七夕だから書いただけ。それでも良いと言う方は、是非。
「ん、んんっ……」
ふと目が覚めた。
食事と入浴を終えてから就寝して、既に二時間ほどが経過している。
彼女と同じ布団で寝る緊張からか、あるいは枕を新調したことからか。なんにせよ眠りが浅かったようだ。
水でも飲もうとベッドから降りようとした矢先、隣にいたはずの彼女の姿が無い事に気づいた。
周りを見渡した先、マンションの一室に隣接したベランダに銀色の髪が煌めいて。
「友希那?」
「あ……」
驚かせないようゆっくりとベランダへ向かった先、彼女は振り返って笑みを溢した。
「ごめんなさい、奏人。起こしてしまったかしら」
「いや、勝手に起きただけだ。何してたんだ?街でも眺めてたのか?」
「それもあるけど……星を、見たくなって」
「星?……ああ」
彼女につられて夜空を見上げて、言わんとすることに気がついた。
「今日は、七夕か」
呟いた俺に頷いて、友希那は頭上で輝く星空へと目を向ける。
その隣に立ち、俺もまた彼女の見ているものを見る。
「綺麗なもんだな、天の川」
「そうね、季節の都合上良く見えないことの方が多いし、それに……」
「それに?」
「……あなたと見ているからかしら」
「……そういう小恥ずかしいことよく言えるな」
「今は二人だもの……それとも、奏人は違うのかしら」
「んなわけあるか。……綺麗だと思うよ、俺も」
ふふ、と軽く笑う友希那。可愛い。
というか即答で返してしまったが、おそらく彼女が求めている答えとは違うものだ。いや文言としては合ってるかもしれないが対象が異なる。綺麗だと言って欲しかったのは優しげな顔で星を見上げる友希那本人ではなく、頭上で広がる星空についてだろう。
そんなことを考えながらその可憐な横顔を眺めていると、
「奏人」
と。そう俺を呼びながら、彼女は穏やかな目でこちらを見て。
「あなたと一緒に居られることが、本当に嬉しい」
噛み締めるように、そう告げながら淡く微笑んだ。
──綺麗になったと思う。
俺が好きになった時よりも、ずっと、確実に。
それはきっと、彼女が自分の音楽に答えを見出せたからで。
俺の自惚れでなければ、俺を好きになってくれたからでもあるだろう。
「……七夕、か」
自分で考えといて照れくさくなって逸らした話題に、彼女はすぐに乗ってきてくれた。
「ロマンチックよね、一年に一度だけ会うなんて」
「俺は毎日会ってる方がいいと思うけどな」
「一年に一度、会いたい会いたいと思いを募らせるなんて、素敵だと思わない?」
「……まあ、たしかに」
「……もし私たちだったら、どうかしらね」
「そうだな………」
彼女の質問に答えを探しながら、視線を件の天の川に移す。
織姫と彦星。
きっと今頃、一年に一度だけの邂逅を心から楽しんでいるのだろう。
……一年に一度ではなく、三年に一度だったら。
五年に一度なら。
十年に一度なら。
百年に一度なら。
いつかは、彼らも恋を諦め、川のほとりから去っていくのだろうか。
向こうへ手を伸ばせば届きそうなその場所にいることが、苦痛になるのだろうか。
その恋を諦めようと思って、手の届かないような場所へ向かおうとするのだろうか。
……そうして、恋心は潰れるのだろうか。
……ああ。やっぱり。
「………やっぱり、俺はずっと会っていたいな。川を泳いででも会いに行くと思うぞ」
そうなるくらいなら、俺は友希那とずっと一緒に居たいと。悪戯混じりの声でそう呟いて、隣の彼女を見ると。
「……友希那?」
そこには、夜闇の中でもはっきりと分かるほどに顔を真っ赤にした愛しの歌姫がいた。
「その……」
「ん?なんだよ」
「えっと……」
「珍しいな、友希那が言いごもるなんて」
「……今のは、プロポーズと受け取っても、良いのかしら」
「………」
そう、かき消えそうな細い声で告げられた言葉に、思考に空白が生じた。
なるほどなるほど。プロポーズとな。プロポーズね、いやまあ結婚を考えていないと言えば嘘になるけど……は?
「い、いやこれは物の例えでだな、そういう意味は無くて…」
「違うの?」
「……違くは、無いですけども」
ずい、と顔を寄せてきた上目遣いの友希那に頬の熱が上昇するのを自覚しながら、なんとか言葉を返す……いやちょっと待ってやばい。
なにがやばいって至近距離の友希那がいつも以上に色っぽいし肌白いし柔らかいし良い匂いするしで理性が今にも音を立てて崩れそうだ。もってくれ俺の理性。
「……今夜は、月が綺麗だな」
「………」
理性の崩落を抑えながら結果としてなんとか紡いだ言葉は、万感の思いを込めた告白の言葉で。
鼻先がくっつきそうなほど近づいた彼女の表情が、驚いたものに変わる。
それを認識したと同時。
「今更ね」
言って、顔の距離をそのままに彼女はこくりと頷いて。
「あなたと見るものは、なんだって綺麗よ」
そう、たしかに言葉を返してきた。
一瞬呆然と置いていかれた思考に一歩遅れて、彼女への想いが溢れる。
「……友希那」
「……奏人」
お互い、ほぼ同時に名前を呼んで、それからそっとその瞼を下ろした。
「大好きよ」
と、彼女はそう呟いて。
俺は満点の星空の下、彼女と唇を触れ合わせるのだった。
めちゃくちゃ短いですが、ご拝読ありがとうございました。
モチベは全く問題ないんですけど時間が……
そういうわけでまた間が開いてしまうんですけど、待っていただければ幸いです。
評価、感想お待ちしています。
次話でまた会いましょう。
ぶっちゃけ、どれが好み?
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付き合う前のやつ
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付き合った後の甘々してるやつ
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同棲モノ
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糖分控えめのシリアスとか切なげなやつ
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どれも等しく好き