好き勝手準備後自滅した神様転生者のせいで全方位魔改造されるけど、おっぱいドラゴンが新たな仲間と共に頑張る話 旧名:ハイスクールL×L 置き土産のエピローグ 作:グレン×グレン
和地SIDE
俺達が来たのとタイミングが同じなのは、ただの偶然だろう。
だからこそ、メインターゲットは間違いなくシャルバ・ベルゼブブ様だ。というか、そうでもないのに魔王のところにテロリストが出てくる理由がないだろう。
しかも元シャルバであるベルゼビュートが、現ベルゼブブのアジュカ様にだ。
冗談抜きで何かある。それとも、ベルゼビュートはもはや魔王の血筋に興味すらなくなっているのかもな。
俺は静かに警戒しているが、警戒できているメンバーもごく僅かだ。
まともに対抗できる範囲内なのは、木場やリーネス、アニルにルーシアぐらいだ。他のメンバーは戦えるような状態じゃない。
ヒマリやヒツギも戦えそうになる。……これはまぁ、仕方がないところはあるだろう。
となると、尚更可能な限り俺達はカバーに回るほかない。タイミングが悪いときに関わる羽目になったもんだ。
「……さて、シャルバことベルゼビュートまで連れてきたけれど、貴方と敵対する気はないんだよ。むしろ、貴方をスカウトしに来たんだ、アジュカ・ベルゼブブ」
スカウト、だと?
ベルゼブブを奪ったことで殺意に滾っているシャルバの成れの果てが、モデルベルゼビュートだ。そんな奴を連れてきたうえで、スカウトだと?
本当に、ベルゼビュートは魔王ベルゼブブの血筋に興味がないってことなのか?
アジュカ様も首を傾げている。よほど意外な展開らしい。
「……意外な話だ。シャルバは元四大魔王、特に当時のベルゼブブを滅ぼしたサーゼクスと、ベルゼブブを襲名した俺に対する殺意が強いと思うんだけどね」
「安心するといい。今の私はその提案を飲んでいる」
モデルベルゼビュートは、アジュカ様に対してそう告げる。
そこには殺意も憎悪も漏れていない。本当に冷静さすら見えて、むしろこっちが怖いぐらいだ。
思わず背筋に汗が流れる中、ベルゼビュートはむしろ愉快そうな雰囲気を見せていた。
「もはや悪魔に従える価値はない。ならば真なるベルゼブブの怨念たる俺に、ベルゼブブを襲名したお前が手を貸したという事実で悪魔どもを絶望させる方が価値があるだろう。これはそういう話だとも」
その言い草に、俺は確かに納得できた。
なるほどな。奴はもはや、冥界の覇権とかそういうのに価値を感じていない。
ただ冥界の民を苦しめて滅ぼせれば、それでいい。シャルバ・ベルゼブブを魔王として崇め奉らなかった冥界の民は、只苦しんで死ねばいいと思っている。そしてシャルバ・ベルゼブブの成れの果てと、現ベルゼブブが手を組んで冥界を苦しめることが、自分ができる最大の蹂躙だと思っているということか。
まずいな。ベルゼビュートは安定している風にも見える。
冷静と思えるようなレベルで、「如何に冥界の悪魔達を苦しめて滅ぼしつくすか」に邁進している。それゆえに、それ以外の要素に対して優先順位が著しく低くなっている。かつての怨念すら、奴の方針を揺るがせるには全く足りていない。
……魔星クラスの星の行使は、真っ当な人間では絶対に不可能だと言われている。
スパコンじみた演算能力か、異常なレベルの精神力。しかも後者は基本的に、裏技に近い。
だからこそ、人造惑星は基本的にヒューマギアやプログライズキーの支援が必須。大量生産型は大型の騎乗型兵器として運用されている。
……だがそれだって、応用系統。つまり、シャルバ・ベルゼブブを素体して作り上げたモデルベルゼビュートは、ある意味で本来の人造惑星と言っていい。
奴の戦闘能力は、どう低く見積もってもかつてのシャルバより上と考えるべきだろう。
……つまり、真っ当な精神性をあえて外し壊すことで、魔星として星を振るうことに特化した存在として作り上げる。それが、第一世代型人造惑星。
間違いなく、今の奴はやばい。かつてのシャルバ・ベルゼブブと同じように考えるべきじゃない。
思わず息を呑む中、ジークフリートは微笑みすら浮かべている。
「貴方は魔王としてはサーゼクス・ルシファーと同規模の派閥を持ち、また政治的に対立していると聞く。こちら側に来てくれるのなら、我々が持っているデータなども、ほぼすべてを開示します」
「なるほど。確かに外から見れば俺はサーゼクスと対立している風に見えるし、実際あいつの言いつけも尽く破っている。そして研究者として、禍の団が保有するデータは確かに興味深い」
にこやかなジークフリートに、アジュカ様は同じようににこやかだ。
あのすいません。滅茶苦茶不安なんですけど?
