好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 ハイどうも-! そろそろ第五章を書いているころ合いのグレン×グレンでっす! 感想はもちろんですが、五章は一番不安なところが明かされる章なので、ぜひ今のうちに高評価を求めております!

 で、ヴィールドン引き編第二弾。ヴィールのメンタル面でドンビキしてもらう話となっております!


冥革動乱編 第六十一話 神聖覇王の狂気

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィール・アガレスは忌子として、人間界で育てられた。

 

 アガレス分家、その中でも能力はあるが素行に問題がある上にプライドだけは高い男がいた。

 

 男は同じく優秀だが性格の悪い女と金と遊びの為に婚約したが、そんな精神性ゆえに下級中級の女を半ば強引に遊び相手としていた。その上悪魔の出生率が低いことから避妊もいい加減であり、結果として生まれたのがヴィールだ。

 

 それに対して分家の男は余計な悪評が立っては困ると、半ば強引に人間界に送り出すという手法をとった。それも、妻との子供に何かあった時に備えて最低限の帝王学だけは学ばせていてだ。

 

 ……だが、ヴィール・アガレスはそこでとどまることを()()()()()

 

 自分が不遇であり、父親が下種であり、余程のことがなければ引き上げられないことも悟ったうえで、常に精進を続けていた。

 

 知識があるならそれに越したことはない。体も鍛えればより強靭になる。それをヴィールは幼子の頃に見たテレビの内容から把握し、誰に言われるまでもなく努力を務めてきた。

 

 いじめられることもあったが、そんなことは意に介さない。教えてくれる者がいるのなら必ず礼を言うし、幸い親はある程度の金は寄越してくれるから、それをもってして謝礼はきちんと出したのが功を奏した。

 

 最も、それにしたって限界はある。もとより頭を押さえられている状態では、成長してものし上がれるチャンスは薄い。やろうと思えば下剋上で父を引きずり落とすこともできるだろうが、うかつにそれをしても意味がないと悟っていた。

 

 少なくとも、この頃のヴィールは冥革連合のような規模の騒動を起こすつもりはまだなかった。

 

 自分一人が革命を起こしたところで意味はない。冥界の未来をより良くしたいという志はあったが、故にこそ決定的な手段もなく内乱を起こすことをに価値を感じていなかった。

 

 ……転機が訪れたのは、今から五年と少し前のこと。

 

 ヴィールは田舎に叩き込まれていたが、その田舎で亜種聖杯戦争が起き、結果的にヴィールは巻き込まれた。

 

 マスターの一人は魂喰いを敢行し、更に神滅具による力を使うことも考慮。それらのポテンシャルを最大限に発揮する為、悪魔がいることを悟った時点でターゲットにしていたのだ。

 

 ……窮地だったといえるだろう。追い詰められたといえるだろう。

 

 だが、ヴィールは勝利した。

 

 究め高めてきた地力によりマスターを打倒し、もとよりマスターを嫌っていたサーヴァントを鞍替えさせることに成功し、そして優勝した。

 

 そしてこの時、ヴィールが願ったのは悪魔の駒についての知識だった。

 

 冥界の発展において最も貢献していると言ってもいいものは二つある。大王派に属する分家の主導による、純血悪魔の出生率向上。そして魔王ベルゼブブによる、悪魔の駒というアイテムだ。

 

 この悪魔の駒にはまだ可能性があると、ヴィールは常々思っていた。故にこそ、可能性があるなら悪魔の駒の全てを知り、自らその可能性を広げたいとも。

 

 それゆえの悪魔の駒に対する知識を知り―そこから、ヴィールの覇道は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐斗Side

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺は聖杯戦争に巻き込まれ、そしてそのマスターから己が器量をもって鮮血の聖別洗礼(パプテマス・ブラッド)とサーヴァントだったクラウディーネを奪い取り、聖杯によって冥界は変わるべきと悟って行動を起こした」

 

 静かに、ヴィールは語り始める。

 

「俺がここに至るまでにしたことは、決して珍しいことではない。……少しでも多くの有効な努力をする()()()()()それだけだ

 

 それは、確かにその通りだと思う。

 

「努力をしたから夢が必ず叶うわけではない。何より多くの物は程度の差はあれ努力をし、更に才覚の違いがあり、場合によっては夢が競合することもあるのだから当然だ。だがだからこそ、より可能な限りより良い努力を、厳密にいえば()()()()()()()()()()を見出して積み上げることは重要だ」

 

