竜が辿り着いた幻想郷・後日談   作:ベヘモス

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前回の結婚式から五年くらい時間が跳んでます。
言いたい事は色々と出てくると思いますが、多少の事は大目に見てください。


後日談その二

霊夢と結婚して五年くらいが経っただろうか。俺達もそろそろ子供が欲しいと思っているんだが、未だに妊娠の兆候が無い。

俺と霊夢は元々違う種族なんだから懐妊率は高くないだろうと思っていたが、五年経っても妊娠の兆候がないと言うのは流石に不安になってくる。

霊夢の奴は「その内、授かる」と言って楽観視しているし、俺もそれほど焦っているわけじゃないけど、周りの連中が子供はまだかと急かしてくるのが非常に鬱陶しい。特に先代と八雲の奴が煩くて……。

まぁあの二人は早く子供の顔が見たいというよりも、跡継ぎを早く生んで欲しいというのが本音だろう。

幻想郷を維持するためにも博霊の巫女は大事だってのは分かるんだが、この手のお家問題はぶっちゃけ面倒くさい。

第一、急かされても簡単に出来るもんじゃないんだから、もう少し気長に待てと言いたいところだが、流石にこのまま何もせずにいる訳にもいかないし、永琳の奴に相談してみるか。

 

「―――と言う訳でやって来たわけだ」

「……事情は大体分かったけど、異種族の間に子供なんてそう簡単に出来るものでも無いわよ」

「そんなの分かってるわよ。でもいい加減、お母さんと紫の奴が鬱陶しくて堪らないのよ」

「それは大変ね。……まぁ、相談された以上は検査してみるけど、その前に一つ聞いておくわ」

「あ、なんだよ?」

「リュウ、貴方まさか不能じゃないでしょうね」

 

永琳の予想外の質問に流石の俺と霊夢も絶句する。診察なんだから込み入った事まで聞かれるとは思ってたが、まさかいきなり不能か如何かなんて聞かれるとは思わなかったな。

 

「……聞く必要あるのかそれ」

「あるから聞いてるのよ。……それで如何なの霊夢」

「いや~……アレで不能とか流石にないわ。コイツの体力、精力ともに底なしだし」

「なるほど。そうなると二人の身体の方に異常があるのかしら」

「私達の身体に?」

「えぇ。様々な原因から不妊症になっている可能性も有るのよ。これは女性だけではなく男性の方が原因の場合も有るから、リュウも色々と採取させてもらうわよ」

「色々って何だよ。……いや、なんとなく予想は付いてるけど」

「それは勿論、血液と精液に決まってるでしょ。あ、霊夢は女性生殖器の診断もあるから覚悟してちょうだい」

 

そう来るだろうとはなんとなく予想が付いていたが、実際に言われると嫌なもんだな。

 

「……アンタ、それ本気で言ってるの?」

「当たり前でしょ。大体不妊の診断なんだからその辺りを調べないで如何するの」

「それは……確かにそうかもしれないけど」

「分かったのなら文句を言わない。先に霊夢の方を調べるからリュウは一度退室しなさい。終わったらウドンゲに呼びに行かせるから」

「わーったよ。……霊夢、その、大変だと思うが頑張れよ」

「嬉しくない励ましをありがとう」

 

嫌味がたっぷり込められた〝ありがとう〟に苦笑いを浮かべながら、俺は一先ず先に診察室を後にする。

診察にどのくらい時間が掛かるのか分からないが、色々と採取すると言っていたからそう簡単に終わりはしないだろう。

思わぬところで暇になってしまったが、このまま待合室で待っていても暇だし、暇潰しがてら輝夜にでも顔を出すとしよう。

そう考えた俺は待合室を出て、輝夜を探しに永遠亭の奥へと足を踏み入れる。

屋敷の中は綺麗に掃除されていて、塵一つ落ちてはいないが相変わらずウサギ達が走り回っている。

ここまで多いと病院なのかウサギ小屋なのか分からなくなってくるが、もっと分からないのはコイツ等が何処からやって来ているのかだ。

なんか前に来た時よりも数が増えている様な気がするんだが、多分気のせいだろう。アイツ等の正確な数なんて一々把握してられないし、俺が気にする様な事じゃない。

 

