銀髪の歌姫が恋愛初心者で可愛い   作:夕焼けの空

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 お久しぶりです。夕焼けです。
 今回は一話よりも前の話。
 まだ付き合ってない二人のラブコメ。少し短いです。その分甘くしたつもり。


挿話

「どうしたもんかなあ……」

 

 放課後、俺はライブハウス前のカフェテリアにて、録音機器に繋げたイヤホンを耳につけながらむう、とうめいていた。

 ふとした時に閃くメロディー自体はいいのだが、それらを合わせたり調整するのはやはり難しい。

 

「……また今度友希那に聞いてみるかな」

 

 珍しく練習を休みにした歌姫の顔を思い浮かべたところで、俺は残り僅かとなったコーヒーを口につけて、

 

「ん?」

 

 たった今入店してきた5人の少女に、思わず目を見張った。

 店内が少しざわめくのも頷ける。

 彼女達にはそれ相応の魅力があるということだ。

 その可憐な容姿も、高いレベルのライブも、観客を魅了するには十分なものだから。

 

「わ、Roseliaだ!」

「サインとかもらえるかな!?」

 

 どうやらファンらしい女子高生がきゃいきゃいと騒いでいるのを尻目に、俺は微笑みながら彼女達がいるであろう入り口付近から背を向け、

 

「…………」

「うおっ!?」

 

 そして、こちらをジト目で見つめてくる銀髪の少女と対面した。

 おかしい……さっき五人で入店したばかりなのに何で一人で俺の前に回り込んでるんだ……?

 これがトップレベルのバンドボーカリストの実力か……。

 戦慄する俺を他所に、彼女は酷く不機嫌そうな顔をしていて。

 

「今、私たちを避けようとしたわね?」

「い、いや、避けようとかしてないって……ただちょっと退店しようとしてただけで」

「それが避けてるわけではないとどうやって証明できるのかしら?」

「……いや、でもいろいろあるだろ?俺なんかと話してるのを見られるのは……ほら?」

 

 傍目から見たら実力派ガールズバンド@男子一人なんてどんな構図か分かったもんじゃないしな……。ファンからの捉えられ方次第では俺は彼女たちの邪魔になり得る。そういうこともあって、Roseliaを結成してからここのところ、あまり人目につく場所での交流は避けていたわけで。

 わたわたと弁解する俺を前に、友希那ははあと一つため息を吐いて。

 

「私たちは別に恋愛禁止のアイドルなわけでもないし、あなたは私たちの歌を作ってる関係者よ。話していても何もおかしくないじゃない」

「そうは言ってもなあ……」

 

 見れば、周囲の客から視線に殺気というか珍獣を見るような物珍しさが混じりつつある、ような。

 そりゃそうだ。

 今をときめくガールズバンド……しかもその実力派ボーカリストがどこの誰かも知れない男子と若干なりとも親しげに話してりゃ珍しいと思うだろう。Roselia結成前なんて俺と友希那の関係について変な噂も流れてたくらいだ。まあ気持ちは分かる。誰だってそーする。俺だってそーする。

 

「……やっぱり良くないんじゃないか?」

 

 具体的には彼女の立場とか。

 そう言外に含めれば、彼女はふむ、と頷いて、

 

「……なら、そうね」

「おお」

 

 何か案を出してくれるようだ。さすが、デキる歌姫は違う。これだから好き。友希那大好き。もちろんファンとしてだ。そうじゃないとこの天然系歌姫に致命傷喰らうから。

 ……いやていうか待てよ、目の前の彼女が提案するなんてシチュエーションでポンコツ友希那さんにならない可能性があるか?

 どこか不穏な空気を感じ始めながらも言葉を待つ俺に、彼女はその綺麗な形の口を開いた。

 

「今後あなたがそういう態度を取るなら、私はあなたの黒歴史を晒すわ」

「晒す」

「Roseliaとしての全てを活用して全力で晒すわ」

「全力で晒す」

「そうね、例えば……」

「ば、馬鹿っ」

「……あら、止めるならもうそういう態度を取らないってことよね?」

「………いや、これじゃ脅迫だろ。もっとこう、なんか建設的な案は無かったのか、友希那さん」

「……交渉には向いてなさそうね」

 

 げんなりとした俺に、むむ、と難しそうな顔をする友希那。

 いや交渉とかそんなもんじゃなかった。むしろ子供の駄々だった……まあ、いいか。仕方ない、とため息を吐いて、俺は彼女に微笑みかけた。

 

「分かった。今後は人前でもいつも通りにするわ」

「そ、そう」

 

 ほっと胸を撫で下ろす友希那。

 いやなんだその反応。そんなに人前で俺と話せないの嫌だったのか。

 ……まさかな。そういう反応で俺を惑わしているに違いない。まあ現在進行形でがっつり惑わされてるんだけど。

 

「でも本当にいいのかよ。恋愛云々はまだしも、ファン心理とかさ……」

「問題ないわ。私たちを肯定してくれる人も大事だけど……」

 

 言いながら、彼女は俺の手をそっと握り、上目遣いで俺を見て、

 

「私にとっては、奏人と交流を持つことも同じくらいに大切だから」

「お、おお……」

「あなたは私にとって大事な人だから。その……さっきみたいな態度は少し寂しいような気もするの」

「友希那……」

「とは言っても、別に奏人だけが特別なわけではないわ。もちろんRoseliaのみんなも大事だから」

「……いや、俺はそのRoseliaのみんなに入ってないのか?」

「………」

「………」

 

 いや、そっか……俺はみんなに抱く友情以外の何かがあるのか。それをある程度人のいるカフェテリアで言われたと。

 え、なにこの地獄。

 気がついたら周りの目がなんか生暖かいものになってる気がする。

 

