「熱々のジャガ丸くんを届けに来たよ!」
「ああ、ありがとうヘスティア」
俺が神ヘスティアを呼び捨てにする様になったのも数日前の事だったのだが『ルーメン君には敬称を付けて欲しく無い』『敬語も不要だ』『君がアテナの子で無ければ僕は心底惚れてたよ』などと言う言葉からこうなったのだ。
「さあ上がって欲しい、今日はヘスティアに良い話しがある」
「へ?何だい、良い話しってのは」
「奥で話すよ。それと、アイズにも小倉クリーム味を届けてくれたのか?」
「ああ!バッチリさ」
「いつもありがとう」
「それは僕の言葉さ、君のお陰でホームは快適なんだからさ」
「そうか。さあ、ベル…彼女が女神ヘスティアだ」
そこからは、ガチガチに緊張したベルの自己紹介から始まり、ヘスティアの感謝のハグをアテナの脳天チョップで終わるまでかなりバタバタしてしまった。
「ヘスティア…ルーメンは私の
「あはは…えっとルーメンさん、アテナ様って怒ると怖いんですね」
「そう言う事は言わない方が良いぞ」
「ベル!?」
「はっはい!何でしょうかアテナ様」
「……」
「えっとさ、アテナ。一先ず落ち着いてくれないかい?ベル君も困ってるみたいだし、るっルーメン君からも何か言っておくれ」
「アテナ?ベルには悪気が無いんだ、まだまだ純真なんだから女神として甲斐性を見せるべきだ」
「オホンッ!それもそうね。ごめんなさいベル、それと話しを進めるわね」
漸くベルをヘスティアの眷属にどうかと言う話が進み、そこでとある事実が露呈したのだった。ロキファミリアでも門前払いを受けた、その事実を聞きヘスティアは激おこプンプン丸になってしまった。
「何だいそれは!ロキの所では人を見た目で判断する様な教育が成されてる何て、信じられないよ僕は」
「おかしいな…ロキファミリアでは種族に性別、体格や容姿関係なく入団試験を受けられる方針だと聞いてる」
「そうね。私もそう聞いてるわ」
「どちらにしたって、ベル君は門前払いを受けたのは事実だ!」
「俺から苦情を言っておくから、ヘスティアも落ち着いてくれ」
ベルが、ヘスティアと俺達の遣り取りを見てアタフタしてしまっていたがどうにか落ち着いた事に溜息を漏らしていた。ヘスティアとベルは性格的にも相性が良い様で、帰る頃には打ち解け仲良くヘスティアファミリアへと帰って行った。
俺は今、ロキファミリアの遠征組と深層に来ていた…。
理由なんて直ぐ分かる様な理由で、俺のオラリオ外での豊富な経験だったり同盟派閥として参加する事になっていた。遠征参加基準のレベル3以上と言う水準も超えており、総アビリティ値で言えばレベル6相当なのだから俺は優良株だろう。
現在はロキファミリアが受けている『カドモスの泉水採取』を先に終わらせる為にと、少数精鋭で51階層の『カドモスの泉』へと向かうメンバーを選び中だ。
A:フィン・ガレス・ベート・ラウル
B:アイズ・ティオネ・ティオナ・レフィーヤ・俺
このメンバー…大丈夫だろうかと思って居ると、フィンが俺を名指しでティオネに言い含めていた。『君達のメンバーは無鉄砲な部分があるから、ルーメンがいざと言う時は指揮してもらう。ティオネは通常時の指揮を頼んだよ?』正にフィン至上主義のティオネには神の神託の様な言葉だったと言える。
フィン達と別れて20分程行った先、カドモスの泉が見えて来たが、ここまでの道のりは違和感がかなり有った。辿り着き周囲を見渡してもそこには灰の山しかなく、
「これは…カドモスの皮膜、魔石が無いのにドロップアイテムだけが残されているのは不自然だな。ティオネ!早々に泉水を確保次第フィン達の元へ向かうべきだ」
「ええ、そうね…団長の言いつけ通りルーメンの指示に従うわ」
「アイズは周囲に警戒しつつ先頭を進んでくれ、ティオナはレフィーヤを援護してくれ…ティオネはイレギュラーが起こってもパーティーの存続を優先してカバーを徹底してくれ。レフィーヤに関してはここぞと言う時の切り札だ、決して魔力を無駄に消費するなよ?」
「分かった(わ)(はいは〜い)(りました)」
「泉水の確保が終わりました」
「アイズ…間違っても突っ込んで行くなよ?」
「うん」
「良し、直ぐに「ぎゃあああああああ」急いで合流する!」
「今のはラウルの声だったわ!」
「レフィーヤ、泉水は俺が担ぐからひたすら走れ」