最悪魔王様まで敵とか、この状況下だと詰む―
「―だが断る。……いや、これは
―と思ったら即答!
流石にこの即答は予想外だったのか、ジークフリートはちょっと目元を引くつかせていた。
「……理由を聞いても?」
「単純なことだ。―俺が魔王をやっているのは、サーゼクスがルシファーをやっているからだ。ただそれ一点であるからこそ、その一点を裏切ることだけはない」
曇りない言葉に、ジークフリートは肩をすくめる。
ちらりとモデルベルゼビュートを見ると、こちらも特に動揺はしていなかった。
「まぁいい。使えないのなら別の手段を探るだけだ」
……これは、やばいな。
さっきも思ったが、今の奴は外れ切っているがゆえに安定性を獲得している。
一点に集中して突貫している。だからこそ、それゆえにそれ以外にぶれにくくなっている。
やはり脅威か。できることなら、魔王様の力を借りてでもこの場で打倒したいな。
「ま、失敗したならプランBだね。じゃ、真なる魔王の信奉者さん達ー? モデルベルゼビュートや
そしてモデルバレットも、にこやかな調子でとんでもなく物騒なことを宣言する。
その瞬間、後ろの旧魔王派が一斉に魔力を放つ。
どいつもこいつも、下手な上級悪魔を凌駕する。平均して最上級悪魔クラスの砲撃を放っていて、龍王クラスでも全弾直撃はただじゃすまないだろう。
ただ、アジュカ様が手のひらに魔方陣を展開した瞬間、盛大に明後日の方向に飛んで行った。
「この程度で、俺の
そういった瞬間、明後日の方向に飛んで行った砲撃が、更に強化されて敵に向かって放たれる。
ありかそんなの。
思わず唖然とするが、だがそこで、人造惑星二体が動き出す。
「「―天弄せよ、我が守護星―――鋼の悪意で世界を犯せ」」
その瞬間、襲い掛かる魔力攻撃を二体の魔星が薙ぎ払う。
……特にモデルバレットの星は、カズヒ姉さんのそれとも違う。
やはり、カズヒ姉さんそのものというわけではないようだ。そこは安心したよ。
だが問題が多すぎるっ
「ま、失敗したなら失敗したで? 慣らしも兼ねてちょっかい掛けよっかな?」
「そうだな? シャルバではない我が、どこまで戦えるかは確かめるべきだろうさ。……貴様らは先に戻っているといい」
「「「「「「は、はい!」」」」」」
慌てて旧魔王派の悪魔達が帰還していくが、ジークフリートは不敵な笑みを浮かべながらも、とどまったままだ。
「貴様は帰らんのか?」
「少し試したいものがあってね。僕も参加させてほしいかな?」
そして三人がかりでアジュカ様と向き合う禍の団の連中だな。
……さて、俺達はどう動くべきか?
