好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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神威動乱編 第八話 白銀と黄金

和地Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うむ! こういうのも中々美味い物よ!」

 

「いや、お前はそれでいいのか」

 

 そう豪快に笑い飛ばしながらハンバーガーを褒める九条に、俺は半目でぼやいた。

 

 いきなり敵組織の重鎮が出てきた中、俺とカズヒ姉さんはハンバーガーショップでシェイクをすすりながら九条をにらんでいた。

 

 なんでこうなったかというと、九条が提案してきたからだ。

 

「こんなところで暴れるのはそちらの趣味ではあるまい? 奢るから一時停戦とゆかぬか?」

 

 実際問題、都心のど真ん中でガチバトルをしたら確実に被害が出るからな。

 

 非常に不本意だけど、下出に出るしかなかった。

 

 とりあえずダブルチーズバーガーを一口食べてから、フライドオニオンとフライドポテトをがっつり口に入れてコーラで流し込む。

 

 まったく。都心から離れているけど遊び場としてそれなりに行けるスポットって話だったが、だからこそ異形や異能関係の警戒網もさほどではないってことか。まあ、こいつの実力なら強引に突破もしてそうだけど。

 

 俺がその辺を考えながら警戒していると、幸香はこっちを見ながらケースを差し出してくる。

 

 ……この店で人気があるらしい、ベリーパイ(五個セット)だった。

 

「何をしておるか。折角金に糸目をつけずに奢ると言っておるのだ。思う存分食べるとよいぞ?」

 

「食いすぎは健康に悪いけどな」

 

 とりあえず、俺はちょっと警戒しながらベリーパイを手に取った。

 

 幸香とパイを交互に見ていると、幸香は呆れた表情を向けてくる。

 

「毒など持っておらんわ。妾はもっと豪快なやり方を好んでおる。なにより自ら食事の為に来た店で毒殺など、流儀に反す」

 

 そう言いながらあちらもベリーパイを豪快に食べると、カズヒ姉さんは軽く肩をすくめながらベリーパイを一口食べる。

 

 ただし、咀嚼したけどすぐには飲み込まなかった。

 

 そして十秒ぐらいたってから飲み込むと、こっちに向いて微笑んだ。

 

「大丈夫。少なくとも何個か食べただけで人間なら死ぬような量の毒物は無いわね」

 

「……分かるの姉さん」

 

 俺は思わず唖然とする。

 

 え、今舌で判断したのか? 暗部の技術って凄い。

 

 俺が戦慄していると、カズヒ姉さんは苦笑した。

 

「魔術よ魔術。最も一工程(シングルアクション)で習得するには、平均レベルの魔術回路の質がいるけど」

 

 ……ああ、なるほど。

 

 俺には無理だ。質とか底辺レベルだし。

 

 俺が苦笑していると、何時の間にかカズヒ姉さんをじろじろ見ていた幸香が、適当に何かを口に含んでうんうん頷いていた。

 

 何してんだと思ってたら、飲み込んだ幸香はにやりと笑う。

 

「中々愉快な魔術よな。だがよい、咀嚼しながらなら味わっている風にも見えるからのぉ」

 

 ……え、耳コピならぬ目コピしたのかよ。

 

 俺がまた戦慄していると、カズヒ姉さんは舌打ちした。

 

「……流石は模倣の属性を持つ魔術回路持ちね。魔眼と併用すれば、これぐらいの魔術なら目で習得できるわけね」

 

「……そちらも、我が魔術回路の属性を知っておるとは中々できるのぉ」

 

 女子二人の鋭い視線のぶつかり合いに、俺は何も言えなくなっている。

 

 いやいやいやいや。ちょっと待って。

 

 俺がついていけてない。っていうか本当にちょっと待て。

 

「カズヒ姉さん。魔術回路の属性に模倣なんてあった?」

 

「基本的には無いわ。ただ五大属性以外にも属性そのものは存在してて、彼女はその希少価値のあるレアキャラってだけよ」

 

「その通り! 禍の団にも魔術回路持ちはおるが、模倣の属性を持つ者は妾しかおらぬでな!」

 

 マジか。

 

 いや、そこは今どうでもいい。

 

 というよりだ。

 

「……で、俺達相手に奢りなんてしてどういうつもりだよ?」

 

「むぅ? 特に理由は無いぞ?」

 

 俺は思わず絶句して、ため息をついてからチーズバーガーを一口食べた。

 

 いやいやいやいや、ちょっと待て。

 

 俺達敵だぞ? 三大勢力の和平の象徴と、その和平妨害を第一弾でやらかしたテロリストだぞ!? 普通に不倶戴天の怨敵だぞ?

