好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

218 / 528
 はいどうもー! 連続予約投稿もこれにて終焉となります! グレン×グレンです! 書き貯めすっからかんです!

 感想と高評価は常に飢えております。特に次の章はヘビーになるので、やる気スイッチ代わりに高評価を入れてくれると励みになります。


冥革動乱編 第六十九話 クライマックスの後は―

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 や、やったか!? いや、これ言っちゃダメなやつだ!

 

 俺はもう鎧が解除されて、これ以上はちょっとまじでやばい。

 

 サイラオーグさんやヴァーリも鎧を解除しちゃっているし、九成やカズヒもいい加減体の方が限界っぽい。

 

 固有結界が解除されて、俺達は睨み合う形になったけど……大丈夫か?

 

 そんな俺達の視線の先、ヴィールはゆっくりと足と上半身の力だけで立ち上がった。

 

 ……両手があらぬ方向に曲がってる。どうやら骨折したらしい。

 

「……見事だ。あれだけの数を揃えてとはいえ、俺の全力をよく押し返してのけた」

 

「……禁手も使わずによく言うわね」

 

 カズヒが不満げに言うけど、何故か成田って人が首を横の振った。

 

「あ、それ違います。ヴィール様の禁手は()()()()()何の役にも立たないんです

 

 なんかそんなこと言ってるけど、え、どういうこと?

 

 神滅具の禁手がこういう時に役に立たないわけないよね!? どう考えても使いどころだよね!?

 

「春っち、できれば説明してくれないか?」

 

 あ、九成が聞いた! でかした幼馴染!

 

「ヴィール様が至った鮮血の聖別洗礼(パプテマス・ブラッド)の禁手は 洗礼の血統秘術(パプテマス・ブラッド・ファミリア)。ある程度のインターバルを必要とする代わりに、他者に神聖血脈を与える亜種禁手よ

 

 そ、そうなのか。

 

 確かに、直接戦闘だと全然役に立たないな。本人は強化されないんだし。

 

 でも、別の意味で厄介すぎる。

 

 それってやろうと思えば神滅具級の異能を持ってるやつがごろごろ出てくるんだろ? それってマジでやばいじゃねえか。

 

 ……あ、ってことは!?

 

「なんかフェニックス家みたいな再生したの、それか!?」

 

 ちょっと通常攻撃系の禁手には思えなかったしなぁ。成田さんの再生力がそっちだというなら納得だよ。

 

「……どうやらそのようだ。洗礼の決闘秘術での神聖血脈は()()()()()()、与えてから一年以上経っても発現しなかったが、ここにきて覚醒したようだ。礼を言うぞ九成和地。俺が見出した者が、ついに念願かなって己の足で立ち上がれたのだからな」

 

「……本当に余裕だな。言っとくが春っちは返さないぞ」

 

 べた褒めするヴィールに九成がジト目でそう返すけど、ヴィールはむしろ誇らしげだった。

 

「当然だ。むしろ戻ってくるようなら、全軍をもって殺すから覚えておけ」

 

「それでいいのかね?」

 

 フロンズさんがそう突っ込むけど、ヴィールはどこ吹く風だった。

 

 しっかりなんていうか凄い奴だな。

 

 自分を一切強化しない禁手とか、並みの精神力じゃ至れないだろ。

 

「あ、ってことはあそこの連中にも神聖血脈使える奴がたくさんいるのか!?」

 

「っていうか使える奴は堂々と使ってるわよ、赤龍帝」

 

 成田さんに呆れられたけど、まじか!

 

「例えば健也さんがぽんぽん大出力の魔力砲撃を放てるのは、()()()()()()()()聖魔剛力之炉心(せいまごうりきのひだね)」によるものだし、クラウディーネさんが呼び出す兵団も兵団創生能力「氷河なる追随師団(ついずいしだん)よ?」

 

 まじか!? ポンポン使ってたんだな!?