数多く居るウサギ達を出来るだけ見ないようにしながら廊下を歩いていると、中庭の方からなにやら乾いた音が聞こえてくる。

その音が何となく気になり、音のするほうへと向かってみると中庭の縁側で輝夜と月夜見が将棋を指していた。

二人とも集中しているのか俺が近付いても気付かず、盤の上に並べられた駒を凝視している。

いや、凝視しているのは輝夜だけで、月夜見は輝夜がどんな手を打ってくるのか注視している感じか。

盤の状況から見て月夜見の方が押しているらしく、輝夜はかなり押し込まれている。

下手な手を打てば押し切られ、そのまま負けてしまうのは本人も分かっているだろうが、手の内ようがなく挽回できずにいるようだ。

 

「……これで如何かしら」

 

輝夜本人も自身がないのか、訝しみながら駒を動かすが……その一手は間違いなく悪手だ。

 

「ふむ。では私はこうしましょう」

「ま、待ったッ!」

「待ったなしです。というか、もう五度目ですよそれ」

 

玉の周りの駒を動かすことが出来ず、仕方がなく歩を動かしたようだがその隙間は角にとって絶好に道だ。

その隙間を通って銀の斜め後ろにつければ取られる心配もないし、馬になってしまえば機動力は更に増す。

直ぐに角を取れる駒は無いし、後二、三手もすれば詰みだな。

 

「五回も六回も大して変わらないじゃない! だから待って!」

「駄目です。大人しく負けを認めなさい」

「ま、まだ詰んでないから負けた訳じゃないわ!」

「今はそうかもしれないが、あと二、三手もすれば詰むぞこれ」

「うっさいわね。外野が横から口出ししないで……って、あらリュウ。来てたの」

「まぁな。……しかし酷いやられ様だな」

 

対局が終わって改めて盤上を見てみると輝夜がいかに追い詰められていたのかが分かる。

輝夜の持ち駒は少なく、月夜見に大部分を取られてしまっている。

飛車と角は盤上に一枚ずつしか存在していないが、月夜見の手元にはその二枚の駒がない。

恐らく最初から月夜見が飛車と角を抜いた状態で始めたんだろうが、この負け方は酷いな。

 

「うるさいわね。お父様が強すぎるのが悪いのよ」

「輝夜が弱すぎるだけだろ」

「なんですって?!」

「これこれ、落ち着きなさい輝夜。……ところでリュウ、今日は何用で来られたのですか?」

「遊びに来た……と言いたいところだが、今日は永琳の診察を受けにきた。霊夢が中々懐妊しないからその相談にな」

「あ~そういえば、貴方達の間に子供が出来たなんて話全然聞いてないわね。やっぱりまだだったの」

「残念ながらまだなんだよ」

 

おどけた風に言いながら俺はその場に腰を下ろし、輝夜が用意したと思われる茶菓子に手を伸ばす。

 

「って、こら。勝手にわたしのお菓子を食べないでよ」

「また買えばいいだろ。ケチケチするな」

「簡単に買えないから言ってるのよ。……今月のお小遣い結構やばくて、お菓子を買う余裕すらない」

「どんだけ切羽詰ってるんだよ、お前」

「わたしは悪くないわよ。全てはあの竹林ホームレスがわたしの盆栽たちを壊したのが悪い」

「……お前ら相変わらずだな」

 

じゃれ付いてるのか、殺し合ってるのか分からない戦いを何百年も続けているコイツ等に妙な感心をしてしまう。

そんだけ長い間いがみ合っていれば熱も冷めてくると思うんだが、蓬莱人になって時間の感覚も変わっちまったから、簡単に熱が冷めなくなっているのかねぇ。

 

「……ふむ、確かに盆栽を壊したのは彼女ですが、その原因を作ったのは輝夜でしょう。彼女一人を悪者したてるのはやめなさい。コレも一つの自業自得ですよ」

「うっ……」

「なんだ、結局はお前が悪いんじゃねぇか」

「彼女に突っ掛からなくてもよき友人になれると思うのですが、どちらも素直では無いのが玉に瑕ですね」

「いや……コイツ等はそう言う関係じゃないと思うぞ」

「おや、違うのですか? 私はてっきり喧嘩友達なのだとばかり」

「顔を合わせれば殺し合う友なんて嫌だなぁ~……」

 