「……………」

 

 一方で、俺の発言に赤らめた顔を俯かせたまま、こちらの手をにぎにぎと握ってくる友希那。

 この子周り見えてないんですけど……。ていうかそういう分かりやすいリアクション本当にやめてほしい。愛おしさが爆発して思わず告白しそうになる。

 

「そ、それで、みんな待たせてるけど良いのか?これから女子会だろ?」

「い、いえ。女子会というか前のライブの反省会と言うか……良ければ奏人もどうかしら」

「あれ、いつも通りの反省会なら俺も呼べばよかったんじゃないか?」

「だってあなた、ライブハウスでやろうって言うじゃない」

「いやまあ、言うけど」

「……リサが、カフェテリアに行きたいって言うから」

「…………」

「おかしいわね、普段はスタジオやファミレスなのにどうして今日はカフェテリアで反省会なのかしら……」

「…………」

 

 まあ十中八九目の前で不思議そうに小首を傾げている歌姫の恋バナを聞こうとしたんだろうけど。なにこの子首傾げてるの。可愛い。公共の場で告白紛いのことしたの自覚ないの可愛い。

 いやまだ決まったわけじゃないけどな。友希那が友愛と恋愛を履き違えている可能性もあるし……いや仮にそうだとしたらこの子魔性の女すぎるでしょ。男泣かせになるぞ。

 

「まあ、あれじゃないか。偶にはなんか変わったところでやりたいってことじゃないのか?」

「……そうね。それで奏人、この後予定あるのかしら?」

「いや、特にないけど」

「なら反省会に参加して。あなたもRoseliaの一員なんだから」

「俺も?今日は女子会だろ」

「リサには連れてきてって言われたくらいだし、みんな奏人のことは慕っているから問題はないわ」

「……友希那は?」

 

 問うた俺に、友希那は柔らかく微笑んで。

 

「言う必要があるかしら?」

「……無いな、全く」

「でしょう?それなら行きましょう」

「ああ」

 

 そう言って、俺は上機嫌そうに歩く彼女に手を引かれたのだった。

 

 

 

 

 それから俺は、急遽女子会に飛び入り参加することになったわけだが。

 

『それで、友希那〜、どうなの?」

『どうなのって、何が?』

『うわあ、友希那本当に自覚ないんだね……』

『……あの、音無さん』

『紗夜、隣の会話は気にしないで良いから。燐子もあこもそんな目で俺を見ないで。ほら前のライブの振り返りしよう早く』

『でも奏人さんと友希那さん、いつもくっついてます!』

『いいか、あこ。今はライブの話をしてるんだ。だからその話はやめよう。な、紗夜?』

『では、共有してるイヤホンを外して握っている手を離したらどうですか?』

『あ…………』

『………』

『ええ、無意識に繋いでたの……』

『ちょっとその本気でドン引きしてる声出すのやめてリサさん。心にくる』

『……このホットミルク……甘いです、氷川さん』

『奇遇ですね、私もです』

『いや燐子どこでそんなこと覚えたの……ほんとにやめてくれ……』

 

 何故か俺が集中砲火を浴びることになったり。

 

『……ですから、ここのパートでもっと……』

『なるほどなあ……』

『奏人、コーヒー持ってきわよ』

『お、サンキュ』

『音楽してる時は砂糖一つよね?』

『おお、合ってる合ってる。てかなんで知ってんの』

『いつも見てるから』

『……そ、そうか』

『ええ』

『…………』

『わぉ……もう、友っ希那ったら〜」

『…………』

『いや俺悪くないでしょ紗夜さん、その目やめて怖いから……』

 

 楽曲のアドバイスをする紗夜に無言の圧を受けながら、味のしなくなったコーヒーを飲んだり。

 

『それで、みんなは帰ったけど、どうしましょうか』

『うーん、そうだなあ……ライブの振り返りも曲のアドバイスももらえたしなあ』

『……少し、膝を借りるわね』

『ん?ああ………え?』

『………』

『お、おい………』

『なんだか、安心するのよ……不思議ね。鼓動は、いつもよりずっと早いのに』

『友希那……』

『重かったら言ってちょうだい、すぐに退くから』

『……全然。羽みたいだよ、お前は』

『……それは、軽すぎるわね』

 

 生殺しに遭い、流石に大分少なくなった周りからの視線による羞恥に悶えたり。

 そんなこんなで日が暮れて、俺の放課後は終わりを告げた。

 

 

 

 翌日。「せっかく友希那をからかおうと思ったのに返り討ちにされた」とリサが言い広めたお陰で、友希那は羞恥で顔を真っ赤にして俺を三日ほど避け、俺は俺で他の顔馴染みガールズバンドの少女たちに白い目で見られることとなるのだが、それはまた、別の話。

 




 お久しぶりです(20日振り)
 私が模試と定期テストのサンドイッチになっていて更新が疎かになっていたのにも関わらず、何故か評価もお気に入り登録も増えていて腰浮かしました。ありがとうございます。
 立場上元からそんなに更新はできないのですが、それでも応援してくださり感謝です。


 さて、こういった挿話はこれからも書いていくのですが、どうでしょう。

・高校生編と大学生モノで章分けにして時系列順になるよう話を挿入していく

・前書きに時系列だけ書いて常に最新話の枠で更新

 どちらがいいですかね?感想ついでに意見を下さると嬉しいです。
 ちなみに特になければ後者の方でこれからも更新したいと思います。
 ではまた、次話で会いましょう。短くてすいません……(時間もネタもない)

 

ぶっちゃけ、どれが好み?

  • 付き合う前のやつ
  • 付き合った後の甘々してるやつ
  • 同棲モノ
  • 糖分控えめのシリアスとか切なげなやつ
  • どれも等しく好き
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