好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
和地Side
俺は夜、なんとなく目が覚めたのでちょっと本館の方に歩いていた。
本当になんとなくの気晴らしだ。まあ、あまり騒がしくするつもりはないんだけどな。
なんたって、本格的な作戦直前ということで何人か泊まっているいるからだ。特に駒王町に拠点を持ってないことから、クロードさんやフロンズ氏などが、数人の護衛と共に泊っている。
あとでややこしいことになっても困るし、あくまで一階でちょっとのんびりするかって程度なんだけど―
「……あれ、眠れなかったんですか?」
―そこに、ある意味でキーパーソンのマルガレーテさんがいた。
一階に降りていたのか。これはうっかりだったな。
「目が覚めてしまいまして。そちらは?」
「私もです。だからまあ、ホットミルクでも飲もうかと思って、メイドの人に用意してもらっているところ」
なるほど。
まあ、メジャーな神や大規模テロリストと三つ巴の戦いになりそうだしな。ちょっと目が冴える人は多くて当然か。
……まあそれはそれとしてだ。
こうなると、ちょっとぐらい気晴らしに話した方がいいかもな。
「……そういえばプルガトリオ機関に属していたそうですね。結構いろんな形の部隊があるそうですけど、どちらの部隊に属していたんですか?」
「あ~。確かグレモリー眷属と共同する形で、辺獄騎士団の人が転属したって言ってましたね。私は別の部隊です」
まあそうか。
しかしどの部隊にいたんだろうか。いろんな性質の部隊があるから、ちょっと興味がわいてきた。
「私の所属はアルファ部隊。基本的に人数を多く配備した、規模が大きい作戦用の動員部隊です」
マルガレーテさんもそれを悟ったのか、ふと窓を見ながらだけど会話をしてくれた。
「……本当ならエクストラ部隊の配属が妥当となっていたんですが、それは嫌だったので我が儘を言った形です。神仏に並び立てる魔王の血とは言っても、そんなものに振り回されたくないですから」
そう言いながら、マルガレーテさんは盛大にため息をついた。
「本っ当にいい迷惑です。あんな馬鹿が万が一をやらかした所為で、私はベルゼブブとして振舞わなければならなくなった。……シュウマ・バアル様方が魔王を終わらせようとしなければ、私は魔王の一族として立つ羽目になりましたよ」
その本心から嫌そうな物言いに、俺は何となく分かった。
ああ、この人は……。
「偉くなりたいとか成功したいとか、そういうことを思ってないんですか?」
そんな俺の言葉に、マルガレーテさんは弱弱しく笑った。
「……当然じゃないですか。そんな
その表情と声が、彼女の本音をこの上なく示している。
彼女はある意味でイッセーやヴァーリの逆だ。
愛の反対は憎しみではなく無関心。逆にそれを否定して憎しみを反対と考える人も多い。だから、そういうことなんだろう。
イッセーは平和を大事に思っているけど、出世したいとも考えている。ヴァーリは戦いを好んでいるけど、魔王の血を引いていることを誇っている。だから、彼女は二人の逆だ。
マルガレーテ・ゼプルは平和が好きで、出世や偉さなんてものを余計な重荷と思っている。だから出世なんてしようとも思ってないし、王族の血なんて余計なものとしか思っていない。
そう、それは言うなら―
「……いわゆるスローライフがしたいんですね?」
「……うん。そして私は、教会に拾われるまでずっとそう過ごしてきました」
そうぽつりと呟いた彼女は、どこか遠くを見ながら呟いた。
「でも、自由だろうと権利だろうと行動だろうと、それって力の分だけ責任があります。……義務と責任を果たさなないで、権利と自由だけ力のままに振るうような身勝手な人は嫌いなんです」
その言葉には嫌悪があって、どこかを見ている視線は軽蔑があった。
「……だから安心してください。
その言葉に、俺は―
「……無理はしないでください」
―はっきりと、これだけは言い切れる。
「あなたの言うことはもっともですけど、同時に責任を果たそうとしている貴女には笑顔になれる資格があります。なのに悲しい涙が出てくるのなら、その時は言ってください」
俺は屈み込んで真っ直ぐに目を見て、はっきりと宣言する。
「会ったばかりの俺が言うことじゃないですけど、俺も自分の行動にも能力にも発言にも責任を持とうと思っています。……嘆きの涙を笑顔で流す、その涙の意味を変えることこそが俺の選択した生き方ですから」
イヤホンと、会ったばかりで付き合いもろくにない俺が言ってどうなるんだって話だ。
だけど、これを言うことだけは曲げられない。
そして、それを実行することに噓もない。
その俺の本気が伝わったのか、マルガレーテさんはクスリと笑う。
「……そうですね。なら、他にどうしようもない時は相談します」
そういいながら、マルガレーテさんはスマホを差し出した。
「だから最初の責任です。連絡できるようアドレスを交換してください」
「………ちょっと取ってくるんで待っててください」
そりゃそうだ。
俺は急いで取っていこうとしたけど、マルガレーテさんはクスリと笑った。
「……そんなに切羽詰まらないでください。私は魔王派のリアス・グレモリー様の眷属じゃなくて、大王派のノア・ベリアル様の眷属なんですから」
「いや、俺は本気で言ったんですけど」
そりゃ本気にされないだろうけど、やっぱり侵害だ。
そこは訂正しようと思ったけど、マルガレーテさんは人差し指を俺の口に押し当てた。
「本気の気持ちは伝わりました。でも、優先順位はしっかりつけないと、人生生きていくこともできないですよ?」
は、反論できない。
ぐぅの音も出ないでいると、マルガレーテさんは苦笑しながら天を仰いだ。
「それに、クロード長官には悪いですけど魔王の名は下せました。主になってくれたノア様にも、誘ってくれたフロンズ様にも感謝ですし、あとは……」
あとは?
