好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

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 はいどうもー! 次章が進むにつれ、ただでさえどっちかというと低い水準の平均評価が下がらないか、実に不安なグレン×グレンです! 感想は募集しているけど、高評価を募集できるかちょっとな感じだぜぇ!


 本日は恒例の幕間です。






 あと、設定資料集を昨夜のうちに大量に追記修正しております。ぜひそちらもご覧くださいませ。


冥革動乱編 幕間   女子会開催! 男子大被害!

Other Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……では、これより「和地ラバーズ女子会」を始めたいと思います!」

 

「……いや、まだ私撃沈されてないわよ、リヴァさん」

 

 リヴァの宣誓にカズヒがストレートにツッコミを入れるが、同時に鶴羽やインガの視線が「え、まだなの?」と付きこまれた。

 

 それを軽くスルーしたカズヒは、椅子に座ると気晴らしにオレンジジュースを一口飲む。

 

 盛大にため息をつくなり説教をしたいが、多分それをすると負けになりそうな気がした為、話を進めることにしよう。

 

「というより、関係者とはいえ巻き込まれた春菜とベルナが困惑しているからそっちをまず何とかしなさい」

 

「……あの師匠。これどう言うことなんですか?」

 

 乗っかってくれるのはありがたいが、なんで師匠だ。

 

 内心で春菜に対してツッコミを入れるが、なんというかある意味慣れているので声には出さない。

 

 言うべきことはただ一つだ。

 

「和地に恋焦がれるのを続けるのなら慣れなさい。リヴァさんは基本こんな感じよ」

 

「勘弁してくれよ……」

 

 テーブルに突っ伏したベルナに、ぽんぽんとインガがなだめる様に手を置いた。

 

「リヴァさんは基本こんな感じだから……慣れてね?」

 

「そうそう。この人、一番年季があるくせして一番精神年齢若くするから……」

 

 一番振り回される性格な鶴羽がついついぼやくが、しかしカズヒが言いたいことはそこではない。

 

 とりあえず、話を前に進めよう。

 

「……というか、なんでこんなことになってるの?」

 

 

 

 

 

 

 きっかけは、和地が男子陣で馬鹿話をしようと思うとのことで、オカ研男性陣だけでカラオケボックスに出かけて行った直後だ。

 

 カズヒの電話にカズホから連絡が来て、「日本に来ているから時間が合うなら会いたい」ときて、時間を合わせる為に早めにハンバーガーショップに出発したら……何故かリヴァに引っ張られる形で鶴羽達が先回りしていた。

 

 そして何時の間にやら神様パワーで軽い結界を張ったうえで、神様パワーで強引に高い食べ物とジュースを持ってきてから話がこんなことになった。

 

 流れから言って、もはや本音を言っていいだろう。

 

「……とりあえず第一議題は「リヴァ(この馬鹿)はもうタメ口の扱いでいいでしょう」にしましょう」

 

「相変わらずキッツい!」

 

「「「「異議なし!」」」」

 

「みんなキッツい!」

 

 へこたれないこの女に、変な遠慮をすることもないだろう。

 

 満場一致で扱いを雑にする方向で決定し、話は更に進んでいく。

 

「……というか、なんで私達まで引っ張られたの?」

 

「え~? カズ君がいないところで女子会とかしたくない? 男同士の馬鹿話もそうだけど、ガールズトークもぶっちゃけし甲斐があるじゃない」

 

 さらりと返され、鶴羽は軽くため息をついた。

 

「最年長が一番軽いのどうなのよ」

 

「年季が違うから、はっちゃけるところははっちゃけるのよ。……まぁ、皆はあんまりそういうことしないタイプっぽいけど」

 

 素早くカズヒに切り返しながら、リヴァは不満顔でアイスティーを一口飲んだ。

 

「あんまりはっちゃけないのも問題よ? ロキみたいになるかも」

 

「「うっへぇ」」

 

 思わず、鶴羽と一緒にカズヒがげんなりした。

 

 確かにロキ神はギャグキャラという印象は全くなかった。真面目過ぎると異形は最終的にああなるのかと言われているようだ。

 

 つまりまともな異形ははっちゃけるということになる。あながち反論できない長命の異形達ばかりいることから、そんな感じになってしまうのも無理はない。

 

「……私は人間のままでいい気がしてきたわね」

 

「同感。長生きするのも考え物ね」

 

 鶴羽と視線が合い、心から同意見であることを共感した。

 