俺達は底知れない気持ちの浮遊感を拭えないまま、合流ポイントに疾走し続けた。そろそろと言うポイントに着くと、フィン達が芋虫の様なモンスターに追われているのが見えた。
「こっの!糞虫がー私の団長になにしくさってやがるー!?」
「「待て!ティオネ!」」
「アイズ!ティオネを止めるからフィンに合流しろ」
俺は光速移動でティオネの暴走する背中を追いかけ、背後から羽交い締めにして何とか止められた。直ぐさまフィンのいる場所までティオネを無理矢理連れ戻すと、言い様の無い不安感が的中したと言わんばかりに、ラウルの左肩から先の重度の火傷の様な怪我が目に入った。
「すまないねルーメン。ラウルの怪我を見て分かるようにあのモンスターは腐食液を吐き出したり、死亡直前に自爆する事で腐食液を撒き散らすようなんだ」
「ティオネ。先程言っただろパーティーの存続優先だと」
「団長の手を煩わす糞虫が悪いのよ」
「あはは…ラウルの事もあるから早急に野営地へと帰還する。悪いが僕達は武器を腐食液で失っている、アイズとルーメン…芋虫型モンスターの足止めを頼めるかい?レフィーヤは詠唱を始めてくれ」
俺達は素早く行動に入り、フィン達の撤退を支援しながら芋虫型の殲滅をして行く。アイズは風と
《誇り高き戦士よ 森の射手隊よ 押し寄せる略奪者を前に弓を取れ 同法の声に応えよ 矢を番えよ 帯びよ炎 森の灯火撃ち放て 妖精の火矢 雨の如く降りそそぎ蛮族どもを焼き払え》
膨大な魔力を練り上げるレフィーヤに、目の前の俺達を無視して反応する芋虫モンスター、即座に殲滅して行く中でレフィーヤが「放ちます」そう叫ぶと俺とアイズはレフィーヤの元へ向かう。
『ヒュゼレイド・ファラーリカ』
無数の光矢が芋虫モンスターへと降り注ぐ、レフィーヤと言う膨大な魔力の持ち主が故の荒技とも言える。世界最高峰の魔道士と言われるリヴェリアの弟子に相応しい威力だった。
急ぎ野営地へと向かう我々を嘲笑うかの様に響き渡る戦闘音、ロキファミリアの野営地付近ではリヴェリアの指揮による防衛陣地が敷かれていた。
「皆の者、もう直ぐだ!フィン達が辿り着くまで何としても家族を守り抜け」
「「「『うぉぉぉぉ!』」」」
俺はフィンに「先に行く」そう言って光速移動で激戦地へと飛び出した。そこに広がるのは盾を構えて皮膚がただれながら耐える団員と、負傷者を後方へと運び出す負傷者とひたすら武器を戦線へと補給するサポーター達の姿。
最早戦線維持は困難な上に、深層へのトライが絶望的な損害状況が見て取れる、俺が最初に行ったのは全員の光速移動と死守していた地点の崖を破壊する事だった。
崖を登る芋虫モンスター達は崖崩れに巻き込まれて3割を殲滅、それでも数が圧倒的に多い芋虫モンスターは屍を超えてこちらに向かって次々と新手がやって来る。
「すまないリヴェリア遅くなってしまって」
「フィン!」
「これより速やかに撤退を開始する!食料に予備武器、回復薬優先で速やかに行動しろ!リヴェリアは詠唱を、ガレスはリヴェリアを守ってくれないか」
「「ああ(分かっとる)」」
「アイズとルーメンは悪いが殿をお願いするよ」
「「うん(ああ)」」
その時だった…
51階層との境付近から巨大な女体型芋虫モンスターが出現した。はっきり言ってあんな大きさの芋虫が爆発などしたら、遠征どころか帰還すら危ういそんがいが発生する、
フィンが苦虫を噛み潰す様な顔をして、予備武器の放棄と最低限度の食料と回復薬以外、即座に持てる物のみとして残りを放置と言う号令を皮切りに全員が49階層へと走り出した。
49階層入り口へと辿り着くと、ベート・ローガやティオナが大型女体芋虫を放置するのかと噛み付いた。フィン自身そんなつもりは無いと、即座に俺とアイズに女体型芋虫だけは殲滅して戻る様に命令する中で、ベート・ティオナ・ティオネ・レフィーヤ…多くの団員が反対意見を述べる。
「これは仲間を見捨てる行為では無い!彼等は確実に達成出来るからこそ命じている。他のメンバーは直ちに腐食液の飛散エリアから撤退しろ」
後ろ髪を引かれる様にこちらに目を向けるメンバー達、ベート・ローガはすれ違いざまに「テメェも死ぬんじゃねえぞ」そう言って先を急いで撤退を開始した。
思わずアイズと目を見合わせてしまったが、アイズは風を纏い俺は光へと自身を変化させる。
「行くぞアイズ…トドメは君に任せるからな」
「うん…必ずしとめる」
俺達は巨大女体型芋虫に向かって飛び出した…