月夜見の感性は若干ずれている様な気もするが、深くは突っ込まないでおこう。

 

「なによ、二人して。そんなに私が悪いって言いたいの!?」

「誰もそんな事いってねぇだろうが」

「そうですよ。貴女達が仲良くしてくれれば屋敷の修繕費などが掛からなくて済むのにと思っているだけです」

「なんだ? そんなに修繕費が家計を圧迫しているのか?」

「いえ、そう言うわけではないのですが、掛からなくてもいい出費なら削減したと思いません?」

「……すまん、その感覚は分からねぇわ」

「おやそうですか。……無駄遣いも度を過ぎればただの浪費ですよ」

「その二つは同じ物だと思うがな」

「ふん! 無駄な出費ばかり出してすみませんね!」

「分かっているのなら減らしてもらいたいですが、これは今の輝夜なのでしょう。ならばそれはそれで良しとしましょう」

「……いや、意味が分からないんだが」

 

月夜見の良く分からない感性に若干呆れながら、輝夜の茶菓子に手を伸ばして口の中に放り込む。

俺達に好き放題言われて輝夜はすっかり不貞腐れてしまうが、月夜見は穏やかな笑顔を浮かべたまま輝夜を慰めようとする。

そう簡単に輝夜の機嫌が直るとは思えないし、放っておけばその内勝手に直っているだろうから気にしない。

月夜見も放っておけば良いものを、下手に慰めようとするから返って駄目になるんだが……分かっててやってるのかコイツ?

イマイチ掴みどころの無い月夜見に頭を悩ませていると、コッチへと近づいてくる誰かの足音が聞こえてきた。

振り返って廊下の方を振り返ると、辺りをキョロキョロを見渡しながらうどんの奴がやって来るのが見えた。

 

「あ、こんな所に居た。師匠が呼んでましたよ、リュウさん」

「そうなのか。ってことは、霊夢の診断が終わったのか。……行きたくねぇ」

「リュウが診断如きに臆するなんて珍しいわね。一体何があるのかしら」

「……不妊症の診断らしいんだが、なんか血液とか精液を採取するんだってよ」

「あ~……それは、その……頑張ってとしか」

「受けたかねぇけどしゃーねぇか」

 

俺は深い溜息を吐きながら席を立ち上がり、二人に別れを告げて診察室へと向かって歩き始める。

健康診断を受けたり、血を採取されるだけならまだいいが、精液まで採取されるのは流石に気が重い。

正直な話かなり気が進まないが、コレも仕方のない事だと割り切るしかないか。

 

「……でもやっぱり気が進まないな」

 

愚痴ばかり出てきてしまうが、なんとか頑張って乗り切ろう。

もう一度深い溜息を吐きながら俺は重い足取りのまま診察室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

……

 

診査を受けて約一ヵ月後。うどんの奴から不妊症の診断結果が出たと報告を受け、永遠亭へとやって来た。

あの検査を受けてからだいぶ時間が掛かったが、調べるのに時間が掛かるといわれていたし、永琳の奴をとやかく言うつもりはない。

これで不妊の原因が分かれば良いと二人で話しながら診察室に入るが、永琳の表情は浮かない物だった。

 

「来たわね、二人共。流石に早かったわね」

「そりゃ診査結果を待っていたんだから直ぐに来るわよ。……それで結果は如何だったの?」

「……結果だけを言えば二人とも何の異常も無いわ。健康そのものよ」

「それは嬉しい事だが、ならなんで俺達に子供が出来ないんだ?」

「その事を説明する前に一つ聞かせて。……リュウ、貴方は確か以前の肉体から抜け出た力で今の肉体を再構成したのよね」

「あ、あぁ。俺の根源であるアンフィニには再生能力があるから、それで今の肉体を作ったんだと思う。肉体としては蓬莱人のそれに近いんじゃないか? 力を核に肉体(うつわ)を作ってるんだろ」

「そう。……それじゃやっぱりこの原因はリュウにある訳か。全くどうなってるのかしらね、貴方達の体は」

「貴方達って一体如何言う事よ。濁してないでさっさと言いなさい」

 