 持つべき者は腹を割って語れる共であると、常々痛感する。

 

 無論だが、かなりハードにぶった切られたので流石のリヴァもダメージが入っている。それはスルーしているが。

 

「カズヒも鶴羽も酷くない?」

 

「「だって目の前の例が……」」

 

 シンクロで更にカウンターを叩き込むが、外野になっていた三人はちょっと遠い目をしていた。

 

「私、これでも転生悪魔なんだけどな……」

 

「師匠、私も転生悪魔なんですけど!?」

 

「アタシはアタシで、混血が覚醒してるから長生きするだろうしなぁ」

 

「「あ、ゴメン」」

 

「私にだけ厳しいなぁ、皆!」

 

 これぐらいしておかないと引っ張り回されるからだ。

 

 誰もの心がシンクロした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、和地達は―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセー! 洋服崩壊(ドレス・ブレイク)やってこい!」

 

「分かってる、九成! 木場、援護を頼む!」

 

「ああ、僕達がかく乱した隙に、ギャスパー君は停止させるんだ!」

 

「はぃいいいいいっ! 先輩がた、お願いしますぅうううう! アニル君も頑張ってぇえええええ!」

 

「任せとけギャスパー! 和地先輩が障壁で稼いだ時間は、無駄にしねぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

「させんぞ怠惰な男子共! カラオケボックスに来ておきながら〇EXをしないなど言語道断! 我々が男どもに、カラオケボックスの()()の使用法を教えてやる!」

 

「行くわよ、皆!」

 

『『『『『『『『『『うぉおおおおおおおっ!!』』』』』』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなあほみたいな連中で童貞を卒業してたまるか! 俺はリアス達で童貞を卒業するんだ! そうだろ、九成!」

 

「いやその流れだと俺も部長と致すことになるんだが!? あと俺はもう童貞じゃない!」

 

「「「二人とも前ぇええええ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 ……同時多発的にカラオケボックスを襲う、大欲情教団による逆〇イプによる性欲覚醒作戦に巻き込まれ、壮絶な死闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時間は経ち、カズホが来る頃には女性達もだいぶ空気が和んでいた。

 

 というより……

 

「で? で? 師匠って子供の頃からこんな感じだったの?」

 

「はい。お姉さまは昔から考えたうえで全力をつくしてくれるからこそ、私は今生きています。……例えばレストランの店主さんに直接交渉をしに行ったおかげで、私達って週に二回もシャワーを浴びれたし、週一で出来立てのパイも食べれたんですよ

 

「そりゃすげえな。どんな交渉したらそんな好待遇でスラムのガキを雇うんだよ?」

 

 ……と、完璧にカズヒ関連のネタになってしまっていた。

 

 カズヒを師匠と慕ってくる春菜がカズホに質問をするばかりだったのだが、そこでスラム経験豊富なベルナまで話に食い込んできて、何時の間にやら話の主眼となっていた。

 

「……それは私というより店長のスタンスよ。「払うにしろ貰うにしろ、値切りもぼったくりもしない」って人だっただけ。ほら、スラムで子供が金とか食べ物をいっぱい持ってたら襲われるじゃない? だから色々断ったら、何時の間にか職場環境の方でバランスとってこられただけ」

 

「あぁ、確かに。スラムでストリートチルドレン(ガキ)が食べ物たくさん持ってたら襲撃確定だな。そりゃ職場で消費しねえとな」

 

 ベルナがすぐに納得するが、他の者達は軒並みドン引きだった。さもありなん。

 

 リヴァですら苦笑が少し引きつっている。これに関しては実際にストリートチルドレンとして劣悪環境にいたかいないかの差というものだろう。

 

 とはいえ、あれがあってくれたおかげでスラムの子供達がだいぶ助かったのは事実だ。

 

 それなりに偵察してあくどいことはしない手合いに当たりをつけてからだったが、あの当たりは本当に助かった。

 

「でもまぁ、良い雇い主がいてくれて良かったじゃない。こういうのって当たり外れが大きいものよ?」

 

「……確かに、上司とかってハズれを引くと本当に酷いからなぁ」

 

 世界大戦後の敗戦国にも縁があるリヴァや、かつての上司が致命的にあれだったインガも話に乗っかってきた。

 

「だけどシャワーありとか本当に好待遇ね。水だけってわけじゃないんでしょ?」

 

「あ、そっちはむしろ仕事の一環。厨房の掃除とか荷物運びとかもやらされてたけど、飲食店ってやっぱり衛生面が重要でしょ? 仕事前にシャワー浴びて服も洗濯しろって言われてたのよ」