 

「……他の連中も使ってると見ていいのか?」

 

「ええ、あそこのケンゴさんが持ってる剣もそれよ。怠惰与えし赤剣(ソード・オブ・スロウス)だったっけ」

 

 本当に使ってるやつゴロゴロいるな!?

 

 なんか俺がビビってると、フロンズさんは盛大にため息をついていた。

 

「まったく。自分にはともかく他人にはゆるいことだ。私も強化手段は外付けする主義だが、もう少し厳しさをもって他者に接するべきでは?」

 

「ビジネスライクに接している貴様ならそういうだろう。だが俺は、同士や見出した者にぐらい情をもって接したいのでな」

 

 そう真っ向から言い返したヴィールだけど、すぐに肩をすくめた。

 

「とはいえ、ここまでやられたなら認めるほかない。心配していた真魔や王の駒も使ってはいるようだし、此処は引くとしよう」

 

 そうヴィールが言うと、なんか後ろの上級悪魔のお姉さんが、ぱちんと指を鳴らすとなんか赤い門が開いた。

 

 見ると向こう側に別の景色が見えているし、何人か先に入って行ってる。

 

 畜生! なんだあれは!

 

「速攻発動乳語翻訳(パイリンガル)! あれはなんですか!?」

 

『簡単に言うと転移ゲートよん? 事前に登録した扉と扉を繋げるの』

 

『すっごい転移ゲートでござる。我らがここにこれたのも、トーゲ殿が前もってアグレアスにいたからなれば』

 

「このテロお前の所為かよ!」

 

 思わずツッコンだけど、何か外の様子も落ち着いているな。

 

「ふむ、撤退なのか?」

 

『ハヤテ達が忙しいから返答するけど、こっちも撤退態勢に入ってるね。サリュートⅠを殿に使ってる感じかな?』

 

 あ、ミザリがそう答えるけど、向こうも頑張ったんだな!

 

「まぁそういうわけだ。俺達も当分は様子見していいと判断した。……とはいえ長くは待たんがな?」

 

 そう言いながら、ヴィールも扉をくぐろうとする。

 

「まぁ、君はそっちの方がいいだろうさ。今後は遠慮しないから、精進はおろそかにしちゃ駄目だよ?」

 

「ま、貴女にこっちは向いてないわね。……今度会う時は魅せて頂戴?」

 

 ヴィールの眷属はそう言いながら扉をくぐって行く。

 

 そしてヴィールがくぐろうとした時、成田さんが一歩前に出た!?

 

「待ってくださいヴィール様! 何故、私に神聖血脈の素質を()()()()()にしたんですか!?」

 

 あ、確かに。

 

 取り消しておかなきゃ、俺達を倒せてたかもしれないよな。

 

 本当になんでだ?

 

 俺達が疑問に思っていると、ヴィールは扉をくぐりながら首を傾げた。

 

「ん? そもそも洗礼の血統秘術(パプテマス・ブラッド・ファミリア)()()()()()()()()ぞ? 一度与えれば意志力次第で覚醒できるようになるという、ただそれだけの亜種禁手だが」

 

 え、まじで!?

 

 あれ? でもその割には成田さんを放っておいている感じだけど?

 

 成田さんも、なんていうか信じられなさそうな雰囲気だし。

 

「なら、なんで私を和っちのところに!?」

 

「……全く。何度も言わせるな」

 

 扉が消えようとしたとき、ヴィールは苦笑すら浮かべていた。

 

「俺は九成和地と並び立ちたいという、お前の潰され心が折れてもなお、朽ちることができない()()()()()()()()のだ。眷属としたことなど、側にいることで添え木になる為以外の何物でもない」

 

「……っ」

 

 その言葉に、成田さんは肩を震わせて―

 

「……今まで、ありがとうございました! 恩を仇で返すこと、お許しください……っ」

 

 ―涙をこぼしながら、頭を下げる。

 

 それに対して、ヴィールは苦笑しながら首を横に振った。

 

恩に思うのなら、()()()()()。お前の生き様で貴族達に発破をかけ、冥革連合(俺達)を打倒して見せてくれ」

 

 その言葉と共に、ヴィールは扉をくぐって転移する。

 

 その扉が消えてもなお、成田さんは肩を震わせながら頭を下げる。

 

 そんな成田さんに、九成がそっと寄り添った。

 

 ……でもまぁ、何とかなった……か………?