急かす霊夢に永琳は視線を逸らし、よほど言い辛い事もであるのか口を閉ざしてしまう。

俺は急かす霊夢を宥めつつ、永琳が口を開いてくれるのを辛抱強くまつ。

永琳の沈黙は少しの間だけ続いたが漸く話す気になってくれたのか、永琳は真っ直ぐ俺達の方を向き口を開く。

 

「検査結果から言えば貴方達の身体に異常はなかった。でも、リュウに問題があったのよ」

「異常が無いのに問題が有るって矛盾してるわよ、それ」

「医学的に見れば異常は無いのよ。ただ、リュウから採取した体液から膨大なエネルギーが検知されたわ」

「膨大なエネルギー?」

「竜神の力の欠片とも言うべきかしら。普通だったら体液には存在しえないその欠片は当然精子にも含まれていて、その欠片の所為で卵子が受精する前に死んでしまっているのよ。つまり貴方達の不妊はその力の欠片が原因でしょう」

「………………」

 

永琳の信じがたい話に流石の俺も言葉を失ってしまう。

俺達のどちらかが病気ならまだ救いはあった。俺が不能だっていうならまだ許せた……でも、これはそう言う事じゃない。俺の力が強大すぎる所為で受精できていないんだ。

理解しがたい理由だが、まさか不妊の原因が自分の力の所為だなんて夢にも思わなかった。

 

「驚いているようだけどまだ話は終わっていないわ」

「……まだ有るのかよ」

「えぇ。こっちは霊夢の身体の方ね。今回の検査で分かった事だけど、霊夢の身体は少しずつ人の物ではなくなってきているわ。恐らく竜の力が体外に排出されずに取り込んでしまった結果ね。あれ程のエネルギーを取り込めるだなんて流石に信じがたいけど」

「ちょっと待ってくれ。それは……つまりアレか、霊夢が徐々に竜族になって来ているって事か?」

「竜族というよりも魔法使いの肉体と同じ様になっていると言った方が正しいわね。アレは肉体の原動力が魔力となっているけど、それと同じで霊夢もいずれは自身の力だけで永く生きられるようになる。……でもそれはもう人間のあり方ではないわ」

 

永琳から告げられたもう一つの事は先ほどの物よりも俺に衝撃を与えた。

霊夢が人間の理から外れ、妖怪の様に長寿となる。彼女とはずっと一緒に居ると約束しているし、本当にそうなれば良いと思った事がない訳じゃない。……でも、実際にそうなってしまうと喜びよりもショックの方が大きかった。

意図的にした訳じゃないとは言え、俺はこうなって欲しくて霊夢と一緒になった訳じゃない。

予想だにしていない事態に霊夢も言葉を失ってしまっている。今の彼女になんて声を掛けてやればいいんだ……。

 

「……大体の事は理解したわ。で、一つ聞きたいんだけどいいかしら」

「えぇ、私で答えられる範囲なら」

「肉体が人外になっているは分かったけど、私ってちゃんと妊娠できるの?」

「「……………はい?」」

 

霊夢の突拍子もない質問に永琳だけでなく俺も変な声を出してしまった。

人間じゃなくなるって言われて意気消沈してるかと思えば、いきなり何聞いてるんだコイツ。

 

「……ごめんなさい、霊夢。もう一度質問して」

「だから、人外になっても妊娠できるのかって聞いてるのよ。神社の跡取りが出来ないと母さん達が煩いし」

「あ、貴女、自分が人ではなくなって来ていると言うのに他に心配することは無いの?」

「別に無いわよ。私とリュウが結婚した時点で次代の巫女が普通の人間ではない事が決まっているもの。なら、私が人間をやめた所で何の問題も無いわ。それでちゃんと懐妊できるの?」

「……現状で言えば無理ね。さっきも言った通り今の貴女の卵子ではリュウの力を宿せないわ。だけど、貴女の身体がリュウの力に完全に馴染んでしまえば問題なく受精できる筈よ。最初に言ったけど貴女達の身体は健康だもの」

「そっか。出来るだけ早いほうが嬉しかったんだけど、こればっかりは仕方が無いか。ま、妊娠できると分かっただけ良しとしますか。……ところで話はもう終わりかしら?」

「えぇ。……というか、呆れてしまってもう何もいえないわよ」

「あっそう。なら、私達はもう帰らせてもらうわ」

 