 

 鶴羽に素直に答えながら、素直に過去を想いにはせる。

 

 思えば、あの当たりは本当に幸運だったといえるだろう。あれがあったからこそ生き残れたところは少なからずある。

 

 ちなみにおつり分を別途計算しており、それとなく相談して古着などを代わりに買ってもらったり、使い古して買い替える調理器具や食器などを貰ったりもしていた。おかげでスラムのアジトはだいぶ生活環境が良かっただろう。

 

 ……内戦も凌ぎ、今でも店をやっていたはずだ。冬休み辺りにでもリアスとイリナに頼んで、一度顔を出した方がいいだろう。

 

 相手は成果に応じてくれただけなのだろうが、あの環境でそんな誠実な対応をしてくれたということが恩でしかない。

 

 そんな話をある程度進めていてから、何時の間にやら会話はあの大騒動の後に映っていた。

 

「そういえば、デュナミス聖騎士団(あの人達)にヴィール様が色々言ったりしてたそうだけど、あの後ってどうなったの?」

 

「………あ~……」

 

 気づかわし気な春菜の言葉に、カズホは凄い複雑な表情で遠い目になった。

 

 あ、これ厄ネタだ。

 

 誰もの心が一つになったのだが、今更なかったことにできる雰囲気でもない。

 

「……カズホ。愚痴ぐらいなら聞いてあげるわ。貴女もしっかり聞いてあげなさい、馬鹿弟子」

 

 ため息をつきながら弟子認定すると、認定されたことに気づかず春菜は少し落ち込み気味で神妙に頷いた。

 

「はい、師匠……」

 

「い、いえ。確かに色々とごたついていますが、前からあった話がそれで加速した程度なんです」

 

 慌ててカズホがそうとりなすが、どちらにしても少々問題が生まれていることは間違いない。

 

 それを誰もが悟ったからこそ、リヴァが真っ先に話に切り込んだ。

 

「カズホだったっけ? それで、どんな話が合ったの?」

 

 こういう時、空気をあえて読まずに突っ込んでくれるリヴァはありがたい。

 

 興味津々な様子で聞いてきたこともあり、カズホも雰囲気を和らげながら苦笑いをした。

 

「元々和平が結ばれたことで士気向上の必要性が薄れたとして、デュナミス聖騎士団を分散配置させる話があったんです。……その、ストラス団長は人柄と器で部下を率いる人なので……」

 

「腹芸、苦手そうだったわね。確かに、今後別勢力の和平に一物ある連中とも関わるのなら……そういう専門部署を作った方がいいところはあるわね」

 

 妹分の言い難そうなところは、あえてカズヒが言い切った。

 

 もとより、エース部隊というものは軍事的には効率が悪いとされている。こと現代に近い時代の人間社会だと、どの超えたエースの収束かといった部隊編成は苦戦している勢力の方が行う傾向が強いとされている。

 

 ことデュナミス聖騎士団というものは、危険な任務における士気向上などが重視されていた部隊だ。その為星辰奏者(エスペラント)という死に難く強い者達が現出して以来、更にその中から心身共に信徒に近い者達が選出されている。

 

 だが、禍の団という難敵が出ているとはいえ和平は結ばれた。そして禍の団という世界規模の難敵が出ていることを踏まえれば、面の戦力を高めることは重要だ。異形が個と質を重視するとはいえ、だからこそカバーする面は重要だろう。

 

 和平というものが不満分子を抱えながらという点を踏まえているのも考慮すれば、尚更そういった綱渡りじみたことに対応できる専門部隊が必要になりえる。

 

 数百人規模の生成を集めに集めたデュナミス聖騎士団は、そういう意味では時代にそぐわない規模のエース部隊。各部隊に分散させるというのは重要だ。

 

 ……が、カズホのいうことはそれだけではないらしい。

 

「……先日のヴィール・アガレスに指摘されたことがきっかけで、聖騎士団内部でいくつかの派閥ができてしまったのです。それも、いがみ合いが生まれるほどに」

 

「……あぁ、リュシオン・オクトーバーとかいう子の?」

 

 リヴァがすぐに思い当たるほどに、あの一件は注目されてるだろう。

 

 ヴィール・アガレス・サタンの異常なまでの精神性と、彼に同列と指摘されたリュシオン・オクトーバーのずれた反応。

 