「それは当然だ。当たり前のことじゃないか」

 

 ためらうことなく、即答するようにリュシオンさんは答える。

 

 だがなんでだろう。彼の当り前で真っ当で立派な考え方に、どこか寒気を感じるのは。

 

 まるで塔だと思っていたものが、より巨大な建築物を構成する支柱の一つでしかなかったかのような、そんな違和感を覚えている。

 

 そして、ヴィールもまた肩をすくめた。

 

「……では、これを聞いているすべての者に尋ねよう」

 

 そう前置きし―

 

「……君達の中に、()()()()だと確信しているのなら毎日採血採尿採便をして医者に検査してもらった結果に合わせて、管理栄養士が設定した量と栄養バランスの食事を指定された時間帯でとることを()()続けられると確信できる者はいるかね?」

 

 ―凄いことを言い出した。

 

毎日数回体温や脈拍を検査し、次の日の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことはできるか? 毎日()()()()()()()()()()()()()()()の基礎体力を上げるトレーニングを行い、()()()()()()()()()()()()()()()()ことは?

 

 ここまではまだ分かる。明らかに異常な気もするけど、まだ分かる。

 

 だがここからが更に加速した。

 

前日のデータに合わせた薬湯での毎日違う時間の湯浴みをし、整体や鍼灸による調整を行いながらレーティングゲームの記録映像を見取り、()()()()()()魔法や魔術を使用して数多くの映像資料を見る睡眠学習を行うことができるかね?

 

 真っ直ぐに、嘘偽りがない本気の目で、そう尋ねる。

 

十数人もの医師・トレーナー・教師達が設定した、休息時間すらより効率的な休息をとる為の機械的に設定した、()()()()()()()()()()()()()()によって管理された「より目的を達成する為だけ」の生活を()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことが、できるか?

 

 周囲が気圧されるようなことを言って、ヴィールは静かに首を横に振った。

 

「少なくとも、俺は()()()()そんなことができる者を知らない。冥革連合の決意に満ちた者達ですら、長くて一年で心を病んでドクターストップがかけられたとも」

 

 そして、真っ直ぐにリュシオンさんを見据える。

 

「……お前はそれができそうだな」

 

「やったことがないし、そのやり方は誰もがついていけるようなものではないからやることもないだろうね」

 

 まっすぐに、平然と答えられるリュシオンさんを、僕は信じられないものを見る目で見ていただろう。

 

 彼は気圧されていない。かと言って、ヴィールがそれをしてないという風に信じていないわけでもない。

 

 ヴィール・アガレスがそんな生活をし続けてきたと信じたうえで、特に気圧されることなく平然としていた。

 

 むしろ彼のあの対応は、それが()()()と無意識にでも思っている人間の反応だ。

 

 それが、僕には信じられない。

 

 彼の告げている生活が本当なら、そんなものは狂気的と言っていい。そんな生活を冥革連合の中でもヴィール以外ができてないということも納得できる。むしろできる悪魔が何人もいてたまるものか。

 

 それを、信じたうえで平然と受け止められるリュシオンさんに、寒気すら感じる。

 

「……そんなやり方は誰もがついていける類ではない。コツとかそういう次元ではなく、間違いなく何かが外れているものだけの特権だろう」

 

「当然だとも。俺は自分が外れていることを()()()()()()。お前と違ってな」

 

 真っ直ぐに、視線をぶつけ合いながらリュシオンさんとヴィールは言葉を交わす。

 

 そしてヴィールは苦笑すら浮かべながら、肩をすくめる。

 

「俺はな? 多くの者達が言う「頑張ったけど叶わなかった」とかいう言葉を実感できん。多くの者達がそういう状況になることを知識としては知っているが、真の意味で理解すらしていないと断言できる」

 

「……そうかい? 確かにコツを掴めずに実行しようとするのは困難なことは、数多いと思うけどね」

 

 リュシオンさんのずれた返答に、ヴィールは静かに首を横に振り―

 

「そうではない。なら()()()()()()()のかが理解できないんだよ」

 

 ―そんな、寒気のする言葉を言い放った。

 

 夢が叶わないことと、死んでいることが同義かのように、ヴィールは告げる。

 

 まさか、死ぬまで努力するのが当たり前のことだとでも、そういうつもりか?

 

 努力を基本とする僕達グレモリー眷属でも、決してそこまでは―

 

「……理想()をもって歩み始めて以来、どうしてもそれが理解できない。どうして夢に近づけていないのに、()()()()()()()()()が皆目共感できないのだ」

 

 ―なんて?