 

 俺はマジかと目で伝えたけど、幸香は本気で肩をすくめた。

 

「別に敵同士だからと嫌い合うことなどなかろうて。敵か味方かと好きか嫌いかは全く別の基準だろう? 世も旧魔王派の三人は空かぬが、必要な協力は買ってでもしたのでな」

 

「……必要はないけれど奨励もされないわね。好きな相手と殺し殺されの関係なんて、判断が狂うし精神衛生上よくないでしょうに」

 

 さらりと返すカズヒ姉さんは、シェイクを一口飲んでからため息をついた。

 

「まして好感を抱く相手に自分の友や仲間を殺したり殺されたり、逆に自分がそういう側に立つなんて、考えるだけでも嫌な物でしょう? 少なくとも、そういう手合いは相当の割合でいると思うけれど」

 

 ……なんか、素直に心配しているような言い草だな。

 

 初めて会ったときに幸香の意味深な対応やカズヒ姉さんの動揺といい、もしかして因縁とかあるのか?

 

 俺が割って入れないような気になっていると、幸香は呆れた感じでこれまたため息をつく。

 

「そのような感性とは無縁でのぉ。同胞を殺された怒りと、そのものに好感を抱けるかどうかは全く別だろうに」

 

「世間一般ではそういう奴の方が少ないとは思うけれどね」

 

 そんな言葉の応酬に、幸香はにやにや笑ってカズヒ姉さんはしかめっ面だ。

 

「……っていうか、テロリストがのこのここんなところに出てきていいのかよ? もうちょっとこそこそした方がよくないか?」

 

 俺は空気を換えることもかねてそう返すと、幸香は不敵な笑みを見せてきた。

 

 そんな必要などないし、興味もない。そんな意思が見ているだけで理解できる。

 

「下らぬ。妾は海賊にして征服者。動く時は豪快に行ってこそ。本気で動く時は常に派手かつつ豪快にゆかせてもらうわ」

 

 ……なるほどね。

 

 この女、やっぱりだけど俺達とは方向性が違うだろう。

 

 俺はその予感を確信に変える為、真正面から幸香を見据える。

 

 そんな俺の視線に、幸香も少し雰囲気を変えた。

 

 真剣。その二文字を覚える雰囲気に、俺は真っ向から切り込んだ。

 

「その過程で、多くの人達に嘆きの涙を流させてもか」

 

「無論」

 

 即答だった。

 

 嘘偽りも歪曲もない。むしろ何を隠すことがあるのかという、そんな強い意志を感じさせた。

 

「そも人間の夢や野望とは、同じ夢を持つ他者すら蹴り墜とすものよ。その道を選ぶと決めた妾が、そんなものを気にするような感性を持つと思うのか?」

 

 はっきりと、嘘偽りなく宣言する。

 

「何より生物とは、より多くを得る為なら同族すら蹴落とせる存在であろう? 粘菌や植物ですらそれをするのに、妾達が躊躇するなどおかしな話よ」

 

 恥ずべきことなど何もない。これが己であり、そして誇らしい。

 

 そんな自慢げな雰囲気すら見せる。そこに矜持すらあり、胸を張って前に進める生き方しかしていない。お天道様に顔向けできないことなど何もしていない。

 

 そう、彼女は態度ではっきりと示して見せた。

 

 ……その態度に、俺達は言葉で止めることは不可能だと悟る。

 

 彼女はこう生きてそう死ぬと、とっくの昔に決めている。

 

 負けて悔しむことはあっても、その生き方を悔いることは無いんだろう。それほどまでに、己の生き方に対して恥がない。潔さすら感じさせる、清々しいまでの蹂躙者。

 

 彼女とは相いれることは無いんだろう。俺はそう、痛感した。

 

「……なら、もう殺し合いしかできないのね」

 

 カズヒ姉さんは、そう呟いた。

 

 表情は髪に隠れて見えないけど、きっと笑顔ではないんだろう。

 