 それに対する反応が、内部対立が発生し始めているということなのだろう。

 

「……言われてみると納得だし、むしろ今まで起きなかったことが不思議なぐらいだけれどね」

 

 カズヒがつい呟くと、探るようなリヴァの視線が向けられる。

 

「ふぅ~ん? 心当たりとか、あったの?」

 

 その言葉に、カズヒは少しだけ躊躇ったが、隠すほどのことでもないと思い直す。

 

 どうせスタンスとして、自分はリュシオンから距離をとっていたのだ。今更隠す必要なんてない。

 

「……悪魔祓い(エクソシスト)に成り立ての頃、同期数人と一緒にあいつに教えを受けたことがあったのよ」

 

 思い出しながら、そう答える。

 

「あいつは当時からあんなスタンスで、ただ私はスラム上がりでゲリラ生活もあったから、「いうほど簡単じゃない」って反論したわ。そしてもちろんだけど、リュシオンは「簡単だろ? 常に自分を改めて、少しずつ前に進めばいいだけさ」と、「それを正義っていうんじゃないかな?」とまで言ってきて……大事に巻き込まれたわ」

 

 思い出しても頭痛を感じる。

 

 悪魔信仰者とはぐれ悪魔が組んだ結果、爆弾テロまで起きる流れになってしまった。

 

 そして前衛としてリュシオンがはぐれ悪魔といった戦闘要員を相手にしている間、爆弾の解除を試みることになった。

 

 多くの人達が巻き込まれかけている中、カズヒは周囲を叱咤激励しながら爆弾を何とか解除した。魔術回路保有者が使える解析魔術などを使っての、綱渡りだったと覚えている。

 

「……多くの人命を、とりえる手札を使っての綱渡りで何とか助けた。多くの人命を救い上げれた安堵や高揚、多くの人命を左右する行為に対する畏怖や重圧。それを味わっている私達に対して、敵を倒した彼はにこやかにこう言い切ったわ」

 

 今でも、その笑顔と共に思い出せる。

 

 カズヒ・シチャースチエがリュシオン・オクトーバーに対する強い抵抗感を持つことになった、その言葉は。

 

「邪気一つない微笑みと一緒に「ほら、簡単だったろう?」……ってね。この時私は理解したのよ。彼にとって不特定多数の命を背負って博打じみた綱渡りをすることは、心がけ一つで()()()できることなんだって」

 

「……ぶっ飛んでる精神してるわねぇ」

 

 苦笑いでリヴァがそう言うが、実際にそう言うほかないだろう。

 

 少なくとも、カズヒにはそんな風に言える神経が理解できなかった。

 

「……実感してなかったり気にも留めない人だったら平然とできるでしょうけど、真剣に向き合ったうえでそうするのって、簡単にできることじゃないわね。少なくとも、それに耐えきれずに心が折れる人って数多いわ」

 

 世界大戦を経験しているだけあって、リヴァの言い分にはとても理解できることが多かった。

 

 実際に、彼は埒外の傑物だと断言されたのだから尚更だろう。

 

 少なくとも、カズヒ・シチャースチエはそんな風には考えていない。

 

 常在戦場覚悟完了を前提としているカズヒにとって、多くの人の命を左右する事柄に関与することは常に意識している。だからこそ、必要と在らばすぐにでも行える。いつでもそういう事態が起き、そして向き合うことになりかねないと心のどこかで意識をしている。

 

 だが、そういったことは誰にでもできることではない。厳しい訓練や経験を積んだ者の中から、更に一部だけがなるといったところだろう。

 

 もしそれを本当に当たり前の自然体で出来る者がいるのなら、それは生まれついての英雄とかヒーローといった存在に限るだろう。

 

「……あの時はまだそこまで自分で考察ができてなかったから、強く反論は出来なかったわ。ただ、それがきっかけで私を含めたその場の六人は大きくばらばらの方向に行ったわね」

 

 カズヒ・シチャースチエは、元々の自分に対する考えもあって、暗部という道を選んだ。「自分ができる範囲内で、善を尊び正義の為に、邪悪を食らう必要悪となる」という生き方を、元々決めていたとはいえより強く選んだといえる。

 

 一人は、リュシオンを心の師としてデュナミス聖騎士団に選ばれた。聞けば、彼はリュシオン派ともいえる現状生まれた派閥の一つに属しており、リーダー格とまでは言わないが発言力も強いらしい。

 