 

「イッセー!?」

 

「い、イッセーが限界です! アーシア、小猫ぉおおおおっ!」

 

 慌てて合一が解除された部長やシャルロットが支えるけど、なんか意識が保てない。

 

 ……あ、やば、もう無理―

 

 

 

 

 

 

 

 

九成Side

 

 

 

 

 

 

 

 あ、イッセーが倒れて大騒ぎだな。

 

 いやまぁ、こっちも結構キッツいけど。

 

「カズヒでかし……たぁあああああ!?」

 

 鶴羽の絶叫が聞こえ来たけど、カズヒ姉さんに何があった!?

 

 あ、ヒマリやヒツギが邪魔で見えない!

 

「カズヒが倒れましたのよ!? 白目剥いてますの!?」

 

「限界だったんじゃん! ちょ、こっちにもアーシア……いや、もうさっさと医務室連れて行った方がいいかなこれ!」

 

 カズヒ姉さんまで倒れた! あっちも相当限界だったらしい。

 

 俺もちょっと本気ですぐにでも助けに行きたいけど……我慢。

 

 カズヒ姉さんにはたくさん人が集まっているからな。そっちはそっちに任せて……任せよう!

 

 後ろ髪を引かれる思いで、だけどやるべきことをまずやらないと。俺個人としてもそうしたいし、カズヒ姉さんだって怒るだろうしな。

 

 だから、俺はなんていうか燃え尽きそうな春っちに近づいた。

 

「……春っち」

 

「和っち……」

 

 ちょっと言葉が見つからないけど、俺はそっと春っちの手を握る。

 

 これぐらいしてもいい。きっと、俺はそうしてもいい。勘違いじゃないと思う。

 

 とりあえず、振り払われたりせずにギュっとされているので大丈夫だよな。

 

 うん。カズヒ姉さんが色々大変な感じなので、凄くいたたまれない。

 

「……そこよ! もっとこぉ、肩を抱いて!」

 

「はいはいリヴァさんは邪魔しない」

 

 インガ姉ちゃんサンキュー! リヴァ先生は今どっか遠くに引っ張っておいてくれ!

 

 ……ええい根性! 今は春っちだ春っち!

 

「……春っち!」

 

「え!? あ、はい!」

 

 なんかちょっとぎくしゃくしているけど、それでもこれだけは断言する。

 

「多分俺達が住んでるイッセーの家にメイドってことになると思うから! 色々あるだろうけど理不尽な目においては俺が全力で動くから! たぶんない……いや別の意味であるか」

 

 真剣に別の意味で理不尽が巻き起こりそうだ。その辺真剣に思うほかない。

 

 いや、心配になるようなこと言ってどうするんだよ!

 

 ……深呼吸だ。深呼吸。

 

 落ち着け。俺が言うべきことはそこじゃない。

 

 一度目を閉じて冷静になってから、春っちの顔を見る。

 

 なんというか困惑と照れが混ざっているけど、とりあえず俺の所為だし困惑はスルーするとしよう。

 

 で、だ。

 

「春っち……」

 

 俺が言うべきことは、きっと―

 

「……大丈夫だ。俺は、此処にいるから」

 

 ―ここに居ていいと、それを保証することだ。

 

「罪を犯したと思うのなら、これから償っていけばいい。俺もまぁ、少しぐらいは肩を貸すさ」

 

「……でも、いいの?」

 

 春っちは、少し俯いた。

 

「……私の禁手は、本領を発揮するまでに結構な犠牲者を生んでるわ。そういう、禁手なの」

 

 そう言いながら、春っちは自分の右手を抱え込むようにする。

 

