好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ   作:グレン×グレン

237 / 528
 グレン×グレンです。yotube見てたらオラオララッシュならぬまだまだラッシュをしたくてたまらなくなりました。

 ついに明かすことができる、この作品で最も評価を下げるだろうヘビー極まりないカズヒ達の過去となります。


銀弾落涙編 第十六話 銀の弾丸が背負う罪業(前編)

イッセーSide

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 南空さんは九成の胸元に額を当てると、そのままぽつりぽつりと語り出した。

 

「……そもそも道間家っていうのは、魔術回路のピンキリを無視すれば、魔術回路保有者で歩兵一個大隊は作れるぐらい、親戚や分家が多数いるの」

 

 そりゃすげえな。人が多すぎだってことか?

 

「より優れた魔術回路を産み出すには優生学じみたことが必要で、また天然で魔術回路を持っている人間がいれば、小遣いたくさんで風俗狂いや愛人囲ってもいいぐらいの勢いで囲うこともしばしば」

「補足するとぉ、海外に進出する頃には大王派と繋がりが出来てねぇ。血統をより良くしようとする道間家とは相性が良かったのかぁ、半ば蜜月関係なのよぉ」

 

 リーネスが南空さんの説明に上乗せするけど、二人とも調子ははっきり言って悪そうだ。

 

 それだけ嫌なことがあったっていうのか?

 

 聞いているだけで内容と違って不安になっていく中、南空さんは更に続けていく。

 

「……ミザリ・ルシファーの前世の道間誠明と、カズヒの前世の道間日美子は実の兄妹。両親を早めに亡くした二人は、便利屋的な道間の家に引き取られるんだけど、そこで同じように引き取られた道間に連なる孤児と出会うの」

 この時点で、俺はもう驚くしかない。

 

 ミザリとカズヒが前世で兄妹!? おいおいまじかよ。

 

 俺以外にも驚いている人が多い感じだけど、南空さんはそれには目を向けないで、ヒツギとヒマリの方を向いた。

 

 ……ああ、これに関しては俺でも分かる。

 

「その女の子の名前は道間乙女。魔術回路の影響で、髪の色が桃色で昔はいじめられていたみたい。……まぁ、魔術に慣れれば認識阻害でどうとでもなったんだけどね」

 

 そう苦笑する鶴羽は、ヒマリとヒツギの方を見る。

 

 二人とも、何も言えてないし困惑しているけど、鶴羽の方を見て何か目を見開いている。

 

「……思い、出した……二人と会った時―」

 

「―日美子、ずっとむっとしてましたの……」

 

 記憶が思い出していっているのか?

 

 でも、なんか曖昧な感じがするな。

 

 ……二人に分裂している弊害って奴か? だから情報とかが二分の一になってるとかそんな感じで。

 

 ただ、南空さんとリーネスの二人を見る表情は、とても痛々しい。

 

 なんか躊躇しているとしか言いようがないその雰囲気に、誰もが何も言えなかった。

 

「……話を続けるわ。そのあと数年ぐらいは、とても仲が良かったみたいなの。日美子はお兄ちゃんっ子で時々乙女と喧嘩もしていたけど、乙女と誠明は友達以上恋人未満って関係性がとっても相応しかった。傍から見てもくっつくのは確実って感じだったわ」

 

「……私と鶴羽―アイネス・ドーマと道間七緒が出会ったのは、そこから更に数年後。それまで面倒を見ていた血族が大王派と少し揉めて、それで私がホームステイをしていた七緒の家が本家からの指示があって引き取った形になるわねぇ」

 

 そう語る二人の表情は、悲しそうだけどどこか笑顔だった。

 

 きっと、その思い出は楽しかったんだろうな。

 

「……みんな魔術回路を持っているから、五人で秘密基地を作ったりしたわ。あと近くの農家とかにこっそり魔術を使って小遣い稼ぎで支援とかしてたから、卵かけご飯がみんな大好きになってたのよねぇ。……私はパパやママが一時期毎日三食卵にしてたから、一周回って慣れすぎてたけど」

 

「生卵を食べるなんて斬新な発想に感銘を受けた記憶があるわぁ」

 

