好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
とりあえず、今回の話で春菜とベルナにもあらかた決着となります。
いやぁ、この二人の流れをどう連発するかは難産だったぜ!
Other Side
成田春菜は、十回目の頭突きを喰らい、割と悶絶していた。
頭蓋骨が分厚い額で、頭部の人体急所を勢いよくどつき倒す。シンプルゆえに威力はあるが、自分だって多少はダメージが入る自爆一歩手間の技といってもいい。
実際問題、転生悪魔と人間なら前者の方が性能は高い。如何に相手が
にも関わらず、カズヒ・シチャースチエは更に容赦なく頭突きを叩き込もうとしてくる。
額から血が流れているんだから、いい加減にしろ。
真剣にそう思いながら、春菜は全力で額をぶつけ返した。
「いい……かげんに……しろっ!」
「こっちの……セリフ……よっ!!」
更に三度、額を全力でぶつけ合い、お互いにぶつけた態勢で押し合いの形になる。
既に戦闘というよりは意地の張り合い。特に春菜は頭部に衝撃が入りすぎて、思考が軽く麻痺していた。
逆にカズヒはそういったことはないのだが、
「いい加減にしてほしいわね。なんで
「決まってるでしょ! 証明したいのよ、強くなったって!」
歯を食いしばり、カズヒを真っ向から睨みつけながら春菜は吠えた。
それだけだ。本当にそれだけだ。
「頑張ったのよ! 鍛えたのよ! 傷ついても、泣きたくなっても、あいつ等に犯されて心が折れても……っ!!」
心の底から、振り絞るように声を出す。
「ヴィール様がいてくれたから、私は此処まで強くなれた! それを和っちに認めさせたい!」
その渾身の叫びに、カズヒは静かに鋭い視線をぶつける。
「……
その言葉に―
「……?」
―春菜は、返答ができなかった。
「それが本当なら、何でもいいわ。見下したいの? 自慢したいの? 態々
真っ直ぐに、至近距離から、カズヒは春菜に詰問する。
「本当に、何でもいいのよ。実は和地に助けられるのが屈辱だったから見返したいでもいい。単純に自分にとって強い奴の象徴的な感じだから、上回りたいという挑戦でもいい。まあ個人的には嫌いな理由もあるでしょうけど、尋ねた身としてそこはこの際おいておくわ」
困惑する春菜から額を離し、そして改めて一歩近づき―
「……貴女が和地に、強くなった自分を認めさせたい
―胸ぐらを掴み上げ、真っ向から声を張り上げる。
目と目を合わせ、目線も合わせる。そんな至近距離から、カズヒ・シチャースチエは成田春菜と魂をぶつけ合わせようとする。
「はっきりと本心から、貴女の理由を伝えなさい! 涙の意味を変えるという、九成和地の誓いに向き合う、貴女の
春菜Side
彼がいなくなってから少しして、私は自分の体を鍛えることにした。
スポーツではなく、武術を習得する方向だった。将来的な目標としては、婦人警官や女性自衛官、それも前線で戦える方向を目指していた。
小学校に上がってからは、毎日トレーニングをしてきた。高学年になることには、通信教育で武術を始めながら、いじめをするような奴に何度も突っかかっていった。怪我をすることも多かったが、日々の鍛錬と技量の差で何度も勝ってきた。
中学生になってからは、武術研究会に所属して更に極めて言った。勉強も鍛錬も毎日積んできたからこそ、高校までエスカレーター式の学園に入学して、頑張ってきた。
……ヴィール様に出会ったのは、中等部三年生の夏だった。
きっかけは、先輩が不良に絡まれていたところを助けたことだ。
そのことでやられた不良が、自分の先輩を引き連れて襲ってきた。他の取り巻きは返り討ちにしたが、その先輩は既に成人していて、しかもプロデビューしたばかりの格闘家だと思い出す頃には、叩きのめされていた。
仮にもプロの格闘家が、悪さをした不良の敵討ちなどという真似に反吐が出そうになったが、そいつらの行った所業の方が更に反吐が出る。
……自分の初めてが、そんな男によって奪われるなど屈辱でしかなかった。
意地でも睨み付けて、隙あらば殴り飛ばそうとしたが、殴りつけられ、そして……心が折れた。
投げ捨てられても立てなくなった。震えが止まらなく、漏らしてしまった。
もう逆らえない。抵抗できない。立ち向かえない。
だが同時に、言うことを聞くこともできなかった。
思考がぐちゃぐちゃになり、何もできずに絶叫を上げそうになったその時、全身から炎が立ち上がった。
困惑する男達に、自分はよく理解できず両手で頭を抱えてうずくまるしかできない。
もう嫌だ。
まだ駄目だ。
そんな感情が混ざり合ったまま体の中に溜まっていき、限界を超えて壊れそうになった、その時だった。
「―下種が。俺の管轄でよくもまぁ、ふざけたことをやっているものだな」
「同感です。しかもこいつら、僕のいた高校の制服着てますよ?」
「ふ~ん。歯ごたえもない雑魚を伸しても、何も楽しくないんだけどねー」
一瞬だった。
文字通り一瞬で格闘家は全身の骨を砕かれ、更に不良達は悶絶し、骨まで外された。
そして小瓶を取り出して中身をかけられた格闘家は、一瞬で砕けた骨が治り―――今度はまたぐらを潰された。