 

なんで夢に近づける実感もないのに、心因性の狭心症や胃炎や過呼吸や不眠症に陥らない? 血便血尿血痰血涙が出てこない? 何故夢の邪魔をしようとするような家族に憎悪を覚え排除しようと思えない? 何故通常の鍛錬で夢に近づけていないと思いながら、薬物投与や禁呪付与といった自己改造を試みずに精神を安定させ、幻覚や幻聴に襲われない? 何故夢が叶えられないと悟りながら、その絶望で狂い死にせずに普通の生活を送ることができる?

 

 寒気を覚える。思わず恐怖で身震いすらする。

 

 彼が嘘をついていないと、それを本能で悟ってしまったからだ。

 

 彼は本心からそれが疑問だった。そしておそらく、自身は本当にそうなるのだろう。

 

 でなければ、あそこまで狂気的な生き方をして精神に異常をきたしていない理由が納得できない。彼にとってはそこまでしなければ逆に精神が安定しない、そういう「理想の為に全てを捧げる」ことが本能的な常態だと、痛感した。

 

「……だからこそ、俺は外れている。それを自覚しているからこそ、できないことが珍しくもないと理解しているからこそ、それを痛感してもできるようになりたいという者達に敬意を持つ。だからこそ、俺は武闘派の眷属を持っている」

 

 そう告げ、そして静かに拳を構え直す。

 

「来るがいい、三大勢力。すまないが、春菜が決着をつけるまでは終わってやる気はないのでな」

 

 一歩、思わず引いてしまったことを自分で責めることができない。

 

 この男は、化け物だ……っ。

 

 今迄化け物と形容できる存在と、何人も戦ってきたことを自負している。

 

 白龍皇ヴァーリ・ルシファー。北欧の悪神ロキ。それに英雄派の曹操もそうだった。サイラオーグ氏もその領域といえるだろう。

 

 だが、目の前の男はベクトルが違う。

 

 常人を圧倒する絶大な精神性。その精神性に由来する圧倒的な力。そう、精神性こそがこの男の圧倒的な力のポテンシャルに繋がっている。

 

 寒気を覚える精神的異端者。それを実感して、僕は今までにない戦慄を覚えている。

 

 そして―

 

「なめられたものだね」

 

 ―もう一人の精神的異端者が、真っ向からそれを受け止める。

 

 リュシオンさんは気圧されることなく、静かに一歩を踏み出した。

 

 そして二人に呼応するように、冥革連合の戦士たちがヴィール・アガレスに、デュナミス聖騎士団の半数ほどがリュシオンさんと並び立つ。

 

 気圧されることない者達が、そこで真っ向から睨み合う。

 

「……残念だな。なまじ真っ当な方向を突き抜けているうえ、傑物揃いであるがゆえに自覚ができない環境か」

 

「なら教えるしかないだろうね。本当に真っ当な道を歩んでいるからこその強さというものを……!」

 

 リュシオンさんが拳を構えると共に、しかしヴィール・アガレスの前に、彼の眷属が壁になるように立ち塞がる。

 

「……少しは主らしくどんと構えてなさい。というより、私達にも少しは獲物を頂戴?」

 

「クラウディーネさんはすぐそういうことを言う。まぁ、僕としても主が僕達より危険なところにいるのは避けたいけどね」

 

 女王のクラウディーネ・デゥルカンナインと、変異の駒で転生した双竜健也。

 

 ……この二人もまた、ヴィールほどではないけど狂気的ということか。

 

「こういうセリフを言ってみたかったの。……まずは私達を倒してからにしなさい」

 

「まぁ、眷属としては主より先に体を張らないとね。……かかってこい」

 

「……いいだろう。どちらにせよ君達も打倒するべき敵だしね」

 

 静かに、三人が向き合い―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、激戦が再開した。

 




 ヴィールのメンタル面において、たまたま見たサイラオーグを否定するタイプのアンチ・ヘイト作品のある話が影響を与えていますが、それと同じぐらい影響を与えたのが、たまたま見た創作掲示板の命台詞的なあれ。

 ……めちゃくちゃトチ狂っている精神性に、「あ、これ敵キャラの芯にしたら面白いかも?」なんて思ったことから、ヴィールのこのトンチキ根幹が出来上がりました。ただし組織の長なので、自分がどうかしていることはきちんと自覚させております。

 そしてもうちょっとお待ちください。そろそろ主人公達がブーストかかりますので!

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