 そんな風に楽しそうな思い出を語りながら、だけど二人の表情はどんどんつらそうになっていく。

 

 それは何となく分かるかもしれない。というか、これからきっと悲しいことが起こるんだって、それが分かった。

 

「……話が動くのは数年後。中学卒業を機に、今度は私がアイネス(リーネス)の家にホームステイすることになって、三人と別れて三年目ね」

 

「だけど、まさにそんな時に来た連絡で、私達は凍り付いたわ」

 

 リーネスが、ぽつりと俯きながらそう言った時だ。

 

 南空さんの体が震えて、静かに俯いた。

 

 そして、南空さんは声を絞り出す。

 

「……誠明と日美子が、道間分家の者を含めた二十名近くを惨殺。殺した()()()()()()()()()()()()()()を誘拐して出奔したというものよ」

 

 ……なんだって?

 

 凍り付きたくなるぐらい、それはあまりにもびっくりするしかないことだ。

 

 さっき、誠明と乙女は恋人未満で、いつかくっつくって話だったじゃないか。

 

 それが何で、別の人と結婚していて、その人まで殺すことになってるんだ?

 

 いや、そもそも待てよ。

 

 乙女って二人と同じ頃なら、高校三年生ぐらいだろ? それが、なんで……?

 

 訳が分からないながら嫌な予感を覚えていると、鶴羽が俯きながら震え、その肩を抱いたリーネスが話始める。

 

「……本家の者まで動いている事態に、分家でしかない私達は迂闊に介入が出来ず、待機を命じられたわぁ。でも鶴羽は我慢できず、たまたま同時に発生が確認された亜種聖杯戦争に参加。……そこでルーラーと共闘する形で優勝した鶴羽は、「それに連なる事実を知る」ことを願い、そして―」

 

「―私達が幸せだと思っていた過去の()()()()、糞ったれな事実を知ることになったわ」

 

 リーネスにしゃべらせたくないように、南空さんがそう声を振り絞った。

 

 拳を血が出るまで握りしめて。奥歯を砕きそうなぐらい噛み締めて。目を悔しそうに強く閉じて。

 

 そして、支えてくれないと倒れてしまいそうなほどに、頭を九成に押し付けて―

 

「―日美子は事件が起きる十年ほど前から、ずっと情欲にかられた道間家含めた()()()()()()()()()()()()の。後から増えて言ったやつの中には……パパ、も……いたの」

 

 ――――告げた言葉を、俺は一瞬理解できなかった。

 

 いや、多分知っている人以外は誰も理解できなかったと思う。

 

 リヴァさんですら唖然として目を見開いていたぐらいだから、間違いないだろう。

 

 事情を知ってるリーネスやアザゼル先生も、目を伏せていた。

 

「……パパはそこそこの魔術回路に目を付けたママが完全に優生学重視で政略的に結婚した相手だったわ。元々ロリコン気味なところはあったけど、まさか両親揃って()()()()()()()()()を性欲のはけ口にしたり容認したりできるなんて、思ってもみなかった……っ」

 

 そう言いながら、南空さんは九成に顔を埋めながら崩れ落ちる。

 

 当然だろ、そんなもの。当然じゃねえか……っ

 

 両親が、大事な友達に、そんなことをしてるなんて、耐えられるわけがねえ!

 

 なんだよそれ、何なんだよ。

 

 聞いているだけの俺だって、カズヒがそんな思いをしていたなんて、納得できるわけが―

 

「……そして、話は此処からが本番よぉ

 

 ―リーネスの声が、俺達を引き戻す。

 

 今、なんて言った?

 

 ここからが本番? ここまでで十分すぎるほど悲劇だろう?

 

 そりゃ切れるに決まってる。殺したくなるに決まってる。

 

 これ以上、いったい何が―

 

「……まず告げるわぁ。さっきの話は道間本家がある程度の誤魔化しを入れているだけでなく、誠明の偽情報などで振り回されたことによる誤報。……殺戮事件そのものは、()()()()()よぉ

 

 ―なんだって?

 

 いや、確かに言われてみれば納得するところはある。

 

 あのカズヒが? 復讐するにしても? 友人を誘拐してまでするか?