 ……カズヒ姉さんはどうも、幸香に対して思うところがあるらしい。

 

 それが何かは分からない。そこまで分かるほど、俺はカズヒ姉さんのことを分かってない。

 

 だから、俺は俺が聞くべきことを聞こう。

 

「……そういえば、後継私掠船団(おたく)のアーネ・シャムハト・ガルアルエルと、その妹のベルナ・ガルアルエルってのに会ったんだが」

 

「そうだったのぉ。アーネは見所のある女ゆえ、妾も気に入っているぞ?」

 

 そうかえす幸香に、俺は切り込んだ。

 

「ベルナの方、テロリスト何て付き合いでやらせるものじゃないと思うんだけどな」

 

「……なるほど、のぅ」

 

 幸香は意味深に微笑んだ。

 

 俺の感覚が当たっているのか、それとも見当違いなのか。

 

 俺がそれを探ろうと思っていると、幸香は豪快にチーズバーガーを食べきってから、ふぅと息をついた。

 

 その上で、幸香は真っ直ぐに俺を見る。

 

「ならばちゃんと伝えて引っ張り上げるがよい。妾は奴にはさほど引かれぬ故、勧誘するのを止めはせぬよ」

 

 ……なるほど、な。

 

 俺は聞くべきことは聞いた。なら、もういいだろう。

 

 がっつりと頼んだ注文を食べながら、ちらりとカズヒ姉さんを見る。

 

 カズヒ姉さんは表情を動かさなかったけど、テーブルの下で俺に触れる。

 

 さて、これから―

 

「では、すまぬが妾は帰るとする」

 

 ―いや、気づかれていたか。

 

「もう帰るの? もうちょっと話に付き合ってもいいけれど」

 

「本心からなら構わぬが、時間稼ぎには付き合えぬのぅ」

 

 カズヒ姉さんにさらりと切り返しながら、ちゃっかり注文を全部食べ終わっていた幸香は領収書を取った。

 

「必要ならば堂々と突破し粉砕するのが妾だが、要らぬ争いは今は避けよと頭がうるさいのでな。今日はすまぬが戦は避けるとしよう」

 

 そう言いながらレジに向かっていく幸香を見ながら、カズヒ姉さんはため息をついた。

 

「……それが、貴女の結論なのね」

 

 そう呟くカズヒ姉さんは、どこか寂しそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

「曹操、禍の団全体の方はどうなっておる?」

 

『ガス抜きに外に出ている最中によく聞いてくるね。……まぁ、一部を除いて統制は取れているよ』

 

「ヴァーリも自由よなぁ。良くも悪くも枷にはまらぬ男よ」

 

『まあね。基本的には相互不可侵ということだけど、それとなく監視はつけておかないと』

 

「そのようだの。まあ、妾も伝手の一つや二つはある故、そちらにも一言言っておこう」

 

『そうかい? ああ、そういえばアースガルズで妙な動きがあるそうだよ』

 

「ほほう? ミザリの動きで和平反対派がクーデターでも起こしたか?」

 

『そこまでには至ってないようだね。ただ、同時期にオーディンとロキが行方をくらましたらしい』

 

「……和平派でもある主神と、反対派筆頭の悪神がか。これは一つ面白い催しが起きるようだなぁ?」

 

『ああ、その件でミザリが動きたがっているから、人材をある程度派遣しようって話になってるんだ』

 

「よかろう。英雄派からは妾が出るとしよう」

 

『言ってくれると思ったよ。さて、そろそろこちらも一仕事だね』

 

「禁手のデータは十分とれたのか? 全く、慎重というか臆病というか」

 

『いいじゃないか。折角テロリストになっているんだから、だからこそできる手法をとるべきだろ?』

 

「物は言いようだな。まあよい、恩恵は妾達もしっかりと受けさせてもらうぞ?」

 




 前にも書いたとおもいますが、幸香のコンセプトは「悪いイスカンダル(Fate)」で、またほぼすべての読者が予測できているでしょうが、カズヒとはある因縁があります。



 まあそれはともかくとして、ラグナロク偏は激戦になることをお約束します。今はそのための戦力関連の設定調整などを行っていますが、とりあえず大晦日と元日は連続投稿させていただきます。







 それでは皆さん、よいお年を。自分は今年の締めとして、自分にご褒美でバーで一杯やってきます。

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