赤き炎の腕(アーム・ファイヤ)を取り込むことで出力を増し、更に取り込んだ分だけ別の禁手に至ることができる亜種禁手。それが私の禁手、赤き紅炎の支配者(ルーラー・オブ・ファイヤ)よ」

 

 なるほどな。

 

 アザゼル先生の疑問はそういうことか。

 

 高すぎる出力と、禁手クラスの出力の手札をいくつも持っていたことも、それで納得だ。

 

 そうか、自分を支えられる力がへし折られてなお、それでも力を求めたから、そんな禁手に至ったのか。

 

 そして、そんな禁手を生かすのなら答えは一つだ。その成長には、幾人もの赤き炎の腕を持つ者から、それを奪い取る必要がある。

 

 成田春菜の成長は、血塗られた道の先にある。

 

 俺はそれを理解したうえで、春っちを抱き寄せた。

 

「……大丈夫だなんて言わない。恨んでいる奴は多いだろうし、一生向き合う必要はあるだろう」

 

 それは否定できない。どんな形で神器を奪ったのか分からない以上、春っちがどう思われるかなんて俺が理解することも、悟ることもできない。

 

 だからこそ、やり方次第では一生背負い続けることにもなるんだろう。ヴィールならある程度は手段を選んでそうだが、それでも恨まれている可能性はある。

 

 だけど……だ。

 

「春っちが向き合って償うっていうなら、俺はそれを応援する。それに三大勢力全体も、多分そういう方向で行く」

 

 ああ、それだけは理解している。

 

 むしろそんなことは、インガ姉ちゃんでも分かりきっているわけだしな。

 

 それにだ。

 

「……後忘れてると思うけど、春っちは俺が今からもらい受けたわけなんで……うん、俺のものだからその辺りはある程度クッションとか減衰とかさせてもらうから! 大丈夫! 俺ユーチューバー的な収入とかで貯金あるし! 保釈金とか賠償金なら多少は建て替えれる!」

 

 どうしても物理的という時は……俺も殴られよう。

 

 内心で治癒魔術の練習を真剣にやり直そうと思いながら、俺はとにかく元気よく、大きな声で宣言する。

 

「とにかく! 春っちは俺のものだ! 俺の裁量の範囲内でしっかり償ったのなら文句は言わせないからその辺はよろしく!」

 

 いや、これどうよ?

 

 いや、もうこうなったら真剣に押し切れ。このままいくぞ。

 

 どっちにしてもこの選択肢で突っ走るしかないわけだ。だったらもう、やるしかないだろう!

 

 気合を入れて、まっすぐに、俺は春っちの方を向いて宣言する。

 

「……一緒にいてくれ! ずっと一緒にいたいような、そんな男でいられるよう頑張るから!」

 

 ……違う! 方向性が違う。

 

 やばいパニクっている!?

 

 こ、これは……その……。

 

「………っ」

 

 涙目!? これはどっちの意味ですか!?

 

 冷や汗だらだら心臓バクバクで俺は返答を待つ。

 

 そして―

 

「……うん。私も、ずっと一緒にいたいような、そんな女でいて見せるからっ」

 

 ―華やかな笑顔に、俺はほっとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ハッ!?

 

 やばい!? 気が緩んだ所為で限界がきてぶっ倒れたぁ!?

 

 俺は馬鹿か!? 何をやっている!?

 

 うぉおおおお! 俺はラブコメ漫画のあほなタイプの主人公かぁああああ!?

 

 思わず悶絶していると、盛大な溜息が聞こえてきた。

 

「何やってんだ、お前」

 

「あ、ベルナ」

 

 そしてこの流れで第二弾か!?

 

 なんというか微妙な空気だ。というか、ベルナに関しても真剣に向き合うべきだ。

 

 向き合うべきだ。だけどどうする?

 

 春っちと同じパターンだと二番煎じで、変な空気になりかねない。何より付き合いの少なさがこういう時に微妙に働いてしまうのは間違いない。

 

 畜生! なんとしてもマシな答えを考えないと!?