 

 俺と同じ疑問を持っている人は多かったみたいだ。リアスも木場も、それに納得している。

 

「……確かにそうだね。いや、当たり前か」

 

「あのカズヒと記憶が連続している前世だもの。いくらなんでもそんなこと……ねぇ?」

 

 木場やリアスが言葉にして、聞いている皆が納得しかけた時だ。

 

 俯いたリーネスは、皮肉気に、やけくそ気味に喉を鳴らした。

 

「……クッ。そんな話で済むわけないわぁ。()()

 

 ……逆?

 

 何が逆だよ。その事件は誠明の独断だって、リーネス達が言ったことだ。

 

 それが逆だなんて、どういう意味だよ。

 

 俺達みんなが戸惑っていると、南空さんは拳を更に握りしめた。

 

「カズヒがああなったのは、元からじゃない。……逆なのよ」

 

 逆って、何が―

 

「……日美子は、自分から公言するぐらい誠明のことが好きだと毎日のように言っていた。実の兄妹じゃなければ結婚したいとまで(七緒)鶴羽(リーネス)に言っていたし、実際告白して、兄妹だからと断れた挙句乙女を連れてどっかに行かれて、大泣きしたことを言って、誠明をからかっていた。……その日から()()()()()()()()ことだけを隠した上で

 

 ―は?

 

 俺達が、また凍り付く中、南空さんはそのまま続ける。

 

「……日美子はそれ以来ずっとやけっぱちで、それでも私達との毎日で心を支えていて、だからこそ、少しずつ歪んでいって―」

 

「―それが、私と七緒が離れたことで崩れたんでしょうねぇ。そこから、日美子の負の感情は一気に爆発したのよぉ」

 

 何も言えなくなってきた南空さんから話を引き継いだリーネスは、だけど崩れ落ちるようにソファーに座り込んで、俯いた。

 

 俺も、皆も何も言えない。

 

 寒気を感じるし、体が震えそうになる。俺達ですらそうなるなら、リーネスや南空さんがどんな気分かなんて、少なくとも入れ俺達以上だってことぐらいは分かる。

 

 見てられなくなったのか先生が動こうとするけど、リーネスも南空さんも手で制した。

 

 せめて、自分達の口から話したい。そういうこと、何だろうな。

 

「耐え続けて限界を超えた日美子は、その負の感情をパパ達だけじゃなく、乙女にも向けた。……ずっと苦しみ続けながら、それでも誠明を()()()()()()()()()()を支えの一つにしてきたからこそ、誰が見ても分かるぐらい誠明と結ばれそうになっている乙女ねぇに憎悪が一番集ったのよ」

 

 だから俺達も止めることができないでいると、何とか持ち直した南空さんが話を再開する。

 

 そしてリーネスも目を伏せながら頷いた。

 

「……もちろん犯し続けてきた男達にも向けていたし、誠明に対する感情も愛憎渦巻いていたわぁ。結果として、道間日美子は一つの計画を立てて実行に移したの……」

 

 そして、二人は一瞬だまって、気づかわし気に視線をヒツギとヒマリに向ける。

 

 ああ、気持ちは何となく想像できる。

 

 ヒマリもヒツギも、まだ分からないことはあるけど、道間乙女の生まれ変わりってことなんだ。そして、カズヒが……道間日美子が恨みを向けた相手だっていう。

 

 それ以外の話も全部含めて、絶対に二人にとってもつらい話になるに決まってる。

 

 俺達も聞いていいのかと、俺はそう思うけど―

 

「……なんかさ、夢みたいにふわふわなんだよね」

 

 ―そんな風に、ヒツギが話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祐斗Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 壮絶という言葉すら、きっと生ぬるいんだろう。

 

 僕だって割と不幸な人生を送っていたと思っているけど、カズヒの―道間日美子の―それは方向性が違い、そしてある意味で遥かにえげつない。

 

 そして同時に、その中で語られてきた道間乙女が、ヒマリであるヒツギである。

 

 間違いなく、ここから先の話はヒツギにとってもヒマリにとっても酷い話になる。

 

 だからこそ、ここでヒツギが話し始めたことに、僕達は息を呑む。

 

 ヒツギも、記憶が戻っていったのか?