正直一発かましたい。カズヒ姉さんのこともあるし、イッセーのこともあるからな。
だが同時に、味方の殆どがメンタルを削りきられているわけだ。この精神状態で戦闘ができるかというと、かなり不安だろう。
ここはいっそのこと、決着がつくまで避難させるという手段―
「……ふむ、俺が三人を同時に相手取るというのも選択肢ではある」
―そう言いながら、アジュカ様はこっちの方をちらりと見た。
「だが、強い殺気を君達に向けている者もいる。それを無下にするのもとは思うのだが」
「……そうですね。なら、ご厚意に甘えて助太刀させてください」
アジュカ様に応えるように、木場が一歩前に出る。
……これは、仕方がないか。
俺はため息をつきながらも、ショットライザーを装着する。
「リーネス、部長達を頼む」
「……分かっているわぁ。無理は、しないでねぇ?」
念押しされるが、まぁ分かっているさ。
モデルバレットの相手は後回しだ。モデルベルゼビュートも、狙いはアジュカ様に絞っているだろうから優先しない。
つまりは―
「ジークフリート。とりあえず英雄派に一発かまさせてもらう。それだけのことはしている自覚ありだろ?」
「君達のくだらない企ての所為で、僕達の親友は死んだんだからね。死ぬには十分すぎるよ」
―俺と木場は、魔剣の切っ先を向けてジークフリートに宣言した。
「良いだろう。僕としても、そろそろ聖魔剣の木場祐斗とは決着を付けたかったんだ」
「そうだね。なら他二人―いや二体はこちらで押さえよう。周囲の被害も気にしなくていい」
ジークフリートの言質も、アジュカ様からの許可も貰った。
個人的には様子見も踏まえたいが、しかしこのままというのも癪に障る。
「部長、僕は行きます」
「祐斗……」
木場の宣言に、リアス部長は駒を握り締めることしかできないでいる。
……仕方ない。俺達だけでやるしかない……か。
覚悟はいいな、ジークフリート。
悪いが、木場を死なせるつもりはない。死ぬ覚悟はできていると踏んでおくぞ。
Other Side
ぼんやりと、視界に色々なものが映っている。
それを彼女は無感情に見つめていた。
否。その言い方には語弊があるだろう。
今の彼女は、思考能力も感情も機能していない。だからこそ、何もかもをただ受け止めるしかできていなかった。
「さて、ザイアから流出した技術によれば、人造惑星とは死体を素体として強い衝動で絶大な星辰体を制御すると聞いている。外法ゆえに俺が手を出すことはまずないからこそ、現物を見ると興味がわいてしまうのは研究者の良くない癖だね」
そう語りながら、アジュカ・ベルゼブブは魔力を持って現象を操作する。
それに対し、視界の隅で動くモデルベルゼビュートと名乗っていたそれは、大量の蠅の魔力を展開して包囲圧殺を仕掛ける。
それらすべてをコントロールしてかく乱するアジュカだが、モデルベルゼビュートは更にそこから突撃を敢行し、拳を握り締める。
「散華せよ、醜悪なる贋作め」
打撃と共に、絶大な稲光が走り、アジュカの表情に僅かな通用が走る。
肉が爆ぜ、体液が瞬間的に沸騰した。
マイクロ波による肉体破壊。その超至近距離から大出力の生成による制圧は、魔王すら超える力を持つとされるアジュカ・ベルゼブブに負傷を与えることに成功した。
素体であったシャルバ・ベルゼブブなら、これに狂喜乱舞していた事だろう。
だがモデルベルゼビュートは冷徹なまでに、アジュカを殺さんと更なる猛追を仕掛けていく。
「シャルバのように死ぬがいい!」
その瞬間、振るわれる腕に合わせて長大なブレードが形成される。
周囲の木や建造物すら両断するは、超高密度に圧縮したアザトースブレード。
武器型の神滅具ですらこの切れ味を出すのは楽ではないレベルの斬撃を、アジュカは覇軍の方程式で干渉し、ギリギリのところで切れ味を大きく殺す。
だが防御の魔方陣には切り込みが走り、後一瞬反応が遅れれば深手を負っていた可能性すらある。
「ここまでとは。これが星辰体運用兵器である、人造惑星の真の姿か」