 一人は、リュシオンに続こうと強く生きようとしたが、夢破れて戦死した。最後の言葉は「無念だけど、それでも前に進みながら死んでみよう」と語り、最後まで前を歩き続けようとして果てた。

 

 一人は、次の日には悪魔祓いになることを諦め、教会の研究者としての道を選んだ。「あんなことを簡単にしなくちゃいけないと思うと、吐きそうになる」と、たまたま再会した時にお茶の席でこぼしていた。

 

 一人は、悪魔祓いになることを選びながらも、ドクターストップを受けて病院で静養している。「簡単なことなのに、頑張ってもできない……」と、虚ろな目で何度も呟いているそうだ。

 

 そして一人は、品行方正だった教育機関時代からは考えられないほど素行が悪化し、最終的にはぐれ悪魔祓いになってカズヒが討伐した。今でも思い出すのは「俺達がどれだけ一生懸命頑張ろうが、それが当たり前なんて糞だろうが!」と致命傷を負ったうえで喚き散らし向かってくる彼の姿だ。

 

「……またすっごいことになってるわね。その、リュシオン・オクトーバーはそれについて知ってるんですか、師匠?」

 

「……敬語はやめて頂戴。あいつの性格なら、割と結構な人数は知ってると思うけれど……どうなの、カズホ?」

 

 春菜をたしなめつつ尋ねると、カズホは少し難しい顔で考える。

 

「以前話していた時に、そういった話を伺っています。……ただ、「……彼らのように()()()()()()()を減らす為にも、何とかコツを理論化したいんだけどね」と寂しげに笑っていました」

 

 その説明に、何とも言えない空気になった。

 

 彼なりに責任を感じているのだろう。そのうえで、できる範囲内で失敗を繰り返さないようにしているのは立派だ。そして同時に、どこまでも何かがずれている。

 

 そもそもコツの問題ではないと言いたいのだが、リュシオンはその辺りがどうしても理解できていない。

 

 デュナミス聖騎士団の者達は、殆どがそうあろうと努力できてしまうのも問題だろう。星辰奏者という少数派の才覚を持つがゆえに意識が高い者から、更に心身共に精強な者達だらけの環境だ。そんな環境では、そうでない者達が普通で多数派ということに理解が及び難いのかもしれない。

 

 とはいえ、このずれはこのままではそれどころではなくなるのではないだろうか?

 

 真剣に何とかするべきなのだろうが、カズホの話から推察するとリュシオンはこの期に及んで自覚が薄いと見える。

 

 どうしたものかと思っていると、ベルナが軽く手を挙げた。

 

「そういやさ? 兵藤邸(うち)ってリュシオンの妹がいただろ? あいつは大丈夫なのか?」

 

 そういえばその通りといえるだろう。

 

 ルーシア・オクトーバーはリュシオン・オクトーバーの実の妹だ。

 

 星辰奏者の適性も神器も持ち合わせていない為、デュナミス聖騎士団には属していない。

 

 普段から真面目で堅実であり、一年生組においては暴走時に全力で止めてくるストッパー役といえる。こと小猫とレイヴェルがよく喧嘩をしたりすることを踏まえると、最近は重要度が更に高まっているだろう。

 

 彼女自身はそういった才覚の恵まれなさに腐ることなく、実直かつ前向きに努力している。リュシオンは実にできた妹を持っているだろう。もしくは、リュシオンという兄がいたからこそルーシアもまたそうなったのか。

 

「……パターンA、立派な兄が手本になったからこそああなったので、多分だけどリュシオン派に近い。これは十分あるわね」

 

「……BとかCとかあるの?」

 

 真剣な表情を浮かべるリヴァに対して、比較的付き合いの長いインガが尋ねる。

 

 すると、眉間にしわまで寄せてリヴァは頷いた。

 

「パターンBは悪い方ね。兄のようになりたいと常に背伸びしたり無理をしてるパターン。これって限界来ると一気に崩れるわね」

 

 ……ほぼ全員が少し俯いた。

 

 なんというか、場の流れ的にどうしてもパターンBの可能性に思考が集まっていく。

 

 ルーシアは間違いなくいい子だが、同時に肩ひじを張り詰めるタイプであることは兵藤邸に住まう者達は大抵理解している。

 

 性格とは個人個人で差がある以上無理をして変えるつもりはなかったが、このままだと変な方向で爆発するのではないかという不安が脳裏をよぎり始めてきた。

 

「え、えと……お姉さま方? どうしました……あれ?」

 