 

 真剣に俺が拘束で頭を回転させていると、俺が横になっていたベッドにベルナは座り込んだ。

 

「……なんつーか、ありがとな」

 

 そんな風に告げられて、俺はパニックを抑え込んでまずは話を受け止める体制になった。

 

 ……俺はベルナについてよく知らない。そのうえで、もらい受けると宣言した。

 

 なら、ベルナについて知る努力が必要だ。皆に対してもそうだけど、ベルナに対してはもっと強く知ろうとするべきだ。

 

 だから、ベルナが自分から語るのなら受け止めるべきだろう。

 

 俺の真剣な表情に、ベルナは苦笑しながら天井を見上げた。

 

「……あんたが真剣にあんなこと言ったことで、アタシは自分が引きずられっぱなしだって理解したよ。まぁ、シチャースチエの奴にガツンと言われたのもあるけどな」

 

「そうか。なら、カズヒ姉さんにも感謝しといてくれ」

 

 カズヒ姉さんは俺が敬愛する人だからな。感謝の言葉は直接伝えてほしい。

 

 そしてベルナは頷くと、盛大にため息をついた。

 

「つーか色々過去話して、漸く完璧に実感したからなぁ。春菜は下僕悪魔だからまだ情状酌量とかが冥界的につくだろーが、アタシはそっちはつかねえだろうし罪は重いだろうな~」

 

 た、確かに。

 

 悪魔社会的に眷属悪魔が主に逆らうとか普通はないだろうから、その方向性で情状酌量はあり得る。そういう意味だと春っちは安心だ。

 

 だけどベルナはそういうわけでもないしな。そっち方面での減刑とかは無理……か。

 

「あ~。でも来歴的に色々あるし、まぁ流れ的には情状酌量……というか、メイド業務って大丈夫か?」

 

 まぁ流れとしてはそうなってほしいけど、ベルナってメイドとかできるんだろうか?

 

「なんで使用人だよ。……まぁ、家事はそこそこできる自信はあるぜ?」

 

「そ、そうか。……失礼な感想だけど、ちょっと意外だな」

 

 なんていうか、そういう雰囲気がなかったな。

 

 俺がついそう言っちゃうと、ベルナもため息をついた。

 

「そうなんだよな~。何つーかこれが地なんだけどよ? やっぱこれだとお嫁さんとか無理だよな………」

 

「へぇ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「………………あ」」

 

 

 

 

 

 

 

 凄いことがぶっこまれたな、これ。

 

 なんだこのギャップ萌え。いやそうじゃない!

 

 ……もらい受けると宣言したんだ。引っ張り込むこともできたんだ。何より発言に責任を持ちたいと思っているだろう。

 

 なら、俺が言うことはただ一つ!

 

 顔真っ赤にしているベルナに対し、俺は起き上がりながら断言する。

 

「と、とりあえずまずはお見合いからでよろしいでしょうか!?」

 

「お前すげえな!?」

 

 返答はそれでいいのか!?

 

 ベルナはベルナでパニクってるけど、俺もちょっとパニックだったか?

 

 お互いに深呼吸をして落ち着きながら、ベルナは一度目を伏せて息を盛大に吐いた。

 

「……っていうか、テロリストとお見合いしてどうするんだよ!?」

 

「いや、ついさっき抜けたばかりだろ。そもそもヴィール相手に一発かましてるんだから、今更戻れないだろ」

 

「そりゃ確かに姉貴にもきちんとメールは送ったけどよ!? お前はそれでいいのか!?」

 

「既に禍の団所属経験者は二人もいますけど!? 自分の発言には責任持つよ俺!」

 

 失礼な。俺は掲げた誓いは死守する男だぞ。

 

 っていうかやっぱりもうやめてるんだな。なら尚更だろ。

 

「多分冥界のノリだと極刑はないだろうし、間違いなくお前は兵藤邸でメイドだ。メリードにしごかれること間違いないから、まぁ春っち含めて愚痴ぐらい聞いてやる」

 

「そ、そっか。……問題は口調だな……じゃねえよ!」

 

 なんかノリツッコミ!?