ちょっと気になる言い方だったけど、マルガレーテさんはにっこりと微笑んだ。
「あとは、余計なごたごたが片付けば、だいぶのんびりできると思います」
……そのゴタゴタが長続きしそうなんだよなぁ。
Other Side
夜の兵藤邸の屋上で、一人カズヒ・シチャースチエは空を見上げていた。
悪神ロキだけでなく、禍の団との三つ巴の戦いになる以上、戦力は多い方に越したことがない。同時に悪神ロキという強敵を打倒する以上、相応の切り札を用意するべきだ。
分かってはいるが、その為に自分の出撃は遅れる。
その時間が仲間達の生命線を分けるのかもしれないと、少しだが臆病風に吹かれている自分を感じたが故の、気分転換だった。
……そう、臆病風だ。
戦場とは極限環境だ。人の勢力が互いを殺すつもりで挑み、殺される覚悟を持たねばならない環境。少し前まで隣にいた者が命を奪われることも、逆に自分が奪われることも、そして自分や隣にいる者が命を奪うことも当たり前の環境だ。
少なくと、
そんな言葉が出てくるほどに日常とは死から遠いと感じるものだ。そして同時に、そんな言葉を言う必要が薄くなるほど、戦場では死を身近に感じる者が多くなる。少なくとも、日本国の日常と激戦地の戦場でなら、後者の方が死を身近に感じるはずだ。
だからこれは感傷だ。本当にただの感傷でしかない。
今までの戦いでもそうだ。自分達オカルト研究部に連なる者が命を落とさなかっただけで、戦場で死んでいった味方の人員は数多い。
かつてもそうだ。任務遂行の過程で仲間が死ぬところを見たことなど、いくらでもある。
今回の戦いで死者が出ないなんてことはない。それだけの規模の激戦になるだろうし、ゲリラ時代からそんなことはいくらでもあった。
だから、夜の冷たい空気で意識を切り替える。
和地の、ヒマリの、ヒツギの、鶴羽の、その顔を思い浮かべたうえで、あえてかき消さない。
「……こっちはこっちの仕事を果たす。それはあっちも同じこと」
目を開け、そして虚空を睨む。
そこに思い描くは、いまだ映像でしか見たことがない己の運命。
ルシファーの血を継ぐ転生者、ミザリ・ルシファーを見据え、奥歯を食いしばる。
「出てくるなら出てきなさい、誠にぃ。その時は、命に代えても引導を渡してあげる」
地獄に落ちることなく人生をやり直す。
その己の罪深さの象徴を見据え、カズヒは誰にも聞こえないと分かったうえで、宣言する。
「それが、貴方を作った私の責任でしょう……っ」
マルガレーテの基本思想は簡潔にまとめると「ノウブルスローライファー! 王の末裔は、田舎でのんびり過ごしたい」といったなろう系っぽい題名を思いつく感じです。
特に悪魔に恨みを覚えるような出来事でプルガトリオ機関入りしたわけではないですが、王様と過激的な物語とかに全く興味がない人柄です。……というか、たぶん王様になるぐらいなら無人島でサバイバル生活送ってる方がまだ心安らぐような人物として設計しています。まさに本文中に書いた通り「イッセーともヴァーリとも真逆」といった感じですね。
同時に責任感は人一倍あるため、無責任な真似は自他問わず嫌い。根っからのスローラーファーのくせして社畜体質という面倒くさい性質。田舎の風紀委員長とでもいえばいいんでしょうか、間違いなく問題児とか不良よりなヴァーリと相性がいいわけがないというわけです。
そしてカズヒはカズヒで決戦前に自分の決意を再確認といった形です。
カズヒの過去話はそれとなく少しずつにおわしつつ、本格的な話はウロボロス編まで取っておくつもりです。むしろミザリ・ルシファーとオカ研の直接接触もそれぐらいにとっておこうかと思っているぐらいです。
なのでミザリ・ルシファーはロキとの戦いに入って吐きません。ミザリは。