「この程度なわけがないだろう?」
更にその瞬間、超至近距離から灼熱が放出され、アジュカを明確に後退させる。
超高圧で噴出されるバーナーによる一点集中により、防御用魔方陣が突破される。
すかさずあらゆる現象が冷却と拡散を行うが、この攻撃もまた、アジュカの手に炭化した部分を作り上げた。
そして視界は動き、アジュカ・ベルゼブブに接近して拳が放たれる。
それらをアジュカは魔力で防ぐが、しかし絶大な威力により魔力の七割が粉砕される。
そこから、ベルゼビュートと連携を仕掛ける形で攻撃を仕掛ける映像が映るが、彼女はそれを理解しきれない。
―
再び大気を切り裂き飛翔するのは、残念ながら今ではない。
和地Side
何とか今のところは戦えているな。
木場が龍殺しの剣を創造できるようになったのがデカいな。特攻が入るというのは、それだけでも価値がある。ただでさえ強力な聖魔剣が龍殺しの力を発揮するのなら、ジークフリートと言えど苦戦は必須ということか。
俺はそれを援護しつつ、視界の隅にアジュカ様の戦闘を確認する。
モデルバレットをどうにかしなければ、カズヒ姉さんは助けられない。だが同時に、楽にどうかできるわけではない。
実際問題、モデルベルゼビュートと連携でとはいえあのアジュカ様と渡り合っている。これもはや油断が欠片もできない領域だ。
いくつもの攻撃手段を切り替えて攻めるベルゼビュートと異なり、モデルバレットは近接戦闘に終始している。
おそらくは設計の違いだ。フレームから作り上げているステラフレームと、ゼツメライズキーで強引にカズヒ姉さんを魔星にしているモデルバレットでは、できることが大きく違うのも無理はない。
裏を返せば、それだけの差があってもなお並び立てるということだが。
何かを纏っている雰囲気で戦っていることから踏まえて、おそらくはカズヒ姉さんと同じ何かしらを招来する形だ。この辺り、ベースの性質から決してかけ離れていない。この辺りはリーネス謹製の人造惑星化プログライズキーと変わらないな。
と、素早く飛び退ればグラムのオーラが通り過ぎる。
意識をこっちに傾け直すか。おそらく、あっちはまだ長続きするだろうからな。
「……やはり、君達相手にグラムを届かせるには今のままでは無理か」
苦笑するジークフリートは、グラムをそっとなでる。
「こいつは主を気遣ってくれなくてね。その所為で、僕は本気を二種類使い分ける必要があるんだよ」
そう苦笑いする奴の言いたいことは、なんとなく分かる。
強大な魔剣は何かしら呪われるし、龍殺しは龍にとって天敵だ。つまり龍殺しの魔剣、それも伝説級のグラムは、龍が扱うには危険すぎる。
その辺りを考慮すれば、
グラムを全力で振るえば、呪いが強大化することは間違いない。
龍の手を禁手にすれば、龍としての性質が大幅に強化される。
つまりどちらかを本気にすると、どちらかを本気にできなくなる。二つ同時に本気にすれば、必然的にジークフリートは自滅の道を進むことになる。
イッセーも赤龍帝の籠手にアスカロンの組み合わせだが、こっちはドラゴン側がスペシャルなうえ、様々な処置によって乗り越えている。だがジークフリートはそこまでは出来なく、グラム側がそれを良しとしないのだろう。
敵にも難儀なやつはいるということか。同情はしないし容赦なく付け入るがな。
だが、こんな時に自分語りか?
時間稼ぎというわけでもなさそうだが、いったい何を―
「―なので、こんな解決策を編み出してみた」
そういいながら、ジークフリートは注射器のようなものを取り出すとそれを突き入れる。
何かを注入した、その瞬間―
『……さぁ、これが英雄派の研究成果だよ……っ』
―目の前に、化け物が現れた。
ステラフレームはかなりの難敵として設計されており、まぁこれぐらいはやってくれないと困るような化け物どもです。
そしてついに登場業魔人。個人的にはめちゃくちゃ好きな設定なので、この作品ではミザリもいるからたっぷり作る予定でございます。