「……これから貴様達は俺の奴隷だ。いいか? 今すぐ自分の今いる場所をやめて、三年間ここで働き続けろ。しなければ殺す。歯向かえば殺す。だが言うことを聞くのなら、一人で生きていくに困らない程度の金をくれてやる。……いいな?」
再び小瓶で潰れたまたぐらを治しながら、彼はそう告げ相手の心を打ち砕いた。
そして、炎を消すことができない私に、二人を監視としておきながら近づいた。
「……この状況で至るか。そしてその目……ふむ、惜しいな」
「え……あ……」
そして、炎で少しずつ焼かれながらも、ためらうことなくヴィール・アガレス様は私の手を取ってくれた。
「縋る
「な……んで……?」
なんでそんなことを言うのかが、分からなかった。
だが、ヴィール様は真っ直ぐに私の目を見て、断言した。
「例えへし折れ踏み潰されようと、
そう言いながら、あの方は小便を漏らしているうえ下種どもの精子がこびりついた私の肩に手を置き、誇らしげな表情を浮かべてくれた。
「……誇れ。お前は潰され心が折れてもなお、
その強き意志に、焦がれた。
その強くあり続けんとする在り方に、憧れた。
へし折れ、踏みつけられ、唾を吐きつけられた私の心に、彼は光と柱を与えてくれた。
だからこそ、命を懸けることに否はない。だからこそ、彼の力になりたいと更に強さを求めた。
戦いと鍛錬を続ける中、力を得る機会は多かった。禍の団と同盟を結んだ折、
そして彼が与えてくれた力を、発現させることができなかったのは悔しく惨めで申し訳なく悲しかった。
そんな時に、彼がかけてくれた言葉を覚えている。
「これは眷属に対する報酬であり、先行投資だ。いずれ必ずお前は、血脈を目覚めさせると信じている。……例えへし折れ朽ちても滅びることがなかった、
その言葉に、感謝しつつも……今、ふと思う。
では、なんで強くなろうとしたのか。
なんで、強くなろうと思ったのか。
それを思い出せず、だからこそ、答えることができない。
それはヴィール様のような目で、カズヒ・シチャースチエは真っ直ぐに見つめる。
「……大事なことを
その言葉に、何も言い返せない。
分からない。思い出せない。
大事なことだと断言できる。大事な思いだから、どれだけへし折られて踏みにじられて汚されても、手放せなかった。だからこそ、禁手に至ったのだ。
どれだけ力が足りなくても、絶対に強くなりたいから。足りなくて弱くて砕かれたのなら、せめて強さを集めたかった。
だからこそ至ったのに、その大事な根幹がぽっかり抜けていた。
ヴィール様の与えてくれた力が、発現しないのも当然だ。
それを理解して、崩れ落ちる。
情けない。和地にもヴィールにも合わせる顔がない。
そう思い、俯きかけた時。
「……ごめんな、春っち」
その手が、和っちの声と共に取られた。
合わせる顔がなくて、顔を上げられない。
だけど、和っちは屈み込んで下から顔を覗き込んだ。
その申し訳なさそうな顔に、自分の方がいたたまれない。
「……ごめ、んなさい」
何も分からず、何かを失って、ただ強くなり続けるだけだった。
なんで、和っちに強くなったと認めさせたいのか、今ではさっぱり分からない。
そんな言葉を受け止めて―
「強くなったな、春っち」
―そっと、和っちは私を抱きしめた。
労わる様に、あやす様に、そして褒める様に。
優しく背中を叩きながら、和地は自分を抱きしめた。
「一生懸命、つらい思いをしてでも頑張ったんだな。俺が助けてきた時から、とっても見違えるほど強くなったんだな」
その言葉に、思い出すことがあった。
小さい頃、父や母に頼んで、強くなる為の努力を始めようとした、その時を。
―今度和っちに会った時、私は
そんな、彼女の瞼の裏に焼き付いた、助けてくれた彼の顔が浮かんでいく。
―和っちと一緒に守るの! 和っちが
「……ぁあ、あ……ぁああああああ……っ」
思い出した。
何時の間にか、強くなり悪い奴に立ち向かい続ける中、忘れていった原初の願い。
ヴィールが添え木になる前から、ずっと根本だけは残っていた、始まりの願い。
「……私、ずっと、ずっと頑張って。辛くても、いやになっても、怖くても……ずっと、ずっと……」
見失っていた願いを思い出し、私は今度こそ敗北した。
「ずっと……和っちに、
「ああ。強くなったんだな……春っち……っ」
その誇らしげな笑顔を受けて、私はヴィール様の眷属ではいられなくなった。
添え木ではなく、本当に柱が、私の中に戻ってきたから。
はい、本日は此処まで。そして春菜を引っ張り上げた和地です。
春菜の迷走の理由は、原点を忘れて迷走していたことにつきます。その状態でどれだけ和地が説得しようと、意固地になって聞いてくれませんし、逆に神経が逆なでされて話が進まなくなるという悪夢のコンボ。
それを察したカズヒによる説教(物理)で心身ともにぼこぼこにしたうえで指摘されたからこそ、春菜はその原点を思い出すことができた。
そして和地がまっすぐに強くなった春菜を褒めたことで、春菜はようやく余計な重荷を少しは脱ぎ捨てることができました。
……そして、ある意味ではここからが本番。
視点は会場に戻り、試合が終了する直前。
さぁて、動乱が起こるぜぇ!