平然としている霊夢に呆れる中、俺は霊夢に腕を引っ張られ、そのまま診察室を後にする。

そして霊夢に連れられるがままに永遠亭を後にするが、やっぱり霊夢のあの態度が信じられなかった。

自分が人間ではなくなってしまうと言うのに、それを気にしている様な素振りをまったく見せない。

現に今だって鼻歌交じりで歩いていて、無理して明るく振舞っているようには見えなかった。

問題なく妊娠できると知って嬉しいんだろうが、自分が人間でなくなる事が怖くないのだろうか?

如何してもその事が気になってしまい、俺はつい足を止めてしまう。

 

「ん? 如何したのよ、リュウ」

「いや……霊夢は自分が人間じゃなくなるのが怖くないのかなって思って」

「あぁ、さっきの話の事? それだったら別に怖くない訳じゃないわよ」

「そ、そうなのか? その割には鼻歌交じりで喜んでいるように見えたんだが……」

「だって喜んでる物。そう見えるのは当然じゃない」

「……流石に訳が分からなくなって来たぞ。怖くない訳じゃないが喜んでるのか?」

「そういう言い方されると私としても反応に困るんだけど……」

「だってそう言う事じゃないのか? 人外になるのが怖いのに喜ぶって」

 

俺が疑問をぶつけると霊夢は呆れたように笑う。

 

「いやいや、私が喜んでいるのはそこじゃないわよ」

「じゃあ何で喜んでるんだよ」

「私が喜んでいるのはリュウとの子供がちゃんと出来るんだって事。子供が出来るのは分かっていたけど、中々妊娠の兆候がこないから結構心配だったのよね」

「そ、それを喜んでいたのか? 自分が人でなくなるってのに?」

「その事については確かに驚いているし、自分が人でなくなる事が怖くないわけじゃない。ただ、それ以上にリュウとの間に子供が出来るのが嬉しいのよ。ずっと欲しいって思っていたんだもの、妊娠できると聞いて喜ばないわけないじゃない」

「…………………」

「それに私は人外になるのが嫌じゃないわよ」

「そ、そうなのか?」

「えぇ。……だって、人間の理から外れるってことは人間の寿命に縛られなくなるって事でしょ? なら、その延びた寿命の分だけリュウと一緒に居られるじゃない」

 

そう言って笑う霊夢の顔には人の理から外れることへの恐怖は微塵も感じられなかった。

変わってしまう自分への恐れも、未来への不安もなく俺と一緒に居られる時間が延びたと笑っている。

俺は自分の所為で霊夢が変わってしまう事に申し訳なく思っていたが、彼女はそんな事は微塵も気にしていないようだ。ただ一緒に居られる時間が延びた事と、家族が増えることを素直に喜んでいる。

そんな霊夢の前向きな姿勢に申し訳なさが募っていた俺の心が少しだけ軽くなるように感じた。

 

「肉体的には魔法使いのようになるって言っていたし、きっと千年単位で寿命が延びるのよね。とんでもなく長生きになりそうだわ」

「……とんでもなくなんてレベルじゃないだろう、それ」

「でも間違いなくそのぐらいは延びるわよ。千年後の自分なんてどうなっているのか想像も出来ないけど」

「そんなもん俺だって想像も出来ねぇよ。……だけど、コレだけは分かる。千年後の今もきっと隣りには霊夢が居るんだって」

「えぇ、それだけは間違いないわね」

 

そう言って俺達は笑い合い、再び歩き始めて帰路へとつく。

今回の件で先代たちに何て言われるか分かったもんじゃないが、今だけはコレから先も霊夢と一緒に居られる事を喜ぼう。

先代たちから物凄く怒られそうな気もするが、隣に霊夢が居てくれるなら何とかなるだろう。

コレから先も隣に最愛の人が居てくれる事を喜びながら、俺達は竹林の中をのんびりと歩いて帰った。

……そしてこの一年後、霊夢は無事俺の子を身篭った。

 




後日談は次回で最終回です。あくまでも〝後日談〟なので元々長く書く予定はありません。
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