに行こうかな、と」

じゃあな、と言う声と青い鬼火を残し彼女は午後の光に炎となり消えた。

「……あら?」

見てみればいつの間にか自分の横に小瓶と手紙が置いてあった。

包帯が巻かれやや細かな動きが制限されている手で手紙を開いて見る。

そこにはだった1行だけ走り書きされていた。

 

その薬だった3日もすりゃどんなに酷い火傷でも治るぞ

 

「……全く…相変わらず格好つけたがりなんだから」

「あの…紫様、御一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

タイミングを見計らっていたのか、藍は少しこちらを伺いながら声をかけてきた。

「なにかしら?」

「怨櫃様って今お年はおいくつなんですか?」

思わずくすり、と笑ってしまった。

確かに怨櫃は見た目は実年齢よりも若く見える。

正確な数はわからないが、昔彼女から聞いた時の言が本当だとしたらーー、

「彼女は人類が生まれた時にはもう居たそうよ」

「……え?」

 




怨櫃のラフ画は一応ありますが需要はありますかね…。

今回は冒頭、そして急いだと言うこともあってとても短くなってしまいました…すみません。

感想ご指摘、お待ちしております。

ーーでは
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