 

「……ぼんやりしているというか、夢の内容をはっきり覚えているいうか。……多分だけど、私の前世の記憶は、二人やカズヒとは違って、曖昧になってるのかな?」

 

 ひきつり気味な表情で、ヒツギはそうぎこちなく笑う。

 

 そんなヒツギに、アザゼル先生は目を伏せながらも首を横に振った。

 

「無理もねぇ。バニシングロストと無茶な運用が原因によるバグみたいなもんだ。いうなればお前とヒマリは、道間乙女と混じっていた双子を、文字通り()()()()()()()()存在だしな」

 

 確かに、そうなんだろう。

 

 バニシングロストというのは詳しくは知らないが、話によるなら死亡した一卵性双生児が体内に混ざる現象だということだ。となれば、本質的に道間乙女と彼女は同一の遺伝子を持つが別人ともいえるし、そもそも死体が特殊な状態で保全されているだけとも言える。

 

 そんな状態で起きたバグである以上、ヒツギもヒマリも、厳密には道間乙女から連続した存在ではないだろう。

 

 だからこそ、二人は三人とは違って記憶を保持していなかった……ということか。

 

 それでも記憶がないわけではなかった。だからこそ、明確な指摘を受けたことで驚愕したのか。そして、それがきっかけになって道間乙女の記憶が流れ込んできた。

 

「……一つ、聞きたいんだけどさ? 二人……カズヒもだけど、知ってたの?」

 

 その言葉に、南空さんはリーネスを見て、リーネスは目を伏せた。

 

 どうやら、まずはリーネスが基点になっている。そういうことなんだろう。

 

「……少し話はそれるけれど、私は堕天使の娘として生まれ変わった時から、魔術回路や聖杯戦争の研究を主眼にしていたわぁ。そして実験的に小規模な亜種聖杯戦争を起こした際、USBメモリにかかれた内容を実行するという形で、余剰出力をもって()()()()()()()()()()()()()()()()()()よう、そういう魔眼を会得したのぉ」

 

 そういうことか。

 

 思えば、リーネスが初めてカズヒを見かけた時の反応や、南空さんと会った時の反応はリーネスが基点だった。

 

「……私はそこから補足的に情報を得てる立場だったからね。運悪くサウザンドディストラクションの後にリーネスと顔を合わせることがなかったから、私もリーネスも試せなくって……さ」

 

 悲し気に苦笑いする南空さんに、リーネスも同じような表情でうなづいた。

 

「鶴羽の嘘発見技術は、真相を探る為の独学で習得したものなのよぉ。……で、勘づいてカマかけをしたのか、鶴羽と私たちが初めて顔を合わせた時の一幕」

 

 あれはそういうことだったのか。

 

 冷静に考える不自然なあれらの行動には、そういった事情があったとは……ね。

 

 僕達の多くが納得していると、そのうえで南空さんは真っ直ぐにヒツギに向き直った。

 

「……はっきり言うと、カズヒはアイネスと七緒(私達)や乙女が二人になっている以上の情報は知らないわ。仮説はアザゼル先生が立ててたけど、カズヒが罪悪感で死にそうだから、必要になるまでは明かさない方針だったの」

 

 南空さんはそう言うと、いまだ何も言えず俯いているヒマリを見てから、少しだけ目を伏せる。

 

 きっと、ここからが二人にとってもつらい記憶なんだろう。

 

 そして、南空さんは意を決して、顔を上げて目を開いた。

 

 ……ある意味で、ここからが四人とって本当の地獄の始まりなんだろう。

 

 それだけは、僕達でも分かった。

 




 この時点でかなりヘビーですが、次が本番です。


 なお、カズヒの性質の原因はまさにこの過去に起因しています。

 たとえるならば滅亡剣や審判者の逆ベクトル。「環境変化で光狂いの素質が爆発した」のとは違う「環境変化で順当に目覚める光狂い精神が歪み切った」タイプです。ただし先天的光狂いの素質はとてもあったため、最終的にカズヒ・シチャースチエは光と闇のハイブリットと化しました。


 次の話は今日の18時に投稿する予定です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。