 

 というか、盛大に顔赤いな。

 

「……いいのか? 割と重い女だぞ、アタシは」

 

「まぁ、まだ色々と知らないから知っていくことから始めるさ。あと重い女は大丈夫だ。春っちやインガ姉ちゃんで慣れてるし、主神の娘とかいるから」

 

 うん。答えてから自分でも呆れるけど、重い女が多いな俺。

 

 インガ姉ちゃんの柱になっている自覚はあるし、春っちにおいては誰もが断言するレベルで俺がガチの柱だ。リヴァ先生に関しても、半世紀以上のとっかかりを解消したきっかけであり、あそこまで宣言している。鶴羽だって色々と抱えているところはあるというか、ザイアの中でザイアに染まらなかったのには俺と意見が一致していたこともある。割と俺ってそういう支えになる定めっぽいな。

 

 それに、カズヒ姉さんだ。

 

 リーネスも鶴羽も知っているようだけど、カズヒ姉さんは何かを抱え込んでいる。きっとそれは、インガ姉ちゃんやリヴァ先生、春っちや鶴羽に負けず劣らずの重い何かだ。

 

 ……だからこそ。

 

「……聞いてる範囲内なら問題ないさ。俺だって色々と捻くれた人生送っているし、ベルナが自分の意志で前を進むというのなら、言い出しっぺとして手伝うさ」

 

 ああ、そこに嘘は断じてない。

 

 まっすぐに、心から。断言して見せる。

 

 その俺の本気に、ベルナはどこかほっとしたような苦笑を浮かべてた。

 

「……あたしは、まだ誰かに流され付き合いでテロするところから、付き合う誰かを自分で選んだ程度なんだ。たぶんだけど、まだ自分の意志で歩いて行ってるなんて全然言えない」

 

 そのうえで、ベルナは真っ直ぐに俺を見た。

 

「だから……あたしが自分の足で歩けるようになるまで、支えてくれるか?」

 

 そうか。

 

 それが今のベルナの決断で、そこから先を見据えているなら。

 

 俺の答えはただ一つ。

 

「もちろんだ。そして、一緒に歩く道を選んだっていうなら、俺は最後まで責任持つぜ?」

 

 その言葉に、ベルナは涙目で顔を赤くする。

 

「殺し文句言ってるんじゃねえよ。……だ、だったら担保をよこせ、担保を!」

 

「分かった分かった。とりあえず、何がいい―」

 

 その瞬間、俺の唇はベルナに塞がれた

 

 ………。

 

 面食らって顔を真っ赤にする俺に、同じぐらい顔を真っ赤にしながらベルナはにやりと笑ってきた。

 

「……仕事抜きだと初めてだからな? その甲斐ぐらいはよこせよな?」

 

 ……‥あ、今ので俺の限界が再び来た。

 

 と、とりあえず―

 

「………頑張ります」

 

 ―言うべきことを言って、俺は再び気を失った。

 




 戦闘終了後に一気にいろんな情報を明かしました。

 ヴィールの禁手は文字通り、本来は鮮血の聖別洗礼持ちだけが使用できる神聖血脈を他者が発現できるようにする禁手。強い精神力を持つ者たちを、増やせる速度に限界はあれど異能持ちにできるという軍勢強化向けの禁手です。

 大体冥革連合のネームドは全員持ってますね。春菜も一皮むけたことで獲得しました。フェニックス家並みの不死力を発揮できるようになりました!




 そしてフラグを高速で建築しながら明かされる春菜の強さの秘密。同種の神器を取り込むことで、出力向上と複数の禁手を発現させる亜種禁手です。

 このネタを思いついてから出したくてたまらなかったタイプの禁手です。今後機会があったら同系統の禁手持ちを出したいとも思っております。





 そしてフラグを建立して、戦闘も終了。エピローグは一話で終わらせようかと思っております、はい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。