 と、戸惑っているカズホがスマホを確認する。

 

 その瞬間、凄いレベルで真剣かつ複雑な表情になった。

 

「……何があったの?」

 

 妹分のその表情に、カズヒは瞬時に意識を切り替える。

 

 この表情は今までに見たことがない。機密にかかわらない範囲なら、瞬時に手助けをしなければ。

 

 それゆえに言葉に、カズホは混乱ゆえに無表情を向けた。

 

「……同時多発集団逆〇イプ事件が巻き起こり、日本警察や自衛隊が対処に追われてるとのことです。異形側も星辰奏者(エスペラント)やプログライズキー保有者は人によっては援護の為に出撃することになると、騎士団の方々から連絡が」

 

「「「「……あ~……っ」」」」

 

 思わず、カズヒ・鶴羽・リヴァ・インガは突っ伏して頭を抱えた。

 

「ちょ、師匠!?」

 

「お姉さま!?」

 

 その反応に春菜とカズホが困惑するが、ベルナは何かに気づいたのか天を見上げる。

 

「……もしかして、多いのか?」

 

「多いんだ。私が来てから月1ぐらいで兵藤邸関係者は巻き込まれるから、言われてみると納得だけど……ね」

 

 めちゃくちゃ気づかわし気なベルナに、インガはすすけた表情で引きつり気味の乾いた笑いを漏らす。

 

「そういえば、カズヒって駒王学園に転校した直後ぐらいにそんなこと経験してなかったっけ?」

 

「それは和地達の方よ。もっとも、タイミングよくアザゼル先生(馬鹿総督)が馬鹿やった所為で、駒王学園で影響がデカすぎたけれどね」

 

 鶴羽に対してカズヒが答えた悲惨な現実に、誰もが思わずひきつった。

 

 あの変態達には多くの者が苦労しているが、平均して月1レベルで巻き込まれているのは自分達ぐらいだろう。

 

「ロキ絡みの時や京都でもいたわね。……もしかして日本に本部があるとか……うわぁ」

 

「「あぁあれ……うわぁ」」

 

 リヴァに至っては最悪な予想をして、言った自分がげんなりしていた。春菜とベルナも思い出して悟り、凄くげんなりしている。

 

 だがしかし、そうも言ってはいられない。

 

「……該当者は準備するわよ。非該当者は先に帰って、やけ食いの準備をしてくれると助かるわね。意義はある?」

 

「「「「「「異議なし」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、やけ食いの準備は一切無駄にならなかったことが答えである。

 




 とまぁ、いろいろシリアスな部分もあったけど、同時に和地ハーレムで幕間をしております。

 いやぁ、ハーレムメンバー同士の交流も書いた方がいいよなぁとは思っておりましたところ、創作掲示板で「ハーレムメンバー同士の女子会」なんて者があったので、誰かが教えてくれないかなぁと思いながら書いてみました。

 そしてその流れでリュシオン絡みやカズヒのストリートチルドレン時代などが出てきました。どちらの話ももうちょっと深堀したいところです。

 ことある意味重要なのは、リュシオンとカズヒの因縁ともいえる部分。昔Fate系の二次創作で士郎絡みの話でこんな言葉が出てきたんですが、「いや、それを簡単って言える奴は普通じゃないだろ」と思って靄っとしたんですよねぇ。
 リュシオンは「人間としてある意味で完璧すぎる、精神的傑物」が基本コンセプトといっても過言ではありません。なので無自覚にこういったことをしてくるのですが、悪魔祓いというのは強い信仰心を持つため、精神面での精進とかが比較的高めな印象がありました。さらに精鋭部隊ともなれば意識は高いし心身も強いしで、リュシオンの異常性が目立たず、むしろ好感触になることが大半であるとして設計しております。
 しかしリュシオンの異常性をもっと周囲に広めた方がいいという意見もあったため、別ベクトルで精神的化け物であるヴィールに指摘させる形でそれを表面化。ずれた解答もあり、デュナミス聖騎士団が割れるレベルで一気に面倒なことになってしまいました。

 リュシオン自身がそのあたりに決着をつけるのは、原作におけるデュランダル篇を予定しております。なのでまだまだ後を引きますがご了承ください。





 そして半ばオチとして変態集団が出てきました。というか、幕間は基本的に変態を必ず出してみます。





 ちなみに銀弾落涙編の幕間は、和地とカズヒのリベンジデートか、今回のストリートチルドレン関連の深堀にするか悩み中です。

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